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審決分類 |
審判 査定不服 2項容易に創作 取り消して登録 F4 |
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管理番号 | 1340200 |
審判番号 | 不服2017-14162 |
総通号数 | 222 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2018-06-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-09-25 |
確定日 | 2018-04-17 |
意匠に係る物品 | 化粧品用チューブ容器 |
事件の表示 | 意願2016- 26329「化粧品用チューブ容器」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとして,平成28年(2016年)12月5日付けで意匠登録出願されたものであり,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「化粧品用チューブ容器」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」ともいう。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとし,「各図の実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」(以下,当該部分を「本願部分」という。)としたものである(別紙第1参照)。 第2 原査定における拒絶の理由 原査定における拒絶の理由は,本願意匠は,下記に示すように,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって,概略以下のとおりである。 本願意匠に係る物品が属する包装用容器の分野においては,容器の開口部にスポンジ材の塗布具を設けることは,本願出願前よりごく普通に行われており,なかんずくチューブ形状の容器の開口部にスポンジ材の塗布具を設けた態様も,下記引例意匠1に見られるように本願出願前に公然知られていた。 本願意匠は,本願出願前に公然知られた下記引例意匠2の塗布具及び蓋嵌合部分の形態をほとんどそのまま化粧品用チューブ容器の当該部分の形態として表したにすぎず,本願意匠に係る物品分野の通常の知識を有する者が容易に創作できたものと認められる。 引例意匠1: 特許庁発行の公開実用新案公報記載 昭和53年実用新案出願公開第151846号 第1図及び第4図に表された「ペースト状物塗布用容器」の意匠 引例意匠2: 特許庁発行の意匠公報記載 意匠登録第0992676号の意匠 第3 請求人の主張の要点 1.対比 (1)構成態様について 本願意匠のヘッドの上面は,中央を頂点として上方にわずかな盛り上がりを呈し,かつ,端部の角が丸められて側面との境界があいまいにされている。 他方,引例意匠2のヘッドの上面は平らであり,側面との間に極めてシャープに尖ったエッジを形成しているという相違点がある。また,参考意匠は,ドーム状であって半球状に近いものである。 (2)用途及び機能について 本願意匠であれば,ヘッド上面の盛り上がりが僅かであるため化粧品を均一に広げつつ柔らかい肌に効率的に塗布することができる。 一方,引例意匠2のヘッドは平らであることから,塗布物を柔らかい肌に塗布することには適していない。 2.本願意匠の創作性 審査官は,ヘッド上面を湾曲面とすることは形態の損傷を防ぐ等のために行われる常套的な形態処理手法であり,塗布具の塗布面を湾曲面とすることも本願出願前よりごく普通に行われていたとしている。 しかしながら,ヘッド上面を湾曲面にすれば形態の損傷を防げるとする根拠はないし,参考意匠のヘッドは,脇などの球面に近い面に塗布する場合の利便を考慮した造形である。また,本願意匠のヘッドの形状は,上述の特徴を有するものであり,本願出願前よりごく普通に行われていた本願意匠の物品の分野における塗布具の湾曲面の形状とは異なるものである。 3.むすび したがって,本願意匠は,本願出願前に引例意匠2,参考意匠及びその他の公知意匠から容易に導き出されたものとは言えず,当業者が容易に創作できたものではない。 第4 当審の判断 以下,本願意匠が意匠法第3条第2項の規定に該当するか否か,すなわち,本願意匠が,この意匠の属する分野における通常の知識を有する者が容易に創作することができたものであるか否か,について検討する。 1.本願意匠の認定 (1)意匠に係る物品 意匠に係る物品は,「化粧品用チューブ容器」である。 (2)本願部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲 本願部分は,容器本体の上面,ヘッド部及び蓋嵌合部であり,ヘッド部はスポンジからなり,浸潤させたペースト状の化粧品を直接肌に塗布する部分である。 (3)本願部分の形態 全体の基本的な構成態様は,庇状(ひさしじょう)にした円板状の容器本体上面部に,円柱状の蓋嵌合部を載せ,その上面にそれより直径が一回り小さい円板状のヘッド部が突出したものであって,各部の具体的な態様は,ヘッド部は,その上面の中央に円孔を設けたものであり,上面は中央に向けて緩やかに盛り上がった傾斜面とし,直径と高さの比率を最も盛り上がった部分において約6対1,最も低い部分において約8対1とし,また,上面と周側面との境界となる稜線を丸面取りし,蓋嵌合部については,直径と高さの比率を約6対1とし,周側面にネジ山を設けたものである。 2.引例意匠1,引例意匠2及び参考意匠の認定 (1)引例意匠1 引例意匠1は,その意匠に係る物品を「ペースト状物塗布用容器」とし,本願部分に相当する部分の形態は,円板状のヘッド部を,直径の長さを同じくする支持体の上面に設け,支持体の周側面を蓋嵌合部が覆うものであって,各部の具体的な態様は,ヘッド部については,直径と高さの比率を約4対1とし,上面が平らで,中央に円孔を設けたものであり,蓋嵌合部については,図4においては,直径と高さの比率を約2対1とし,周側面にネジ山を設けたものである。 (2)引例意匠2 引例意匠2は,その意匠に係る物品を「包装用容器」とし,本願部分に相当する部分の形態は,庇状にした円板状の容器本体上面部に,円柱状の蓋嵌合部を載せ,その上面にそれより直径が一回り小さい円板状のヘッド部が突出したものであって,各部の具体的な態様は,ヘッド部については,スポンジからなるものであって,上面は平らで,直径と高さの比率を約8対1とし,上面の中央に円孔を設けたものであり,蓋嵌合部については,直径と高さの比率を約6対1とし,周側面にネジ山を設けたものである。 (3)参考意匠 参考意匠は,その意匠に係る物品を「包装用押し出しチューブ」とし,本願部分に相当する部分の形態は,円柱状の蓋嵌合部の上面にドーム状のヘッド部が突出したものであって,各部の具体的な態様は,ヘッド部については,周側面から上面中央にかけて一体的な丸みがあり,上面の中央に円孔を設けたものであり,蓋嵌合部については,周側面にネジ山を設けたものである。 3.創作容易性の判断 庇状にした円板状の容器本体上面部に,円柱状の蓋嵌合部を載せ,その上面にそれより直径を一回り小さくした円板状のスポンジからなるヘッド部が突出した態様は,引例意匠2に見られるとおり本願出願前に公然知られたものであり,ヘッド部の上面の中央に円孔を設けた態様や,蓋嵌合部の周側面にネジ山を設けた態様も従来から知られたものといえる。 しかしながら,ヘッド部の上面について,中央に向けて緩やかに盛り上がった傾斜面とした態様は,引例意匠1及び引例意匠2には見られないものであり,参考意匠においては周側面から一体的に丸みのあるドーム状としたものであるから,これをもって本願部分の形態を,本願出願前に公然知られた形態とはいえない。そして,この上面の相違は,本願意匠の属する分野において,ありふれた手法を用いて僅かに改変した程度のものといえる証拠もない。 そうすると,本願部分の形態は,公然知られた形態に基づいて容易に導き出すことができるものではないから,本願意匠は,容易に創作することができたものということはできない。 第5 むすび 以上のとおりであって,本願意匠は,意匠法第3条第2項に規定する,意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができた意匠に該当しないので,原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2018-04-05 |
出願番号 | 意願2016-26329(D2016-26329) |
審決分類 |
D
1
8・
121-
WY
(F4)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 上島 靖範、下村 圭子 |
特許庁審判長 |
温品 博康 |
特許庁審判官 |
正田 毅 橘 崇生 |
登録日 | 2018-05-11 |
登録番号 | 意匠登録第1605415号(D1605415) |
代理人 | 西木 信夫 |
代理人 | 松田 朋浩 |