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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 L4
管理番号 1329140 
審判番号 不服2017-403
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-01-12 
確定日 2017-04-27 
意匠に係る物品 建物用扉 
事件の表示 意願2015-16822「建物用扉」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,平成27年(2015年)7月29日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「建物用扉」とし,形態を願書の記載及び願書に添付した図面に表されたとおりとしたものであって,願書の【意匠の説明】によれば,「左側面図は右側面図と同一に,背面図は正面図と対称にあらわれる。透光部分を示す参考正面図において薄墨部分は透光性を有する。」というものである。(別紙第1参照)
そして,本願意匠の形態について,主に以下の点を認めることができる。

形態A:正面視縦長長方形板状の扉の右寄りで,扉の横幅を略3:1に内分する位置に,略正方形状の同形同大の透光窓が4つ縦に並べて設けられている点。
形態B:透光窓の縦幅は,扉の縦幅の略1/14であり,扉の縦幅を透光窓の縦幅で14分割した中で,透光窓は,上から2番目,4番目,6番目及び12番目の位置に配されており,一番下の透光窓(12番目の位置の透光窓)は,2つ分の位置(8番目及び10番目の位置)を飛ばすように配置されている点。
形態C:透光窓は,扉の厚み方向の略中央に設けられ,窓の周囲に縁部が設けられている点。

第2 原査定における拒絶の理由
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するというものであって,具体的な理由及び引用された意匠は,以下のとおりである。

(1)原査定における具体的な理由
本願意匠は建物用扉に係るものであり,正面視縦長方形板状の扉板の右端寄りに上方に3つ,その下に距離をおいて,扉下端寄りに1つ,枠材で囲まれた略正方形状の透光部を縦一列に設け,背面側は,正面側と対称となるように構成されたものである。
この種物品分野では,扉体に透光部,通風口及びプレート状体など略正方形状の構成物を縦一列に配置する際に,扉上方に複数の略正方形状の構成物を寄せて等間隔に配置し,その下に若干の距離をおいて,扉下端寄りに1つ配置する手法が本願出願前よりすでに行われている(意匠1乃至意匠4)。また,扉板の右端寄りに複数の略正方形状の透光部を縦一列に配置したものも本願出願前より公然知られている(意匠5乃至意匠8)。その中には,4つの透光部を設けたものもあり(意匠5及び意匠6),透光部を枠材で囲ったものも見られる(意匠5,意匠7,意匠8)。
そうすると,本願意匠は,意匠5及び意匠6に見られる,扉板の右端寄りに4つの略正方形状の透光部を縦一列に配置した扉の透光部のうち,特に透光部を枠材で囲ったものを意匠1ないし意匠4の手法をもとにして,上3つを寄せて等間隔に配置し,その下に若干の距離をおいて,扉下端寄りに1つ配置する手法を用いて創作したに過ぎない。また,扉表面の透光部以外の部分であるが,本願意匠は,装飾等を配さない平坦なものであり,意匠5及び意匠6の該部の態様とは異なるが,当該物品分野においては,本願意匠の該部のような平坦な態様をしたものは,例を挙げるまでもなく一般的に見られるので,この種の扉板を用いることも当業者にとっては格別困難であるとは言えない。
したがって,本願意匠は,当業者にとって容易に創作できたものと認められる。

(2)原査定において引用された意匠
意匠1(別紙第2参照)
特許庁意匠課が2001年6月29日に受け入れた
IDEEENBOEK
第32頁所載
建物用枠付きドアの意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HD13023448号)
のうち扉板の意匠
意匠2(別紙第3参照)
特許庁総合情報館が1998年9月10日に受け入れた
ドイツ意匠公報 1998年7月25日
第2674頁所載
ドアの意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HH11062662号)
のうち扉板の意匠
意匠3(別紙第4参照)
特許庁特許情報課が2002年1月17日に受け入れた
ドイツ意匠公報 2001年11月25日
第5371頁所載
建物用枠付き戸の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HH14005641号)
のうち扉板の意匠
意匠4(別紙第5参照)
特許庁意匠課が1996年12月19日に受け入れた
中低層ビル用建材総合カタログ
(日刊工業新聞8.6.18P21)1996年 8月10日
第396頁所載
建物用枠付き戸の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HN09004634号)
のうち扉板の意匠
意匠5(別紙第6参照)
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1358239号の意匠
意匠6(別紙第7参照)
特許庁意匠課が2004年7月23日に受け入れた
断熱玄関ドア プロミューズ
(フジサンケイビジネスアイ H16.4.8 P26 写真有り)
第29頁所載
建物用枠付き戸の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HC16037694号)
のうち扉板の意匠
意匠7(別紙第8参照)
独立行政法人工業所有権情報・研修館が2007年1月12日に
受け入れた
木製断熱ドア Superior スペリオル
第5頁所載
枠付きドアの意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HC18060930号)
のうち扉板の意匠
意匠8(別紙第9参照)
特許庁特許情報課が2001年8月9日に受け入れた
ドイツ意匠公報 2001年7月10日
第3164頁所載
建物用枠付き戸の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HH13046852号)
のうち扉板の意匠

第3 当審の判断
本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性,すなわち本願意匠が容易に創作することができたか否かについて,検討し,判断する。

1.原査定において引用された意匠の形態について
原査定において引用された意匠1ないし意匠8の形態について,主に以下の点を認めることができる。

(1)意匠1の形態
形態1A:正面視縦長長方形板状の扉の中央に,略正方形状の同形同大の凹凸模様部が4つ縦に並べて設けられている点。
形態1B:凹凸模様部の縦幅は,扉の縦幅の略1/19であり,扉の縦幅を凹凸模様部の縦幅で19分割した中で,凹凸模様部は,上から4番目,7番目,10番目及び16番目の位置に配されており,一番下の凹凸模様部(16番目の位置の凹凸模様部)は,1つ分の位置(13番目の位置)を飛ばすように配置されている点。
形態1C:扉の上下左右の縁には框が設けられ,上から三番目と四番目の凹凸模様部の間にも中框が設けられている点。

(2)意匠2の形態
形態2A:正面視縦長長方形板状の扉の中央に,略正方形状の同形同大の透光窓が3つ縦に並べて設けられている点。
形態2B:透光窓の縦幅は,扉の縦幅の略1/11であり,扉の縦幅を透光窓の縦幅で11分割した中で,透光窓は,上から3番目,5番目及び9番目の位置に配されており,一番下の透光窓(9番目の位置の透光窓)は,1つ分の位置(7番目の位置)を飛ばすように配置されている点。
形態2C:扉の上下左右の縁には框が設けられている点。

(3)意匠3の形態
形態3A:正面視縦長長方形板状の扉の中央に,略正方形状の同形同大の透光窓が5つ縦に並べて設けられている点。
形態3B:透光窓の縦幅は,扉の縦幅の略1/16であり,扉の縦幅を透光窓の縦幅で16分割した中で,透光窓は,上から4番目,8番目及び12番目の位置に配され,さらに,4番目と8番目の位置の透光窓の間に,透光窓の縦幅の略1/2に相当する等間隔で2つの透光窓が配置されており,一番下の透光窓(12番目の位置の透光窓)は,2つ分の透光窓を飛ばすように配置されている点。
形態3C:扉の上下左右の縁には框が設けられている点。
形態3D:透光窓の左右には,縦直線状の飾り部が設けられている点。

(4)意匠4の形態
形態4A:正面視縦長長方形板状の扉の中央に,略正方形状の同形同大の透光窓が3つ縦に並べて設けられている点。
形態4B:透光窓の縦幅は,扉の縦幅の略1/24であり,扉の縦幅を透光窓の縦幅で24分割した中で,透光窓は,上から2番目及び21番目の位置に配され,さらに,一番上の透光窓(2番目の位置の透光窓)の下に,透光窓の縦幅の略1/2に相当する間隔で透光窓が配置されている点。
形態4C:上から二番目の透光窓と一番下の透光窓の間を,上から略1:4に内分する位置にのぞき窓が設けられている点。

(5)意匠5の形態
形態5A:正面視縦長長方形板状の扉の右寄りで,扉の横幅を略3:1に内分する位置に,略正方形状の同形同大の透光窓が4つ縦に並べて設けられている点。
形態5B:扉正面には,透光窓の縦幅と略等しい間隔で,横線模様が13本設けられ,それによって扉の縦幅を透光窓の縦幅で14分割した中で,透光窓は,上から2番目,5番目,8番目及び11番目の横線模様にまたがるように配されている点。
形態5C:透光窓は,扉の厚み方向の略中央に二重に設けられ,窓の周囲に縁部が設けられている点。

(6)意匠6の形態
形態6A:正面視縦長長方形板状の扉の右寄りで,扉の横幅を略7:3に内分する位置に,略正方形状の同形同大の透光窓が4つ縦に並べて設けられている点。
形態6B:透光窓の縦幅は,扉の縦幅の略1/21であり,扉の縦幅を透光窓の縦幅で21分割した中で,透光窓は,上から3番目,5番目,7番目及び9番目の位置に配されている点。
形態6C:扉の右寄りには,透光窓の横幅の略3倍の横幅の薄い凸条帯部が上下端にわたって設けられ,凸条帯部には,透光窓の横幅と同じ間隔を空けて,2本のごく浅い凹溝が上下端にわたって設けられており,凹溝の間に透光窓が配置されている点。

(7)意匠7の形態
形態7A:正面視縦長長方形板状の扉の右寄りで,扉の横幅を略3:1に内分する位置に,略正方形状の同形同大の透光窓が3つ縦に並べて設けられている点。
形態7B:扉正面は,透光窓の縦幅と略等しい縦幅で同形同大の17枚の板材が,上下にはめ合わされて構成されており,それによって扉の縦幅を透光窓の縦幅で17分割した中で,透光窓は,上から3番目,5番目及び7番目の位置に配されている点。
形態7C:透光窓の周囲に縁部が設けられている点。

(8)意匠8の形態
形態8A:正面視縦長長方形板状の扉の右寄りで,扉の横幅を略7:2に内分する位置に,略正方形状の同形同大の透光窓が5つ縦に並べて設けられている点。
形態8B:透光窓の縦幅は,扉の縦幅の略1/12であり,扉の縦幅を透光窓の縦幅で12分割した中で,透光窓は,上から2番目,4番目,6番目,8番目及び10番目の位置に配されている点。
形態8C:透光窓の周囲に縁部が設けられている点。

2.本願意匠の創作容易性について
本願意匠の形態は,上記第1に示すとおりであるところ,本願意匠の形態Aのうちで,正面視縦長長方形板状の扉の右寄りで,扉の幅を略3:1に内分する位置に,略正方形状の同形同大の複数の透光窓を縦に並べて設ける形態は,意匠5及び意匠7に見られるように公知であるし,透光窓の数を4つとすることも意匠5及び意匠6に見られるように公知であるから,本願意匠の形態Aは,これらの公知の形態に基づいて,当業者が容易に創作できたものということができる。
しかし,本願意匠の形態B,すなわち透光窓の縦幅が,扉の縦幅の略1/14であり,扉の縦幅を透光窓の縦幅で14分割した中で,透光窓は,上から2番目,4番目,6番目及び12番目の位置に配されており,一番下の透光窓(12番目の位置の透光窓)は,2つ分の位置(8番目及び10番目の位置)を飛ばすように配置されている点は,本願意匠の特徴的な形態というべきである。具体的には,一番上の透光窓と扉上端の間隔が,透光窓の縦幅1つ分であり,一番下の透光窓と扉下端の間隔が,透光窓の縦幅2つ分であり,上から3つの透光窓は,等間隔に配置され,その間隔は透光窓の縦幅1つ分であって,一番下の透光窓は,等間隔に配置した際の透光窓2つ分を飛ばした位置に配置した形態であるところ,このような,4つの透光窓の配置が,大きく均整を崩したようでありながらも,いずれもその縦幅の整数倍の位置に配置されているという規則性が見て取れる形態は,意匠1ないし意匠8に照らしても,当業者が容易に創作することができたものということはできない。
したがって,本願意匠は,当業者が容易に創作することができたものであるということはできない。

第4 むすび
以上のとおりであって,本願意匠は,意匠法第3条第2項が規定する,意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内において公然知られた形状の結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものに該当しないので,原査定の拒絶の理由によって本願の登録を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2017-04-17 
出願番号 意願2015-16822(D2015-16822) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (L4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 住 康平 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 渡邉 久美
刈間 宏信
登録日 2017-06-02 
登録番号 意匠登録第1579778号(D1579778) 

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