ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 F3 |
---|---|
管理番号 | 1327941 |
審判番号 | 不服2016-1397 |
総通号数 | 210 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2017-06-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-01-29 |
確定日 | 2016-08-05 |
意匠に係る物品 | ファイル用ポケット |
事件の表示 | 意願2014- 20296「ファイル用ポケット」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとして,平成26年(2014年)9月12日に意匠登録出願されたものであり,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「ファイル用ポケット」とし,その形態を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり,「本物品は,図面中実線であらわされた部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」(以下,本願において,意匠登録を受けようとする部分を「本願実線部分」という。)としたものである。(別紙第1参照) 第2 当審における拒絶の理由及び引用意匠 当審における拒絶の理由の要旨は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠は,日本国特許庁が平成24年(2012年)8月9日に発行した公開特許公報,特開2012-148538号(発明の名称「ファイル」の【図4】(B)に表されたファイルの意匠(以下,「引用意匠」という。)における,本願実線部分に相当する部分(以下,「引用部分」という。)であって,その形態は,同公報に表されたとおりとしたものである。(別紙第2参照) 第3 当審の判断 請求人の意見書の主張を踏まえ,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号の意匠に該当するか否かについて,本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」ともいう。)を対比し,両意匠の共通点及び相違点の認定,評価を行うことにより,本願意匠が引用意匠に類似するものであるか否かを検討し,判断する。 なお,両意匠の対比にあたっては,意匠に係る物品はもとより,本願が物品の部分について意匠登録を受けようとするものであるから,本願実線部分と引用部分(以下「両部分」という。)について,その用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲を対比し,それらを踏まえて,両部分の形態を対比する。 1.両意匠の共通点及び相違点の認定 (1)両意匠の共通点の認定 (1-1)意匠に係る物品 意匠に係る物品については,本願意匠は「ファイル用ポケット」であり,引用意匠は「ファイル」であるが,両意匠ともに書類等を収納するためのポケット式の収納袋であって,背表紙の内側に溶着され使用されるものであるから,両意匠の意匠に係る物品は,共通する。 (1-2)両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲 両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲については,ともに上部を開口部とし,正面シートの左側辺部際を溶着して使用されるポケット式の収納袋において,背面シートの左端部(背表紙内側に溶着される端部)寄りに1枚厚の細幅帯状のたわみ代部(請求人がいうところのスリット部に相当する部分)を設け,その右側に段差状に表れている正面シートの左側辺の端面部分に係るものであるから,共通する。 (1-3)両部分の形態 両部分の形態については,ともに正面視底部から開口部上端までの鉛直線で表れている正面シートの左側辺部の端面部分であるから,両部分の形態は,共通するものである。 (2)両意匠の相違点の認定 両部分の形態について,ポケット収納袋の横幅に対する縦幅(鉛直線で表れている正面シートの左側辺部の端面部分)の長さが相違している。 2.両意匠の共通点及び相違点の評価 (1)共通点の評価 上部を開口部とし,正面シートの左側辺部際を溶着して使用されるポケット式の収納袋において,背面シートの左端部(背表紙内側に溶着される端部)寄りに1枚厚の細幅帯状のたわみ代部(請求人がいうところのスリット部に相当する部分)を設け,その右側に段差状に表れている正面シートの左側辺の端面部分を正面視底部から開口部上端までの鉛直線で表した態様は,両部分を特徴付けるものであり,両部分の類否判断に及ぼす影響は大きい。 (2)相違点の評価 ポケット収納袋の横幅に対する縦幅(鉛直線で表れている正面シートの左側辺部の端面部分)の長さの相違は,単に縦横比の相違によるものであって,その相違も僅かなものであるから,両部分の類否判断に及ぼす影響は小さい。 なお,請求人は平成28年5月25日付けの意見書において,引用意匠について,「1枚のフィルムを全体的に2枚厚とし」と認定するとともに「溶着部の近傍にスリット部が形成されていない」と主張しているが,引用意匠も,前記のとおり,背面シートの左端部寄りに1枚厚の細幅帯状のたわみ代部(請求人がいうところのスリット部に相当する部分)を残したものであることは,引用意匠が表されている図(【図4】の(B))を見れば明らかであるから,請求人の当該認定及び主張は当を得ないものである。 また,請求人は,本願意匠のスリット部について,「スリットが形成されているので側部溶着部分の近傍が嵩張らない」,あるいは「本物品のポケットを多数枚重ね合わせ,ファイルの背表紙部の内側に溶着しても,見開きがフラットになる」ものであり,本願意匠においてはスリット等が特徴的な部分(要部)であると主張するが,当該スリット部は,意匠登録を受けようとする部分には含まれていない部分であり,また,引用意匠においても背面シートの左端部寄りに1枚厚の細幅帯状のたわみ代部が形成されており,2枚厚のものと比べれば嵩張らないものであるから,両部分の類否判断に影響を与えるものではなく,当該主張も採用することはできない。 3.両意匠の類否判断 上記のとおり,本願意匠と引用意匠を対比した場合,意匠に係る物品はもとより,両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲が一致するとともに,両部分の形態においても,その共通点の類否判断に及ぼす影響が相違点のそれを凌駕するものであり,看者に共通の美感を起こさせるものであるから,両部分の形態も類似する。したがって,本願意匠は,引用意匠に類似するものと認められる。 第4 むすび 以上のとおり,本願意匠は,引用意匠に類似する意匠であるから,意匠法第3条第1項第3号の意匠に該当するものであり,意匠登録を受けることができない。 したがって,この意匠登録出願は,拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
|
審決日 | 2016-07-19 |
出願番号 | 意願2014-20296(D2014-20296) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(F3)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 木本 直美 |
特許庁審判長 |
斉藤 孝恵 |
特許庁審判官 |
正田 毅 江塚 尚弘 |
登録日 | 2017-05-19 |
登録番号 | 意匠登録第1578621号(D1578621) |
代理人 | 岡田 全啓 |