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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 D5
管理番号 1334416 
審判番号 不服2017-9172
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-06-22 
確定日 2017-10-10 
意匠に係る物品 取付け用洗面器 
事件の表示 意願2016- 20546「取付け用洗面器」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,平成28年(2016年)9月26日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)の意匠に係る物品は,本願の願書の記載によれば「取付け用洗面器」であり,本願意匠の形態は,願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりである(別紙第1参照)。

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の意匠に類似するものと認められるので,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため,同条同項の規定により意匠登録を受けることができない意匠)に該当するとしたものである。
独立行政法人工業所有権情報・研修館が2008年8月22日に受け入れたカタログ“アイカハイマックス - メタクリル人工大理石”の第18頁所載の「取付用洗面器」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HC20015411号)(以下,当該意匠を「引用意匠」という。)であり,その形態は,同カタログに掲載されたとおりとしたものである(別紙第2参照)。

第3 本願意匠と引用意匠の対比
1 意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「取付け用洗面器」であり,引用意匠の意匠に係る物品も「取付用洗面器」である。

2 本願意匠と引用意匠の形態
本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の形態を対比すると,主として,以下の共通点と差異点が認められる。
(1)共通点
両意匠には,以下の共通点が認められる。
(A)全体の構成についての共通点
全体は,平面視略角丸矩形状のボウル部から成り,その平面中央の後方寄りに円形の排水孔部が形成されている。
(B)ボウル部の態様についての共通点
ボウル部の内周面は急傾斜状に形成され,底面は排水孔に向かってごく緩やかに傾斜した略平坦面で形成されており,ボウル部の厚みは均一である。
(C)排水孔部の態様についての共通点
排水孔部はボウル部の底面下方にやや突出して形成され,また,排水孔部の内周面については傾斜しており,その上端形状は鈍角状に角張って表されている。
(2)差異点
一方,両意匠には,以下の差異点が認められる。
(a)全体の構成比についての差異点
全体の平面視縦横比は,本願意匠は縦幅より横幅が僅かに長い程度であるが,引用意匠では,最も長い縦幅と横幅の比率が約2:3である。
(b)ボウル部の態様についての差異点
(b-1)外周形状
本願意匠のボウル部の平面視外周形状は,四辺とも直線状であり,四隅が僅かに弧状に形成されている。
これに対して,引用意匠のボウル部の平面視外周形状は,左右の辺の中間部分は直線状であるが,上下の辺は緩やかに膨出した弧状であり,かつ,四隅は大きなアール状に形成されている。また,下方両端のアールの曲率より,上方両端のアールの曲率のほうが大きく形成されている。
(b-2)内面形状
本願意匠のボウル部の内面形状は,内周面が約75度に傾斜した略平坦面であり,小さな弧状面を経て底面へとつながっている。
これに対して,引用意匠のボウル部の内面形状は,内周面が緩やかな弧状面であり,そのまま底面へ連続している。
(b-3)上端部の形状
本願意匠のボウル部の上端部は外側に僅かに端反り状に形成されているが,引用意匠では端反り状に形成されていない。

第4 類否判断
1 意匠に係る物品
両意匠は,共に取付け用洗面器であるから,両意匠の意匠に係る物品は同一である。

2 取付け用洗面器の意匠の類否判断
取付け用洗面器は,洗面棚や洗面台などに設置されるものであり,通常の使用状態において需要者が取付け用洗面器を観察するにあたっては,主として平面方向又は正面方向から眺めることとなり,ボウル部の外周形状,内面形状及び上端部の形状について特に注意を払うことになる。したがって,取付け用洗面器の意匠の類否判断においては,この点を特に評価し,かつそれ以外の形状の評価も併せて,各評価を総合して意匠全体として形態を評価する。

3 両意匠の形態の共通点の評価
両意匠の共通点で指摘した(A)全体の構成,(B)ボウル部の態様,及び(C)排水孔部の態様についての共通点は,本願の出願前に「取付け用洗面器」の物品分野においてはありふれた態様であるから,需要者が特段注目する程のものとはいえないので,これらの共通点のみをもって両意匠の類否判断を決することはできない。

4 両意匠の形態の差異点の評価
これに対して,両意匠の形態の差異点については,以下のとおり評価され,差異点を総合すると,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすといわざるを得ない。
まず,全体の構成比についての差異点(a),及びボウル部の外周形状の差異点(b-1)は,需要者が一見して気付く差異であって,縦幅より横幅が僅かに長い程度であって四隅が僅かに弧状である本願意匠は,縦横比が約2:3で全体的に丸みを帯びた略横長角丸矩形状である引用意匠とは大きく異なっており,需要者に別異の美感を与えることとなる。したがって,差異点(a)及び差異点(b-1)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
次に,(b-2)で指摘したボウル部の内面形状についての差異については,ボウル部の内面形状がどのようなものであるかは取付け用洗面器を使用する需要者にとって注目する点の一つであるところ,内周面が約75度で傾斜した略平坦面である本願意匠と,内周面が緩やかな弧状面であって底面へ連続している引用意匠との差異は,ボウル部の内周面が需要者の手が触れる部位であることも踏まえると,需要者の注意を惹く差異であるということができる。したがって,差異点(b-2)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
他方,差異点(b-3)は,ボウル部の上端部が端反り状に形成されているか否かの差異であり,ボウル部の上端部は目立つ部位ではあるものの,本願意匠に見られる端反りの程度は僅かなものであって,需要者が特段注目する程のものとはいえないので,差異点(b-3)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。

5 総合判断
以上のとおり,両意匠の形態の共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は総じて小さいのに対して,両意匠の形態の差異点(a),差異点(b-1)及び(b-2)が両意匠の類否判断に及ぼす影響はいずれも大きく,差異点(b-3)が両意匠の類否判断に及ぼす影響が小さいとしても,形態の共通点を圧して,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすといわざるを得ない。

6 小括
したがって,両意匠の意匠に係る物品は同一であり,両意匠の形態についても,差異点は共通点を圧して両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすので,両意匠を全体として比較した際には両意匠を別異のものと印象付けるものであるから,本願意匠は引用意匠に類似しない。

第5 むすび
以上のとおりであって,本願意匠は原査定の引用意匠に類似することを理由にして,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,同法同条同項の規定によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2017-09-26 
出願番号 意願2016-20546(D2016-20546) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (D5)
最終処分 成立  
前審関与審査官 樫本 光司 
特許庁審判長 内藤 弘樹
特許庁審判官 渡邉 久美
小林 裕和
登録日 2017-11-10 
登録番号 意匠登録第1592370号(D1592370) 

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