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審決分類 |
審判 査定不服 意10条1号類似意匠 取り消して登録 D3 |
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管理番号 | 1320249 |
審判番号 | 不服2016-5473 |
総通号数 | 203 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2016-11-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-04-13 |
確定日 | 2016-09-27 |
意匠に係る物品 | 天井埋込み灯 |
事件の表示 | 意願2015- 4134「天井埋込み灯」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,平成27年(2015年)2月27日に出願された,本意匠を意願2015-4136とする関連意匠の意匠登録出願であって,本願の意匠(以下「本願意匠」という。)の意匠に係る物品は本願の願書の記載によれば「天井埋込み灯」であり,本願意匠の形態は願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりであって,願書の【意匠の説明】には「実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分(当審注:以下「本願部分」という。)である。一点鎖線は,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分と,その他の部分との境界のみを示す線である。」と記載されている(別紙第1参照)。 第2 原査定における拒絶の理由 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,願書に記載した本意匠(平成27年(2015年)10月9日付けの手続補正により願書に追加された【本意匠の表示】に示された意願2015-4136の意匠。)に類似する意匠と認められないので,意匠法第10条第1項の規定に該当しないとの理由であって,具体的には以下のとおりである。 「本願意匠と願書に記載した本意匠は,看者に最も目につきやすい部分におけるレンズ部の形状に顕著な差違が認められ,通常は天井に埋め込んで使用する本願意匠に係る物品の特性からしてこれは類否判断に大きく影響するものですので,本願の意匠は,願書の記載の本意匠番号の意匠に類似するものとは認められません。」 第3 当審の判断 以下,本願意匠が第10条第1項の規定に該当するか否かについて検討する。 1 本意匠 本意匠に係る出願は,本願と同日の平成27年(2015年)2月27日に意匠登録出願がなされ,同年12月25日に意匠権の設定の登録がなされて,平成28年(2016年)2月1日に意匠公報が発行されている。 本意匠の意匠に係る物品は同公報の記載によれば「天井埋込み灯」であり,本意匠の形態は同公報の【図面】に記載されたとおりであって,同公報の【意匠の説明】には「実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分(当審注:以下「本意匠部分」という。)である。一点鎖線は,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分と,その他の部分との境界のみを示す線である。」と記載されている(別紙第2参照)。 2 本願意匠と本意匠の対比 (1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は「天井埋込み灯」であり,本意匠の意匠に係る物品も「天井埋込み灯」である。 (2)両部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲 本願部分の位置,大きさ及び範囲は,平面部及び平面部寄りの周側面を除いた部分であり,かつ底面視左下にある「点検スイッチ」及びその周囲の開口部を除いた部分であって,主として平面部を含んでいないことから,天井埋込み灯の用途及び機能のうち,平面部に備わった用途及び機能(例えば,平面部に破線で表された端子台などの用途及び機能。)を有していない。 同様に,本意匠部分の位置,大きさ及び範囲も,平面部及び平面部寄りの周側面を除いた部分であり,かつ底面視左下にある「点検スイッチ」及びその周囲の開口部を除いた部分であって,主として平面部を含んでいないことから,天井埋込み灯の用途及び機能のうち,平面部に備わった用途及び機能(例えば,平面部に破線で表された端子台などの用途及び機能。)を有していない。 (3)両部分の形態 本願部分と本意匠部分(以下「両部分」という。)の形態を対比すると,主として,以下の共通点と差異点が認められる。 ア 共通点 両部分の形態には,以下の共通点が認められる。 (A)全体が,略円筒状である本体部の下面に,略ドーナツ板状の枠部を嵌合させたものであって,該枠部底面中央の円形孔から,発光部が下方に突出している。 (B)本体部の形状についての共通点 (B-1)正面及び背面から見た共通点 正面から見て,左端及び右端の上下中央やや下寄りに,取付ばねが左右に略「ハ」字状に突出しており,左右の取付ばねは同形同大であって,略変形五角形状に表されている。取付ばねは,背面方向からも同様に看取される。 また,正面中央やや下寄りには,横長四角形状の孔部が設けられており,その孔部から,帯板状の枠取付ばねが前方に屈曲して突出している。背面中央やや下寄りにも同様の孔部と枠取付ばねが配されている。 (B-2)左側面及び右側面から見た共通点 左側面から見て,厚みのごく薄い略角丸縦長長方形状部が中央に突設されており,その長方形状部は本体部の上端にほぼ接しており,本体部の下端との間には少しの余地部が見られる。 その長方形状部の中央には,縦長細幅のスリット状孔が形成されており,その上部は幅広になって略四角形状を呈している。そして,そのスリット状孔の中央からやや下にかけて取付ばねが嵌合されている。 右側面部の中央にも,同形の長方形状部とスリット状孔が同様の位置に設けられており,取付ばねも同様の位置に嵌合されている。 また,左側面から見て,左端及び右端の上下中央やや下寄りに,孔部から突出した左右の枠取付ばねが略「く」字状に屈曲して表されている。枠取付ばねは,右側面方向からも同様に看取される。なお,本願の願書及び本意匠の意匠公報の【内部機構を省略したA-A切断部端面図】によれば,枠取付ばねは,本体部の内部において鉛直方向に垂下し,直角に折れ曲がって枠部の裏面に接合している。 さらに,左側面から見て,左端寄りに垂直の面分割線が形成されており,右上角部寄りには,縦長長方形状の開口部が設けられている。右側面部の右下角部寄りにも,2つの開口部が設けられている。 (C)枠部の形状についての共通点 底面から見て,端部が二重円状に表されており,その二重線部は,正面から見ると後方に緩やかに傾斜している。 正面から見ると,その傾斜面の厚みと,枠部の端部の厚みが,約1:1に表されている。 (D)発光部とその周囲の枠部の態様についての共通点 (D-1)発光部の態様 底面から見た発光部の外形は円形状であり,正面から見ると,発光部は下向きの略弓形状に表されている。 (D-2)発光部周囲の枠部の態様 発光部の周囲には,底面視円環状の隆起部が形成されており,該隆起部は,正面視略扁平台形状に表されている。 (E)本体部と枠部の構成態様についての共通点 正面から見て,本体部の横幅と枠部の横幅の比は,約5:6である。 (F)枠部と発光部の構成態様についての共通点 底面から見て,枠部の径と発光部の径の比は,約10:3である。 イ 差異点 一方,両部分の形態には,以下の差異点が認められる。 (a)発光部の形状についての差異点 底面から見た本願部分の発光部は,縁部に形成されたテーパー面の存在により3重円状に表されており,正面から見ると,そのテーパー面の上下が水平状稜線として表されているが,本意匠部分の発光部にはそのようなテーパー面はない。 また,正面から見た本願部分の発光部の左右端部は,テーパー面の上側稜線の位置でごく僅かに角張っているが,下側稜線の位置では角張っておらず略弧状に連続している。 これに対して,正面から見た本意匠部分の発光部は,本願部分の発光部に比べて下方への膨出の程度が大きく,左右端部から中央下端にかけての曲線も滑らかではなく,中間部においてごく僅かに曲率が大きくなっている。 なお,上記のテーパー面や角張の態様については,本願の願書及び本意匠の意匠公報の【内部機構を省略したA-A切断部端面図】からも認定することができる。 3 類否判断 (1)意匠に係る物品 前記認定したとおり,本願意匠と本意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は同一である。 (2)両部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲 前記認定したとおり,本願部分と本意匠部分の位置,大きさ及び範囲は,共に平面部及び平面部寄りの周側面を除いた部分であり,かつ底面視左下にある「点検スイッチ」及びその周囲の開口部を除いた部分であって,平面部に備わった用途及び機能以外の天井埋込み灯の用途及び機能を有していることから,両部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲は共通する。 (3)天井埋込み灯の意匠の類否判断 天井埋込み灯は,その本体が天井内に埋め込まれて,本体下面に嵌合された枠部及びその内側の発光部のみが室内に居る看者の目に触れるものではあるものの,特殊な取付ばねなどを有する両意匠のような天井埋込み灯の需要者には,天井埋込み灯を天井に備える建物の工事を発注する建設業者(又は建築物の販売業者)や,工事を受注する施工業者も含まれると考えられる。したがって,天井埋込み灯である意匠の類否判断においては,そのような需要者も念頭において,室内側からだけ看取される枠部や発光部にとどまらず,本体の構成態様や,取付ばねや枠取付ばねなどの本体各部の具体的態様を含めて,これらの各項目を総合して意匠全体として形態を評価する。 (4)両部分の形態の共通点の評価 上記2(3)アで指摘したとおり,両部分は,(B)本体部の各部の形状,(E)本体部と枠部の構成態様,及び(F)枠部と発光部の構成態様について共通している。 特に,共通点(B)で述べた,特定の形状を有する取付ばねや枠取付ばねが特定の位置に配置された本体部の形状や,共通点(E)で述べた約5:6である本体部と枠部の正面視構成態様,及び共通点(F)で述べた約10:3である枠部と発光部の底面視構成態様の全てを有する意匠は,本願の出願前(及び出願日が本願と同日である本意匠の出願前)に天井埋込み灯の物品分野において公然知られているとはいい難く,天井埋込み灯の需要者・取引者は,これらの形状特徴を共に有する両部分の形態の共通点から確たる美感を抱くこととなるので,共通点(B),共通点(E)及び共通点(F)の組み合わせは,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすということができる。 他方,全体の構成に係る共通点(A),枠部の形状についての共通点(C),及び発光部とその周囲の枠部の態様についての共通点(D)については,本願の出願前に天井埋込み灯の物品分野においてありふれた態様であるというべきであり,天井埋込み灯の需要者・取引者はこれらの共通点に注意を払うとはいい難いので,共通点(A),共通点(C)及び共通点(D)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいというほかない。 したがって,上記(A)ないし(F)の共通点を総合すると,(A),(C)及び(D)の共通点が両部分の類否判断に及ぼす影響は小さいものの,(B),(E)及び(F)の共通点が両部分の類否判断に及ぼす影響が大きいことから,形態の共通点は,総じて両部分の類否判断に大きな影響を及ぼすものと認められる。 (5)両部分の形態の差異点の評価 これに対して,前記認定した発光部に係る差異点(a)が両部分の類否判断に及ぼす影響は,以下のとおり評価される。 本願部分の発光部には正面及び底面から看取されるテーパー面があるものの,そのテーパー面の存在による角張は,テーパー面の上側稜線の位置のごく僅かなものにとどまり,テーパー面自体も正面視斜めに表されていることから(D-1)で述べた正面視略弓形状の共通点を損ねるものとはいえないので,本願部分のテーパー面や角張りは,本意匠部分に対する差異として大きく評価することはできない。 また,正面から見た本意匠部分の発光部が本願部分に比べて下方への膨出の程度が大きい点については,その膨出の度合いが顕著であるというほどではなく,天井に埋込む,あるいは取り付ける照明機器の分野において発光部の下方への膨出の程度には様々なものがあることを踏まえると,需要者・取引者が本意匠部分の発光部の膨出に対して特段注意を払うとはいい難く,本意匠部分の発光部の左右端部と中央下端の中間部の曲率がごく僅かに大きい点についても,その変化は僅かなものであって,両部分を全体として比較した際には局所的な目立たない差異にとどまるというべきであり,需要者・取引者が注視する差異であるとはいい難い。 したがって,差異点(a)が両部分の類否判断を左右するほどのものであるとはいえない。 (6)総合判断 以上のとおり,両部分の形態の共通点が両部分の類否判断に及ぼす影響は総じて大きいのに対して,両部分の形態の差異点(a)が両部分の類否判断に及ぼす影響は小さく,形態の共通点を圧して,両部分の類否判断に大きな影響を及ぼすほどのものとはいい難い。 (7)小括 したがって,両意匠の意匠に係る物品は同一であり,両部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲も共通しており,両部分の形態についても,共通点は差異点(a)を圧して両部分の類否判断に大きな影響を及ぼすので,本願意匠は本意匠に類似する。 4 本願意匠が第10条第1項の規定に該当するか否かについて 本意匠は,本願の意匠登録出願人の意匠登録出願に係る意匠であるから,意匠法第10条第1項に規定されている本意匠の要件を満たしている。 また,本願意匠の意匠登録出願の日は,本意匠の意匠登録出願の日以後であって本意匠の意匠公報の発行の日前であるから,意匠法第10条第1項に規定されている関連意匠の意匠登録出願の日の要件を満たしている。 そして,上述のとおり,本願意匠は本意匠に類似するものと認められるので,本願意匠は,意匠法第10条第1項に規定されている,本意匠に類似する意匠(関連意匠)の要件を満たしている。 したがって,本願意匠は,意匠法第10条第1項の規定に該当する。 第4 むすび 以上のとおりであって,本願意匠は,意匠法第10条第1項の規定に該当し,本意匠の関連意匠として意匠登録を受けることができるものであるから,原審の拒絶の理由によっては本願について拒絶をすることができない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願について拒絶をすべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2016-09-12 |
出願番号 | 意願2015-4134(D2015-4134) |
審決分類 |
D
1
8・
3-
WY
(D3)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 佐々木 朝康 |
特許庁審判長 |
斉藤 孝恵 |
特許庁審判官 |
小林 裕和 渡邉 久美 |
登録日 | 2016-10-07 |
登録番号 | 意匠登録第1562732号(D1562732) |
代理人 | 村上 加奈子 |
代理人 | 倉谷 泰孝 |
代理人 | 松井 重明 |
代理人 | 稲葉 忠彦 |
代理人 | 稲葉 忠彦 |
代理人 | 村上 加奈子 |
代理人 | 松井 重明 |
代理人 | 倉谷 泰孝 |