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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H1
管理番号 1322344 
審判番号 不服2016-10906
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2017-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-07-20 
確定日 2016-11-01 
意匠に係る物品 ランプ用カバー 
事件の表示 意願2015- 7499「ランプ用カバー」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,平成27年(2015年)4月2日の意匠登録出願であって,本願の意匠(以下「本願意匠」という。)の意匠に係る物品は本願の願書の記載によれば「ランプ用カバー」であり,本願意匠の形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)は願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりであって,願書の【意匠に係る物品の説明】には「本物品は,ランプ用カバーであって,例えば発光ダイオード等の光源を備えるランプに装着するものである。」と記載されており,【意匠の説明】には「内部機構を省略したA-A’断面図において,2重ハッチングを施した部分の部材は透光性を有する。」と記載されている(別紙第1参照)。

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の意匠に類似するものと認められるので,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため,同条同項の規定により意匠登録を受けることができない意匠)に該当するとしたものである。
独立行政法人工業所有権情報・研修館が2008年 3月21日に受け入れた,株式会社ローザ発行のチラシである『環境に優しいFAWOOのLED照明 LumiDas/Lumi-M-Stick』第1頁所載の製品番号:JLD-03の意匠(意匠に係る物品は「発光ダイオードランプ」。特許庁意匠課公知資料番号第HC20002844号。)のうち,本願意匠に相当する部分の意匠(以下「引用意匠」という。別紙第2参照。)
なお,同チラシには,「特殊技術を使用した保護用拡散カバーにより,光を広範囲に最大限に利用することができ,また,眩しさを和らげることに成功しました。」と記載されている。

第3 本願意匠と引用意匠の対比
1 意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「ランプ用カバー」である。これに対して,引用意匠の意匠に係る物品は,上記チラシの記載によれば「保護用拡散カバー」ではあるものの,下部のランプ部と分離可能であるかは不明である。

2 本願意匠と引用意匠の形態
本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の形態を対比すると,主として,以下の共通点と差異点が認められる。なお,本願意匠の向きに合わせて引用意匠の向きを認定する。すなわち,前記第2のチラシに現された引用意匠の形態を180°回転させた形態が,正面斜め下方から見た形態であると認定する。
(1)共通点
両意匠の形態には,以下の共通点が認められる。
(A)全体が,略逆シルクハット形状であって,中央の略円筒形部は透光性を有する。
(2)差異点
一方,両意匠の形態には,以下の差異点が認められる。
(a)全体の構成態様についての差異点
本願意匠では,略円筒形部の上に,それよりも径の大きい薄板の略円形板状体が載っており,本願の願書添付図面中の「内部機構を省略したA-A′断面図」によれば両者は分離可能であると推認される。
これに対して,引用意匠では,略円筒形部の周面上端が鍔状に広がっており(以下,この広がった部分を「鍔状体」という。),略円筒形部と鍔状体がどのように繋がっているのか,両者が分離可能か否かについては不明である。
また,本願意匠の略円筒形部の径と略円形板状体の径の比は約5:8であるが,引用意匠の略円筒形部の径と鍔状体の最大径の比は約4:8であって,略円筒形部の占める割合は本願意匠の方が大きい。
(b)略円筒形部の内部形状の差異点
本願意匠の略円筒形部の内部には,本願意匠が装着されるランプ内の光源からの光線を屈曲させるための下に凸の略半球状体が設けられており,その略半球状体の上端が鍔状に広がって,略円形板状体下面の突出部に係止している。
これに対して,引用意匠の略円筒形部の内部は,略逆円錐形状体が透けて見えており,この略逆円錐形状体が引用意匠の一部であるのか,引用意匠が装着されるランプの一部であるのかが不明である。
(c)略円形板状体と鍔状体の差異点
本願意匠の略円形板状体の上面は,略円筒形部の上端が下面において接する位置で上方に僅かに隆起して段差が形成され,上記略半球状体を下面において係止する位置でごく僅かに陥没して段差が形成されており,平面から見て,外側から内側に3重円状に表されている。そして,その最も内側の円の内側の陥没した面はごく細い幅で表され,その平面視上下左右の部分が内側に張り出しており,その陥没面の内側は開口していて,その開口部内に略半球状体が表されている。
これに対して,引用意匠の鍔状体の上面の態様は,前記第2のチラシには現されていないため,不明である。また,鍔状体の下面の周縁には緩やかなテーパー面が形成されている。

第4 類否判断
1 意匠に係る物品
前記認定したとおり,本願意匠の意匠に係る物品は「ランプ用カバー」であり,引用意匠の意匠に係る物品は「保護用拡散カバー」であって,共にランプ部を保護する機能はあるものの,後者がランプ部と分離可能であるかは不明であるので,両意匠の意匠に係る物品の用途が共通するとはいえない。したがって,両意匠の意匠に係る物品は共通しないというべきである。

2 両意匠の形態の共通点の評価
両意匠の共通点(A),すなわち,全体が略逆シルクハット形状であって,中央の略円筒形部が透光性を有する共通点は,概括的な態様に関する共通点であって,そのような態様を有するランプを保護するカバーの意匠は本願の出願前に公然知られている(例えば,特許庁意匠課公知資料番号:HC22002445の意匠。以下「参考意匠」という。別紙第3参照。)ことから,看者はこの共通点に特に注目するということはできないので,共通点(A)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいといわざるを得ない。

3 両意匠の形態の差異点の評価
これに対して,両意匠の形態の差異点については,以下のとおり評価され,差異点を総合すると,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすといわざるを得ない。
まず,差異点(a)で指摘した,略円筒形部の上に分離可能な略円形板状体が載った本願意匠と,略円筒形部の周面上端に分離の可否が不明な鍔状体が形成された引用意匠は,構造において大きく異なっており,仮に略円筒形部の占める割合が両意匠において異なる差異が評価できないとしても,その構造上の差異は顕著であるから,差異点(a)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
次に,略円筒形部の内部形状についての差異点(b)は,本願意匠の平面から看取される下に凸の略半球状体が引用意匠には無いという差異であって,仮に引用意匠の略円筒形部の内部に透けて見えている略逆円錐形状体が引用意匠の一部であったとしても,その略逆円錐形状体は当該略半球状体とは大きく形態が異なり,略逆円錐形状体に対して看者は異なる視覚的印象を抱くこととなる。したがって,差異点(b)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
そして,略円形板状体と鍔状体の差異点(c)についても,平面視3重円状で,その内側に4つの張り出し部を有する細幅陥没面が形成され,更にその内側に円形状の略半球状体稜線が表された本願意匠の略円形板状体の形態は独特かつ複雑なものであって,看者に一定の視覚的印象を与えるというべきである。一方,引用意匠の鍔状体の上面の態様は不明であり,下面の周縁に形成されたテーパー面は本願意匠には無いので,両意匠を意匠全体として観察する看者に対して,これらの差異は異なる美感を生じさせるといえる。したがって,差異点(c)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。

4 総合判断
以上のとおり,両意匠の形態の共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいのに対して,両意匠の形態の差異点はいずれも両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼし,形態の差異点が共通点を圧して,両意匠を全体として別異のものと印象付けるということができる。

5 小括
したがって,両意匠の意匠に係る物品は共通せず,両意匠の形態についても,差異点は共通点を圧して両意匠を全体として別異のものと印象付けるので,本願意匠は,引用意匠に類似しないものと認められる。

第5 むすび
以上のとおりであって,本願意匠は原査定の引用意匠に類似することを理由にして,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,同法同条同項の規定によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2016-10-14 
出願番号 意願2015-7499(D2015-7499) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (H1)
最終処分 成立  
前審関与審査官 清水 玲香 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 渡邉 久美
小林 裕和
登録日 2016-12-16 
登録番号 意匠登録第1567437号(D1567437) 
代理人 鎌田 健司 
代理人 前田 浩夫 

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