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審決分類 |
審判 査定不服 2項容易に創作 取り消して登録 M1 |
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管理番号 | 1336206 |
審判番号 | 不服2014-11378 |
総通号数 | 218 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2018-02-23 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-06-17 |
確定日 | 2015-01-20 |
意匠に係る物品 | 装飾用パネル |
事件の表示 | 意願2013- 12522「装飾用パネル」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,意匠法第14条第1項の規定により3年間秘密にすることを請求し,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成25年(2013年)6月5日付けの意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「装飾用パネル」とし,その形態を願書の記載及び願書に添付した図面に表されたとおりとしたものであり,「実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線である。」(以下,本願において,意匠登録を受けようとする部分を「本願実線部分」という。)としたものである。(別紙第1参照) すなわち,本願実線部分の形態は, (1)全体は,平面視略円弧状の湾曲したやや肉厚な板体の正面側中央部分に,上下左右に余地部を残して正面視略正方形状に区切られた,板体の表面部分及び板表面から板体の約1/2の厚みまでの部分であって, (2)板体表面部分の態様は,板体表面に断面視略円弧状の大小の凸条部(以下,「略円弧状凸条部」という。)を僅かな間隔をあけて横方向に複数条不規則に形成し,正面視略横縞状模様になるよう構成したものであり, (3)各略円弧状凸条部の態様は,板体表面から曲率の同じ円柱を僅かに突出したものからなり,この円柱の板体表面からの突出量に応じてその略円弧状凸条部の大きさが変化するものであり, (4)略円弧状凸条部の配置態様は,大きさの異なる各略円弧状凸条部の全てを水平方向に平行に配設しているのではなく,水平から僅かに左右にランダムに傾けて形成したものであり,板体表面には粗密のある部分が不規則に散在する略横縞状模様が表れているものである。 第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 本願に対する原査定の拒絶の理由は,本願意匠は,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するというものであって,具体的には,以下のとおりである。 本願意匠は,湾曲した板体の表面に凸条に突出する筋状の木目調模様を施したものである。 そこで,この種加熱調理器等の分野をみると,湾曲した装飾パネルの表面に模様を施すことは,古くより極普通に行われている(例えば,意匠登録第555840号の類似2「炊飯器」の意匠,意匠登録第1187880号「電気炊飯器」の意匠,引用意匠1等参照。)。また,家具や家電に使用される装飾パネルの表面を,凸条に突出する筋状の木目調模様とすることも,引用意匠2に示すように本願意匠出願前に公然知られたものである。 そうとした場合,本願意匠は,公然知られた装飾パネル(引用意匠1)の模様を,単に公然知られた木目調模様(引用意匠2)としただけであり,容易に意匠の創作をすることができたものである。 引用意匠1(別紙第2参照) 日本国特許庁意匠課が2001年11月16日に受け入れた, タイガー魔法瓶株式会社が発行したカタログ「タイガー総合カタログ 2001 秋・冬 No.47」所載の 第43頁下欄の下から二段目の左側に記載される「業務用電子ジャー〈炊きたて〉」の商品番号「JHC-7200」表示を「木目〈MO〉 7200P327814」とする「電気炊飯器」の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HC14004664号) 引用意匠2(別紙第3参照。なお,拒絶理由通知書に記載の「引用遺書2」は,明らかな誤記のため修正した。) 日本国特許庁普及支援課が平成24年(2012年)7月24日に受け入れた,大韓民国特許庁が2012年6月14日に発行した意匠公報(12-13号) 登録番号30-0644413号の「装飾用パネル」の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HH24419774号) 第3 請求人の主張の要旨 1.本願意匠の特徴点 本願意匠は,とても浅い凹凸の断面形状により,正面や斜めから見た際に,奥行き感(立体感)を感じさせる,人口的に「粗」と「密」とからなる揺らぎを持つ横長のラインを創作したものである。 これにより,需要者が離れた場所から本願意匠を見た場合,「疑似陰影(影があらわれない場所であっても,あたかも影があるように見せる)効果」を果たしている。 2.引用等された意匠について 原審の審査官が,抽出した意匠登録第555840号の類似第2号の意匠(以下,「参考意匠1」という。別紙第4参照)及び意匠登録第1187880号の意匠(以下,「参考意匠2」という。別紙第5参照)は,湾曲した面に模様を施しているものであるが,参考意匠1は,単なる平行な横長ライン模様が印刷されたものと思われる。また,参考意匠2は,正方形の立体的な編み物状のものが巻かれているものと思われる。 次に,審査官殿が引用された引用意匠1は,木目の模様が印刷されたものと思われる。また,引用意匠2は,刷毛で塗られたような模様が施されたものと思われる。 3.原査定に対する見解 本願意匠は,計算されつくした創作性に富むものと確信する。 一方で,審査官引用の意匠群は,単なる平行な横長ライン,立体的な編み物状(創作性は認められるが,本願意匠とは全く異なるものである。),単なる木目及び単なる刷毛で塗られたような模様である。これらそれぞれの意匠を含めて創作非容易性を判断したとしても,本願意匠の創作は一線を画す創作であると充分判断されると確信する。 このため,請求の趣旨のとおり,原査定を取り消す,本願は登録すべきものであるとの審決を求める。 第4 当審の判断 請求人の主張を踏まえ,本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性,つまり,本願意匠は,本願出願前より公然知られたものと認められる装飾パネル(引用意匠1)の模様を,単に公然知られた木目調模様(引用意匠2)とした程度にすぎないものか否かについて,以下検討し,判断する。 1.本願意匠 本願意匠の意匠に係る物品は「装飾用パネル」であり,本願実線部分の形態は,「第1 本願意匠」に記載のとおりである。 2.本願意匠の創作容易性の判断 この種の装飾用パネルの分野において,本願実線部分の形態(2)の板体の表面部分の態様については,板体表面部分に大きさの異なる略円弧状凸条部を水平方向に複数条形成し正面視略横縞状模様とすることは,例えば,引用意匠2において既に見られる態様であるから,この形態については特段の創作力なく当業者が容易に創作することができたといえる。 しかしながら,本願実線部分の形態における(1)の平面視略円弧状の湾曲した板体の表面に略円弧状凸条部からなる略横縞状模様を形成したものは,引用意匠1及び引用意匠2には見られない本願実線部分に独自のものであり,(3)の各略円弧状凸条部の態様は,各略円弧状凸条部の突出部分の曲率は全て同じものであって,本願実線部分に固有の態様といえ,(4)の略円弧状凸条部の配置態様も,略円弧状凸条部の大きさを微妙に変更しつつ僅かに水平から傾けて配置するという創作の結果,板体表面に粗密のある部分が偏在する本願実線部分に固有の略横縞状模様が表れているものであるから,これらの(1),(3)及び(4)の各態様は,当業者であれば加えるであろう程度にすぎない変形によるものとは言えず,また,その意匠の属する分野において常套的な変更によるものとも言えず,本願実線部分の形態を創作するにあたり,新たな創作が加わっているものであると認められることから,本願意匠は当業者が容易に創作することができたとは言うことはできない。 第5 むすび したがって,本願意匠は,意匠法第3条第2項の規定に該当しないので,本願については,原審の拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2015-01-06 |
出願番号 | 意願2013-12522(D2013-12522) |
審決分類 |
D
1
8・
121-
WY
(M1)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 杉山 太一 |
特許庁審判長 |
小林 裕和 |
特許庁審判官 |
江塚 尚弘 斉藤 孝恵 |
登録日 | 2015-01-30 |
登録番号 | 意匠登録第1518537号(D1518537) |
代理人 | 稲葉 忠彦 |
代理人 | 倉谷 泰孝 |
代理人 | 村上 加奈子 |
代理人 | 松井 重明 |