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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 D3
管理番号 1322337 
審判番号 不服2013-7101
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2017-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-04-17 
確定日 2013-11-15 
意匠に係る物品 天井直付け灯 
事件の表示 意願2011- 17224「天井直付け灯」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとし,物品の部分について意匠登録を受けようとする平成23年(2011年)7月27日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「天井直付け灯」とし,本願意匠の形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)は,願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりのもので,「実線で表した部分は,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分(当審注:以下「本願実線部分」という。)である。」としたものである(別紙第1参照)。

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため,同法同条同項柱書の規定により意匠登録を受けることができない意匠)に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠は,本願出願前,日本国特許庁発行の意匠公報(意匠公報発行日:平成23年(2011年)4月18日)に記載された意匠登録第1411481号(意匠に係る物品,天井じか付け灯)の意匠(以下「引用意匠」という。)であって,引用意匠の本願実線部分に相当する部分(以下「引用相当部分」という。)について類否判断の対象としたものであり,引用意匠の形態は,同公報に記載されたとおりのものである(別紙第2参照)。

第3 本願意匠と引用意匠の対比
1.意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「天井直付け灯」であり,本願意匠の願書の記載によれば,発光ダイオードを光源とするものである。一方,引用意匠の意匠に係る物品は「天井じか付け灯」であって,引用意匠の意匠公報の記載によれば,発光ダイオードを光源とする照明器具である。したがって,両意匠の意匠に係る物品は共通する。

2.本願実線部分と引用相当部分
本願実線部分と引用相当部分は,ともに「天井直付け灯」の平面部の三つの略円形部を除いた部分であるから,本願実線部分と引用相当部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲は共通する。

3.形態
本願実線部分と引用相当部分の形態には,主として,以下の共通点と差異点が認められる。
(1)共通点
基本的構成態様として,以下の共通点が認められる。
(A)基本的構成態様について
本願実線部分と引用相当部分は,左右に長い柱状であって,側面視変形六角形で柱状の本体部の下面に,側面視略半円状で柱状のランプ部を固定して一体としたものである。
また,具体的態様として,以下の共通点が認められる。
(B)本体部の態様について
側面から見て,上辺が水平に表されており,左右下側の辺が内窄まり状に傾斜している。すなわち,両部分の平面は略水平面状であって,前方下側と後方下側に傾斜した面が形成されている。
(C)ランプ部の態様について
投光性を有しており,断面形状が略半円弧状であって,上端部分が本体部に陥入している。

(2)差異点
一方,具体的態様として,以下の差異点が認められる。
(ア)正面及び側面から見た本体部とランプ部の構成について
本願実線部分では,正面から見て,本体部とランプ部の左右幅が同一で,左右端が面一致状に揃っており,側面から見て,ランプ部が全て表れていて,ランプ部の上部が本体部にくい込むように形成されている。これに対して,引用相当部分では,正面から見て,ランプ部の左右幅が本体部のそれよりもやや小さく,左右端には段差があり,側面から見て,ランプ部の上部が,本体部に覆われている。
(イ)底面から見た本体部とランプ部の構成について
本願実線部分では,底面から見て,本体部前方下側傾斜面,ランプ部及び本体部後方下側傾斜面の前後方向の長さの比が略1:1:1であるのに対し,引用相当部分のその比は,略1:2:1である。また,本願実線部分では,傾斜面とランプ部の間に水平面が形成されているのに対して,引用相当部分では,その間に溝部が形成されている。
(ウ)側面から見た本体部の形状について
本願実線部分では,側面から見て,左右下側の辺,すなわち傾斜面の側面形状が直線状に表れるのに対して,引用相当部分では,曲線状にやや凹んでいる。また,本願実線部分の上辺中央には略U字状の切り欠き部が形成されているのに対して,引用相当部分では形成されていない。
(エ)本体部の平面形状について
本願実線部分では,平面から見て,上下左右端部を除く平面のほぼ全域に水平の部材がやや下方に段落ちして形成されて,同部材と上下端部との間に隙間が表れているのに対して,引用相当部分の平面は連続面であり,そのような隙間はない。

第4 類否判断
1.意匠に係る物品
本願意匠と引用意匠は,共に天井に取り付ける照明器具であって,発光ダイオードを光源とする「天井直付け灯」であるから,意匠に係る物品は共通する。

2.本願実線部分と引用相当部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲
前記認定したとおり,本願実線部分と引用相当部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲は共通する。

3.共通点の評価
本願実線部分と引用相当部分の共通点は,いずれも,両意匠の形状を概括的に捉えた場合の共通点であり,両意匠のような左右幅のある照明器具の形状としては,他の意匠にも見られる基本的な形状の一つといえるものでもあるので,この共通点が両意匠全体の類否判断に決定的な影響を及ぼすということはできない。

4.差異点の評価
一方,本願実線部分と引用相当部分の差異点については,以下のとおり,両意匠全体の類否判断に大きな影響を及ぼすといわざるを得ない。
先ず,差異点(ア)については,本願実線部分の正面及び側面から見た本体部とランプ部の構成が,引用相当部分とは明らかに異なっており,特に,本願実線部分のランプ部側面上部が本体部にくい込むように配されている構成は看者の視覚的注意を強く惹くものであって,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
また,正面視左右端の段差の有無の差異について考察すると,本願意匠又は引用意匠を横方向に連結した場合,本願実線部分では,ランプ部が隙間なく連続する態様となるのに対して,引用相当部分では,左右端に段差があるため,隣同士のランプ部間に隙間が生じてしまうこととなり,当該差異が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
次に,差異点(イ)については,照明器具の下側という目につきやすい部位に関する差異であり,本体部前方下側傾斜面,ランプ部及び本体部後方下側傾斜面の前後方向の長さの比の差異は,水平面と溝部の差異と相まって,両意匠の視覚的印象を大きく異にするものであり,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
そして,差異点(ウ)については,その差異が側面方向からはっきりと看取されるものであって両意匠の視覚的印象に変化を与えているというべきであり,また,差異点(エ)については,外観から把握できる構造上の差異でもあるから,いずれも両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
そうすると,(ア)ないし(エ)の差異点は,いずれも両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものであり,両意匠の差異点は共通点を凌ぐものであるということができる。

5.小括
したがって,両意匠は,意匠に係る物品が共通し,本願実線部分と引用相当部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲も共通するが,形態においては,共通点が未だ両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,差異点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は共通点のそれを凌駕しており,意匠全体として見た場合,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。

第5 むすび
以上のとおり,本願意匠は,原査定の引用意匠をもって意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,同法同条同項柱書の規定によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2013-10-31 
出願番号 意願2011-17224(D2011-17224) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (D3)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐々木 朝康加藤 真珠 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 富永 亘
原田 雅美
登録日 2013-12-20 
登録番号 意匠登録第1488639号(D1488639) 
代理人 羽切 正治 

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