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審決分類 |
審判 査定不服 意9条先願 取り消して登録 L6 |
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管理番号 | 1332303 |
審判番号 | 不服2017-4365 |
総通号数 | 214 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2017-10-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-03-28 |
確定日 | 2017-09-07 |
意匠に係る物品 | 建築用壁板 |
事件の表示 | 意願2016- 14429「建築用壁板」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,平成28年(2016年)7月6日に出願されたものであって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付された図面代用写真によれば,意匠に係る物品を「建築用壁板」とし,その形状,模様若しくは色彩又はそれらの結合(以下,「形態」という。)を願書に添付された図面代用写真に現されたとおりとしたものであって,「正面図において左右に連続するものである。本物品の大きさは,正面図において,縦約47cm,横約89cmである。」としたものである(別紙第1参照)。 第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,意匠法第9条第1項の規定する最先の意匠登録出願人に係る意匠に該当しないとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠(以下,「引用意匠」といい,本願意匠と合わせて,両意匠という。)は,平成27年(2015年)10月15日に出願され,特許庁が平成28(2016)年8月22日に発行した意匠公報に掲載された意匠登録第1556889号(意願2015-22808)の「壁板」の意匠であって,その形態は,同公報に掲載されたとおりのものである。(別紙第2参照)。 第3 当審の判断 1.本願意匠と引用意匠の対比 (1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は,「建築用壁板」であり,引用意匠の意匠に係る物品は,「壁板」であって,両意匠の意匠に係る物品は,表記は相違するものの,共に建築物の壁面の装飾に用いられる壁板であるから両意匠にかかる物品は共通する。 (2)形態 両意匠の形態を対比すると,主として,以下の共通点と差異点が認められる。 (2-1)共通点 基本的構成態様として, (A)両意匠は,全体が略横長矩形状板体であって,正面には横方向に伸びる直線状溝部を等間隔に複数本形成し,それらの各溝部の間の表面を木目模様とし,いわゆる等幅の長尺板材を短手方向にほぼ隙間無く並べて配したような形態とした点 具体的構成態様として, (B)略横長矩形状板体の上端には正面側,下端には背面側に「建築用壁板」として他の壁板体と組み合わせるためのごく細幅の段状部を設け,正面視,表面は,横方向に伸びる直線状溝部を3本,等間隔に配し,等幅の長尺板材を短手方向にほぼ隙間無く4段並べて配したような形態である点, (C)正面視,表面随所に,木目模様以外にのこぎりで挽いた際に生じる斜線状の鋸目模様が施されている点。 (D)正面視,表面の色彩を,色むらのある茶系統色としたものである点, が共通している。 (2-2)相違点 具体的構成態様として, (ア)全体の縦横奥行き比率について,本願意匠は,(図面上は約3:5.5:0.1であるものの)左右に連続するものであるから,横方向の長さは限度なく長く,縦横奥行き比率は示すことができず,縦奥行き比率は約3:0.1であるのに対し,引用意匠の縦横奥行き比率は,約3:20:0.1である点, (イ)正面の溝部について本願意匠は,横方向に伸びる直線状溝部のみであるのに対し,引用意匠は,定尺材を横方向に並べ配した際の継ぎ目に相当する細い縦溝部が複数施され,その位置は,上から1段目は,横方向長さの左から約4分の1と約3分の2の位置,2段目は約8分の1と約9分の5とほぼ右端,3段目は約11分4と約9分の7,4段目は約21分の1,約2分の1及び約11分の10の位置であって,上下の段で異なる横方向位置に施されている点, (ウ)各段正面に施された鋸目模様は,本願意匠が,上から1段目は主に上方から正面視右方に向けて斜線状に,2段目は上方から左方へ斜線状に,3段目は下方から左向けて斜線状に,複数本の鋸目が施され,4段目は,上方から左方へ斜線状に施され,右斜線状と左斜線状の鋸目模様が各段交互に表されて3段目のみ下方から施されている。これに対して,引用意匠は1段目は下方から左方及び右方に向けて斜線状に表され,斜線状の鋸目模様同士が交差している部分もあり,2段目は上方及び下方から右方に向けて斜線状に,3段目は主に下方から右方に向けて斜線状に,4段目は主に下方から左方に向けて斜線状に,一部上方から右方又は左方へ斜線状に表され,複数本の斜線状の鋸目模様が交差している部分もあり,部分的に複数方向からの斜線状の鋸目模様が存在し,鋸目模様同士が交差している箇所がランダムに見受けられる点。 (エ)全体の色調が本願意匠は明るい茶色であるのに対して,引用意匠は,暗い茶色である点, で相違している。 2.両意匠の類否 以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価・総合して,両意匠の意匠全体としての類否を検討し,判断する。 両意匠は,意匠に係る物品が共通するが,形態については,以下のとおりである。 (1)共通点の評価 基本的構成態様としてあげた共通点(A)は,両意匠の形態を概括的に捉えた場合の共通点にすぎないものであるから,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響が大きいということはできない。また,具体的構成態様としてあげた共通点(B)も,「建築用壁板」の物品分野においては,ごくありふれた態様であることから,看者の注意を惹くものとはいえず,共通点(C)の正面の表面に鋸目模様が形成されたものは,「建築用壁板」の物品分野において,ほかにもよく見られるものでもあって,鋸目模様の存在をもって,両意匠の類否を決するほどの特徴的な態様であるとはいえない。 また,共通点(D)の点は,木材からなる壁板を模した「建築用壁板」の物品分野においては,色調が茶系統色であることは,木材としてありふれた色調を施したものであって,ごくありふれた態様であり,色むらのある態様も「建築用壁板」の物品分野において,よく見受けられる態様であって,この点が両意匠の類否判断に与える影響は小さい。 よって,共通点(A)ないし(D)の両意匠の類否判断に及ぼす影響は共に小さく,共通点全体があいまって生ずる効果を考慮したとしても,両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。 (2)相違点の評価 これに対して,相違点(ア)については,全体の構成比率に関わり,全体の具体的プロポーションに係るものであるが,双方共に,縦奥行き比率はほぼ共通し,相当に横方向に長いものといえるから,両意匠の横方向長さの相違が類否判断に与える影響は一定程度に留まるものである。 そして,相違点(エ)については,茶系統色の中での明るい茶色か,暗い茶色かという色彩の相違であって,明るい茶色も,暗い茶色も,双方共に「建築用壁板」の物品分野において,ごく普通によく見受けられる態様であって,この点が両意匠の類否判断に与える影響は小さい。 しかし,相違点(イ)の正面の細い縦溝部の有無については,この種「建築用壁板」の分野において,正面の態様について,看者は最も注意を払うところであって,縦溝部が全く無く,横溝部のみからなるものか,複数箇所に細い縦溝部があるものかは,視覚的にも異なる印象を与え,両意匠の印象に関わり,類否判断へ与える影響は大きい。 また,相違点(ウ)については,正面の鋸目模様の具体的態様に係り,相違点(イ)と同様に看者が最も注意を払うところであって,本願意匠が各段について,ほぼ一方向の斜線状の鋸目模様とし,主に上方から右斜線状と左斜線状の鋸目模様が各段交互に表され,3段目のみ下方から施されているのに対し,引用意匠の各段については,1つの段に複数方向からの斜線状の鋸目模様が混在し,ランダムに複数箇所で交差しており,そのような態様は,本願意匠には見られないものであるから,両意匠の類否判断に与える影響は大きい。 そうすると,(ア)が類否判断に与える影響は一定程度に留まり,相違点(エ)が両意匠の類否判断に与える影響は小さいものであるとしても,相違点(イ)及び(ウ)が両意匠の類否判断に与える影響が大きく,それら相違点を総合すると,相違点は,共通点を凌駕して,両意匠を別異のものと印象づけるものであるから本願意匠が引用意匠に類似するということはできない。 (3)小括 したがって,両意匠は,意匠に係る物品は,共通するが,形態においては,共通点が未だ両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は共通点のそれを凌駕しており,両意匠は,意匠全体として別異のものと印象付けるものであるから,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。 第4 むすび 以上のとおりであって,原査定の引用意匠をもって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,原査定の拒絶の理由によって,本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2017-08-28 |
出願番号 | 意願2016-14429(D2016-14429) |
審決分類 |
D
1
8・
4-
WY
(L6)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 富永 亘 |
特許庁審判長 |
小林 裕和 |
特許庁審判官 |
渡邉 久美 正田 毅 |
登録日 | 2017-09-22 |
登録番号 | 意匠登録第1588241号(D1588241) |
代理人 | 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所 |