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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 L3
管理番号 1342058 
審判番号 不服2017-17759
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2018-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-11-30 
確定日 2018-07-03 
意匠に係る物品 柵 
事件の表示 意願2016- 28119「柵」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
平成28年12月26日 意匠登録出願
平成29年 5月 2日付け 拒絶理由通知書
平成29年 6月19日 意見書提出
平成29年 9月 1日付け 拒絶査定
平成29年11月30日 審判請求書提出

第2 本願意匠
本願は、平成28年(2016年)12月26日の意匠登録出願(意願2016-028119)であって、その意匠(以下「本願意匠」という。)は、願書及び願書に添付した図面の記載によれば、意匠に係る物品は「柵」であり、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」ともいう。)は、願書の記載及び願書に添付した図面に表されたとおりのものである(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由
原査定における平成29年5月2日付けで通知した拒絶の理由は、本願意匠が、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当するというものであって、具体的には、次のとおりである。
「この意匠登録出願の意匠は、柵にかかるものですが、この種物品において、断面やや扁平な矩形状の板状体の笠木と支柱から構成され、全体として略倒コの字状としたものが、【公知意匠1】に見られるように、本願の出願前に公然と知られているところです。
また、両側の角部に弧状の接続部を設けて、笠木及び支柱と一体状に形成したものが、【公知意匠2】に見られるように、本願の出願前に公然と知られているところです。
そうすると、本願の意匠は、本願の出願前に公然と知られた【公知意匠1】をほとんどそのまま表し、その両側の角部を単に【公知意匠2】の接続部に置き換えて表した程度にすぎませんので、当業者であれば容易に創作をすることができた意匠と認められます。

【公知意匠1】
特許庁意匠課が1991年 5月27日に受け入れた
エクステリア総合カタログ′91 1991年 3月31日
第643頁所載
さくの意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HC04008627号)

【公知意匠2】
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第0924960号の意匠
(意匠に係る物品:柵)」

第4 請求人の主張の要点
これに対し、請求人は、審判を請求し、本願意匠の創作非容易性について要旨以下のとおり主張した。
1 本願意匠が登録されるべき理由
(1)本願意匠と引用意匠(公知意匠1及び2)との比較、検討
本願意匠と公知意匠1及び公知意匠2とを比較、検討する。
ア)公知意匠1について
公知意匠1は、全体形状が倒コ字形である概略構成について本願意匠と共通しているとしても、全体の正面視縦横寸法比率、縦横部材の断面形状、笠木底面の態様など各部の具体的な態様が明らかに相違している。
すなわち、
全体の正面視縦横寸法比率は、本願意匠が、縦横同寸法であって下辺を切り欠いた正方形状であるのに対して、公知意匠1は、斜視方向の写真版において上辺笠木の長さが左右の縦支柱より長く、正面視した場合に横長四角形状に表れるものであって、全体の基本形状に明らかな相違がある。
また、縦横構成部材の断面形状についても、公知意匠1が約1:2であるのに対して、本願意匠は約1:3であって、より薄板状に形成している差異がある。
さらに、笠木底面の態様について、本願意匠が角部の接続部材に連結した笠木の下面凹部を蓋部材で塞ぐ構成としているのに対して、公知意匠1は笠木下面の態様が明らかではない。
全体を1つの部材で一体に形成している公知意匠1においては、笠木下面も他の面と異なる態様ではないとも想定されるが、この点が明らかでない公知意匠1に基づいて、本願意匠を容易に創作することができたとする原審拒絶理由には合理的な理由がない。
以上のように、公知意匠1は、本願意匠と全体の正面視縦横寸法比率、縦横部材の断面形状、笠木底面の態様など意匠全体にわたって明らかな相違があり、この公知意匠1に基づいて、本体上辺角部を公知意匠2の接続部材に置き換えて表したとしても、本願意匠を創作することはできない。
イ)公知意匠2について
本願意匠の上辺角の接続部材は、略4分の1円弧状に形成した角部分のみに接続部材が表れるようにコンパクトに構成した点に創意がある。
これに対して公知意匠2は、接続部材の両端(縦支柱方向及び横笠木方向)に直線状の接続部を延長形成した、多くの接続部材に見られる態様のものであって、本願意匠とは造形志向が異なり構成が明らかに相違している。
また、接続部材の断面形状も、本願意匠は縦横寸法比率が約1:3の扁平な形状であるのに対して、公知意匠2は同比率が約1:1.5の四角棒に近い形状であって、明らかに相違している。
したがって、公知意匠1の本体上辺角部に公知意匠2の接続部を置き換えて表したとしても、本願意匠のコンパクトな接続部とは共通しない両端が縦横方向に延長した形状であって、かつ、断面形状が扁平な本願に対して四角棒に近い厚みのある接続部となり、本願意匠を創作することはできない。

2 むすび
以上詳述したとおり、原審拒絶理由は、全体を一つの部材で形成した公知意匠1について、その角部を他の部材に置き換えることが、当業者にとってありふれた手法であることについて、何ら言及せず具体的な根拠も示さずに本願意匠を容易に創作することができたと判断している点で不当であり、かつ、公知意匠1及び2と本願意匠には、創作非容易性の規定を適用し得る範囲を超えた明かな相違があり、たとえ、「公知意匠1をほとんどそのまま表し、その両側の角部を意匠2の接続部に置き換えて表した」としても、本願意匠とは、全体構成、各部の具体的な態様が大きく異なる意匠しか創出されず、本願意匠が、公然知られた意匠1及び2から、容易に創作することができた意匠に該当しないことは明らかである。

第5 当審の判断
請求人の主張を踏まえ、本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性、すなわち、本願意匠が容易に創作することができたか否かについて、検討し、判断する。
1 本願意匠
本願意匠は、具体的には、(ア)扁平な細長矩形状の板状体の笠木材(水平方向)と支柱材(垂直方向)を接続部材で繋ぎ、全体として一定の厚みから成る正面視略倒コの字状とした柵であって、(イ)全体の縦横比率は約1:1とし、(ウ)笠木及び支柱の厚みと奥行き幅の比率(端面の縦横比)は約1:3としたものであり、(エ)正面視で上端両脇に設けられた、接続部材は笠木及び支柱と同様の厚みと奥行き幅で正面視略円弧状に湾曲した板状体で、柵の角部を形成し、その縦横比は約1:1であって、厚みに対する湾曲部の縦幅の比率は、約4:7であって、(オ)笠木材の下側面は、奥行き幅より幅の狭い帯状材が上下端部を僅かに残して長手方向いっぱいに設けられているものである。

2 引用意匠
本願意匠の向きに合わせて公知意匠1及び公知意匠2を認定する。
(1)公知意匠1(別紙第2参照)
意匠に係る物品は「柵」であり、その形態は、全体は、一定の厚みから成る扁平な板状体を屈曲して成る一繋がりの構成の正面視略倒コの字状の柵であって、全体の縦横幅は左上斜め方向から見た写真図版のみで示されたものであるから、正確な縦横比率は不明であるが、手前側の左側支柱部(垂直方向)より笠木部(水平方向)が長いので全体が横長のものと認められ、笠木部及び左右の支柱部を構成する板状体は下端両脇の板状体端部の形態から、端面は略細幅矩形状のものと認められるが、その縦横比は不明であり、上端両脇の角部は隅切り状で、角張っており、2回屈曲されて笠木部から支柱部に連なり、笠木部の下側面の態様は、不明である。
(2)公知意匠2(別紙第3参照)
意匠に係る物品は「柵」であり、矩形状の板状体の笠木材と支柱材を接続部材で繋ぎ、全体として一定の厚みから成る正面視略倒コの字状とし、下端寄りに横桟を配し、その上方に略X字状の斜交いの桟材を配した柵であって、全体の縦横比率が約1:2.5である横長のものであって、笠木材及び支柱材の厚みと奥行き幅の比率(端面の縦横比)は約3.5:5としたものであり、正面視で上端両脇の接続部材は、略円弧状に湾曲し、縦方向下方に僅かに直線部が形成された板状体で、柵の角部を形成し、その縦横比は約2.5:2であり、厚みに対する湾曲部の縦幅と直線部の比率は、約1:2:0.5であって、厚みと奥行き幅の比率は笠木及び支柱と同様に約3.5:5としたものである。

3 本願意匠の創作容易
公知意匠1及び公知意匠2に基づいて、「柵」の物品分野において周知の創作手法から容易に本願意匠が創作できたかについて検討する。
(1)本願意匠の創作容易性の判断
まず、公知意匠1及び公知意匠2の形態は、それぞれ前記2のとおりであるが、本願意匠の前記1の(ア)は基本的構成態様に関わるところであり、「柵」の物品分野においてはごく普通に見受けられる形状であって、公知意匠2にも見受けられる。
次に、前記1の(イ)の形態については、全体の正面においての縦横比率であって、本願意匠に見られる、縦横比率が約1:1の形態は、前記2のとおり、横長のものである公知意匠1及び公知意匠2には表されていない。
また、前記1の(ウ)の形態については、笠木及び支柱の厚みと奥行き幅の比率であって、本願意匠は約1:3としたものであるが、公知意匠1(不明)及び公知意匠2(約3.5:5)とは、異なっている。
そして、前記1の(エ)の形態については、正面視で上端両脇に設けられた、接続部材の具体的態様であって、公知意匠1に接続部材はなく、公知意匠2の接続部材は、略円弧状に湾曲し、縦方向下方に僅かに直線部が形成された板状体で、その縦横比は約2.5:2であり、厚みに対する湾曲部の縦幅と直線部の比率は、約1:2:0.5で、その厚みと奥行き幅の比率は約3.5:5であって、本願意匠のように湾曲部の縦方向下方に直線部のない、縦横比が約1:1で、厚みに対する湾曲部の縦幅の比率が約4:7で、厚みと奥行き幅の比率が約1:3の形態は、表されていない。
さらに、前記1の(オ)の形態については、笠木材の下側面に、奥行き幅より幅の狭い帯状材が上下端部を僅かに残して長手方向ほぼいっぱいに設けられた形態については公知意匠1及び公知意匠2のいずれにも表されていない。
したがって、本願意匠の形態のうち前記1の(イ)ないし(オ)の形態について、公知意匠1及び公知意匠2に表されているとはいえないから、公知意匠1をほとんどそのまま表し、その両側の角部を単に公知意匠2の接続部に置き換えて本願意匠が創作できたということはできない。
加えて、公知意匠1及び公知意匠2に基づいて、「柵」の物品分野において周知の創作手法から容易に本願意匠が創作できたかについて、さらに検討する。
確かに、前記1の(イ)の形態については、全体の縦横比率が約1:1であるような形態はよく見受けられ、公知意匠1の縦横比率を僅かに変更して、導き出すことが困難であるとまではいえない。
しかしながら、前記(ウ)ないし(オ)の形態については本願出願前に公然知られた形態である公知意匠1及び公知意匠2のいずれにも表されておらず、たとえ、笠木及び支柱の厚みと奥行き幅の比率及び接続部材の縦横比率に多少の構成比率の変更を行ったとしても、全体が一定の厚みから成る扁平な板状体を屈曲して成る一繋がりの構成の略倒コの字状の柵体の角部を接続部材を設けたものに変更し、笠木材の下側面に、奥行き幅より幅の狭い帯状材が上下端部を僅かに残して長手方向いっぱいに設けることが「柵」の物品分野において本願意匠出願前にありふれた手法であったということはできない。
(2)小括
そうすると、本願意匠の形態のうち前記1の(イ)ないし(オ)の形態について、公知意匠1及び公知意匠2に表されているとはいえないから、ほとんどそのまま表したものということはできず、また、各部の構成比率を多少変更して表すことがありふれた手法であるとしても、前記1の(ウ)ないし(オ)の形態とすることが、「柵」の物品分野において、本願意匠出願前にありふれた手法であったとはいい難いので、「当該物品分野において周知の創作手法」によって創作することができたということはできない。
したがって、本願意匠は、当業者であれば、容易に創作することができたものということはできない。

第6 むすび
以上のとおりであって、本願意匠は、意匠法第3条第2項が規定する、意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたときに該当しないので、原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲

審決日 2018-06-20 
出願番号 意願2016-28119(D2016-28119) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (L3)
最終処分 成立  
前審関与審査官 上島 靖範内藤 弘樹 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 竹下 寛
渡邉 久美
登録日 2018-07-13 
登録番号 意匠登録第1610494号(D1610494) 
代理人 岩池 満 
代理人 瓜本 忠夫 
代理人 正林 真之 
代理人 芝 哲央 
代理人 星野 寛明 

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