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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 C6
管理番号 1333285 
審判番号 不服2017-6870
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-05-12 
確定日 2017-09-11 
意匠に係る物品 魚の骨抜き具 
事件の表示 意願2016- 10655「魚の骨抜き具」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,平成28年(2016年)5月19日に出願されたものであって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「魚の骨抜き具」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)は,願書及び願書に添付した図面に記載したとおりとしたものである。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることのできない意匠)に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠(以下,「引用意匠」といい,本願意匠と合わせて,両意匠という。)は,独立行政法人工業所有権情報・研修館が2008年8月8日に受け入れた「究極の魚小骨取りツール 骨抜き名人」第1頁所載の骨抜き器の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HC20014795号)である。(別紙第2参照)

第3 当審の判断
1.本願意匠と引用意匠の対比
原審において示された引用意匠は,その所載頁に2種類の「骨抜き器」が掲載されており,拒絶理由において,「骨抜き器」がどちらのものであるか明記されていなかった。
意見書において,出願人(請求人)は,引用意匠を引用意匠に係る物品A及び引用意匠に係る物品B(掲載頁右側上段の図版部掲載のものが物品A,右側下段の図版部掲載のものが物品Bと認められる。)として,双方共に本願意匠と類似しない旨,意見を述べ,原審はその査定において,「拒絶理由通知書において引用意匠として意図した引用意匠に係る物品Bの意匠」とし,「本願意匠と引用意匠に係る物品Bの意匠の柄の湾曲の程度等の相違点は,その点以外の柄部の共通性及び挟持部,軸支部,バネ部の共通性の中では限定的なものに過ぎず,意匠全体の類否判断に及ぼす影響は小さいといえるから,両意匠は類似するものであり,したがって,意見書の意見を採用することはできません。」として拒絶の査定をした。
そこで,当審の本願意匠と引用意匠の対比においては,引用意匠に係る物品Bの意匠を引用意匠として対比する。
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は,「魚の骨抜き具」であり,引用意匠の意匠に係る物品は,「骨抜き器」であって,共に,調理の下処理に際して魚の骨を除くために使用する器具であるから共通する。
(2)形態
両意匠の形態を対比すると,主として,以下の共通点と差異点が認められる。
なお,対比のため,本願意匠の図面における正面,平面等の向きを,引用意匠にもあてはめることとする。(引用意匠は軸支部の小突起部の方向を合わせて見ると本願意匠の背面図に相当すると認められます。)
(2-1)共通点
基本的構成態様として,
(A)全体は,挟持部,軸支部,柄部からなり,挟持部は2つの爪部を有し,柄部は一対の菱形柱状部と2本の把持部を有して構成され,軸支部を中心に回動するやっとこ状のものである点,
具体的構成態様として,
(B)全体の各部の背面視の長手方向の長さ比率は,挟持部,軸支部,柄部が約1:1:5である点,
(C)挟持部の2つの爪部は,背面視で,対称形状で,先端はお互いの爪部の方向へ傾斜して,一方の爪部は他方の爪部と突き合わせるように形成され,外壁面は,先端寄りから軸支部寄りにかけて略縦長S字状に形成されており,内壁面は,先端側は外壁の傾斜に合わせた直線状に,外壁部の段部に該当する箇所は平坦とし,軸支部手前は内方に湾曲する曲面に形成してなり,もう一方の爪基部と突き合わせる態様となっている点,
(D)軸支部は背面視で中央に回動の中心となる円形の軸部を配し,外周がリング状に囲まれた略円柱形状で挟持部と柄部を連結している態様であって,背面視の下方,外壁面片側に小突起部を設けた点,
(E)柄部の2つの把持部は,背面視で,対称形状の略棒状体であって,軸支部から連なる直線状に形成された柄部基部(以下,柄部基部)から外方に突き出しつつ,湾曲してなり,把持部の略半ばから端部までは内方に向けて直線状である点,
(F)柄部基部の間にはバネ部が設けられている点,
が共通している。
(2-2)相違点
具体的構成態様として,
(ア)本願意匠は爪部の閉じた状態であるのに引用意匠は多少開いた状態であって本願意匠は爪部の閉じた状態で,短手方向長さ:長手方向長さ:厚みの比率は約5.5:13:1であるのに対し,引用意匠は爪部の開いた状態で,背面から僅かに平面方向寄りの位置から斜めに見た図版(写真)であって,長手方向長さに対する短手方向長さ及び厚みは,明確ではない点,
(イ)把持部の態様について,本願意匠は,右側面視で長辺側が緩やかに湾曲した略矩形棒状体であって,柄部基部からその内壁に対し約55度外方に突出して湾曲し,把持部の直線状部分(以下,直線状部)は柄部基部の内壁の延長線に対して約10度内側に傾けて直線状に形成されているのに対し,引用意匠は,略棒状体で,柄部基部からその内壁に対し約30度外方に突出して湾曲し,把持部の直線状部は柄部基部の内壁の延長線に対して約12度内側に傾けて直線状に形成されている点,
(ウ)その柄部基部の内壁の延長線と水平に,柄部の全体のうち直線状部の開始位置及び長さを見ると本願意匠が柄部基部側から柄部の約12分の5の位置から端部までで,全体の約12分の7の長さであるのに対し,引用意匠は約2分の1の位置から端部までで,柄部の約2分の1(12分の6)の長さであって,本願意匠の方が直線状部が,やや長く形成されている点,
(エ)本願意匠は,何ら色彩の付されていないものであるのに対し,引用意匠は,全体が僅かに金属光沢を帯びた黒灰色である点,
で相違している。

2.両意匠の類否
以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価・総合して,両意匠の意匠全体としての類否を検討し,判断する。
両意匠は,意匠に係る物品が共通するが,形態については,以下のとおりである。
(1)共通点の評価
基本的構成態様としてあげた共通点(A)は,両意匠の形態を概括的に捉えた場合の共通点にすぎないものであるから,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を大きいということはできない。次に,具体的構成態様としてあげた共通点(B)は,全体の各部の長手方向の長さ比率についてであるが,この種魚の骨抜き具の分野においては,挟持部,軸支部,柄部,各部の長手方向構成比率を約1:1:5とした態様は,本願出願前に見受けられることから,この点が,特に,需要者の注意を惹くものとはいえず,また,共通点(C)は,挟持部の具体的態様の共通点であって,需要者は骨を挟持する挟持部について,注目するところであって,両意匠は,挟持部の外壁面の先端寄りから軸支部寄りにかけて略縦長S字状に形成された形態について共通するところであるが,この種「魚の骨抜き具」の物品分野において,本願出願前に他にも見受けられる態様であって(例えば,特開平11-146754の図1の(a)及び(b)に示された「魚の骨抜き具」の意匠(別紙第3参照)),この点が両意匠にのみに共通する特徴であるとはいえず,類否判断に与える影響は一定程度に留まる。そして,共通点(D)が軸支部について,中央に円形の軸部を配し,外周がリング状に囲まれた略円柱形状で外壁面に小突起部を設けた態様である点,共通点(E)が把持部の態様について,略棒状体であって,柄部基部から把持部が外方に突き出しつつ,湾曲してなり,把持部の略半ばから端部までは内方に向けて直線状である点,及び共通点(F)の柄部基部の間にバネ部を設けている点は,「魚の骨抜き具」の物品分野において,やっとこ状の魚の骨抜き具にいずれもよく見受けられるありふれた態様であって,これらの点が両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
よって,共通点(C)が両意匠の類否判断に与える影響は一定程度に留まり,共通点(A),共通点(B),共通点(D)ないし(F)の両意匠の類否判断に及ぼす影響はいずれも小さく,共通点全体があいまって生ずる効果を考慮したとしても,両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。
(2)相違点の評価
これに対して,両意匠の具体的構成態様に係る各相違点は,相違点(ア)については,短手方向長さ:長手方向長さ:厚みの比率であって,全体のプロポーションにかかるものであるが,本願意匠に見られる約5.5:13:1の比率はこの種「魚の骨抜き具」の分野においては,よく見受けられる構成比率でもあって,この点が両意匠の類否判断に与える影響は一定程度に留まる。
次に相違点(イ)及び,相違点(ウ)は,把持部の具体的形状についての相違であり,把持部は,全体の大きい部分を占め,使用する際の握り易さ,滑りにくさといった点から,需要者も一定の注意を払うところであるから,本願意匠は,右側面視略矩形状の棒状体であって,柄部基部からその内壁に対し,約55度外方に突出して湾曲し,把持部の直線状部は柄部基部の内壁の延長線に対して約10度内側に傾けて直線状に形成されているのに対し,引用意匠は,略棒状体であって,柄部基部からその内壁に対し,約30度外方に突出して湾曲し,把持部の直線状部は柄部基部の内壁の延長線に対して約12度内側に傾けて直線状に形成されている点,及び把持部の直線上部が本願意匠は,柄部基部側から約12分の5の位置から端部までで,柄部の約12分の7の長さであるのに対し,引用意匠は約2分の1の位置から端部までで,柄部の約2分の1(12分の6)の長さである点は,本願意匠が外方に急に突出して長めの直線状部を形成している湾曲部の張り出した態様であるのに対し,引用意匠は緩やかに突出してやや短めの直線状部を形成しており,緩やかな湾曲部からなだらかに直線状部に移行している態様であって,需要者に異なる印象を与えることから,相違点(イ)及び,相違点(ウ)の両意匠の類否判断に与える影響は極めて大きい。
また,相違点(エ)については,全体の色彩に関する相違であって,この種「魚の骨抜き具」の物品分野において,引用意匠のような全体に僅かに金属光沢を帯びた黒灰色を配したものはごく普通に見受けられ,本願意匠のように色彩を表さずに図で示されたものもよく見受けられるものであるから,この点が,両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
そうすると,相違点(ア)は両意匠の類否判断に与える影響が一定程度に留まり,相違点(エ)の両意匠の類否判断に与える影響が小さいとしても,相違点(イ)及び(ウ)は類否判断に与える影響は極めて大きいものであるから,それら相違点(ア)ないし(エ)があいまった視覚的効果も考慮して総合すると,相違点は,共通点を凌駕して,両意匠を別異のものと印象づけるものであるから本願意匠が引用意匠に類似するということはできない。
(3)小括
したがって,両意匠は,意匠に係る物品は,共通し,形態においては,共通点が未だ両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は共通点のそれを凌駕しており,両意匠は,意匠全体として別異のものと印象付けるものであるから,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。

第4 むすび
以上のとおりであって,原査定の引用意匠をもって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,原査定の拒絶の理由によって,本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲

審決日 2017-08-28 
出願番号 意願2016-10655(D2016-10655) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (C6)
最終処分 成立  
前審関与審査官 長谷川 翔平竹下 寛 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 渡邉 久美
正田 毅
登録日 2017-10-06 
登録番号 意匠登録第1589619号(D1589619) 
代理人 小笠原 宜紀 

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