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審決分類 審判 査定不服  意10条1号類似意匠 取り消して登録 J3
管理番号 1322346 
審判番号 不服2016-10191
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2017-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-07-06 
確定日 2016-11-01 
意匠に係る物品 デジタルスチルカメラ 
事件の表示 意願2015-22883「デジタルスチルカメラ」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,本意匠を意願2015-22882号(意匠登録第1547356号)とする関連意匠の意匠登録出願であって,物品の部分について意匠登録を受けようとして,平成27年(2015年)10月16日に出願されたものである。そして,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「デジタルスチルカメラ」とし,形態を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって,「実線で表された部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。意匠登録を受けようとする部分を示す参考図1,意匠登録を受けようとする部分を示す参考図2において,薄墨を施した部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(以下,本願について意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」という。)。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由及び本意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠は,願書に記載した本意匠に類似する意匠と認められないので,意匠法第10条第1項の規定に該当しないというものである。
また,本意匠に係る出願は,物品の部分について意匠登録を受けようとして,平成27年(2015年)10月16日に意願2015-22882号として出願され,本意匠に係る意匠権は,平成28(2016年)年3月11日に意匠登録第1547356号として登録され,本意匠に係る出願が掲載された意匠公報は,平成28年4月11日に発行された。
そして,本意匠は,本意匠に係る出願の願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「デジタルスチルカメラ」とし,形態を本意匠に係る出願の願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって,「実線で表された部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。意匠登録を受けようとする部分を示す参考図1,意匠登録を受けようとする部分を示す参考図2において,薄墨を施した部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(以下,本意匠に係る出願について意匠登録を受けようとする部分を「本意匠部分」といい,本願部分と併せて「両意匠部分」という。)。(別紙第2参照)


第3 当審の判断
本願意匠が,意匠法第10条第1項の規定に該当する意匠であるか否かについて,本願意匠と本意匠(以下「両意匠」という。)を対比し,両意匠の共通点及び相違点の認定及び評価を行うことにより,本願意匠が本意匠に類似するか否かを検討し,判断する。

1.両意匠の対比
(1)両意匠の意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「デジタルスチルカメラ」であり,本意匠の意匠に係る物品も「デジタルスチルカメラ」であるから,両意匠の意匠に係る物品は一致する。

(2)両意匠部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲
両意匠部分は,いずれもデジタルスチルカメラ(以下「カメラ」という。)のシャッターボタンや設定ダイヤル等を集中して載置する用途及び機能を有しているから,両意匠部分の用途及び機能は一致する。
また,両意匠部分は,いずれもカメラの正面視左肩に位置し,カメラの横幅の略2/5,及びカメラの高さの略1/7を占め,シャッターボタンや設定ダイヤル等を載置することができる大きさ及び範囲であるから,両意匠部分の位置,大きさ及び範囲も一致する。

(3)両意匠部分の形態
両意匠部分の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。

<共通点>
両意匠部分は,
(A)カメラの高さよりも若干下がる垂直段部を有する水平上面と,面取り部を介して水平上面につながる垂直壁面とで構成され,正面視左端部の垂直壁面は,平面視で左側に膨出するように湾曲している点,
(B)垂直壁面の下端を周回して,垂直段部に滑らかにつながるように,二重線模様が施され,正面視及び背面視で略倒L字状に表されている点,
で共通する。

<相違点>
(ア)本願部分は,平面視左端部の湾曲を除いて,前後方向の幅が一定であるのに対して,本意匠部分は,平面視左側が前後方向に太い太幅部となっており,正面視中央やや右寄りの位置及び背面視中央やや左寄りの位置に,太幅部と接続する垂直傾斜壁が表れている点,
(イ)本願部分の面取り部は,垂直壁面の全周にわたってほぼ一定の幅であるのに対して,本意匠部分の面取り部は,太幅部の背面側において,やや大きい幅である点,
で相違する。

2.両意匠の類否判断
以上の一致点,共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価及び総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。
両意匠は,意匠に係る物品が一致し,両意匠部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲が一致するが,形態については,以下のとおりである。

(1)両意匠部分の形態についての共通点の評価
共通点(A)は,デジタルスチルカメラに限らず,カメラ一般の物品分野(以下「この種物品分野」という。)において,ありふれた形態であるから,共通点(A)が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響を大きいということはできない。
しかし,共通点(B),すなわち垂直壁面の下端を周回して,垂直段部に滑らかにつながるように,二重線模様が施され,正面視及び背面視で略倒L字状に表されている点は,カメラの左側半周にわたって観察されるから,需要者の注意を引きつけやすい上に,両意匠部分のほかには,あまり見られない特徴的な形態といえる。そして,共通点(B)により,両意匠部分のいずれについても,略倒L字状に表れた二重線模様によってカメラの左肩部の輪郭が強調され,カメラの左肩部が独立しているような存在感を看者に与えているといえるから,共通点(B)は,両意匠部分が共通するという印象を強く与え,両意匠の類否判断に大きな影響を与えているといえる。

(2)両意匠部分の形態についての相違点の評価
これに対して,相違点(ア)及び相違点(イ)が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響はいずれも大きなものではなく,上記共通点(B)が与える強い共通の印象を覆すほどのものではない。
すなわち,相違点(ア)は,本願部分が,平面視左端部の湾曲を除いて,前後方向の幅が一定であるのに対して,本意匠部分は,平面視左側が前後方向に太い太幅部となっており,正面視中央やや右寄りの位置に,太幅部と接続する垂直傾斜壁が表れているというものであるところ,この種物品分野において,カメラを掴みやすくするように,カメラの正面視左側,すなわち右手で保持する部分の前後方向の幅を太くすることは,ありふれた態様であるから,相違点(ア)は,上記共通点(B)による共通する印象を覆すほどのものとはいえない。
また,相違点(イ)は,本願部分の面取り部が,垂直壁面の全周にわたってほぼ一定幅であるのに対して,本意匠部分の面取り部は,太幅部の背面側において,やや大きい幅であるというものであるところ,相違点(イ)は,カメラの背面部を観察した際に気付く程度の部分的な相違にすぎないから,やはり,上記共通点(B)による共通する印象を覆すほどのものとはいえない。
また,相違点(ア)及び相違点(イ)が相乗して生じる効果を考慮したとしても,上記共通点(B)が与える強い共通の印象は,これを凌駕して,両意匠の類否判断を決定付けている。

(3)小括
したがって,両意匠は,意匠に係る物品が一致し,両意匠部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲が一致する上に,両意匠部分の形態についても,共通点が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響が大きいというべきであるのに対して,相違点はいずれも大きな影響を与えるものではなく,相違点の印象は,共通点の印象を覆すには至らないものであるから,本願意匠は,本意匠に類似する。
そして,本願の出願日である平成27年10月16日は,本意匠の出願日である平成27年10月16日以降であって,本意匠に係る出願が掲載された意匠公報の発行日である平成28年4月11日よりも前であるから,本願意匠は,意匠法第10条第1項に規定する「関連意匠」に該当する。

第4 むすび
以上のとおりであって,本願意匠は,意匠法第10条第1項に規定する意匠に該当するから,本意匠の関連意匠として意匠登録を受けることができるものであり,本願は,原査定の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2016-10-18 
出願番号 意願2015-22883(D2015-22883) 
審決分類 D 1 8・ 3- WY (J3)
最終処分 成立  
前審関与審査官 神谷 由紀原川 宙 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 渡邉 久美
刈間 宏信
登録日 2016-12-16 
登録番号 意匠登録第1567776号(D1567776) 
代理人 前田 浩夫 
代理人 鎌田 健司 

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