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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 L6
管理番号 1334438 
審判番号 不服2017-7257
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-05-19 
確定日 2017-11-07 
意匠に係る物品 建築用壁板 
事件の表示 意願2016-5676「建築用壁板」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,平成28年(2016年)3月15日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「建築用壁板」とし,形態を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり,「この物品の大きさは,正面図において,縦幅が約370mm程度,横幅が約3,788mm程度である。」というものである。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するとしたものである。そして,拒絶の理由に引用した意匠は,特許庁発行の意匠公報記載 意匠登録第1530299号 (意匠に係る物品,建築用壁板)の意匠(以下「引用意匠」といい,本願意匠と合わせて「両意匠」という。)であって,その形態は,同公報の図面に記載されたとおりのものであり,「正面図において左右に連続するものである。」というものである。(別紙第2参照)

第3 当審の判断
1.本願意匠と引用意匠の対比
(1)両意匠に係る物品
本願意匠に係る物品は「建築用壁板」であり,引用意匠に係る物品も「建築用壁板」であるから,両意匠に係る物品は一致する。

(2)両意匠の形態
両意匠の形態を対比すると,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。
<共通点>
(A)全体は,上下端に接続部を有する横長長方形の壁板正面に,縦横比の異なる複数種類の略長方形状のブロック部が上下左右に配されて,各ブロック部の境界により,縦横の溝模様が表されている点。

(B)ブロック部の正面には,岩肌を模した凹凸が形成されている点。

<相違点>
(ア)本願意匠の正面は,水平方向に途切れずに延びる5本の横溝によって,上下6段に区画され,各段は,次のような繰り返しパターンが左右方向に繰り返されているのに対して,引用意匠の正面は,水平方向に途切れずに延びる横溝がなく,正面全体が左右に連続する点。
(本願意匠の各段の繰り返しパターン)
上から1番目の段:上下に重なる2つのブロック部で構成され,2つのブロック部を上下に貫く縦溝が設けられ,縦溝から2つ隣の縦溝までに及ぶブロック部で繰り返しパターンが構成されている。
上から2番目の段:上下に重なる3つのブロック部で構成され,3つのブロック部を上下に貫く縦溝が設けられ,縦溝から隣の縦溝までに及ぶブロック部で繰り返しパターンが構成されている。
上から3番目の段:上から2番目の段と同様に,上下に重なる3つのブロック部で構成され,3つのブロック部を上下に貫く縦溝が設けられ,縦溝から隣の縦溝までに及ぶブロック部で繰り返しパターンが構成されている。
上から4番目の段:上から1番目と同じ繰り返しパターンを有しており,そのパターンが,上から1番目のパターンよりも略1/3単位右方にシフトしている。
上から5番目の段:上から2番目と同じ繰り返しパターンを有しており,そのパターンが,上から2番目のパターンよりも略1/3単位右方にシフトしている。
上から6番目の段:上から3番目と同じ繰り返しパターンを有しており,そのパターンが,上から3番目のパターンよりも略1/3単位右方にシフトしている。

(イ)本願意匠の各ブロック部の前面は鉛直面ではなく,不規則な傾斜面が形成されているのに対して,引用意匠の各ブロック部の前面は略鉛直面状であって,本願意匠のような傾斜面は表されていない点。

(ウ)全体の高さに対する,上端接続部の上方突出量の比率が,本願意匠は略100:11であるのに対して,引用意匠は略100:3である点。

(エ)本願意匠は,中実であるのに対して,引用意匠は,横に延びる空洞部が上下に多数設けられている点。

2.両意匠の類否判断
以上の一致点,共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価及び総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。
両意匠に係る物品は一致するが,形態については,以下のとおりである。
(1)両意匠の形態についての共通点の評価
共通点(A)及び(B)は,両意匠の形態を概括的に捉えた場合の共通点にすぎないものであるし,建築用壁板の物品分野において,両意匠のほかにも見られる形態であるから,これらの点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を大きいということはできず,共通点全体としても,両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。

(2)両意匠の形態についての相違点の評価
これに対して,相違点(ア)は,正面全体にわたって観察されることから,非常に目に付き易く,特に本願意匠が水平方向に途切れずに延びる5本の横溝を有する点は,一見して気付く顕著な形態であるから,相違点(ア)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいといえる。
また,相違点(イ)も正面全体にわたって観察され,本願意匠の各ブロック部の前面には,不規則な傾斜面が表れていることから,非常に変化に富んだ印象をもたらすのに対して,引用意匠の各ブロック部のそれは,やや単調な印象をもたらすものであり,相違点(イ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響も大きいというべきである。
他方,相違点(ウ)は,上端接続部の上方突出量の比率の相違に係るものであるが,建築用壁板を施工した後には観察できないものであるから,相違点(ウ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度にとどまるものといわざるを得ない。
また,相違点(エ)も,建築用壁板を施工した後には観察できないものである上に,建築用壁板の物品分野において,中実の形態も,横に延びる空洞部が上下に多数設けられた形態もありふれているから,相違点(エ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。
そうすると,相違点(ア)及び相違点(イ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響はいずれも大きいことから,相違点(ウ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響が一定程度にとどまるものにすぎず,相違点(エ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響が微弱なものであるとしても,相違点の印象は,共通点の印象を凌駕して,両意匠は,意匠全体として視覚的印象を異にするというべきである。

(3)小括
したがって,両意匠は,意匠に係る物品は一致するが,形態においては,共通点が未だ両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は共通点のそれを凌駕しており,意匠全体として見た場合,相違点の印象は,共通点の印象を凌駕し,両意匠は,意匠全体として視覚的印象を異にするというべきであるから,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。

第4 むすび
以上のとおりであって,原査定の引用意匠をもって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,原査定の拒絶の理由によって,本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2017-10-23 
出願番号 意願2016-5676(D2016-5676) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (L6)
最終処分 成立  
前審関与審査官 富永 亘 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 渡邉 久美
刈間 宏信
登録日 2017-11-17 
登録番号 意匠登録第1592784号(D1592784) 
代理人 瓜本 忠夫 
代理人 星野 寛明 
代理人 芝 哲央 
代理人 正林 真之 
代理人 岩池 満 

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