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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 C4
管理番号 1333305 
審判番号 不服2017-9419
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-06-28 
確定日 2017-10-13 
意匠に係る物品 美容器 
事件の表示 意願2016- 19573「美容器」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 1.本願意匠
本願は,平成28年(2016年)9月9日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「美容器」とし,その形状,模様若しくは色彩又はそれらの結合(以下「形態」という。)を願書及び願書に添付された図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

2.原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定において,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとして,拒絶の理由に引用された意匠(以下「引用意匠」という。)は,独立行政法人工業所有権情報・研修館が平成26年(2014年)6月16日に受け入れた株式会社光文社発行の内国雑誌「美ST(2014年6月17日8号)」第180頁に所載の「美顔器」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HA26002777号)であって,その形態は,同雑誌に掲載されたとおりのものである。(別紙第2参照)

3.両意匠の対比
両意匠を対比すると,まず,意匠に係る物品については,いずれも手に持って顔面などに当てて肌の手入れをするためのものであるから,両意匠の意匠に係る物品は共通する。
両意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び差異点がある。
(1)共通点
(A)全体の構成を,斜視で,略長円形直柱体の握り部の正面側の上端に,前方突出して環状電極を有する略短円柱状の皮膚当接部とその背面側に連接形成されている径の大きい円形部材(以下「皮膚当接部等」という。)を設けている点,
(B)斜視で,環状電極を大径と小径で二重の幅狭の略正円環状帯としている点,
(C)握り部の正面下部に二つのボタン部を上下に設けている点,
において主に共通する。
(2)差異点
(ア)握り部の正面側の構成について,本願意匠は,やや厚みのある略長円形状の部材を握り部本体の正面側の上に設け,周側面から正面側にかけて丸みをもたせているのに対し,引用意匠は,略長円形状のほぼ平坦なパネルを握り部本体の正面側に浅く略凹状に嵌合して,周側面から正面側にかけて丸みをもたせていない点,
(イ)握り部の背面側から周側面にかけての構成について,本願意匠は,丸みをもたせているのに対し,引用意匠は,明らかではない点,
(ウ)握り部と皮膚当接部等とのあいだの構成について,本願意匠は,右側面視で,略長円形直柱体の正面側の上端に,略単双曲回転体形状のくびれた短く細い首を介して,正面を前記の円形部材とし背面を略碗状とする部分(以下「碗状部」という。)が握り部に連接され,この碗状部の前面に皮膚当接部等が連接されているのに対し,引用意匠は,皮膚当接部等しか写真に現れておらず,握り部と皮膚当接部等とのあいだの構成については,皮膚当接部等で隠れてみえないため,不明である点,
(エ)握り部の背面側の構成について,本願意匠は,背面視で,その略中心部に縦長のトラック形状の線模様が三重に描かれ,この外側にもやや太めのトラック形状の外周縁線が表れているのに対し,引用意匠は,背面が写真に現れていないため,不明である点,
において主な差異点が認められる。

4.類否判断
(1)共通点
そこで検討するに,共通点(A)については,全体の基本的な構成に係るものであり,略長円形直柱体の握り部の正面側の上端に,皮膚当接部等を設けている全体の構成が共通する一方,この種の物品の分野においては,略長円形直柱体の握り部の正面側の上端に,皮膚当接部等を設けている美容器は,本願出願前に既に見られるもので,両意匠のみに認められる格別の構成とはいえず,全体の基本的な構成が共通している点のみでは両意匠を類似と判断するまでには至らないものであるから,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度に留まるものである。
次に,共通点(B)については,環状電極を大径と小径で二重の幅狭の略正円環状帯とし,皮膚当接部を,その径より一回り大きい径のヘッド部に連接形成した構成は,これまでにみられない態様であるが,共通点が形態全体の大きな部分を占めるものではないため,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度に留まるものである。
さらに,共通点(C)については,握り部の正面下部に二つのボタン部を上下に設けることは,これまでにみられない態様であるが,正面側とはいえ限られた部分における共通点であって,需要者の注意を格別ひくものとはいえないから,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響はわずかに留まるものである。
そして,共通点全体として両意匠の類否判断に与える影響を考慮しても,両意匠の類否判断を決定付けるに至るということはできない。
(2)差異点
これに対して,差異点に係る態様があいまって生じる視覚的な効果は,両意匠の類否判断を決定付けるものである。
すなわち,まず,差異点(ア)の握り部の正面側の構成については,やや厚みのある正面視で略長円形状の部材を握り部本体の正面側の上に設け,周側面から正面側にかけて丸みをもたせている本願意匠は,握り手の全体として角張っていないありさまをみせるもので,対して,略長円形状のほぼ平坦なパネルを握り部本体の正面側に浅く略凹状に嵌合して,周側面から正面側にかけて丸みをもたせていない引用意匠は,角張ったありさまをみせるもので,次の差異点(イ)の握り部の背面側から周側面にかけての構成の差異もあいまって,見た目の印象が明確に異なるものであり,その差異は,両意匠の類否判断に大きな影響を与えるものといえる。
次に,差異点(ウ)の握り部と皮膚当接部等とのあいだの構成については,短く細い首を介して椀状部が握り部に連接されている構成は,この種の物品の分野においては,本願出願前にいくつかみられる一方,本願意匠の略単双曲回転体形状のくびれた短く細い首は,本願意匠以外に発見できず,その首をもつ本願意匠の構成には特徴があるといえる。対して,引用意匠では,その構成は不明である。ひいて,握り部と皮膚当接部等とのあいだの構成については,この種の物品の分野では,握り部と同程度に,需要者の注意をひくところであり,その差異は,両意匠の類否判断にある程度の影響を与えるものといえる。
さらに,差異点(エ)の握り部の背面側の構成についても,装飾として描かれた模様を背面にもつ本願意匠は,その模様がこれまでにない態様であることを考えると,ある程度の特徴があるといえる。対して,引用意匠では,背面の形態は不明である。ひいて,正面側ほどではないにしても,使用時に需要者の目にとまる背面側の形態は軽視できないものであり,その差異は,両意匠の類否判断に多少の影響を与えるものといえる。
(3)小活
以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が共通するが,その形態において,差異点が共通点を凌駕し,それが両意匠の意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似しないものと認められる。

5.むすび
したがって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当せず,原査定の拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2017-10-03 
出願番号 意願2016-19573(D2016-19573) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (C4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 桐野 あい 
特許庁審判長 温品 博康
特許庁審判官 宮田 莊平
江塚 尚弘
登録日 2017-10-27 
登録番号 意匠登録第1591117号(D1591117) 
代理人 三浦 光康 

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