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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 F4
管理番号 1324916 
審判番号 不服2016-9469
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-06-24 
確定日 2017-01-11 
意匠に係る物品 包装用瓶 
事件の表示 意願2014- 17732「包装用瓶」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 1.本願意匠
本願は,イタリアへの2014年2月21日の出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う,平成26年(2014年)8月15日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「包装用瓶」とし,その形態を願書の記載及び願書に添付された写真に現されたとおりのものである。(別紙第1参照)

2.原査定における拒絶の理由および引用意匠
原査定において,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとして,拒絶の理由に引用された意匠(以下,「引用意匠」という。)は,下記の「包装用瓶」の意匠であって,その形態は,同頁に掲載された写真に現されたとおりのものである。(別紙第2参照)

電気通信回線の種類: インターネット
表題: Brindisi a colori La nuova vita delle bollicine Bellavista
掲載年月日(公知日): 2014年2月14日
検索日: 2015年8月3日
掲載ページのアドレス:http://www.amica.it/2014/02/14/brindisi-a-colori/?refresh_ce-cp
引用意匠 上記ページ(添付のイメージ中,2ページ)の写真において現された包装用瓶(正面下方の楕円形ラベルにBELLAVISTA NECTAR S.A.と記載)の意匠

(なお,添付イメージ2ページ目は,1ページ目左側に表された動画が,引用意匠を表示している状態であり,1ページ目と同じ掲載ページアドレスとなっている。)

3.手続の経緯
(1)出願日:平成26年8月15日
(2)優先権証明書:平成26年9月12日提出
【最初の出願の表示】 【国名】イタリア 【出願日】2014年2月21日
(3)1回目の拒絶理由通知:平成27年3月25日(平成27年3月17日付け)
(4)1回目の意見書提出日:平成27年7月16日
(5)2回目の拒絶理由通知:平成27年8月12日(平成27年8月6日付け)において引用意匠を提示
(6)2回目の意見書提出:平成27年12月11日
引用意匠の掲載年月日(公知日)について,2014年2月14日と記載されているが,「Testo Pietro Cheri-14 febbraio 2014」は,当該イタリア語の日本語翻訳が「本文 ピエトロ ケーリ -2014年2月14日」であるが,請求人が調査したところ,当該記事が「Pietro Cheri」氏により2014年2月14日に執筆されたことを示すものであり,当該記事がインターネット上に公開されたのは,2014年3月以降である可能性が高いことが判明したと主張した。
(7)上申書の提出:平成28年1月21日 手続補足書の提出:平成28年1月22日
請求人が調査したところ,当該掲載記事に係るインターネットWebページが電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった日は,拒絶理由で指摘された2014年2月14日ではなく,ウェブアーカイブである「Wayback Machine」を利用し,検索をしたところ(http://www.amica.it/2014/02/14/brindisi-a-colori/),当該Webページが2014年3月9日及び10日に保存されたことを示す検索結果が表示され,その内容が拒絶理由で示されているものと同じものであり,2014年3月9日であることが判明した旨主張した。
(8)拒絶査定:平成28年3月30日(平成28年3月10日付け)
引用意匠が掲載された記事は,Twitter,Incが運営するオンラインサービスであるTwitterにて,名前『pietro cheli』氏によって2014年2月14日,ツイートがされており,Twitter,Incが公開しているヘルプセンターの記載によると,ツイッターは投稿した後でそのツイートを編集することはできない仕様であり,当該記事は2014年2月14日に公開され,当該記事のURLが記載されたツイートが,2月14日になされた蓋然性が極めて高く,また,引用意匠が掲載された当該記事は,RCS Mediagroup S.p.A. が運営するウェブサイト「AMICA」に掲載されたもので,当該記事は「AMICA」において,記事末尾に日付が掲載されている記事カテゴリである「Best of the day」に分類されており,「Best of the day」のアーカイブが記録されているURL(http://www.amica.it/moda/best-of-the-day/page/24/)において,当該記事へのリンクとなる「Brindisi a colori」の画像は,2月14日を意味する「14 feb」の日付と共に表されており,当該記事に記載されている「Testo Pietro Cheli - 14 febbraio 2014」の日付は,前記ツイッターの日付と併せて総合的に判断すると,執筆日ではなく当該記事の公開日と認定せざるを得ないものと認められる,として拒絶の査定がされたものである。
(9)本件審判請求:平成28年6月24日
平成28年8月5日の手続補正書によって,ピエトロ ケーリ氏の署名入りの宣誓書の写し及び訳文を提出した。
また,平成28年11月10日(平成28年11月9日付け)の手続補正書によって,ピエトロ ケーリ氏の署名入りの宣誓書及び訳文を提出した。

4.両意匠の対比
そこで,本願意匠が引用意匠と類似するか否かについて,以下検討する。
(1)意匠に係る物品
両意匠を対比すると,まず,意匠に係る物品については,いずれもスパークリングワインなどの酒類の包装用の容器である「包装用瓶」に係るものであるから,両意匠の意匠に係る物品は一致する。
(2)形態
両部分の形態については,主として,以下の共通点及び差異点が認められる。
(2-1)共通点
(A)全体を正面視で上方の口部が細くなった瓶とし,口部から底部に向かって緩やかに拡径し,下端寄り約1/4の位置までを円筒形状とし,上端から上方寄り約2/5の位置までを覆うキャップシール(以下,この部分を「キャップシール」という。)を設けた点,
(B)正面視すると,上端の口部の直径と瓶の底の直径の割合が約1:3で,上方寄り約2/5の位置にキャップシールと瓶の境に小型楕円形状のラベル(以下,「小型ラベル」という。)を設け,下方寄り約1/7の位置に大型楕円形状のラベル(以下,「大型ラベル」という。)を設けている点,
(C)キャップシールの上方寄り約1/8の位置に小孔を複数配した小孔群を設け,その小孔群を左右に配し,キャップシールの上方寄り約1/3の位置に倒H字状の切り込み(以下,「切り込み」という。)を設けている点,
(D)瓶を濃色とし,大小のラベルやキャップシールを明色としている点,
において主に共通する。
(2-2)差異点
(ア)本願意匠は,瓶にレリーフ模様がないのに対して,引用意匠は,正面視中央に「B」をモチーフとしたレリーフ模様を有している点,
(イ)本願意匠は,ラベルやキャップシールに文字やマークがないのに対して,引用意匠は,小型ラベルには「B」をモチーフとしたマークを,大型ラベルには「B」をモチーフとしたマークや文字を,キャップシールには文字が配されている点,
(ウ)キャップシールの切り込み付近に,本願意匠は,ストッパー開閉用のワイヤー端部がないのに対して引用意匠は輪状のワイヤー端部がある点,
に主な差異が認められる。

5.類否判断
両意匠の意匠に係る物品は,一致する。以下,両意匠の形態について検討する。
(1)共通点
そこで検討するに,共通点(A)については,全体を正面視で上方の口部が細くなった瓶とし,口部から底部に向かって緩やかに拡径し,下端寄り約1/4の位置までを円筒形状とし,上端から上方寄り約2/5の位置までを覆うキャップシールを設けた点は,両意匠の基本的な構成を成すものであり,共通の印象を起こさせるもので,両部分の類否判断に影響を与えるものである。
次に,共通点(B)についても,正面視すると,上端の口部の直径と瓶の底の直径の割合が約1:3で,上方寄り約2/5の位置にキャップシールと瓶の境に小型ラベルを設け,下方寄り約1/7の位置に大型ラベルを設けた態様は,看者に強い共通の美感を起こさせるものといえ,両意匠の類否判断に大きな影響を与えるものである。
そして,共通点(C)について,キャップシールの上方寄り約1/8の位置に小孔を複数配した小孔群を設け,その小孔群を左右に配し,キャップシールの上方寄り約1/3の位置に倒H字状の切り込みを設けている態様は,看者に共通感を与えるもので,共通点(A)や共通点(B)と相俟って,両意匠の類否判断にある程度の影響を与えるものである。
さらに,共通点(D)についても,濃色の瓶に明色のラベルやキャップシールを設けることは,この種の包装用瓶の分野においては,既にありふれた態様といえるものであるが,共通点(B)のラベルやキャップシールの態様と相俟って,両意匠の印象を他のものとは異ならせるものであるから,両意匠の類否判断に僅かではあるが影響を与えるものである。
そうすると,共通点(A)ないし(D)に係る態様のうち,とりわけ,共通点(A)及び共通点(B)は,同様の瓶に同様のラベルやキャップシールを配したものといえ,需要者に共通の美感を強く起こさせ,それらが相乗して生じる視覚的な効果をも考慮すれば,両意匠の類否判断を決定付けるものである。
(2)差異点
これに対し,差異点が両部分の類否判断に及ぼす影響は微弱であって,両部分の共通する美感を変更するまでのものとはいえない。
すなわち,まず,差異点(ア)のレリーフ模様の有無について,確かにその違いが認識できるものではあるが,装飾的なもので,面積も小さいものであるから,その差異は,両意匠の共通する態様の中に埋没してしまう程度の目立たない差異といえるものであり,レリーフ模様の有無における差異のみでは,共通点(A)ないし(D)を凌駕するほどの大きな差異であるとはいうことができず,この差異点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。
また,差異点(イ)の文字やマークの有無については,この種の包装用瓶の物品分野において,販売される使用時には本願意匠のような無地のものにも,通常はマークや文字が付されるものであり,また,当該部位を注視すれば,確かにその違いが認識できるものではあるが,それらは,いずれも付加的なもので,細部に係る部分的な差異であり,それらの有無によって,共通点(A)や共通点(B)の共通性と比較した場合,それらを凌駕するほどの大きな差異とはいえず,この差異点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。
そして,差異点(ウ)の輪状のワイヤー端部の有無についても,スパークリングワインなどの発泡酒のキャップ部分にワイヤーによるストッパーやその端部をキャップシールの上方寄りに設けることも,この種の包装用瓶の販売時の態様には良く見られる態様といえるもので,その差異が目立つものとはいえず,この差異点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。
したがって,差異点(ア)ないし(ウ)は,いずれも両意匠の類否判断に大きな影響を与えるものとはいえず,部分的,微細な差異に留まるものである。
(3)小括
以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が一致し,また,両意匠の形態においても,前記差異点を総合しても,その視覚に訴える意匠的効果としては,前記共通点が生じさせる効果の方が差異点のそれを凌駕し,意匠全体として需要者に共通の美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似する。

6.公知となった日について
拒絶査定において,審査官は,引用意匠が掲載された記事は,Twitter,Incが運営するオンラインサービスであるTwitterにおいて,名前『pietro cheli』氏によって2014年2月14日,ツイートがされており,Twitter,Incが公開しているヘルプセンターの記載によると,ツイッターは投稿した後でそのツイートを編集することはできない仕様であるとして,当該記事が2014年2月14日に公開され,当該記事のURLが記載されたツイートが,2月14日になされた蓋然性が極めて高く,ツイッターの日付と併せて総合的に判断すると,執筆日ではなく当該記事の公開日と認定せざるを得ない,として拒絶査定をしたものである。
しかしながら,請求人は,本件審判請求時に引用されたツイートの記載者であり,ウェブサイト「AMICA」を運営するRCS Mediagroup S.P.A.において「AMICA」の副編集長を務めているピエトロ ケーリ氏への確認を行い,引用意匠をオンラインマガジン「AMICA」に最初に掲載したのは,2014年3月1日である旨,平成28年8月5日の手続補正書によって,ピエトロ ケーリ氏の署名入りの宣誓書の写し及び訳文を提出した。また,平成28年11月10日(平成28年11月9日付け)の手続補正書によって,ピエトロ ケーリ氏の署名入りの宣誓書及び訳文を提出した。
そうすると,引用意匠の掲載年月日(公知日)2014年3月1日は,本願の優先日である2014年2月21日よりも後ということになり,本願意匠と引用意匠は類似するものではあるものの,引用意匠を新規性の阻害要因とすることはできないものである。
したがって,原審の拒絶の理由の引用意匠によって,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとはいえず,本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。

7.むすび
したがって,本願意匠は,原査定の拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2016-12-20 
出願番号 意願2014-17732(D2014-17732) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (F4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小柳 崇山永 滋鶴田 愛 
特許庁審判長 山田 繁和
特許庁審判官 正田 毅
斉藤 孝恵
登録日 2017-02-17 
登録番号 意匠登録第1572087号(D1572087) 
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所 

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