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審決分類 |
審判 査定不服 2項容易に創作 取り消して登録 D5 |
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管理番号 | 1338195 |
審判番号 | 不服2017-12789 |
総通号数 | 220 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2018-04-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-08-30 |
確定日 | 2018-01-22 |
意匠に係る物品 | 洗面器 |
事件の表示 | 意願2016- 11579「洗面器」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,意願2016-11578号を本意匠とする平成28年(2016年)5月31日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品は,「洗面器」であり,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面に表されたとおりのものである。(別紙第1参照) 第2 原査定における拒絶の理由 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するというものであって,具体的には,この意匠登録出願の意匠に係る「洗面器」の分野においては,シンク部を種々の形状に置き換えることはこの出願前より広く行われているところ,本願意匠は,全体の基本形状を公知の下記の意匠1とし,シンク部を意匠2のシンク部に置き換えたにすぎないから,当業者であれば容易に創作することができたものといわざるを得ないとしたものである(以下,「シンク部」は「洗面ボウル部」という。)。 意匠1(別紙第2参照) 電気通信回線の種類 インターネット 掲載確認日(公知日) 2011年 9月12日 受入日 特許庁意匠課受入2011年 9月16日 掲載者 コーラー カンパニー 表 題 KOHLER: K-2660-1: Vox? rectangle vessel with faucet deck: Sinks: Bathr 掲載ページのアドレス http://www.us.kohler.com/onlinecatalog/detail.jsp?item=15185602&prod_num=2660-1 に掲載された「洗面器」の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HJ23029503号) 意匠2(別紙第3参照) 特許庁総合情報館が1990年 6月29日に受け入れた Waschtische 第2頁所載 「取付け洗面器」の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HD02001905号) 第3 請求人の主張の要点 1.本願意匠について 本願意匠は,丸みを帯びた外観の洗面器の縁を薄く削りとり,縁から洗面ボウル部までひとつながりの曲面を描くことで,意匠全体として,軽やかで柔らかな印象のデザインを目指し,創作したものである。 2.外観の形状について 意匠1は,本願意匠と同様に,平面視上部に水栓取付台座部を設け,洗面ボウル部周辺の縁を薄くした洗面器であり,両意匠の基本的な外観形状は共通しているが,意匠1は,角部に汚れが溜まりにくい程度に若干の丸みを帯びているものの,全体として,まっすぐな線を重視したデザインとなっており,薄い縁と,4つの面に分かれた洗面ボウル部を組み合わせ,すっきりとしたシャープさを感じさせるデザインとなっているのに対し,本願意匠は,外観に大きく丸みを帯びた形状とし,丸みを帯びた角部から,ひとつながりの洗面ボウル部が違和感なくつながって構成されるような面形状とすることで,全体として調和のとれた円形の広がりを感じさせる形状となっている。 3.洗面ボウル部の態様について 意匠2の洗面ボウル部の態様は,垂直な左右の側面と,垂直に立ち上がった背面,大きく下方に膨らんだ底面の4つの面からなり,これらの面を,側面視に表れるように「深いお椀形状」となるように構成されているのに対し,本願意匠の洗面ボウル部の態様は,洗面ボウル部全体が,滑らかに連なった緩やかな1つの曲面からなり,「浅い平皿形状」となるように構成されている。 本願意匠は,全体の調和のとれたデザインを重視したうえで,さっとひと拭きできる等清掃性に配慮するよう創作を行っているのに対して,意匠2は,独立した印象を与えるデザインを重視し,手洗い・洗面・洗髪・洗濯という行為の広がりに配慮するよう創作を行っている。すなわち,本願意匠と意匠2とは,創作の意図及びそれによって形成される具体的な形状が大きく異なる。 したがって,意匠2をもって,本願意匠の洗面ボウル部の形態がありふれていることを示すものではない。 4.「洗面ボウル部」と「洗面ボウル部以外」の切り分けについて 本願意匠のようなベッセルタイプの洗面器と,意匠2のようなセルフリムタイプの洗面器とでは,カウンター上に表れるボウル面の比率や設置される位置が異なることから,どのように水はねを防ぎ,水垢等を溜まりにくくするか,使用者が手洗いや洗面行為をする際に,どのような形状,深さや比率にしたら使いやすくなるのか等,工夫する点が大きく変わってくる。 このように,機能面においても,デザイン面においても,「洗面ボウル部」と「洗面ボウル部以外」は,一体不可分のものとして創作されるものであり,両者を切り分けてとらえること自体が,極めて不自然なものであると思料する。 5.むすび 以上のように,本願意匠は,意匠1及び意匠2に見られる公然知られた形態に基づき,容易に創作されるものではない。したがって,意匠法第3条第2項に該当するものではないと確信する。 第4 当審の判断 1.本願意匠 本願意匠は,意匠に係る物品を「洗面器」としたものであり,その用途は,洗面化粧台に設置される取り付け用洗面器である。 本願意匠の形態は,本体部を,略扁平隅丸直方体形状とし,その上面部に,上面視外周形状が略隅丸矩形状の洗面ボウル部を1つ,上端部に余地部を残し下端部及び左右端部を本体部の端部にそれぞれ近接して取り付け,その内周面中央やや背面部寄りに円形の排水孔を設け,洗面ボウル部の底面部は略ドーム状に本体部の底面側から突出したものとし,前記余地部の中央箇所に水栓取り付け用円形孔を1つ形成したものである。 具体的には,本体部の縦横の長さの比率は,約1:1.1で,洗面ボウル部の上面視外周形状の縦横の長さの比率は,約1:1.5で,本体部のリムの高さと洗面ボウル部の底面部の突出した部分の高さの比率は,約1.1:1である。また,洗面ボウル部の下端部及び左右端部の縁部は,本体部の外形状に沿ってごく薄く形成し,内周面は,左右の面は縁部から排水孔に向かってごく緩やかな浅い湾曲面をなし,前後の面は,正面側の面は縁部から緩やかな湾曲面で排水孔に繋がる一方,背面側の面は縁部からやや急傾斜の湾曲面で排水孔に繋がったものであり,さらに,洗面ボウル部の底面部のやや背面部寄り中央には,略短円筒形状の排水口部を突出して形成したものである。 2.引用意匠 (1)意匠1 意匠1は,「洗面器」に係るものであり,その用途は,洗面化粧台に設置される取り付け用洗面器である。 意匠1の本体部の形態は,略扁平隅丸矩形状とし,その上面部に,上面視外周形状が略隅丸矩形状の洗面ボウル部を1つ,上端部に余地部を残し下端部及び左右端部にそれぞれ近接して取り付け,下端部及び左右端部の縁部は,本体部の外形状に沿ってごく薄く形成し,前記余地部の中央箇所に水栓を1つ取り付けたものである。 (2)意匠2 意匠2は,「取付け洗面器」に係るものであり,その用途は,洗面化粧台に設置される取り付け用洗面器である。 意匠2の洗面ボウル部の形態は,上面視外周形状が略隅丸矩形状で,その内周面中央やや背面部寄りに円形の排水孔を設け,底面部を略ドーム状とし,そのやや背面部寄り中央に,排水口部を突出して形成したものである。 具体的には,洗面ボウル部の上面視外周形状の縦横の長さの比率は,約1:1.3で,本体部のリムの高さと洗面ボウル部の底面部の突出した部分の高さの比率は,約1:4.5であり,内周面は,左右の面は縁部から横帯状の垂直面を形成したあと排水孔に向かって傾斜面をなし,背面側の面は縁部から垂直面とし,その端部は左右の傾斜面に繋がったものである。なお,正面側の面は開示がないため不明である。 3.本願意匠の創作容易性について 本願意匠の創作容易性について検討する。 この種物品分野において,本体部の形態を,略扁平隅丸矩形状とし,その上面部に,上面視外周形状が略隅丸矩形状の洗面ボウル部を1つ,上端部に余地部を残し下端部及び左右端部を本体部の端部にそれぞれ近接して取り付け,下端部及び左右端部の縁部を,本体部の外形状に沿ってごく薄く形成したものは,意匠1にみられるように,本願出願前から公然知られているものであるから,本願意匠は,本体部及び洗面ボウル部の上面視外周形状の四隅の湾曲度合いに多少違いがあったとしても,創作が困難であるということはできない。 しかしながら,洗面ボウル部の内周面の態様において,本願意匠は,左右の面を,縁部から排水孔に向かってごく緩やかな浅い湾曲面とし,前後の面を,正面側の面は縁部から緩やかな湾曲面で排水孔に繋げる一方,背面側の面は縁部からやや急傾斜の湾曲面で排水孔に繋げた態様としたものであって,左右の浅い湾曲面を強調したものであるのに対し,意匠2は,内周面を,左右の面は縁部から横帯状の垂直面を形成したあと排水孔に向かって傾斜面とし,背面側の面は縁部から垂直面とし,その端部は左右の傾斜面に繋がったものであること,また,洗面ボウル部の深さにおいても,本体部のリムの高さと洗面ボウル部の底面部の突出した部分の高さの比率は,本願意匠は,約1.1:1であるのに対し,意匠2は,約1:4.5であって,意匠2は,本願意匠に比べてかなり深いものであることが見て取れ,両者の態様は異なるものであるから,本願意匠は,意匠2に基づいて容易に想到できたものとはいえないものである。 そうすると,洗面器の本体部の態様は,意匠1にみられるように本願出願前から公然知られたものであるが,洗面ボウル部の態様において,意匠2の態様には,本願意匠の縁部から排水孔に向かってごく緩やかな浅い湾曲面とし,前後の面を,正面側の面は縁部から緩やかな湾曲面で排水孔に繋げ,背面側の面は縁部からやや急傾斜の湾曲面で排水孔に繋げた態様は,本願意匠独自のものであって,他には見られないものであるから,本願意匠の洗面ボウル部は,意匠2に基づいて容易に想到できたものとはいえないものである。 よって,本願意匠は,意匠1を基礎とし,その一部(洗面ボウル部)を意匠2の公然知られた形態に置き換えたとしても,容易に導き出せるものではないから,当業者が容易に創作することができたものということはできない。 第5.むすび 以上のとおりであって,本願意匠は,原審が示した理由によっては意匠法第3条第2項に規定する意匠に該当しないものであり,その拒絶理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2018-01-09 |
出願番号 | 意願2016-11579(D2016-11579) |
審決分類 |
D
1
8・
121-
WY
(D5)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 樫本 光司 |
特許庁審判長 |
温品 博康 |
特許庁審判官 |
江塚 尚弘 内藤 弘樹 |
登録日 | 2018-03-02 |
登録番号 | 意匠登録第1600644号(D1600644) |