ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H1 |
---|---|
管理番号 | 1322356 |
審判番号 | 不服2016-6273 |
総通号数 | 205 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2017-01-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-04-27 |
確定日 | 2016-11-22 |
意匠に係る物品 | 発光ダイオードランプ |
事件の表示 | 意願2015- 3990「発光ダイオードランプ」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,平成27年(2015年)2月26日の意匠登録出願であって,本願の意匠(以下「本願意匠」という。)の意匠に係る物品は本願の願書の記載によれば「発光ダイオードランプ」であり,本願意匠の形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)は願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりであって,願書の【意匠の説明】には「赤色で着色された部分以外の部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分(当審注:以下「本願部分」という。)である。」「透光性を有する部分を示す参考図において,黄色で着色された部分は透光性を有する。」と記載されている(別紙第1参照)。 第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の意匠に類似するものと認められるので,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため,同条同項の規定により意匠登録を受けることができない意匠)に該当するとしたものである。 独立行政法人工業所有権情報・研修館が2007年 7月12日に受け入れた『Global Sources Hardware & DIY 10号』第278頁所載の「電球」(以下「引用意匠」という。別紙第2参照。)であり,本願部分と対比される対象は,引用意匠における本願部分に相当する部分(以下「引用部分」という。)である。 なお,上記文献同頁の記載によれば,引用意匠は「LED bulb(発光ダイオード電球)」である。 第3 本願意匠と引用意匠の対比 1 意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は「発光ダイオードランプ」であり,引用意匠の意匠に係る物品は,上記のとおり「発光ダイオード電球」である。 2 本願部分と引用部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲 本願部分の位置,大きさ及び範囲は,発光ダイオードランプのうち口金部とカバー部の大部分を除いた部分であって,カバー部の下端付近と,下端付近を除く筐体部から成り,発光ダイオードランプの用途及び機能のうち,主として筐体部に係る用途及び機能(例えば,カバー部を保持する用途や発光ダイオードに電源を供給する機能。)を有している。 引用部分の位置,大きさ及び範囲は,発光ダイオード電球のうち口金部とカバー部の大部分を除いた部分であって,発光すると推認されるカバー部の下端付近と,下端付近を除く筐体部から成り,発光ダイオード電球の用途及び機能のうち,主として筐体部に係る用途及び機能(例えば,カバー部を保持する用途や発光ダイオードに電源を供給する機能。)を有している。 3 両部分の形態 本願部分と引用部分(以下「両部分」という。)の形態を対比すると,主として,以下の共通点と差異点が認められる。なお,本願部分の向きに合わせて引用部分の向きを認定する。すなわち,上記文献同頁に掲載された引用意匠は,正面方向僅かに上から見下ろした斜視方向で表され,かつ右に約23度傾いて表されたものとして認定する。 (1)共通点 両部分の形態には,以下の共通点が認められる。 (A)全体が,略円柱状の筐体部の上に,上部が拡径したカバー部の下端付近を接合させたものであり,中央の縦軸を中心とした回転体であって,カバー部は透光性を有している。 (B)カバー部と筐体部の接合の態様についての共通点 カバー部と筐体部は面一致状に接しており,正面から見た両者の接合部は水平直線状の面分割線として表されている。 (C)筐体部の構成についての共通点 正面から見て,筐体部の左右幅と上下幅の比は約2:1である。 (2)差異点 一方,両部分の形態には,以下の差異点が認められる。 (a)カバー部下端付近の形状についての差異点 本願部分のカバー部下端付近は,略凹曲面状に形成されており(以下,略凹曲面状に形成された部分を「略凹曲面状部」という。),正面から見た略凹曲面状部の左端及び右端が略凹弧状に表されている。 これに対して,引用部分のカバー部下端付近は,筐体部寄りの部分が,筐体部上端と同径の略短円筒形状(又は円環形状)であり,その略短円筒形状部の上端がカバー部の略球状下端に連なっている。また,引用意匠が僅かに上から見下ろした斜視方向で表されているために,引用部分のカバー部下端付近の正面視形状は正確には不明であるが,同形状は略Ω字形状(Ωの中央下部の形)に表されていると推認できる。 (b)筐体部の径についての差異点 引用部分の筐体部は,上端から下端にいくにつれてごく僅かに径が小さくなっているが,本願部分では,径の大きさは一定である。 第4 類否判断 1 意匠に係る物品 前記認定したとおり,本願意匠の意匠に係る物品は「発光ダイオードランプ」であり,引用意匠の意匠に係る物品も「発光ダイオード電球」であるので,本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は共通する。 2 両部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲 前記認定したとおり,両部分の位置,大きさ及び範囲は,口金部とカバー部の大部分を除いた部分であって,カバー部の下端付近と,下端付近を除く筐体部から成り,発光ダイオードランプ(又は発光ダイオード電球)の用途及び機能のうち,主として筐体部に係る用途及び機能(例えば,カバー部を保持する用途や発光ダイオードに電源を供給する機能。)を有している。したがって,両部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲は共通する。 3 両部分の形態の共通点の評価 両部分の共通点で指摘した,(A)及び(B)の共通点,すなわち,略円柱状の筐体部の上に上部が拡径したカバー部の下端付近を接合させて,カバー部と筐体部を面一致状に接して両者の接合部を水平直線状の面分割線として表した態様は,発光ダイオード電球の物品分野において本願の出願前にありふれた態様である(例えば,特許庁意匠課公知資料番号HB20006858の意匠。別紙第3参照。)ことから,看者はこの共通点に特に注目するということはできないので,共通点(A)及び共通点(B)が両部分の類否判断に及ぼす影響は小さいといわざるを得ない。 また,発光ダイオードランプ(又は発光ダイオード電球)の物品分野においては,筐体部の左右幅と上下幅の比には様々なものがあることから,その比が約2:1である共通点を殊更評価することはできないので,共通点(C)が両部分の類否判断に及ぼす影響も小さいというほかない。 4 両部分の形態の差異点の評価 これに対して,両部分の形態の差異点については,以下のとおり評価され,差異点を総合すると,両部分の類否判断に大きな影響を及ぼすといわざるを得ない。 差異点(a)で指摘した,カバー部下端付近の形状についての差異,すなわち,カバー部下端付近の形態が略凹曲面状(本願部分)であるか,略Ω字形状(引用部分)であるかの差異は,看者が一見して気付く差異であって,看者に別異の美感を与えているというべきである。そして,一般に発光ダイオードランプ(又は発光ダイオード電球)のカバー部は略球状体(略凸曲面)であるところ,本願部分のカバー部下端付近の形状は,略凹曲面であるから略球状体の凸曲面が凹曲面に切り替わる印象を呈しており,寸胴ともいえる引用部分のカバー部下端付近の形状に比べて,看者に特異な印象を与えているということができる。そうすると,差異点(a)は,本願部分の引用部分に対する差異として,両部分の類否判断に大きな影響を及ぼすといわざるを得ない。 他方,筐体部の径についての差異点(b)については,引用部分に見られる筐体部の径の変化がごく僅かなものであること,及び本願部分の径には変化がなくむしろありふれた態様であることから,差異点(b)は本願部分の引用部分に対する差異として殊更に評価することはできないので,差異点(b)が両部分の類否判断に及ぼす影響は小さい。 したがって,上記(a)及び(b)の差異点を総合すると,差異点(b)が両部分の類否判断に及ぼす影響は小さいものの,(a)の差異点が両部分の類否判断に及ぼす影響が大きいことから,形態の差異点は,総じて両部分の類否判断に大きな影響を及ぼすものと認められる。 5 総合判断 以上のとおり,両部分の形態の共通点が両部分の類否判断に及ぼす影響は総じて小さいのに対して,両部分の形態の差異点を総合すると,両部分の類否判断に大きな影響を及ぼし,形態の差異点が共通点を圧するということができる。 6 小括 したがって,両意匠の意匠に係る物品は共通し,両部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲も共通するが,両部分の形態については,差異点が共通点を圧して両部分の類否判断に大きな影響を及ぼすので,本願意匠は,引用意匠に類似しないものと認められる。 第5 むすび 以上のとおりであって,本願意匠は原査定の引用意匠に類似することを理由にして,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,同法同条同項の規定によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
|
審決日 | 2016-11-07 |
出願番号 | 意願2015-3990(D2015-3990) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(H1)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 清水 玲香 |
特許庁審判長 |
斉藤 孝恵 |
特許庁審判官 |
渡邉 久美 小林 裕和 |
登録日 | 2016-12-02 |
登録番号 | 意匠登録第1566494号(D1566494) |
代理人 | 倉谷 泰孝 |
代理人 | 村上 加奈子 |
代理人 | 倉谷 泰孝 |
代理人 | 松井 重明 |
代理人 | 稲葉 忠彦 |
代理人 | 稲葉 忠彦 |
代理人 | 村上 加奈子 |
代理人 | 松井 重明 |