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審決分類 |
審判 査定不服 意10条1号類似意匠 取り消して登録 D3 |
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管理番号 | 1321285 |
審判番号 | 不服2016-11176 |
総通号数 | 204 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2016-12-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-07-25 |
確定日 | 2016-11-01 |
意匠に係る物品 | 天井埋込み灯 |
事件の表示 | 意願2015- 17233「天井埋込み灯」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,平成27年(2015年)8月3日の意匠登録出願であって,本願の意匠(以下「本願意匠」という。)の意匠に係る物品は本願の願書の記載によれば「天井埋込み灯」であり,本願意匠の形態は願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりであって,願書の【意匠の説明】には「実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分(当審注:以下「本願部分」という。)である。」と記載されている(別紙第1参照)。 第2 原査定における拒絶の理由 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,願書に記載した本意匠(平成27年(2015年)8月3日付けの出願番号特定通知書により意願2015-17232と通知された意匠登録出願の意匠。)に類似する意匠と認められないので,意匠法第10条第1項の規定に該当しないとの理由であって,具体的には以下のとおりである。 「本願意匠と願書に記載した本意匠には,主に,意匠登録を受けようとする部分につき,反射板を当該部分の位置とするところは共通するものの,その形状については,反射板中央上部に設置する筐体直下周囲側壁と120度毎に配される3つのリブの距離並びにそれらの形状,及び5つの略台形状のリブの有無による差違が認められ,これらの相まった態様は類否判断に大きく影響するものですので,本願の意匠は,願書の記載の本意匠番号の意匠に類似するものとは認められません。」 第3 手続きの経緯 上記原審の拒絶の理由に対して,請求人は意見書を提出し,本願意匠が本意匠に類似するものとして登録されるべきである旨主張したが,同主張を採用できないとして拒絶の査定がなされたため,同査定を不服として平成28年(2016年)7月25日に審判を請求し,原査定を取り消し本願意匠を登録すべきとの審決を求めるとともに,同日に手続補正により本願の本意匠の表示を削除した。 第4 当審の判断 以下,本願意匠が第10条第1項の規定に該当するか否かについて検討する。 1 本意匠 本意匠に係る出願は,本願と同日の平成27年(2015年)8月3日に意匠登録出願がなされ,平成28年(2016年)4月8日に意匠権の設定の登録がなされて,同年5月16日に意匠公報が発行されている。 本意匠の意匠に係る物品は同公報の記載によれば「天井埋込み灯」であり,本意匠の形態は同公報の【図面】に記載されたとおりであって,同公報の【意匠の説明】には「実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分(当審注:以下「本意匠部分」という。)である。」と記載されている(別紙第2参照)。 2 本願意匠と本意匠の対比 (1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は「天井埋込み灯」であり,本意匠の意匠に係る物品も「天井埋込み灯」である。 (2)本願部分と本意匠部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲 本願部分の位置,大きさ及び範囲は,背面部中央の筐体(含:下方に突出した端子台と推認される部分)の大部分と3つの取付バネを除いた部分であり,主として枠と反射板から成る部分であって,本願部分は,光を反射させる機能を有するとともに,筐体を固定する用途を有する(本願の願書に添付された【参考分解斜視図】によれば,反射板背面部には筐体を接合するための突設部が表されている。)。 同様に,本意匠部分の位置,大きさ及び範囲も,背面部中央の筐体(含:下方に突出した端子台と推認される部分)と3つの取付バネを除いた部分であり,主として枠と反射板から成る部分であって,本意匠部分は,光を反射させる機能を有するとともに,筐体を固定する用途を有する(上記公報に掲載された【参考分解斜視図】によれば,反射板背面部には筐体を接合するための突設部が表されている。)。 (3)本願部分と本意匠部分の形態 本願部分と本意匠部分(以下「両部分」という。)の形態を対比すると,主として,以下の共通点と差異点が認められる。 ア 共通点 両部分の形態には,以下の共通点が認められる。 (A)全体が,正面視円形で丸底皿形状の反射板の縁に略細幅円環板状の外枠を配したものであって,反射板の背面には,筐体を取り付けるための突設部が中央寄りに配され,取付バネの固定部が周辺寄りに配されている。 (B)反射板と外枠についての共通点 反射板の中央には円形孔があり,正面から見て外枠外周,反射板外周及び当該円形孔は同心の3重円状に配されており,円形孔の径は反射板外周の径の約1/3以下である。 (C)取付バネ固定部についての共通点 同形同大の取付バネ固定部が反射板背面部の外周に沿って3つ等間隔に配されており,取付バネ固定部は,反射板の中心方向に向いて平行に並んだ4つの垂直板と,反射板の周方向に沿って該垂直板の端部と接合した外周側の板(以下,単に「外周板」という。)から成り,外周板の中央部分(取付バネが下から挿入される部分)にごく浅い凹部が設けられている。 (D)反射板背面の突設部についての共通点 突設部の高さ幅は小さく,平面部の左右が弧状面に表され,側面部略中央部分が(破線で表された)ネジ受け部の背後に後退し,底面部の左右も弧状面であって底面部中央に縦長矩形板が嵌合されている。 イ 差異点 一方,両部分の形態には,以下の差異点が認められる。 (a)取付バネ固定部と突設部の関係についての差異点 本願部分では,取付バネ固定部と突設部は離れており,背面から見た両者の間隔は取付バネ固定部とほぼ同じ幅であって,平面から見ると取付バネ固定部よりも突設部の位置が高く表されているが,本意匠部分では,両者は結合しており,平面から見た両者の位置はほぼ同じ高さに表されている。 (b)取付バネ固定部と突設部の大きさについての差異点 背面から見て,本願部分の取付バネ固定部の反射板の径に占める長さは約1/7であるが,本意匠部分のそれは約1/5であり,本願部分の突設部の全体に占める大きさは本意匠部分のそれよりも小さい。 また,本願部分の突設部の全幅に占める横幅は約5/12であるが,本意匠部分のそれは約5/9であり,本願部分の突設部の全体に占める大きさは本意匠部分のそれよりも小さい。 (c)反射板の形状についての差異点 (c-1)平面から見た形状の差異 平面から見て,本願部分の丸底皿形状は本意匠部分に比べて深く,上向きの凸弧状稜線が大きく表されている。 (c-2)リブの有無についての差異 本意匠部分の背面には,反射板と外枠を跨ぐように略変形台形状のリブ板が底面の位置に3つ,左上に1つ及び右上に一つ設けられているが,本願部分にはそのようなリブ板はない。 (c-3)外枠外周,反射板外周及び円形孔の比の差異 本願部分の外枠外周,反射板外周及び円形孔の比は約5:4.2:1であるが,本意匠部分のその比は約4:3.2:1である。 3 類否判断 (1)意匠に係る物品 前記認定したとおり,本願意匠と本意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は同一である。 (2)両部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲 前記認定したとおり,両部分の位置,大きさ及び範囲は,背面部中央の筐体と3つの取付バネを除いた部分であり,主として枠と反射板から成る部分であって,両部分は,光を反射させる機能を有するとともに,筐体を固定する用途を有するから,両部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲は共通する。 (3)天井埋込み灯の意匠の類否判断 天井埋込み灯は,その本体が天井内に埋め込まれて,本体下面に嵌合された枠部及びその内側の発光部のみが室内に居る看者の目に触れるものではあるものの,特殊な取付バネ固定部などを有する両意匠のような天井埋込み灯の需要者には,天井埋込み灯を天井に備える建物の工事を発注する建設業者や,工事を受注する施工業者も含まれると考えられる。したがって,天井埋込み灯の意匠の類否判断においては,そのような需要者も念頭において,室内側からだけ看取される外枠や反射板にとどまらず,取付バネ固定部や反射板突設部などの本体各部の具体的態様を含めて,これらの各項目を総合して全体として形態を評価する。 (4)両部分の形態の共通点の評価 共通点(A)及び(B)で指摘した両部分の形態の共通点のうち,正面視円形で丸底皿形状の反射板の縁に略細幅円環板状の外枠を配し,取付バネの固定部を周辺寄りに配して,反射板の中央に円形孔を設けた態様は,天井埋込み灯の物品分野の意匠において本願の出願前に普通に見受けられる(例えば,意匠登録第1462694号(参考意匠1,別紙第3参照)及び意匠登録第1509575号(参考意匠2,別紙第4参照)。)ことを踏まえると,天井埋込み灯の需要者はこれらの共通点に注意を払うとはいい難いので,これらの共通点が両部分の類否判断に及ぼす影響は小さい。また,正面から見て外枠外周,反射板外周及び当該円形孔が同心の3重円状に配された態様も上記参考意匠1に見受けられ,円形孔の径が反射板外周の径の約1/3以下である態様も上記参考意匠2に見受けられるから,これらの共通点も両部分の類否判断に及ぼす影響は小さい。 一方,反射板の背面中央寄りに,(両意匠の【参考分解斜視図】で説明されているように)筐体を取り付けるための突設部を配した態様は,他には見られない態様であって,その部位のみに着目した際には看者に一定の視覚的印象を与えるといえるが,共通点(D)で指摘したとおり,その突設部の高さ幅は小さいので,突設部の各部の形状に共通点があることを考慮したとしても,上記態様は,両部分を全体として比較した際には両部分の美感を決定付けるというには及ばず,両部分に見られる突設部に係る共通点が両部分の類否判断に及ぼす影響は小さい。 次に,共通点(C)で指摘した,同形同大の取付バネ固定部を反射板背面部の外周に沿って3つ等間隔に配した態様も,天井埋込み灯の物品分野の意匠において本願の出願前に普通に見受けられる(例えば,上記参考意匠1及び参考意匠2。)ことを踏まえると,天井埋込み灯の需要者はこれらの共通点に注意を払うとはいい難く,4つの垂直板と外周板から成る取付バネ固定部も上記参考意匠1に見受けられるから,共通点(C)が両部分の類否判断に及ぼす影響も小さい。 したがって,反射板の背面中央寄りに,筐体を取り付けるための突設部を配した態様に係る共通点については一定程度評価できるとしても,共通点を総合すると,共通点が両部分の類否判断に及ぼす影響は小さいといえる。 (5)両部分の形態の差異点の評価 これに対して,両部分の形態の差異点については,以下のとおり評価され,差異点を総合すると,両部分の類否判断に大きな影響を及ぼすといわざるを得ない。 まず,差異点(a)で指摘した,取付バネ固定部と突設部が離れているか,結合しているかの差異は,看者が一見して気付く差異であり,平面から見た両者の位置の高さに係る差異とあいまって,看者が両部分を全体として観察する際に異なる視覚的印象を抱くこととなる。したがって,差異点(a)が両部分の類否判断に及ぼす影響は大きい。 次に,取付バネ固定部と突設部の大きさに係る差異点(b)についても,本願部分の取付バネ固定部と突設部の大きさが本意匠部分に比べて小さいので,両部分を観察する看者が抱く視覚的印象に変化を加えているというべきであるから,差異点(b)が両部分の類否判断に及ぼす影響は大きい。 他方,反射板の形状に係る差異点(c)については,本願部分のような深い丸底皿形状を有する態様が上記参考意匠1のように既に見受けられ,反射板と外枠を跨ぐように複数の略台形状リブ板を設けた態様も上記参考意匠2のように既に見受けられること,及び外枠の幅や円形孔の大きさには様々なものがあることから,差異点(c)が両部分の類否判断に及ぼす影響は小さい。 したがって,上記(a)ないし(c)の差異点を総合すると,共通点(c)が両部分の類否判断に及ぼす影響は小さいものの,(a)及び(b)の共通点が両部分の類否判断に及ぼす影響が大きいことから,形態の差異点は,総じて両部分の類否判断に大きな影響を及ぼすものと認められる。 (6)総合判断 以上のとおり,両部分の形態の共通点が両部分の類否判断に及ぼす影響は総じて小さいのに対して,両部分の形態の差異点を総合すると,両部分の類否判断に大きな影響を及ぼし,形態の差異点が共通点を圧するということができる。 (7)小括 したがって,両意匠の意匠に係る物品は同一であり,両部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲も共通するが,両部分の形態については,差異点は共通点を圧して両部分の類否判断に大きな影響を及ぼすので,本願意匠は,本意匠に類似しないものと認められる。 4 本願意匠が第10条第1項の規定に該当するか否かについて 本意匠は,本願の意匠登録出願人の意匠登録出願に係る意匠であるから,意匠法第10条第1項に規定されている本意匠の要件を満たしている。 また,本願意匠と本意匠は,本願意匠の意匠登録出願の日が本意匠の意匠登録出願の日以後であって本意匠の意匠公報の発行の日前であるから,本願意匠の意匠登録出願の日は,意匠法第10条第1項に規定されている関連意匠の意匠登録出願の日の要件を満たしている。 しかし,上述のとおり,本願意匠は本意匠に類似するものとは認められないので,本願意匠は,意匠法第10条第1項に規定されている,本意匠に類似する意匠(関連意匠)の要件を満たさない。 したがって,本願意匠は,意匠法第10条第1項の規定に該当しない。 そして,前記第3のとおり,本願は,審判請求日と同日に願書の本意匠の表示を削除する手続補正がなされているから,原審の拒絶の理由によっては拒絶することはできない。 第5 むすび 以上のとおりであって,本願意匠は,意匠法第10条第1項の規定に該当しないから,本意匠の関連意匠として意匠登録を受けることができないものであって,願書の本意匠の表示を削除する手続補正がなされているから,原審の拒絶の理由によっては拒絶することができない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2016-10-14 |
出願番号 | 意願2015-17233(D2015-17233) |
審決分類 |
D
1
8・
3-
WY
(D3)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 佐々木 朝康 |
特許庁審判長 |
斉藤 孝恵 |
特許庁審判官 |
小林 裕和 渡邉 久美 |
登録日 | 2016-11-11 |
登録番号 | 意匠登録第1565234号(D1565234) |
代理人 | 松井 重明 |
代理人 | 稲葉 忠彦 |
代理人 | 松井 重明 |
代理人 | 稲葉 忠彦 |
代理人 | 村上 加奈子 |
代理人 | 倉谷 泰孝 |
代理人 | 村上 加奈子 |
代理人 | 倉谷 泰孝 |