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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 L4
管理番号 1336212 
審判番号 不服2017-11860
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2018-02-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-08-08 
確定日 2017-12-08 
意匠に係る物品 建物用扉 
事件の表示 意願2016- 18120「建物用扉」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠

本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成28年(2016年)8月25日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「建物用扉」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって,「斜視図,六面図及び拡大図において赤色に着色された部分を除く部分,並びに,断面図及び端面図において実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」(以下,本願において,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」という。)としたものである(別紙第1参照)。

第2 原査定の拒絶の理由及び引用意匠

原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることのできない意匠)に該当するとしたものであり,本願意匠が類似するとして原審が拒絶の理由に引用した意匠は,本願出願前,日本国特許庁発行の意匠公報(公報発行日:平成24年(2012年)12月17日)に記載された,意匠登録第1457796号(意匠に係る物品,建物用扉)の意匠(以下「引用意匠」という。)の本願意匠の意匠登録を受けようとする部分に相当する部分(以下「引用部分」という。)であって,引用意匠及び引用部分の形態は,同公報に記載されたとおりのものである(別紙第2参照)。

第3 当審の判断

1.本願意匠と引用意匠の対比
(1)意匠に係る物品
本願意匠及び引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,ともに建物の開口部に取り付けられる建物用扉であるから一致するものである。

2.本願部分と引用部分の対比
(1)部分意匠としての用途及び機能
本願部分と引用部分(以下「両意匠部分」という。)の用途及び機能は,建物の開口部に取り付けて使用する扉における左右側面部の板体部分を除いた部分であるから一致するものである。

(2)部分意匠としての位置,大きさ及び範囲
両意匠部分の位置,大きさ及び範囲は,いずれも建物用扉の左右側面部の板体部分を除いた部分であるから一致するものである。

(3)両意匠部分の具体的形態
両意匠部分の形態を対比すると,その形態には,主として以下の共通点及び差異点が認められる。

まず,共通点として,
(A)両意匠部分全体は,左右端部に設けられた縦長長方形板状の枠体(以下「縦框」という。)の対向する内側側面部中央部分に,垂直なスリット状の切り欠き部を1条形成し,その左右切り欠き部に縦長長方形板状の透光性を有する素材からなる薄い板体(以下「透光板体部」という。)を嵌め込んだものとし,その透光板体部の正背両面に細長長方形状の薄い板体(以下「縦格子」という。)を略等間隔に複数本配設した構成からなる一枚の扉における左右側面部の板体部分を除いた部分であって,
(B)透光板体部の上端部及び下端部には,左右の縦框を連結するための部材(以下,上端部の部材を「上部連結部材」,下端部のものを「下部連結部材」という。)が設けられている点,
(C)縦框は,透光板体部側の側面角部にC面取りを施し,扉外側の側面角部には面取りを施さず直角に形成している点,
が認められる。

他方,差異点として,
(ア)上部連結部材の態様について,本願意匠は,左右縦框上面部の透光板体部側端部中央部分に,直線の先端部が円形状となる形態の浅い切り欠き部を形成し,その左右切り欠き部に円板状金具を両端部に設けた細径ワイヤーを螺着して,透光板体部上端部を固定しているのに対して,引用意匠は,左右縦框上面部の透光板体部側端部中央部分に,略横U字状の浅い切り欠き部を形成し,その左右切り欠き部に2つの円孔を両端部に並設した断面視横コの字状の連結部材(以下「コの字状連結部材」という。)を取り付けて,この部材と縦格子上端部の透光板体部側に形成された略L字状切り欠き部(以下「L字状切り欠き部」という。)を嵌め合わせ,かつ,この部材のコの字部分に透光板体部上端部を嵌め込んで固定している点,
(イ)下部連結部材の態様について,本願意匠は,左右縦框底面部の透光板体部側端部中央部分に略横U字状の浅い切り欠き部を形成し,その左右切り欠き部に2つの円孔を両端部に並設した断面視が角張った高さのある略横C字状の連結部材(以下「下部横桟」という。)を取り付け,その下部横桟上面部を各縦格子と透光板体部の配置に合わせて凹状に切り欠き,この切り欠き部に縦格子及び透光板体部を嵌め込んで固定しているのに対して,引用意匠は,上部連結部と上下対称な形態とし,コの字状連結部材により透光板体部を固定している点,
(ウ)縦格子の態様について,本願意匠は,平面視が横長長方形の角部が直角な部材であって,【D-D部におけるF-F拡大断面図】によると,透光板体部から突出する片側の縦格子と縦框の板全体の厚さの比が約1:7.5であるのに対して,引用意匠は,平面視が透光板体部から突出する部分の角部にC面取りを施した略横長長方形とし,その上下端部透光板体部側にL字状切り欠き部を形成したものであって,【B-B部分のC-C線拡大断面図】によると,透光板体部から突出する片側の縦格子と縦框の板全体の厚さの比が約1:3.5である点,
(エ)縦格子上端部のキャップ部の有無について,本願意匠は,各縦格子の上端部に,正面視の横幅が縦格子とほぼ等しく,断面視が略コの字状の透明な部材からなるキャップ(以下「キャップ部」という。)を冠着しているのに対して,引用意匠には,そのようなキャップ部を設けていない点,
(オ)縦格子の数について,本願意匠は,4つ配設しているのに対して,引用意匠は,5つ配設している点,
が認められる。

3.両意匠部分の形態の評価
以上の共通点及び差異点が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響を評価し,本願部分と引用部分が類似するか否か,すなわち両意匠部分の類似性について考察する。

まず,共通点(A)の両意匠部分全体の態様,及び共通点(B)の上部及び下部連結部材を設けた態様における共通点は,板体の中央部分に透光板体部を設け,その正背両面に縦格子を複数配した建物用扉の態様を概括的に捉えた場合の共通点にすぎないものであるから,この共通性のみをもって両意匠部分の類否判断を決定することはできない。
次に,共通点(C)の縦框の態様についても,角部の面取りが本願の出願前より一般に見受けられるものであることを考慮すると,この共通点は特段特徴のあるものとはいえず,意匠上高く評価することはできないものであるから,この共通点(C)が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は微弱であるといわざるを得ない。
そして,これらの共通点(A)から共通点(C)の態様によって生じる視覚的効果は,これらを部分意匠全体としてみても大きいものとはいえず,両意匠部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。

これに対し,差異点(ア)の上部連結部材の態様については,建物用扉の分野において,透光板体部が細長い扉であれば,透光板体部の上端部がフレームレスなものは既に見られるものの,透光板体部が扉の4割を占める本願意匠のような扉において,透光部分が扉の上端部までフレームレスで連続するものは,先行意匠に照らすところ見つけることができず,該部位の態様は引用意匠にはない本願意匠の特徴点であるとして需要者に別異な印象を与えるものといえるから,この差異点(ア)が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は一定程度認められるものである。
次に,差異点(イ)の下部連結部材の態様,及び差異点(ウ)の縦格子の態様については,左右縦框の下端部に縦框の厚みより幅の細い高さのある下部横桟を設け,この下部横桟上面切り欠き部に薄い縦格子及び透光板体部を嵌め込むことでこれらが確実に固定されているとの印象を与える本願意匠の態様と,透光板体部のみコの字状連結部材により固定され,厚みのある縦格子の固定については不確かな印象を与える引用意匠の態様とは,縦格子が下部連結部材の内側に収まるか,その外側に突出して設けられるのかの相違も含めて需要者に別異な印象を与えているものであるから,これらの差異点(イ)及び差異点(ウ)が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は大きいといえる。
次に,差異点(エ)の縦格子上端部のキャップ部の有無については,縦格子の上端部にキャップ部を冠着することで,各縦格子が下端部と同様に確実に固定されているとの印象を与える本願意匠の態様と,下端部と同様に厚みのある縦格子の固定については不確かな印象を与える引用意匠の態様とは,当該キャップ部が底面中央部分に略倒U字状の小さな切り欠き部を設けるといった造形上の細かな特徴をもつものであることも含めて,需要者に別異な印象を与えるものであるから,この差異点(エ)が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響も大きいものである。
そして,これらの差異点(ア)から差異点(エ)によって生じる視覚的効果は需要者に別異な印象を与えるものであって,それらが相まって生じる別異の印象は,両意匠部分の類否判断を決定付けるほど大きいものである。
一方,差異点(オ)の縦格子の数については,該部位の本数の増減は,この建物用扉の分野では,例を挙げるまでもなく常套的に行われている改変によるものにすぎず,この差異点(オ)が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は軽微なものである。

4.両意匠の類否判断
上記のとおり,両意匠の意匠に係る物品については一致し,同一の物品であると認められ,両意匠部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲についても一致するため同一であると認められるが,両意匠部分の形態については,共通点が未だ両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,差異点(オ)を除いた各差異点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きく,これら差異点が相まって生じる視覚的効果は,共通点のそれを凌駕して類否判断を支配し,両意匠部分は,意匠全体として視覚的印象を異にするものである。
したがって,本願意匠と引用意匠とは類似しないものと認められる。

第4 むすび

以上のとおりであって,本願意匠は,引用意匠に類似せず,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものであるから,本願については,原査定における拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。

別掲
審決日 2017-11-24 
出願番号 意願2016-18120(D2016-18120) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (L4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 住 康平 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 江塚 尚弘
竹下 寛
登録日 2018-01-12 
登録番号 意匠登録第1596509号(D1596509) 
代理人 野村 慎一 
代理人 藤本 昇 

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