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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 L7 |
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管理番号 | 1335196 |
審判番号 | 不服2017-2625 |
総通号数 | 217 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2018-01-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-02-23 |
確定日 | 2017-11-20 |
意匠に係る物品 | ドア用下枠 |
事件の表示 | 意願2016-4551「ドア用下枠」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,平成28年(2016年)3月1日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「ドア用下枠」とし,形態を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり,願書の「意匠の説明」には「本物品は平面図において上下方向に連続するものである。」と記載されている。(別紙第1参照) 第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠は,特許庁発行の意匠公報記載 意匠登録第1409984号(意匠に係る物品,ドア用下枠材)の意匠(以下「引用意匠」といい,本願意匠と合わせて「両意匠」という。)であり,その形態は,同公報の図面に記載されたとおりのものであって,同公報の「意匠の説明」には「この意匠は平面図の上下方向にのみ連続する。」と記載されている。(別紙第2参照) 第3 当審の判断 1.両意匠の対比 (1)両意匠に係る物品 本願意匠に係る物品は「ドア用下枠」であり,引用意匠に係る物品は「ドア用下枠材」であって,表記は相違するが,いずれもドア用の下枠として連続する型材であるので,両意匠に係る物品は共通する。 (2)両意匠の形態 両意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。形態を対比するにあたり,正面視左側(室外側,ドアが開く方向)を「前方」といい,正面視右側(室内側,ドアが閉じる方向)を「後方」という。 <共通点> 基本的構成についての共通点 (A)全体は,ドアを閉じた際に,ドア下部の後方の面と対向する垂直板と,垂直板の下部から前方斜め下方に延びる傾斜板と,傾斜板下端から前方に延びてドアの直下に位置する底板と,底板の前端からクランク状に下方,後方,下方の順に延びるクランク状板と,垂直板の後方上側に,正面視略縦長矩形状の空洞を形成するボックス部と,ボックス部の後方板(垂直板に平行な後方側の板)の下端から下方に延び,下端部が前方に曲がったかぎ状板で構成されている点。 具体的構成についての共通点 (B)垂直板の上寄りに,シールを係止するかぎ爪が上下に向かい合う係止部(以下「シール係止部」という。)が設けられている点。 (C)ボックス部の上側の板が前方に水平に延びて庇部を形成している点。 (D)ボックス部の後方板の上端が,上方に僅かに突出している点。 (E)ボックス部の下側の板の下面側の前端隅に,正面視略「C」字状の爪が形成されている点。 (F)底板の下面中央やや前方寄りに,正面視略逆「C」字状の爪が形成されている点。 <相違点> 具体的構成についての相違点 (ア)本願意匠は,シール係止部の下側のかぎ爪の下面と垂直板の下端に,上下に向かい合うように設けられたかぎ爪により,第2の係止部(以下「第2係止部」という。)が形成されているのに対して,引用意匠は,そのような第2係止部が設けられていない点。 (イ)垂直板の下端と傾斜板の上端の接続が,本願意匠は,垂直板の下端のかぎ爪(第2係止部の下側のかぎ爪)の前端角と傾斜板の上端が接続され,垂直板の下端は傾斜板の上端よりも後方に位置しているのに対して,引用意匠は,垂直板の下端と傾斜板の上端がそのまま接続されている点。 (ウ)本願意匠は,庇部の前方突出量,シール係止部のかぎ爪の前方突出量及び第2係止部のかぎ爪の前方突出量が,ほぼ同一であるのに対して,引用意匠は,庇部の方が,シール係止部のかぎ爪よりも僅かに前方に突出している点。 (エ)底板が,本願意匠は,傾斜板下端から前方やや下方に傾斜する平板状であるのに対して,引用意匠は,傾斜板下端から水平に延びた後に前方やや下方に傾斜する折り曲げ板状である点。 (オ)かぎ状板の下端部が,本願意匠は水平状であり,下端の高さ位置は傾斜板の下端やや上方であるのに対して,引用意匠は傾斜状であり,下端の高さ位置は傾斜板の上端やや下方である点。 (カ)底板下面の略逆「C」字状の爪が,本願意匠は底板下面に直接設けられ,爪の下方近傍から水平に延びる取付部が形成されているのに対して,引用意匠は底板下面から垂直に突出する接続部を介して設けられ,爪の高さの略中央から水平に延びた後に斜め下方及び斜め上方に折れ曲がる取付部が形成されている点。 2.両意匠の類否判断 以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価及び総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。 両意匠は,意匠に係る物品が共通するが,形態については,以下のとおりである。 (1)両意匠の形態についての共通点の評価 基本的構成としてあげた共通点(A)は,両意匠の形態を概括的に捉えた場合の共通点にすぎないものであり,両意匠のほかにもいくつか見られる形態であるから,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を大きいということはできない。 また,具体的構成としてあげた共通点(B)は,ドア用下枠(以下「この種物品」という。)の分野においてありふれた形態であるし,共通点(C)及び(D)は,いずれもごく部分的な形態についての共通点であるから,これらの共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。 さらに,共通点(E)及び(F)は,この種物品を建物に取り付けた後には見ることができない部分に関するものであるし,取り付けの機能に不可欠な形態であるといえるから,これらの共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいものである。 そして,共通点全体としても,両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。 (2)両意匠部分の形態についての相違点の評価 これに対して,相違点(ア)は,本願意匠は,シール係止部の下方に,第2係止部が設けられているのに対して,引用意匠は,そのような第2係止部が設けられていないというものであるが,本願の出願前に頒布された刊行物に記載された参考意匠,すなわち,特許庁発行の公開特許公報記載 平成26年(2014年)特許出願公開第34861号 図1及び図3に示された「加熱発泡材19」の意匠(別紙第3参照)を見ると,この種物品のシール係止部よりも下方の係止部は,遮炎材を保持するものであると推認できる。 また,相違点(イ)は,垂直板と傾斜板の接続について,本願意匠は垂直板の下端が傾斜板の上端よりも後方に位置するように接続されているのに対して,引用意匠は傾斜板上端と垂直板下端がそのまま接続されているというものであり,上記相違点(ア)で推認したように,本願意匠に係るドア用下枠は,シール係止部よりも下方に遮炎材を保持するものであることを考慮すると,相違点(イ)に係る形態は,遮炎材の厚さに相応して,垂直板を後方に位置させたものということができる。 さらに,相違点(ウ)は,本願意匠は,庇部の前方突出量,シール係止部のかぎ爪の前方突出量及び第2係止部のかぎ爪の前方突出量が,ほぼ同一であるのに対して,引用意匠は,庇部の方が,シール係止部のかぎ爪よりも僅かに前方に突出しているというものであって,これらの相違点(ア)ないし(ウ)を総合して観察すれば,本願意匠について,傾斜板上端から第2係止部の前端,シール係止部の前端及び庇部の前端に続く仮想的な垂直前面を想起でき,その仮想的な垂直前面から,シール係止部や第2係止部が凹んで設けられている印象を受けるのに対して,引用意匠については,傾斜板上端からそのまま垂直板が設けられ,その垂直板から,庇部及びシール係止部が不揃いに突出して設けられている印象を受けるということができ,シール係止部や第2係止部,垂直板は,ドア用下枠を建物に取り付けた後においても目に付きやすい上に,相違点(ア)ないし相違点(ウ)に係る形態は,この種物品の先行意匠に照らして,本願のみの特徴であるから,これらの相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は非常に大きいというべきである。 他方,相違点(エ)は,底板が,本願意匠は,傾斜板下端から前方やや下方に傾斜する平板状であるのに対して,引用意匠は,傾斜板下端から水平に延びた後に前方やや下方に傾斜する折り曲げ板状であるというものであるが,本願意匠のように,底板が平板状であることは,この種物品分野においてありふれた形態であるし,引用意匠の底板の折り曲げの程度もごく僅かであるから,相違点(エ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。 また,相違点(オ)は,かぎ状板の下端部が,本願意匠は水平状であり,下端の高さ位置は傾斜板の下端やや上方であるのに対して,引用意匠は傾斜状であり,下端の高さ位置は傾斜板の上端やや下方であるというものであり,相違点(カ)は,底板下面の略逆「C」字状の爪が,本願意匠は底板下面に直接設けられ,爪の下方近傍から水平に延びる取付部が形成されているのに対して,引用意匠は底板下面から垂直に突出する接続部を介して設けられ,爪の高さの略中央から水平に延びた後に斜め下方及び斜め上方に折れ曲がる取付部が形成されているというものであるが,いずれも,この種物品を建物に取り付けた後には見ることができない部分に関するものであるから,相違点(オ)及び相違点(カ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいものである。 (3)小括 したがって,両意匠は,意匠に係る物品は共通するが,形態においては,共通点が未だ両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,相違点(ア)ないし相違点(ウ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,いずれも非常に大きく,相違点(エ)ないし相違点(カ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響が,いずれも小さいか微弱なものであるとしても,相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は共通点のそれを凌駕しており,意匠全体として見た場合,相違点の印象は,共通点の印象を凌駕し,両意匠は,視覚的印象を異にするというべきであるから,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。 第4 むすび 以上のとおりであって,原査定の引用意匠をもって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,原査定の拒絶の理由によって,本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2017-10-11 |
出願番号 | 意願2016-4551(D2016-4551) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(L7)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 富永 亘 |
特許庁審判長 |
小林 裕和 |
特許庁審判官 |
刈間 宏信 渡邉 久美 |
登録日 | 2017-12-08 |
登録番号 | 意匠登録第1594328号(D1594328) |
代理人 | 中島 重雄 |