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審決分類 |
審判 査定不服 意10条1号類似意匠 取り消して登録 D4 |
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管理番号 | 1340194 |
審判番号 | 不服2018-496 |
総通号数 | 222 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2018-06-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-01-15 |
確定日 | 2018-04-16 |
意匠に係る物品 | エアーコンディショナー |
事件の表示 | 意願2016- 25596「エアーコンディショナー」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成28年(2016年)11月25日の意匠登録出願であって、平成29年(2017年)5月11日付けの拒絶理由の通知に対し、同年6月21日に意見書が提出されたが、同年10月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成30年(2018年)1月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本願意匠 本願意匠の意匠に係る物品は本願の願書の記載によれば「エアーコンディショナー」であり、本願意匠の形態は願書に添付した図面に記載されたとおりである(別紙第1参照)。 第3 原査定の拒絶の理由及び本意匠 1 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、本願意匠が、願書に記載した本意匠(平成28年(2016年)11月25日付けの出願番号特定通知書により意願2016-25594と通知された意匠登録出願の意匠。)に類似する意匠と認められないので、意匠法第10条第1項の規定に該当しないとの理由であって、具体的には以下のとおりである。 「本願意匠は、「エアーコンディショナー」に係る意匠であって、願書に本意匠として記載された意匠(意願2016-25594)とは、意匠に係る物品が共通します。 両意匠は、正面が略正方形状の箱状体で、周側面の中央に横長長方形状のルーバー部が設けられ、正面の中央に、略正方形状のパネルが、その周辺と同じ高さになるように設けられた態様が共通しています。 一方、両意匠の基本形状をより具体的に見ると、本願意匠は、正面視角丸であり、正面がなだらかに盛り上がっているのに対し、本意匠は、各面が平滑であって、互いに直角に交わっており、また、両意匠における正面中央の略正方形状パネル周囲の態様について、本願意匠は、パネルの根元に向かって湾曲した面に二重に囲まれているのに対し、本意匠は、台形状の平滑な斜面に囲まれているという違いがあります。 これらの違いは、本物品の使用時に目に付きやすい部位に係るものであるから、類否判断に大きな影響を及ぼしており、本願意匠は全体として看者に直線的な造形であるという印象を与えるのに対し、本意匠は曲線的な造形であるという印象を与えるものです。 したがって、両意匠は、看者に別異の印象を与えるものであり、互いに類似しないものと認められます。」 2 本意匠 本意匠に係る出願は、本願と同日の平成28年(2016年)11月25日に意匠登録出願がなされ、平成29年(2017年)6月30日に意匠権の設定の登録がなされて、同年7月24日に意匠公報が発行されている。 本意匠の意匠に係る物品は同公報の記載によれば「エアーコンディショナー」であり、本意匠の形態は同公報の【図面】に記載されたとおりである(別紙第2参照)。 第4 本意匠の表示を削除する手続補正 拒絶の理由(前記第3の1)に対して請求人は意見書を提出し、本願意匠と本意匠は類似し、本願意匠が本意匠の関連意匠として登録となる旨主張したが、同主張を採用することなく拒絶の査定がなされたため、同査定を不服として審判を請求し、「原査定を取消す。この出願の意匠は登録をすべきものである」との審決を求めた。そして、審判請求後、平成30年(2018年)3月16日に手続補正により本願の本意匠の表示を削除した。 第5 当審の判断 以下、本願意匠が第10条第1項の規定に該当するか否かについて検討する。 1 本願意匠と本意匠の対比 (1)意匠に係る物品の対比 本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」ともいう。)の意匠に係る物品は、いずれも「エアーコンディショナー」であり、一致する。 (2)形態の対比 両意匠の形態を対比すると、主として、以下の共通点と相違点が認められる。 ア 形態の共通点 (A)全体が、正面が略正方形で厚みの薄い略直方体状であって、正面中央に配された正面パネル部の周囲に空気吸込部を設けて、平面、底面、左側面及び右側面に空気吹出部を設けたものである。 (B)正面パネル部とその周囲の態様 正面から見て、正面パネル部は略正方形であって、空気吸込部の外周も略正方形である。 (C)空気吹出部の態様 4箇所の空気吹出部は、全て同形同大であって、横長長方形状のフラップ板で覆われている。 イ 形態の相違点 (a)正面前方への膨出の有無及び角部の形状 本願意匠の正面の外周寄りは、中央方向にいくにつれて緩やかに膨出しており、平面視では略扁平逆台形状に盛り上がっている(底面視、左側面視及び右側面視でも同様である)。そして、正面の4つの角部はアール状に形成されており、例えば平面と右側面の間は丸面状に形成されている(平面と左側面の間、底面と両側面の間も同様である)。 これに対して、本意匠では、そのような膨出はなく、正面の角部もアール状に形成されておらず、例えば平面と右側面は直角に連続している。 (b)空気吸込部及び正面パネル部の形状 本願意匠の空気吸込部は、正面視2重に形成されており、「内部機構を省略したA-A’断面図」には正面パネル部の上下に弧状の仕切り板が2つずつ形成されて、正面から見たときに仕切り板の角部には稜線が表れていない。そして、正面から見た正面パネル部の外周、内側の仕切り板の外周、及び外側の仕切り板の外周が、いずれも角丸の正方形状に表されている。 これに対して、本意匠の仕切り板は、「内部機構を省略した正面図中央縦断面図」によれば傾斜した直線状であり、正面から見たときに仕切り板の角部に稜線が表れている。 (c)空気吹出部の形状 本願意匠では、平面の空気吹出部の右端寄りに小さな縦長長方形区画部が形成されており、底面の空気吹出部の左端寄り、左側面の空気吹出部の下端寄り、及び右側面の空気吹出部の上端寄りにも同形の区画部が形成されているが、本意匠の空気吹出部にはそのような区画部は形成されていない。 (d)背面の形状 本意匠の背面には、外周より一回り小さい突出部が形成され、平面から見ると当該突出部は略扁平凸状に表されているが、本願意匠にはそのような突出部は形成されておらず、背面と平面の間に細幅のテーパー面が形成されている。 2 類否判断 (1)意匠に係る物品の類否判断 本願意匠と引用意匠の意匠に係る物品は、同一である。 (2)形態の共通点及び相違点の評価 室内の天井面に取り付けられるエアーコンディショナーの通常の使用状態において、需要者がエアーコンディショナーを観察するに当たっては、そのエアーコンディショナーを主として正面方向又は正面斜め方向から眺めることとなり、正面の構成態様、特に、正面パネル部とその周囲の空気吸込部の構成態様や、正面から見た各部の構成態様について注意を払うことになる。したがって、エアーコンディショナーの物品分野の意匠の類否判断においては、上記の項目を特に評価し、かつそれ以外の項目も併せて、各項目を総合して意匠全体として形態を評価することとする。 ア 形態の共通点の評価 共通点(A)ないし(C)については、全体を正面が略正方形で厚みの薄い略直方体状とし、正面中央に略正方形の正面パネル部を配して、その周囲に外周が略正方形である空気吸込部を設けるとともに、平面、底面、左側面及び右側面に横長長方形状のフラップ板で覆われた空気吹出部を設けた態様を有する意匠が、エアーコンディショナーの物品分野の意匠において本願の出願前に普通に見受けられることから、需要者がそのような態様に対して注意を惹くとはいい難いので、共通点(A)ないし(C)が意匠全体の美感に与える影響は小さいというほかない。 イ 形態の相違点の評価 これに対して、両意匠の形態の相違点については、以下のとおり評価され、相違点を総合すると、意匠全体の美感に与える影響は大きいといわざるを得ない。 まず、相違点(a)で指摘した膨出の有無及び角部の形状についての相違は、本願意匠の膨出とアール状の角部が本願意匠を正面斜め方向から眺めた際に一見して観察されるものであって、膨出がなく角部が直角である本意匠と比べて異なる視覚的印象を需要者は抱くこととなる。したがって、相違点(a)が意匠全体の美感に与える影響は大きい。 次に、相違点(b)については、本願意匠では、空気吸込部が断面視弧状の仕切り板によって正面視2重に形成されて、仕切り板の角部に稜線が表れておらず内側及び外側の仕切り板の外周が角丸の正方形状に表されていることから、いわば2つの角皿が重なったような視覚的印象を呈しているのに対して、本意匠においては、仕切り板が断面視直線状であって角部に稜線が表れていることから、いわば額縁などでよく見られる留継ぎ状の形状を呈しているから、需要者に全く異なる視覚的印象を与えるというべきである。したがって、相違点(b)が意匠全体の美感に与える影響は大きい。 他方、差異点(c)で指摘した空気吹出部の形状についての相違は、縦長長方形区画部が小さいために意匠全体で観察した際に目立つ要素ではなく、また、差異点(d)で指摘した背面の形状についての相違も背面が天井に取り付けられる面であるから需要者はそれほど注目しないので、差異点(c)及び差異点(d)が意匠全体の美感に与える影響は小さい。 (3)両意匠の類否判断 そうすると、(a)及び(b)の相違点は、いずれも意匠全体の美感に大きな影響を及ぼすものであり、相違点(c)及び相違点(d)の意匠全体の美感に与える影響が小さいものであるとしても、両意匠の相違点を総合すると、意匠全体の美感に及ぼす影響は大きい。これに対して、共通点(A)ないし(C)が意匠全体の美感に与える影響は小さい。 したがって、両意匠は、意匠に係る物品は同一であるが、両意匠の形態が需要者に異なる美感を起こさせるものであるから、両意匠は類似しない。 3 本願意匠が第10条第1項の規定に該当するか否かについて 本意匠は、本願の意匠登録出願人の意匠登録出願に係る意匠であるから、意匠法第10条第1項に規定されている本意匠の要件を満たしている。 また、本願意匠と本意匠は、本願意匠の意匠登録出願の日が本意匠の意匠登録出願の日以後であって本意匠の意匠公報の発行の日前であるから、本願意匠の意匠登録出願の日は、意匠法第10条第1項に規定されている関連意匠の意匠登録出願の日の要件を満たしている。 しかし、前記3のとおり、本願意匠は本意匠に類似するものとは認められないので、本願意匠は、意匠法第10条第1項に規定されている、本意匠に類似する意匠(関連意匠)の要件を満たさない。 したがって、本願意匠は、意匠法第10条第1項の規定に該当しない。 そして、前記第4のとおり、本願は、平成30年(2018年)3月16日に願書の本意匠の表示を削除する手続補正がなされているから、原審の拒絶の理由によっては拒絶することはできない。 第6 むすび 以上のとおり、本願意匠は、意匠法第10条第1項の規定に該当しないから、本意匠の関連意匠としては意匠登録を受けることができないものであって、願書の本意匠の表示を削除する手続補正がなされているから、原審の拒絶の理由によっては拒絶することができない。 また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2018-04-04 |
出願番号 | 意願2016-25596(D2016-25596) |
審決分類 |
D
1
8・
3-
WY
(D4)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 松下 香苗、伊藤 翔子 |
特許庁審判長 |
内藤 弘樹 |
特許庁審判官 |
小林 裕和 渡邉 久美 |
登録日 | 2018-04-27 |
登録番号 | 意匠登録第1604811号(D1604811) |
代理人 | 川越 弘 |
代理人 | 渡邉 知子 |
代理人 | 原田 雅美 |