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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 M2
管理番号 1325929 
審判番号 不服2016-15633
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2017-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-10-19 
確定日 2017-03-21 
意匠に係る物品 センサー付き吐水口 
事件の表示 意願2015- 19419「センサー付き吐水口」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠

本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成27年(2015年)9月2日の意匠登録出願であり,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「センサー付吐水口」とし,その形態を,願書及び願書に添付した図面に表されたとおりとしたもので,「各図において、赤色で着色を施した部分以外の部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである。(以下,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本願意匠部分」という。)(別紙第1参照)

第2 原査定おける拒絶の理由及び引用意匠

原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(本願の出願前発行の刊行物に掲載された意匠に類似するため,同条同項の規定により意匠登録を受けることができない意匠)に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠は,本願の出願前の2015年4月15日に独立行政法人工業所有権情報・研修館が受け入れた「TOTO 住宅&パブリックカタログ2015」の第708頁の中段左端に所載の「吐水口」の意匠(以下「引用意匠」という。)における,本願部分に相当する部分(以下「引用意匠部分」という。)であり,その形態は,同カタログに掲載されたとおりとしたもので(別紙第2参照),本願意匠の意匠登録を受けようとする部分と、引用意匠のそれに相当する部分とは、主に、吐水部と反対側の端部が斜状に形成されているか否かという点において相違している一方、主に、全体が略中空円筒状であり、吐水部側の端部を斜状に形成している点において共通し,壁面等に取り付ける際の角度は,本願出願前よりごく一般的に見受けられる態様のものであることから,視覚的効果を考慮したとしても、見る者の注意をひかないものであるのに対して,共通点は,意匠の基調を形成し、共通の印象を強く与えるものであるとして,両部分は類似するとした。
なお,拒絶理由通知書の記載において,<引用意匠>では,「吐水口の意匠」との記述があるが,記部において「本願意匠の意匠登録を受けようとする部分と,引用意匠のそれに相当する部分」との記述があることから,本願意匠の意匠登録を受けようとする部分と,引用意匠のそれに相当する部分を比較の対象としていることが明らかであり,当審においても本願意匠部分と引用意匠部分を比較の対象とする。

第3 当審の判断

1.意匠の認定
(1)本願意匠
1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は,「センサー付吐水口」である。
2)本願部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲
本願部分は,(あ)全体が略円柱形状で,側面視して,正面側端部の上方が張り出した面一の傾斜面で,背面側端部が垂直面からなる直角台形状の正面及び背面の内部を除く円筒状部分を範囲とし,(い)洗面台等で使用される吐水口である。
3)本願部分の形態
基本的構成態様について,上記(あ)のとおりとし,具体的構成態様については,正面側の端部が水平に対して約70度傾斜しており,正面視して外周縁の厚みが看取される。

(2)引用意匠
1)意匠に係る物品
引用意匠の意匠に係る物品は,「吐水口」である。
2)引用部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲
引用部分は,(ア)全体が略円柱形状で,側面視して正面側端部及び背面端部の上方が張り出した傾斜面からなる略逆台形状で,正面及び背面の内部を除く円筒状部分を範囲とし,正面側端部には突出した吐水口を有する,(イ)洗面台等で使用される吐水口である。
3)引用部分の形態
基本的構成態様について,上記(ア)のとおりとし,具体的構成態様については,正面側端部は,引用意匠の写真からは正確な角度が不明であるものの,本願意匠部分と比べて緩やかな傾斜面であることが推認される。また,引用の写真は,斜視図のみであって,底面の態様については不明である。

2.両意匠の共通点及び相違点の認定
以下において,本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)を対比することにより,両意匠の共通点及び相違点の認定,評価を行い,本願意匠が,引用意匠に類似するか否かについて判断する。
なお,両意匠の対比にあたっては,意匠に係る物品はもとより,本願が物品の部分について意匠登録を受けようとするものであるから,本願意匠部分と引用意匠部分(以下「両意匠部分」という。)について,その用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲という。)を対比し,それらを踏まえて,両意匠部分の形態を対比する。
また,請求人は,審判請求書において,「引用文献に記載された型番の一つである「TEL120AWS(単水栓,発電)」の「商品図」と,拒絶理由通知書に記載の引用文献の図版を使用して,本願意匠と引用意匠の類否判断の誤りについても、以下、主張する。」としているが,「商品図」は,拒絶の理由に引用した意匠が掲載されたカタログの該当頁に記載された複数の型番から一つを選択したものであって,引用意匠とは異なる刊行物に掲載された別の公知意匠であるので,当審では,本願意匠と「商品図」に表された意匠との対比は行わない。

(1)両意匠の共通点の認定
意匠に係る物品については,本願意匠は「センサー付吐水口」であって,引用意匠は「吐水口」であるが,両意匠部分は,共に洗面台等で使用される吐水口であり,用途及び機能が共通する。
そして,両意匠部分の,用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲並びに形態について,主に,以下の(A)及び(B)の点が共通する。
なお,各図の表示(図の向き)は,本願意匠の願書に添付された図面の表示にあわせたものとする。
(A)用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲
両意匠部分は,共に略円柱形状の吐水口であって,正面及び背面の内部を除く部分を範囲とするものである。
(B)形態
両意匠部分は,略円筒形状からなる吐水口の外周部分であり,正面側の端部が傾斜状に形成され,正面視して外周縁の厚みが看取される。

(2)両意匠の相違点の認定
両意匠部分の形態について,主に,以下の(ア)及び(イ)の点が相違する。
(ア)基本的構成態様
本願意匠部分は,側面視して,正面側端部の上方が張り出した傾斜面で,背面側端部が垂直面からなる,直角台形状であるのに対して,引用意匠部分は,正面側端部及び背面側端部の上方が張り出した傾斜面で,略逆台形状である。
(イ)具体的構成態様
(イ-1)正面側端部について,本願意匠部分は,側面視して全体が面一に形成され,その傾斜角は水平に対して約70度であるのに対して,引用意匠部分は,外周部と内側の吐水口部分が面一ではなく,本願意匠部分に対応する外周部の傾斜角は,引用意匠の写真からは正確な角度は不明であるが,本願意匠部分と比べて緩やかな傾斜であることが推認される。
(イ-2)本願意匠部分は,底面視して,滑らかな円筒状外周面であるのに対して,引用意匠部分は,引用の写真は,斜視図のみであって,底面の態様については不明である。なお,背面については,本願意匠の意匠登録を受けようとする部分ではないものの,背面視して外周縁が二重円に形成され中央付近には小円形の円環状部分が看取されるのに対して,引用意匠は背面形状も不明である。

3.類否判断
(1)両意匠の共通点の評価
意匠に係る物品については,本願意匠が「センサー付吐水口」であって,引用意匠が「吐水口」であるが,共に洗面台等に使用される吐水口であって物品が共通し,両意匠部分は,共に用途及び機能が共通するが,この共通点をもって類否を決することはできない。
共通点(A)は,略円筒形状の外周を,意匠登録を受けようとする部分とした共通点であるが,略円筒形状の外周から成る吐水口は例示を挙げるまでもなく普通に見られるものであり,共通点(A)が両意匠の類否判断に及ぼす影響を大きく評価することはできない。
共通点(B)は,正面側端部に傾斜面を形成した点については,両意匠の特徴的な部分であるが,吐水口の構成について大まかに捉えたものであって,正面端部が傾斜面を形成している点が,全体の形状を特徴付けるものとはなり得ず,共通点(B)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。

(2)両意匠の相違点の評価
相違点(ア)は,吐水口を壁面に取付けた際に,本願意匠が水平状になるのに対して,引用意匠は傾斜状となり,視覚的印象が大きく相違することから,傾斜角度の相違を看過することはできず,取付け角度に様々な態様が見られることを考慮すれば,相違点(ア)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
相違点(イ-1)については,吐水口の正面側端部の具体的な相違であるが,使用時において目に付きやすい正面の態様に関する相違であることから,類否判断に一定程度の影響を及ぼすものである。
また,相違点(イ-2)は,引用意匠の写真が斜視図のみであるため,底面及び背面については態様が不明で,本願意匠部分と正確な対比ができないものである。背面については,本願意匠の意匠登録を受けようとする部分ではなく,類否判断に及ぼす影響は小さいが,底面については,本願意匠部分の底面には円筒状外周面に何ら凹凸等の態様は認められないものの,底面の態様が不明で,本願意匠部分と引用意匠部分の対比観察が行えないことが両意匠の類否判断に及ぼす影響を軽視することはできない。
そうすると,相違点(ア)及び(イ)があいまって,両意匠に視覚的に異なる印象を与えるものといえる。

(3)小括
上記のとおり,両意匠は,意匠に係る物品及び意匠登録を受けようとする部分の用途及び機能については共通するものの,位置等及び形態の共通点については概括的なものであって,両意匠の類否を決するものとは成らず,一方,相違点があいまって生じる視覚的効果は,共通点を凌駕するものであって,両意匠に異なる美感を起こさせるものである。
したがって,本願意匠は,引用意匠に類似するものではない。

第4 結び
以上のとおりであって,原査定の引用意匠をもって,本願意匠を意匠法第3条第1項第3号に揚げる意匠に該当するものとはできないから,原査定の拒絶の理由によっては,本願を拒絶するべきものとすることはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2017-03-08 
出願番号 意願2015-19419(D2015-19419) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (M2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 安藤 美奈子樫本 光司 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 渡邉 久美
温品 博康
登録日 2017-03-31 
登録番号 意匠登録第1575136号(D1575136) 
代理人 星野 寛明 
代理人 正林 真之 
代理人 岩池 満 
代理人 芝 哲央 
代理人 瓜本 忠夫 

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