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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 M0
管理番号 1327959 
審判番号 不服2016-16798
総通号数 210 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2017-06-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-11-09 
確定日 2017-05-16 
意匠に係る物品 鍛造加工用ブランク材 
事件の表示 意願2015- 19618「鍛造加工用ブランク材」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠

本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成27年(2015年)9月3日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「鍛造加工用ブランク材」(平成29年4月4日に手続補正書にて「プレス形成された鍛造加工用素材」から補正)とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって,「各図において部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を実線で,それ以外の部分を破線で表した。一点鎖線は,意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界線を示す線である。」(以下,本願において,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」という。)としたものである。(別紙第1参照)

第2 原査定の拒絶の理由及び引用意匠

本願に対する原査定の拒絶の理由は,本願意匠は,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するというものであって,具体的には,以下のとおりである。

この意匠登録出願の意匠は,意匠に係る物品を「プレス形成された鍛造加工用素材」(当審注:拒絶理由通知時の「意匠に係る物品」の欄の記載内容)とするものであって,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を,稜角部にアールを施した大略円柱状材の中間部を除く周側面及び両端面部からなる部分とするものです。
この種物品分野において,鍛造成型工程における途中素材として,円柱状材の周側面端部寄りに僅かな傾斜角を施して表すこと(※1),稜角部にアールを施して表すこと(※2)は,この出願前より公然知られているところ,本願意匠は,周知の円柱状材に,上記,この種物品分野において公然知られた態様を当業者にとってありふれた手法で組み合わせて,中間部を除く周側面及び両端面部を意匠登録を受けようとする部分とした程度に過ぎず,容易に創作をすることができたものと認められます。

※1(当審注:別紙第2参照)
特許庁発行の公開特許公報記載
特開2008-296694号
【図10】(b)に表れた途中素材の周側面端面部寄りの傾斜角態様

※2(当審注:別紙第3参照)
特許庁発行の公開特許公報記載
特開2012-055951号
【図2】中央図に「ワーク」として表れた途中素材の稜角部に表れたアール態様

第3 請求人の主張の要旨

証拠方法に示す先行意匠1は,上記途中素材であって,本願意匠の要部であるアール及び傾斜角は,一方の端部のみに表れた鍛造品であり,一方の端部(下面側)にはアール及び傾斜角が表れているが,他方の端部(上面側)にはアール及び傾斜角が表れていないものである。
また,証拠方法に示す先行意匠2は,両端部の側面に傾斜角は無く,両端面は本願のような広い平坦部で占める凹状面が無くて,逆に中心に向かって凸状の傾斜面,即ち低い凸状円錐面を形成しているものである。
これに対し,本願意匠は,途中素材ではなく製品であって,要部であるアール及び傾斜角が,両方の端部と側面に表れている。
そして,先行意匠と本願意匠とを対比すると,要部であるアール及び傾斜角が,一方の端部のみに表れているか,両方の端部に表れているかで,素材としての汎用性と共に,美観が大きく異なるものである。
以上に述べたように,本願意匠は,当業者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものではなく,意匠登録を受けるべきものである。

第4 当審の判断

請求人の主張を踏まえ,本願意匠が,当業者であれば,容易にその意匠の創作をすることができたものか否かについて,以下検討する。

1.本願意匠
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は,「鍛造加工用ブランク材」である。

2.本願部分
(1)部分意匠としての用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲
本願部分の用途及び機能は,意匠に係る物品の説明欄の記載によると,鍛造製品を製造するために用いられる素材であって,稜角部にアールを施し,外周面両端部分を傾斜面に成形することで,素材同士の衝突による傷や,搬送器具装置との衝突による自身の傷を防止でき,熱間鍛造で鍛造製品を製造しても,稜角部に集中して発生する酸化鉄の層が残った欠陥のある鍛造製品とならないとされるものである。
また,部分意匠としての位置,大きさ及び範囲は,略円柱形状の鍛造加工用ブランク材における中間部を除いた両端部分である。

(2)形態
本願部分の形態は,正面視において横に倒れた略円筒形状の中間部を除いた両端部分であって,その両端部分の略円筒形外周面の端部寄りの部分から端部にかけてテーパーを形成し,稜角部にアールを施したものである。

2.本願意匠の創作容易性の判断

本願意匠に係る物品は,鍛造加工を行うために,鋸切断機又は剪断切断機により,棒状素材を所定の長さに切断した鍛造加工用ブランク材であるが,この物品分野において,全体形状を略円筒形状とし,その稜角部にアールを施すことについては,本願出願前より既に行われているものであるから(例えば,参考意匠:インターネットアーカイブ Wayback Machine(情報のアドレス:http://archive.org/web/)で記録,提供されている情報によると,2013年10月15日に,株式会社万陽が運営しているウェブサイト「MANYO SINCE 1953」の「製品情報 面取り機」で公開された,情報のアドレス:http://www.manyo.com/product/och.htmlに掲載された「鍛造用切断ビレット(「シャー切断」と記載された写真中,前列中央部分のもの)」の意匠,別紙第4参照),特段の創作力なく当業者が容易に創作することができたといえる。

しかしながら,その後に熱間鍛造,冷間鍛造等の加工を施す素材に対して,素材の段階でその外周面にわざわざテーパーを形成することは,この鍛造加工用ブランク材の分野において見られない本願部分独自のものであり,この態様は当業者であれば加えるであろう程度の変形によるものとはいえず,また,その意匠の属する分野において常套的な変更によるものともいえないため,本願部分の当該形態を創作するにあたり,ありふれた手法により創作されたものであると認めることはできない。

なお,原審拒絶の理由において,鍛造成型工程における途中素材として,公開特許公報記載の特開2008-296694号の【図10】(b)に表れた途中素材の周側面端面部寄りの傾斜角態様を示して,外周面にテーパーを形成することが,この出願前より公然知られているとしているが,この態様は軸部素材に対して据え込み加工を行ったため,素材が圧縮されて膨らんだ状態の態様を表したもの(特開2008-296694号の【0049】の記載参照)であって,テーパーを形成したことによるものではないため,この例示をもって外周面にテーパーを形成することが,この種物品分野において,本願意匠の出願前より公然知られているとすることはできないものである。
したがって,本願意匠は,当業者が公然知られた形態に基づいて容易に創作することができたということはできない。

第5 むすび

以上のとおりであるから,本願意匠は,意匠法第3条第2項の規定に該当しないので,本願については,原審の拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。

別掲
審決日 2017-04-26 
出願番号 意願2015-19618(D2015-19618) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (M0)
最終処分 成立  
前審関与審査官 木村 恭子 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 橘 崇生
江塚 尚弘
登録日 2017-05-26 
登録番号 意匠登録第1579355号(D1579355) 
代理人 山田 勉 
代理人 富崎 元成 

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