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審決分類 審判 査定不服  意10条1号類似意匠 取り消して登録 G2
管理番号 1333288 
審判番号 不服2017-7809
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-05-31 
確定日 2017-09-22 
意匠に係る物品 自動車用グリル 
事件の表示 意願2016- 470「自動車用グリル」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠

本願は,本意匠の出願番号を意願2016-480号(意匠登録第1561320号)とする,平成28年(2016年)1月12日に出願された関連意匠の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「自動車用グリル」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)を,願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由

原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,出願当初の願書に記載された本意匠(本願意匠の意匠登録出願の日と同日の平成28年1月12日に出願され,同年9月23日に意匠権の設定の登録がなされ,平成29年2月13日に登録秘密解除公報が発行された,出願番号を意願2016-480号とする,意匠登録第1561320号(意匠に係る物品,自動車用グリル)の意匠(以下「本意匠」という。),別紙第2参照)に類似する意匠と認められないので,意匠法第10条第1項の規定に該当しないとしたものである。

第3 手続きの経緯

原査定の上記拒絶の理由に対して,出願人は,平成28年10月11日に意見書を提出し,本願意匠は本意匠に類似するものであって,その関連意匠として意匠登録を受けることができるものであると主張したが,原審は,平成29年2月28日付けで拒絶査定を行っている。
これに対し,請求人は,同年5月31日に審判請求書を提出し,両意匠を全体的に観察した場合,共通点が差異点を圧倒的に凌駕し,需要者の視覚を通じて共通の美感を与えており,両意匠は互いに類似しているというべきであるから,本願意匠は意匠登録第1561320号の意匠に類似するものであって,その関連意匠として意匠登録を受けることができるものであると主張し,原査定を取り消す,この出願の意匠は,これを登録すべきものとするとの審決を求めていたが,審判合議体との電話応対後の平成29年8月23日に手続補正書を提出し,願書に記載の「本意匠の表示」を削除し,本願を関連意匠の意匠登録出願ではないものに変更している。

第4 当審の判断

以下,本願意匠が本意匠とは類似し,意匠法第10条第1項の規定に該当するものか否かについて検討する。

1.本願意匠と本意匠の対比
本願意匠と本意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,いずれも「自動車用グリル」であるから,両意匠の意匠に係る物品は一致する。

次に,両意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。
まず,共通点として,
(A)全体は,略横「〔(亀甲括弧)」状の枠体(以下「下部枠体部」という。)の上方部分に正面視略横長六角形枠状のグリル(以下「グリル部」という。)を一体的に設け,それら全体の左右端部を背面側に僅かに折曲した構成としている点,
(B)下部枠体部は,水平で幅広な水平帯状部分と,斜め上方に向かって折曲したような端部帯状部分からなり,この水平帯状部分の下辺中央部分を略横長長方形状に切り欠き,この切り欠きの内側の水平帯状部分前面部分より一段低い位置に,正面視略横向き「3」の字形状で板状のナンバープレート取り付け部を設け,端部帯状部分を端部に向かって漸次幅広となるように形成している点,
(C)グリル部は,その中央部分からやや上方左側寄りの部分に,略横長長方形枠体状の窓状部分(以下「窓状部」という。)をグリル部に設けられた格子の前面部分と面一となるように配設し,この窓状部付近の格子の背面側に略長方形状の板体を設け,グリル部の左右端部の格子背面側に略三角形状の板体を設けている点,
が認められる。

他方,相違点として,
(ア)グリル部の態様について,本願意匠は,窓状部を除くグリル部全面部分に横長の菱格子を形成しているのに対して,本意匠は,その左右端部が上方に湾曲しつつ幅広となった扁平な略U字状の横桟を上下に等間隔に3本設け,その背面側に幅細で直線状の縦桟を上方に向かって略放射線状に広がるように5本設けて横格子を形成している点,
(イ)窓状部の態様について,本願意匠は,窓状部枠内を開口しているのに対して,本意匠は,閉じた状態に形成している点,
が認められる。

2.両意匠の形態の評価
両意匠の意匠に係る物品は一致するものであるから,これを踏まえた上で,以下,両意匠の形態の共通点及び形態の相違点について評価する。

(1)形態の共通点の評価
まず,共通点(A)の略横「〔(亀甲括弧)」状の下部枠体部の上方部分に正面視略横長六角形枠状のグリル部を一体的に設けた形態,及び共通点(B)の水平で幅広な水平帯状部分と,斜め上方に向かって折曲したような端部帯状部分からなる下部枠体部の形態は,自動車用グリルの形態として既に見られるもの(参考意匠:世界知的所有権機関国際事務局発行の国際事務局意匠公報(発行日:2012年10月19日)に掲載された,車両ラジエーターグリル(登録番号DM/079199)の意匠,別紙第3参照)であるから,該部位を取り立てて特徴的な態様であるとはいうことができず,共通点(B)の下部枠体部に形成された略横長長方形状の切り欠きについても,使用時にはナンバープレートに隠されて見ることができない部位であって,需要者が自動車用グリルを観察する場合に特に注目する部位でもないから,この共通点(A)及び共通点(B)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱なものである。
また,共通点(C)のグリル部に形成された窓状部及び背面側の板体の態様も,様々な態様のメーカーエンブレム等をグリル部に設けられた格子の前面部分に面一となるように配設される自動車用グリルにあっては,単なる略横長長方形状の枠体を格子の前面部分と面一となるように形成した態様が特段特徴のあるものとはいえず,この共通点(C)が両意匠の類否判断に及ぼす影響も微弱なものである。
そして,これらの共通点(A)ないし(C)の態様によって生じる視覚的効果は,これらを全体としてみても大きいものとはいえず,両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。

(2)形態の相違点の評価
相違点(ア)のグリル部の態様については,自動車用グリル全体の形態が特徴のない場合には,需要者はグリル部の形態自体にも注目するものといえるから,横長の菱格子によって構成されたメッシュ状の形態であるとの印象を与える本願意匠の態様と,扁平な略U字状の横桟によって構成されたルーバー状の形態であるとの印象を与える本意匠のものでは,需要者に別異な印象を与えるものであるから,この相違点(ア)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいといえる。
次に,相違点(イ)の窓状部の態様については,単なる略横長長方形枠体状の窓状部自体の形態には特段特徴はないものの,背面側に設けられた板体を含めて,窓状部枠内を開口している本願意匠の態様と,閉じた状態の本意匠のものとは,開口部の有無において別異な印象を与えるものであるから,この相違点(イ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度ある。
そして,これらの相違点(ア)及び相違点(イ)による視覚的効果は,意匠全体として見た場合,上記共通点の影響を凌ぎ,需要者に別異の美感を起こさせるものであるということができる。

3.両意匠の類否判断
上記のとおり,両意匠は,意匠に係る物品については一致するものの,形態については,共通点が類否判断に及ぼす影響は両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,相違点が類否判断に及ぼす影響は大きく,共通点及び相違点を総合的に評価すると,相違点が相まって生じる視覚的効果は,共通点のそれを凌駕して,意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせているものであるから,両意匠は類似しないものと認められる。

第5 むすび

以上のとおりであって,本願意匠は,本意匠に類似せず,意匠法第10条第1項の規定に該当しないものであって,本意匠の関連意匠として意匠登録を受けることができないものであるが,請求人が提出した手続補正書によって,本願の本意匠の表示を削除する補正がなされ,原審の拒絶の理由は既に解消しているので,当該拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2017-09-12 
出願番号 意願2016-470(D2016-470) 
審決分類 D 1 8・ 3- WY (G2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 大峰 勝士 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 江塚 尚弘
神谷 由紀
登録日 2017-10-13 
登録番号 意匠登録第1590175号(D1590175) 
代理人 恩田 誠 
代理人 恩田 博宣 
代理人 恩田 博宣 
代理人 恩田 誠 

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