• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 E3
管理番号 1332297 
審判番号 不服2017-299
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2017-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-01-10 
確定日 2017-08-22 
意匠に係る物品 身体鍛錬器具 
事件の表示 意願2015- 27332「身体鍛錬器具」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,2015年9月30日の台湾への出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う,平成27年(2015年)12月7日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「身体鍛錬器具」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)は,願書及び願書に添付した図面に記載したとおりとしたものである。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることのできない意匠)に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠(以下,「引用意匠」といい,本願意匠と合わせて,両意匠という。)は,特許庁が平成25年(2013年)10月3日に発行した登録実用新案公報掲載の実用新案登録第3186421号に記載され【図5】に表された「フィットネス機器」の意匠である。(別紙第2参照)

第3 当審の判断
1.本願意匠と引用意匠の対比
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は,「身体鍛錬器具」であり,引用意匠の意匠に係る物品は,「フィットネス機器」であって,共に,身体を運動させるために使用する機器であるから共通する。
(2)形態
両意匠の形態を対比すると,主として,以下の共通点と差異点が認められる。
なお,対比のため,本願意匠の図面における正面,平面等の向きを,引用意匠にもあてはめることとする。
(2-1)共通点
基本的構成態様として,
(A)全体は,クッション部を備えた座面部とフレーム部及びグリップ部を備えた左右1組の揺動アーム部(以下,「アーム部」という。)からなり,
(B)座面部左右脇に沿って略直線状にフレーム部が設けられ,ブラケット部を介して斜め上(後)方へと延びるアーム部と接続され,側面視で略倒V字状をなす構成とした点,
具体的構成態様として,
(C)略板状の座面部上に略円板状のクッション部を設けている点,
(D)アーム部は湾曲してなり,アーム部先端内方には,軸棒が貫通した略円柱状グリップ部が座面部と水平に設けられ,正面視で左右のグリップ部間の隙間は僅かである点,
(E)フレーム部は座面部脇半ばより後方に突出して設けられ,その先端には,短い被覆部とねじ状の調節つまみ部が設けられている点,
が共通している。
(2-2)相違点
具体的構成態様として,
(ア)座面部について本願意匠が前方の角部を大きい隅丸とした略正方形板状体であり,その縦横比率は,約7:8であるのに対し,引用意匠は,前方は,一律な円弧状に突出し,後方も内方へ僅かに弧を描いてなる略蒲鉾型板状体であって,その縦横比率は,約3:4である点,
(イ)ブラケット部の態様について,本願意匠は,側面視略扇型で前方が覆われ,稜部が丸みを帯びたケース状であり,内方に小円板状凸部はあるものの螺子部等は外部から見られず,後側を経て両側面に表れる側面視略長方形状の凹部を配したものであり,丸みのあるソフトな印象を与えるのに対し,引用意匠は略扇型2枚の板状体でフレーム部を挟む底部でつながった略倒コの状であって,アーム部を留めつける螺子部が内方及び外方から観察でき,側方に凹部などはない態様であり,シャープな印象を与える点,
(ウ)アーム部及びフレーム部の構成材の形状について,本願意匠は,内方が平坦で外方が丸みをもって形成された略D字状の棒材からなるものであるのに対し,引用意匠は,略矩形状の棒材で構成されている点,
(エ)アーム部の湾曲態様について,本願意匠は均一に緩やかな弧を描いて湾曲しているのに対し,引用意匠は,ブラケット部寄り半ばまでが強めの弧を描いて湾曲し,その余はほぼ直線状に斜め上方へと延びている点
(オ)グリップ部について,本願意匠は,略円柱形状で周側面の両端寄りに2本ずつ線状凹溝を配しているのに対し,引用意匠は,略円柱形状でアーム側から先端に向かって先細りするように周側面にごく僅かにテーパーが施されて形成されており,凹溝部などはないものである点,
(カ)フレーム部は後端にフレーム外形状に沿った短い被覆部とねじ状の調節つまみ部とを設け,本願意匠の被覆部は,内方に長く外方に短い前方が斜めに切削されたような縁部の略筒状に形成され,後端部のねじ状の調節つまみ部の頭部は略三角柱状であるのに対し,引用意匠の被覆部は,上方に長く下方は短い側面視で段状の縁部とする略筒状に形成され,ねじ状の調節つまみ部の頭部は大きな凹溝が複数本周囲に形成された略円錐台状である点,
で相違している。

2.両意匠の類否
以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価・総合して,両意匠の意匠全体としての類否を検討し,判断する。
両意匠は,意匠に係る物品が共通するが,形態については,以下のとおりである。
(1)共通点の評価
基本的構成態様としてあげた共通点(A)は,両意匠の形態を概括的に捉えた場合の共通点にすぎないものであるから,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を大きいということはできない。次に,共通点(B)も,この種身体鍛錬器具の分野においては,側面視で略倒V字状をなす構成とした態様は,よく見受けられることから,この点が,看者の注意を惹くものとはいえず,また,具体的構成態様としてあげた共通点(C)は,略板状の座面部上に略円板状のクッション部を設けている点については共通するものの,この点が両意匠にのみ共通する特徴であるとはいえず,そして,共通点(D)のアーム部が湾曲し,アーム部先端内方には,軸棒が貫通した略円柱状グリップ部が座面部と水平に設けられ,正面視で左右のグリップ部間の隙間が僅かである点も,共通点(E)のフレーム部は座面部より後方に突出して設けられ,その先端には,ねじ状の調節つまみ部が設けられている点も,座面に座り,グリップ部を押し倒して身体を鍛えるこの種身体鍛錬器具の分野においては,いずれもありふれた態様であって,これらの点が両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
よって,共通点(A)ないし(E)の両意匠の類否判断に及ぼす影響は共に小さく,共通点全体があいまって生ずる効果を考慮したとしても,両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。
(2)相違点の評価
これに対して,両意匠の具体的構成態様に係る各相違点は,相違点(ア)については,構成部品として最も大きな範囲を占める座面部についての具体的な形状の差異であって,構成比率もあいまって,全体のプロポーションにかかるものであるから,この点が類否判断に与える影響は大きい。
次に(イ)のブラケット部の具体的形状について,部分的相違ではあるが,アーム部とフレーム部の接続に関わる部位の具体的形状の相違であり,回動するアーム部の支点ともなる箇所で,側面視においては,目立つ箇所でもあって,看者も一定の注意を払うところでもあるから,両意匠の印象に関わり,この相違点の類否判断に与える影響は大きい。
また,相違点(ウ)については,フレーム部とアーム部の構成材の具体的形状に係り,略D字状の棒材から構成されているものか略矩形状の棒材で構成されているものかの相違は,全体の形状の印象に大きく関わり,その印象を異にするものであって,この点が類否判断に与える影響は大きいといえる。
そして,相違点(エ)のアーム部の湾曲態様の相違は,上記(ウ)ともあいまってアーム部の形状の印象に関わり,類否判断に一定の影響を与えるものである。
さらに,(オ)のグリップ部の形態の相違については,線状凹溝部の有無のみならず,グリップ部のテーパーの有無も併せて対比すると部分的相違ではあるが,類否判断に一定の影響を与えるといわざるを得ない。
加えて,(カ)については部分的相違であって,使用時においては観察し難いフレーム部後端部における形状の相違であるが,被覆部は,縁部の態様及びフレーム構成材の形状の相違からくる被覆部全体の形状が相違し,調節つまみ部の頭部の形状も三角柱状と大きな凹溝が複数本周囲に形成された略円錐台状では,全く相違するから,これらの相違は,類否判断に一定の影響を与えるものである。
そうすると,(ア)ないし(ウ)が類否判断に与える影響は大きく,(エ)ないし(カ)についても類否判断に一定の影響を与えるものであるから,それら相違点(ア)ないし(カ)があいまった視覚的効果も考慮して総合すると,相違点は,共通点を凌駕して,両意匠を別異のものと印象づけるものであるから本願意匠が引用意匠に類似するということはできない。
(3)小括
したがって,両意匠は,意匠に係る物品は,共通し,形態においては,共通点が未だ両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は共通点のそれを凌駕しており,両意匠は,意匠全体として別異のものと印象付けるものであるから,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。

第4 むすび
以上のとおりであって,原査定の引用意匠をもって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,原査定の拒絶の理由によって,本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2017-08-10 
出願番号 意願2015-27332(D2015-27332) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (E3)
最終処分 成立  
前審関与審査官 桐野 あい 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 正田 毅
渡邉 久美
登録日 2017-09-22 
登録番号 意匠登録第1588247号(D1588247) 
代理人 服部 雅紀 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ