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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H1
管理番号 1333286 
審判番号 不服2017-7474
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-05-24 
確定日 2017-09-15 
意匠に係る物品 電気コネクタ 
事件の表示 意願2016- 1974「電気コネクタ」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠

本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成28年(2016年)1月29日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「電気コネクタ」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって,「実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」(以下,本願において,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」という。)としたものである。(別紙第1参照)

第2 原査定の拒絶の理由及び引用意匠

原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとするものであり,本願意匠が類似するとして原審が拒絶の理由に引用した意匠(以下「引用意匠」という。)は,本願出願前,日本国特許庁発行の意匠公報(公報発行日:平成26年(2014年)11月10日)に記載された,意匠登録第1511136号(意匠に係る物品,電気コネクタ)のうち,本願意匠の部分意匠として意匠登録を受けようとする部分に相当する部分の意匠(以下,本願部分に相当する引用意匠の部分を「引用部分」という。)としたものであって,引用意匠及び引用部分の形態は,同公報に記載されたとおりのものである。(別紙第2参照)

第3 当審の判断

1.本願意匠と引用意匠の対比
(1)意匠に係る物品
本願意匠及び引用意匠(以下,「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,ともに「電気コネクタ」であるから,両意匠の意匠に係る物品は一致する。

2.本願部分と引用部分の対比
(1)部分意匠としての用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲
本願部分と引用部分(以下「両意匠部分」という。)の用途及び機能は,携帯型情報端末に接続して電力の供給等を行うために用いられる電気コネクタであって,その位置,大きさ及び範囲は,コネクタケーブルの先端部に設けられたコネクタハウジングに埋設される電気コネクタの,基台部及び基台部の下方に取り付けられたケーブル側端子部を除く,携帯型情報端末側接続端子の部分であるから,両意匠部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲は,共通する。

(2)両意匠部分の具体的形態
両意匠部分の形態を対比すると,その形態には,主として以下の共通点及び相違点が認められる。

まず,共通点として,
(A)両意匠部分全体は,電気コネクタにおける略縦長長方形薄板状の携帯型情報端末側接続端子(以下「デバイス側端子部」という。)の部分であり,そのデバイス側端子部の正面側にのみ略縦長長方形状の導電コンタクト(以下「コンタクト部」という。)を6つそれぞれ離間して設けている点,
なお,請求人は,願書の意匠に係る物品の説明欄において,上記の「デバイス側端子部」の部分を「絶縁ハウジング」としているが,ハウジングとは認められないため,以下,デバイス側端子部として記載する。
(B)デバイス側端子部は,その左右側面部分に平面視略「〔(亀甲括弧)」状の面取り(以下「亀甲括弧状面取り部」という。)を施し,その面取り部の上下中央のやや上方部分に正面視略台形状のくびれ(以下「台形状くびれ部」という。)を1つ形成し,その上辺側左右角部に斜めに切り欠くC面取りを施している点,
(C)6つのコンタクト部の配置態様は,デバイス側端子部の正面側上端部寄りの部分に,上下の高さを揃えて横一列になるように,左端に離れて1つ,中央付近から右側にかけて等間隔に5つ配した配置態様となるように配設している点,
が認められる。

他方,相違点として,
(ア)デバイス側端子部の正面側中央部分における溝部の有無について,本願部分は,6つのコンタクト部の下方部分全てを平滑面としているのに対して,引用部分は,正面側中央部分横一杯に渡って,正面視略縦長長方形状で一定の深さの溝部(以下「長方形溝部」という。)を,上下の高さを揃えて横一列になるように等間隔に9つ形成している点,
(イ)デバイス側端子部の正面側上部左右部分におけるコンタクトの有無について,本願部分は,該部位に略縦長長方形状の小型のコンタクト(以下「小コンタクト部」という。)を左右一対配設しているのに対して,引用部分には,小コンタクト部を全く設けていない点,
(ウ)デバイス側端子部の上面側の態様について,本願部分は,平坦面であるのに対して,引用部分は,左右辺部分と同様な亀甲括弧状面取り部を形成している点,
(エ)デバイス側端子部の背面側の態様について,本願部分は,背面側上半分の四隅に小円状の金属部材を埋設しているのに対して,引用部分は,その全面を平滑面としている点,
(オ)亀甲括弧状面取り部の態様について,本願部分は,面取りした部分が少なく,側面部分の横幅が面取りした傾斜面部分より幅広に表れるのに対して,引用部分は,面取りした部分が大きく,側面部分の横幅が面取りした傾斜面部分より幅狭に表れる点,
が認められる。

3.両意匠部分の形態の評価
まず,共通点(A)の両意匠部分全体の態様は,両意匠部分の形態を概括的に捉えた場合の共通点にすぎないものであるから,この共通点(A)の共通性のみをもって両意匠部分の類否判断を決定することはできない。
次に,共通点(B)のデバイス側端子部左右辺部分の亀甲括弧状面取り部及び台形状くびれ部についての態様は,デバイス側に挿入する部分である電気コネクタのデバイス側端子部において,この種物品の先行意匠に照らすところ,特段特徴のある形態ではないから,この共通点(B)が,両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は微弱である。
また,共通点(C)のコンタクト部の配置態様も,コンタクト部の数やその間隔は,技術的に決定されるものであるから,この共通点(C)のコンタクト部の配置態様の共通性のみをもって両意匠部分の類否判断を決定することはできない。
そして,これらの共通点(A)から共通点(C)の態様によって生じる視覚的効果が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は,これらを全体としてみても微弱なものであり,両意匠部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。

これに対し,相違点(ア)のデバイス側端子部の正面側中央部分における溝部の有無については,両意匠のようにコンタクト部をデバイス側端子部の片面側のみに配した電気コネクタの場合,需要者は,コンタクト部を配した正面側を特に注視するところ,一対の小コンタクト部及び6つのコンタクト部以外の部分が平滑面からなり,シンプルなものとの印象を与える本願部分の態様と,正面側中央部分に9つの長方形溝部を横一列に並設することで,凹凸感のあるものとの印象を与える引用部分の態様とは,看者に別異な印象を与えるものであるから,この相違点(ア)によって生じる視覚的効果は大きく,それから生じる別異の印象は,両意匠部分の類否判断を決定付けるほど大きいものである。
他方,相違点(イ)のデバイス側端子部の正面側上部左右部分におけるコンタクトの有無,相違点(ウ)のデバイス側端子部の上面側の態様,相違点(エ)のデバイス側端子部の背面側の態様,及び相違点(オ)の亀甲括弧状面取り部の態様については,電気コネクタのデバイス側端子部において,この種物品の先行意匠に照らすところ,特段特徴のある形態ではないから,この相違点(イ)から相違点(オ)が,両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は微弱である。

4.両意匠の類否判断
上記のとおり,両意匠の意匠に係る物品については一致し,両意匠部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲についても共通しているが,両意匠部分の形態については,共通点が類否判断に及ぼす影響は両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,相違点(ア)によって生じる別異の印象は,共通点のそれを凌駕して,類否判断を支配しているものであるから,両意匠部分は類似しないものである。
したがって,本願意匠と引用意匠とは類似しないものと認められる。

第4 むすび

以上のとおりであって,本願意匠は,引用意匠に類似せず,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものであるから,本願については,原査定における拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2017-09-05 
出願番号 意願2016-1974(D2016-1974) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (H1)
最終処分 成立  
前審関与審査官 清水 玲香 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 江塚 尚弘
神谷 由紀
登録日 2017-10-20 
登録番号 意匠登録第1590488号(D1590488) 
代理人 福島 三雄 

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