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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 J7
管理番号 1319230 
審判番号 不服2016-2707
総通号数 202 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2016-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-02-23 
確定日 2016-08-22 
意匠に係る物品 放射線像変換用パネル 
事件の表示 意願2014- 28030「放射線像変換用パネル」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠

本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとし,本意匠を意願2014-28028号とする,平成26年(2014年)12月16日に出願された関連意匠の意匠登録出願であり,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品は「放射線像変換用パネル」であり,その形態は,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりのものであって,「実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である」としたものである(以下,本願について意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」という。)。(別紙第1参照)


第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠

原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するというものであって,具体的には,本願意匠は,「放射線像変換用パネル」に係るものであるが,この種物品の分野においてパネル全体よりも小さい保護層部等を積層させることは,本願出願前よりごく一般的に行われているところ(例えば,下記の意匠1ないし意匠3),本願意匠は周知形状である隅丸矩形状の本体部に,それよりも小さい保護層を単に積層させたに過ぎないものであり,格別の創作性があるとはいえず,当業者であれば容易に創作することができた意匠であるというものである。
なお,正面視隅丸矩形の全体形状は周知形状であり,また,放射線画像変換パネルにおいても正面視隅丸矩形の全体形状がありふれた形状であることを示すために,特開2000-346997号(別紙第5参照)を例示している。

意匠1(別紙第2参照)
特許庁発行の公開特許公報記載
特開2009-080032
【図1】及び関連する記載により表された放射線画像変換パネルの意匠

意匠2(別紙第3参照)
特許庁発行の公開特許公報記載
特開2007-315866
【図3】,【図4】及び関連する記載により表された放射線画像変換パネルの意匠

意匠3(別紙第4参照)
特許庁発行の公開特許公報記載
特開2014-071031
【図1】,【図3】及び関連する記載により表された放射線画像変換パネルの意匠


第3 請求人の主張の要点

これに対し,請求人は,審判を請求し,要旨以下のとおり主張した。

1.本願意匠の要旨
本願意匠は,意匠に係る物品を「放射線像変換用パネル」とし,保護層部の表面と本体部の周縁部を,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とするものであり,正面視で隅丸矩形状の平坦な本体部に,本体部よりもわずかに小さい隅丸矩形状の平坦な保護層部を積層し,本体部の表面(正面側)における保護層部に覆われていない部分が極細幅状に表れる構成を備える意匠であり,この構成に創作の要点が存在しているものである。
なお,本願意匠の願書等で用いている「本体部」は,「放射線像変換用パネル」の本体であり,放射線を照射することで放射線による像を蓄積するものであるとしている。

2.原査定の認定について
原査定においては,
I)この種物品分野において種々の層を積層させることが一般的に行われていることを認定し,
II)正面視隅丸矩形の全体形状は周知形状であり,また,放射線画像変換パネルにおいても正面視隅丸矩形の全体形状がありふれた形状であることを示すために,特開2000-346997号を引用し,
III)本体部直上に薄い平坦な保護層を積層させることが一般的に行われていることを示すために,意匠2の段落「0017」の記載を引用し,
IV)本体部よりも小さい保護層を積層させることが既に行われていることを示すために,意匠2及び意匠3を引用し,また,パネル本体部よりも小さい保護層等を積層させる手法を示すために,意匠1ないし意匠3を引用している。
しかしながら,これらの認定には誤りが含まれている。

3.本願意匠が容易に創作することができたものではないことについて
原査定は,上記IないしIVの認定に基づき,本願意匠は,周知の隅丸矩形状を基本に積層すれば,おのずと隅丸矩形の細幅周縁状部が形成されるものとし,当業者であれば容易に創作することができたと判断している。
しかしながら,本願意匠は,「正面視で隅丸矩形状の平坦な本体部に,本体部よりもわずかに小さい隅丸矩形状の平坦な保護層部を積層し,本体部の表面(正面側)における保護層部に覆われていない部分が極細幅状に表れる」構成を備える意匠であり,引用意匠に表れている構成要素・形態からはありふれた手法によって想到できたとは言えない独自の形態からなるものである。
まず,意匠2については,平坦な本体部の表面(正面側)に本体部よりもわずかに小さい隅丸矩形状の平坦な保護層部を積層した本願意匠とは,形状が大きく異なり,意匠2の「保護層部に覆われていない部分」に相当する部分(基板12の部位において正面に露出している部分)は,本体部全体の横幅に対して約0.079倍の幅であって極細幅ということはできないのに対し,本願意匠の周縁部は本体部全体の横幅に対して約0.017倍であり,極細幅となっており,構成が異なっている(資料2参照)。
次に,意匠3については,平坦な本体部の表面(正面側)に本体部よりもわずかに小さい隅丸矩形状の平坦な保護層部を積層した本願意匠とは形状が大きく異なり,意匠3の「保護層部に覆われていない部分」に相当する部分(センサパネル1における正面に露出している部分)は,本体部全体の横幅に対して約0.06倍の幅であって極細幅ということはできないのに対し,本願意匠の周縁部は本体部全体の横幅に対して約0.017倍であり,極細幅となっており,構成が異なっている(資料2参照)。
次に,意匠1については,平坦な本体部の表面(正面側)に本体部よりもわずかに小さい隅丸矩形状の平坦な保護層部を積層した本願意匠とは形状が大きく異なり,意匠1の「保護層部に覆われていない部分」に相当する部分(透明支持体12における背面に露出している部分)は,「パネル本体部」全体の横幅に対して約0.058倍の幅であって極細幅ということはできないのに対し,本願意匠の周縁部は本体部全体の横幅に対して約0.017倍であり,極細幅となっており,構成が異なっている。
なお,意匠1の無線遮断膜34は,電波を遮断・減衰させるための膜であり,本願意匠のように放射線像変換用パネルを保護するためのものではないから,放射線像変換用パネルの当業者にとっては,意匠1の無線遮断膜34に基づいて保護層部の形態を創作することは考えられない。
以上の通り,意匠1ないし意匠3には,いずれも,本願意匠の構成要素である「正面視で隅丸矩形状の平坦な本体部に,本体部よりもわずかに小さい隅丸矩形状の平坦な保護層部を積層した」構成を備えた点,「保護層部に覆われていない部分が極細幅状に表れる」点,が表れておらず,さらに意匠1については当業者にとって保護層部の形態を創作するための着想を与えるものでもない。
意匠1ないし意匠3は,正面視(意匠1については背面視)で観察した場合には,抽象的には「本体部よりも小さい保護層を積層させること」は表れているように見えるとしても,これらの公知の形態に基づいて一義的に本願意匠の具体的な「正面視で隅丸矩形状の平坦な本体部に,本体部よりもわずかに小さい隅丸矩形状の平坦な保護層部を積層し,本体部の表面(正面側)における保護層部に覆われていない部分が極細幅状に表れる」という,まとまりのある特徴的構成全体が実現されるものではない。
本願意匠を創作するには,公知の隅丸矩形状の放射線像変換用パネル,あるいは周知の隅丸矩形状を基本として,保護層部が採り得る様々な形状や,本体部が採り得る様々な形状,様々に考えられる保護層部と本体部との位置関係の中から,本願意匠に対応するものを選択し,あるいは改変し,組み合わせて形成していくことが必要であるが,意匠1ないし意匠3にはそのような創作を行ことについて何ら示唆はなく,当業者にとって原査定で述べているように「おのずと隅丸矩形の細幅状周縁部が形成される」ものではない。

4.結び
以上の通り,本願意匠は,出願前の公然知られた形状に基づき,当業者において容易に創作をすることができた意匠に該当しないものである。


第4 当審の判断
請求人の主張を踏まえ,本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性,すなわち,本願意匠が容易に創作することができたか否かについて,検討し,判断する。

1.意匠の認定
(1)本願意匠
1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は,歯科検診の際に患者の口腔内を撮影するために用いる「放射線像変換用パネル」である。

2)本願部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲
本願部分は,放射線像の情報を蓄積するものであって,本体部上面に本体部を保護するための保護層部を積層させたものであり,保護層部は本体部上面よりも一回り小さな大きさで本体部上面の中央に位置し,口腔内に入れて使用する程度の大きさであって,本体部上面の周縁を含む上面全域を範囲としたものである。

3)本願部分の形態
ア 基本的構成態様
全体は,隅丸矩形状の薄く平坦な板状の本体部に,相似形の隅丸矩形状のごく薄い平坦なシート状の保護層部を積層させた態様である。

イ 具体的態様
正面視において本体部表面の周囲に同一幅の細幅の周縁部を設け,側面視において平坦で板状の本体部と本体部より一回り小さく平坦なシート状の保護層部を重ねて階段状の段差を設けた態様である。

(2)意匠1
意匠1は,特開2009-080032号の図1及び関連する記載により表された「放射線画像変換要パネル」の意匠であり,全体を隅丸矩形状で薄く平坦な板状の透明支持体の表面側に,同形状でやや薄い蓄積性蛍光体層を積層させて放射線画像変換パネルとし,裏面側にはICチップを備えたタグが貼り付けられ,それを長方形状の無線遮断膜で覆い,無線遮断膜の端部の四面に傾斜面を有し,同一幅の周縁部を設けた形状としている。

(3)意匠2
意匠2,特開2007-315886号の図3,図4及び関連する記載により表された「放射線画像変換要パネル」の意匠であり,全体を略正方形で隅が直角で薄く平坦な板状の基板部に,基板よりやや小さく四角の角筒状の枠体を設けて階段状とし,角筒状内部に蛍光体層を積層させ,角筒状を覆うように略正方形で隅が直角で平坦な板状の保護層を有し,同一幅の周縁部を設けた形状としている。

(4)意匠3
意匠3は,特開2014-071031号の図1,図3及び関連する記載により表された「放射線検出装置」の意匠であり,全体を隅が直角な長方形状で薄い板状の基板を含むセンサパネルにシンチレータ層を積層させ,そのシンチレータ層を隅丸矩形状の樹脂層,光反射層,光反射層保護層の3層で覆い,それぞれ3層は周縁部に傾斜面を形成し,その端部を上斜め方向に跳ね上げた形状としている。

(5)特開2000-346997号の放射線画像変換パネルの意匠
特開2000-346997号の【図3】(b),(c),(e),【図4】(b),(c),(e)に表された放射線画像変換パネルは,全体を隅丸矩形状で平坦な板状としている。

2.創作非容易性の判断
本願意匠が意匠法第3条第2項の規定に該当するか否か,すなわち,本願意匠が,この意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に創作することができたものであるか否かについて,請求人の主張を踏まえて,以下,検討する。

まず,本願部分のような全体を隅丸矩形状の平坦な板状の態様とすることは,特開2000-346997号の【図3】(b),(c),(e),【図4】(b),(c),(e)に表されているように,本願の出願前に既に公然知られた態様である。

そして,本願部分のように,平坦な板状の本体部に保護層を積層させることも意匠1ないし意匠3のように,本願出願前からすでに見られる手法である。

しかし,本願部分の具体的構成態様について検討すると,本願部分が,正面視で本体部表面の周囲に細幅の周縁部を設け,側面視で平坦で板状の本体部と保護層部を重ねて階段状の段差を設けた態様であるのに対し,意匠1及び意匠3は,いずれも正面視で本体部表面の周囲にやや幅の広い周縁部を設け,側面視で本体部に積層させた保護層が本体に接地する前に傾斜面を形成しており,本願部分とは異なる態様である。また,意匠2は側面視で階段状ではあるものの,基板部に四角の角筒状の枠体を設けて階段状としたものであり,正面視で本体部表面の周囲に周縁部がやや幅広く設けられており,本願部分とは異なる態様である。さらに意匠3は,本体部に積層させた保護層の端部を上斜め方向に跳ね上げた形状としており,本願部分とは異なる態様である。そして,これらの相違は,放射線画像変換用パネルの分野における通常の知識に基づいて創作を加えたとしても,本願部分の態様とすることは容易にできたとはいえず,当業者であれば容易に着想できたということはできないものである。
そうすると,本願部分の具体的構成態様は,当業者であれば容易に着想できたということはできないものであるから,意匠全体として,本願意匠は,容易に創作することができたということはできない。


第5.むすび

以上のとおりであって,本願意匠は,原査定の拒絶の理由によっては,意匠法第3条第2項が規定する,意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものに該当するとはいえないので,本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2016-08-10 
出願番号 意願2014-28030(D2014-28030) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (J7)
最終処分 成立 
前審関与審査官 原川 宙神谷 由紀 
特許庁審判長 本多 誠一
特許庁審判官 正田 毅
山田 繁和
登録日 2016-09-16 
登録番号 意匠登録第1561194号(D1561194) 
代理人 長谷川 芳樹 
代理人 布施 哲也 
代理人 野間 悠 
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