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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 J1
管理番号 1340183 
審判番号 不服2017-13434
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2018-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-09-11 
確定日 2018-04-02 
意匠に係る物品 超音波探触子 
事件の表示 意願2016- 22641「超音波探触子」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,2016年(平成28年)10月18日の意匠登録出願であって, その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「超音波探触子」とし,その形態は,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当する(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることのできない意匠)としたものであって,拒絶の理由に引用した意匠(以下「引用意匠」という。)は,本願出願前,日本国特許庁発行の意匠公報(意匠公報発行日:平成27年(2015年)5月25日)に掲載された意匠登録第1524151号(意匠に係る物品,超音波診断機用プローブ)であって,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)は,同公報の図面に記載されたとおりのものである。(別紙第2参照)

第3 当審の判断
1.本願意匠と引用意匠の対比
(1)本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」ともいう。)の意匠に係る物品
本願意匠と引用意匠の意匠に係る物品は,本願意匠は「超音波探触子」で引用意匠は「超音波診断機用プローブ」であって,表記は異なるが,いずれも,医療用の超音波診断機に接続して使用される「超音波探触子」といえるから,両意匠の意匠に係る物品は,共通する。

(2)本願意匠と引用意匠の形態
両意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。(以下,対比のため,本願意匠の図面における正面,平面等の向きを,引用意匠にもあてはめることとする。)
(2-1)共通点
全体について,先端部から尻窄まり状に漸次絞り込んだ略扁平紡錘形状の胴体部の先端部に細帯環状部材を介して略扁平ドーム形状の圧電素子カバー部を形成し,後端部に略円錐台筒状のケーブルカバー部を接続したものであって,
具体的な態様として,
ア.胴体部の先端部近くがラッパ状に広がったものである点,
イ.胴体部の平面部上下中央の先端部寄りに略横長長円形状のマーク部を1つ形成したものである点,
ウ.圧電素子カバー部の平面視及び側面視の外形状において,平面視は略倒U字状で,側面視は上下端部がやや水平な略縦長楕円形状である点において共通している。
(2-2)相違点
具体的な態様として,
ア.胴体部の正面部中央における縦横の長さの比率について,本願意匠は,約1:1.1であるのに対し,引用意匠は,約1:1.4であり,本願意匠に比べて引用意匠は横長である点,
イ.胴体部の正面視の外形状について,本願意匠は,上下辺の先端部が小さく括れた後,なだらかに傾斜し先端部から約3分の2の位置から大きく傾斜して,後端部を先窄まり状としたものであるのに対し,引用意匠は,上下辺の先端部から若干下がった位置からやや大きく括れた後,なだらかに傾斜し先端部から約6分の5の位置から急傾斜して,段差状に括れ,後端部を先窄まり状としたものである点,
ウ.胴体部とケーブルカバー部の接続部分の段差の態様について,本願意匠は,僅かな段差しかなくほぼ一体状に連続したものであるのに対し,引用意匠は,垂直状の大きな段差を形成したものである点,
エ.圧電素子カバー部の正面視の外形状について,本願意匠は,先端部の上下端部を後方に湾曲して,上下辺は傾斜状としたものであるのに対し,引用意匠は,先端部の上下端部を後方に屈曲して,上下辺は僅かに傾斜状としたものである点,
オ.胴体部の正背面部の凹みの有無について,本願意匠は,正背面部の略中央に,それぞれ横長長円形状の浅い凹みを1つずつ形成しているのに対し,引用意匠は,凹みは形成していない点,
カ.嵌合部の有無について,本願意匠は,嵌合部は形成していないのに対し,引用意匠は,胴体部の正面部の後端部寄りに,略変形レモン形状の嵌合部を1つ形成している点。

2.類否判断
以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価・総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。

(1)意匠に係る物品
両意匠の意匠に係る物品は,共通している。

(2)両意匠の形態
以下,両意匠の形態について検討する。
(2-1)共通点の評価
前記1.(2-1)の共通点については,全体を,先端部から尻窄まり状に漸次絞り込んだ略扁平紡錘形状の胴体部の先端部に細帯環状部材を介して略扁平ドーム形状の圧電素子カバー部を形成し,後端部に略円錐台筒状のケーブルカバー部を接続した態様は,この種物品の分野において,従来から普通に見られるありふれた態様といえるものであり,また,ア.乃至ウ.の各部の態様についても,両意匠のみに共通する態様とはいえないものであるから,これらの共通点が両意匠の類否判断に与える影響は小さいといえる。
(2-2)相違点の評価
前記1.(2-2)の相違点のうち,ア.については,本願意匠は,縦横の長さの比率がほぼ1対1であり,需要者にずんぐりとした視覚的印象を与えるものであるのに対し,引用意匠は,横長でスマートな視覚的印象を与えており,また,胴体部は,使用する際に使用者が把持する部分であって,掴み具合が操作性に直接関わるものであるから,需要者の関心を惹く部分であるといえ,この相違点が両意匠の類否判断に与える影響は大きいものである。
次に,相違点イ.については,特に,先端部の括れの態様と中央付近から後端部に掛けての傾斜の態様の相違が顕著であり,明らかに需要者に与える視覚的印象は異なるものであるから,この相違点が両意匠の類否判断に与える影響は大きいものである。
また,相違点ウ.については,本願意匠は,ほとんど段差がないものであって,胴体部とケーブルカバー部が滑らかに繋がっているのに対し,引用意匠は,胴体部とケーブルカバー部の接合部に明らかな段差が設けられているため,相違点イ.の後端部の違いとも相俟って,視覚的印象が異なるものであり,この相違点は両意匠の類否判断に影響を与えるものといえる。
そして,相違点エ.については,圧電素子カバー部の先端部の上下端部を湾曲させたものであるか,屈曲させたものであるかの相違は,圧電素子カバー部が最も目につきやすい箇所であることから,需要者が関心を持って観察するところであって,この相違点は両意匠の類否判断に一定の影響を与えるものである。
さらに,相違点オ.及び相違点カ.については,いずれも部分的な相違ではあるが,胴体部の比較的目立つ箇所における相違であることから,これらの相違点は両意匠の類否判断に僅かではあるが影響を与えるものである。

以上のとおり,相違点ア.及びイ.が両意匠の類否判断に与える影響は大きく,その他の相違点も両意匠の類否判断に影響を与えるものであるから,相違点全体が相まって両意匠の類否判断に与える影響は大きい。

(3)小括
したがって,両意匠は,意匠に係る物品が,共通し,両意匠の形態において,相違点が両意匠の類否判断に与える影響は共通点のそれを凌駕しており,両意匠は,需要者に与える視覚的印象が異なるというべきであるから,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。

第4 むすび
以上のとおりであって,原査定の引用意匠をもって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,原査定の拒絶の理由によって,本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2018-03-14 
出願番号 意願2016-22641(D2016-22641) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (J1)
最終処分 成立  
前審関与審査官 杉山 太一石坂 陽子 
特許庁審判長 温品 博康
特許庁審判官 江塚 尚弘
内藤 弘樹
登録日 2018-05-11 
登録番号 意匠登録第1605556号(D1605556) 
代理人 上田 知恵 
代理人 小谷 悦司 
代理人 小谷 昌崇 
代理人 並川 鉄也 

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