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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H1 |
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管理番号 | 1327943 |
審判番号 | 不服2016-15760 |
総通号数 | 210 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2017-06-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-10-21 |
確定日 | 2017-03-31 |
意匠に係る物品 | コネクタ |
事件の表示 | 意願2015- 14451「コネクタ」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,平成27年(2015年)6月30日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品は「コネクタ」であり,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)は,願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりのものである。(別紙第1参照) 第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似する意匠)に該当するため,同条同項柱書の規定により意匠登録を受けることができないとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠(以下「引用意匠」といい,本願意匠と合わせて「両意匠」という。)は,本願の出願日よりも前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載され,又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった,下記の意匠である。 【引用意匠】(別紙第2参照) 特許庁意匠課が平成7年(1995年)3月3日に受け入れた, 日本航空電子工業株式会社が発行したカタログ 「1.27mmピッチ基板to基板コネクタ TX24/25シリーズ」(電波新聞1994,8,11 P6)第1頁に所載の 「多極コネクター」の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HN07006192号) 第3 当審の判断 1 両意匠の対比 (1)両意匠の意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は「コネクタ」であり,引用意匠に係る物品は「多極コネクター」であるが,いずれもアングルタイプの多極コネクタであるから,両意匠の意匠に係る物品は共通するものと認められる。 (2)両意匠の形態 両意匠の形態を対比する(以下,対比のため,本願意匠の図面における正面,平面等の向きを,引用意匠にもあてはめることとする。)と,主として,以下のとおりの共通点及び相違点が認められる。 まず,共通点として, (A)全体は,扁平な略直方体の背面側を略コの字状に切り欠いて形成した平面視略凹字状となる本体部(以下「ハウジング」という。)の正面側に,相手側コネクタが挿入されて接合するための開口部(以下「嵌合開口部」という。)を設け,ハウジングの背面側の切り欠き部分に,コネクタを基板に接続するための端子(以下「ターミナル」という。)を形成した構成からなるものであって, (B)嵌合開口部は,ハウジング正面側全面を切り欠いて略横向きの長方形枠体状に形成したものであって,この枠体内側の中央部分に,相手側コネクタとの接合端子(以下「コンタクト」という。)を配設した略横長長方形板状の突出部(以下「板状接合部」という。)を水平に一つ配設している点, (B-1)嵌合開口部の底面側左右端部付近に,浅い誤嵌合防止用の凹溝(以下「誤嵌合防止溝」という。)を左右1条ずつ形成している点, (C)ターミナルは,略L字状に折曲した端子で構成している点, が認められる。 他方,相違点として, (ア)ターミナルの態様について,本願意匠は,ハウジング背面側切り欠き部上方寄り部分に,上面に凹溝を櫛の歯状に形成した略横長長方形板(以下「ターミナル保持板」という。)を設け,背面側切り欠き部下端部に底面視横長長方形状の板体(以下「ターミナル貫通板」という。)を配設し,横幅の一定ではない略細幅板状のターミナルをターミナル保持板からターミナル貫通板に向かって折曲し,そのターミナル先端部がハウジング底面側に直線状に突き抜けるもの20本と,ターミナル先端部がハウジング底面側にクランク状に折曲してから突き抜けるもの20本を交互に配設しているのに対して,引用意匠は,ハウジング背面部からハウジング底面部に向かって折曲した,長いターミナル25本と,短いターミナル25本を交互に配設している点, (イ)底面部の端子の態様について,本願意匠は,ターミナル貫通板から突き出た20個の端子部先端部分を等間隔に横一列に配してなる列を,各端子の貫通位置を半ピッチずらした配置態様となるように4列形成し,この端子部からなる列の間に4または5つの横長長方形状スリットからなる列を3列形成しているのに対して,引用意匠は,その背面側及び底面側を表した図面がなく,これらの形態が不明である点, (ウ)ハウジング左右端部の背面部から底面部に掛けて形成された切り欠き部の態様について,本願意匠は,背面へ突出したハウジング左右端部の背面部から底面部にかけて略L字状の切り欠き部(以下「ハウジング端部切り欠き部」という。)を形成し,このハウジング端部切り欠き部背面側左右中央部分に略長方形板状の突出片を一つずつ設け,ハウジング端部切り欠き部底面側のスリット部分に,向かい合う一対の略逆P字状の固定用ツメ部(以下「ランス」という。)を一組ずつ配設しているのに対して,引用意匠は,その背面側及び底面側を表した図面がなく,これらの形態が不明である点, (エ)嵌合開口部の枠体内側の上面側左右端部付近の誤嵌合防止溝の有無について,本願意匠は,該部位に浅い誤嵌合防止溝を左右1条ずつ形成しているのに対して,引用意匠は,その部位を表した図面がなく,該部位の形態が不明である点, (オ)板状接合部に形成されたコンタクトの端子数について,本願意匠は該部位の上面及び下面部分にそれぞれ40本形成しているのに対して,引用意匠は,その部位を明確に表した図面がなく,該部位の端子数が不明である点, が認められる。 2.両意匠の形態の評価 以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価する。 (1)共通点について まず,共通点(A)の全体の態様は,基板取り付け型のコネクタの分野において,本願意匠の出願前に既に見られるもの(例えば,参考意匠1:2015年3月17日発行の米国特許商標公報に記載された,登録番号US D724541Sに表されている「電気コネクタ」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HH27304191号),別紙第3参照)であるから,この共通点(A)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。 次に,共通点(B)の嵌合開口部の態様は,コネクタの分野において,嵌合開口部中央部分に板状接合部を形成したものは,蛇腹形状の端子を有するコンタクト(ベローズコンタクト)のメス端子の形態として既に見られるものであるから,この共通点(B)が両意匠の類否判断に及ぼす影響も小さい。 また,共通点(C)のターミナルの態様は,この種物品において,コネクタを基板取り付ける際,相手側コネクタとの嵌合面が基板と垂直となるように配設されるコネクタ(ライトアングルコネクタ)の形態として極普通に見られるものであるから,この共通点(C)が両意匠の類否判断に及ぼす影響も小さい。 一方,(B-1)の誤嵌合防止溝の態様は,使用時には隠れる嵌合開口部内側の小さな部位であるが,相手側コネクタと嵌合する際に需要者が注視する部分であるから,この共通点(B-1)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度認められるものである。 そして,これらの共通点(A),共通点(B),及び共通点(C)によって生じる視覚的効果は,共通点(B-1)の視覚的効果を考慮したとしても,共通点全体としてみた場合には,類否判断に及ぼす影響が小さいから,これらの共通点のみでは両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。 (2)相違点について 引用意匠における,相違点(イ)の底面側の端子の態様,相違点(ウ)のハウジング端部切り欠き部の態様,相違点(エ)の嵌合開口部枠体内側の上面側左右端部付近の誤嵌合防止溝の有無,及び相違点(オ)の板状接合部に形成されたコンタクトの端子数については,引用意匠にその部位を明確に表した図面がなく,その形態及び数が不明であるため,それらが与える印象の相違も明らかではないが,これらの部位がコネクタを基板に取り付けた使用時には隠れる点を加味すると,上記の相違点(イ)ないし(オ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,あるとしても一定程度であると認められる。 しかしながら,相違点(ア)のターミナルの態様については,略細幅板状のターミナルを,ターミナル保持部からターミナル貫通板に向かって横一列に並設し,ターミナル貫通板に貫通する際に分離して配設することで,ハウジング背面側に一体的にまとまったターミナルを形成しているとの印象を与える本願意匠の態様と,ハウジング背面部からハウジング底面部に向かって長短2種類の折曲したターミナルがばらばらに突き出て配設され,雑多な印象を与える引用意匠の態様とは,背面側斜め上方から見た場合は特に,看者に対し別異な印象を与えるものであるから,この相違点(ア)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きく,意匠全体として見たとしても,両意匠の類否判断を決定付けるほどのものであるといえる。 3.両意匠の類否判断 両意匠の意匠に係る物品の対比及び形態の評価を踏まえ,本願意匠と引用意匠が類似するか否か,すなわち両意匠の類似性について考察する。 上記のとおり,両意匠は,意匠に係る物品について共通し,形態については,上記2(1)のとおり,共通点(B-1)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度認められるものの,共通点全体としては両意匠の類否判断を決定付けるとまでは至らないものであるのに対して,上記2(2)のとおり,相違点(ア)が両意匠の類否判断に及ぼす影響が大きく,相違点全体として両意匠の類否判断を決定付けているといえる。 したがって,意匠全体として見た場合,相違点の印象は,共通点の印象を凌駕(りょうが)し,両意匠は,視覚的印象を異にするというべきであるから,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。 第4 むすび 以上のとおりであるから,原査定の引用意匠をもって,本願意匠を意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,本願については,原査定の拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2017-03-15 |
出願番号 | 意願2015-14451(D2015-14451) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(H1)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 清水 玲香 |
特許庁審判長 |
斉藤 孝恵 |
特許庁審判官 |
江塚 尚弘 神谷 由紀 |
登録日 | 2017-04-28 |
登録番号 | 意匠登録第1577415号(D1577415) |
代理人 | 海田 浩明 |