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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 F4
管理番号 1344897 
審判番号 不服2018-4306
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2018-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-03-30 
確定日 2018-09-21 
意匠に係る物品 包装用フィルム 
事件の表示 意願2017-5698「包装用フィルム」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成29年(2017年)3月21日付けの意匠登録出願であって,同年10月30日付けの拒絶理由の通知に対し,同年12月19日に意見書が提出されたが,同月21日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,平成30年3月30日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされ,その後,平成30年8月3日に手続補正書が提出されたものである。

第2 本願意匠
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「包装用フィルム」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり,「実線であらわした部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分の境界のみを示す線である。ミシン目は,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分以外の部分である。」としたものである(以下,本願意匠において,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」という。別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用された意匠(以下「引用意匠」といい,本願意匠と併せて「両意匠」という。)は,下記のとおりである(別紙第2参照)。

引用意匠
特許庁総合情報館が1997年10月 9日に受け入れた
大韓民国意匠公報 1997年 8月13日
第115頁所載
「飲料容器用ラベル」の意匠。
(特許庁意匠課公知資料番号第HH11039588号)
以下,本願部分に対応する部分を「引用部分」といい,本願部分と併せて「両部分」という。

第4 対比
1.意匠に係る物品の対比
本願意匠に係る物品は「包装用フィルム」であり,その内容は,ペットボトル等の容器をシュリンク包装するために使用されるものであって,使用の目的は,ラベルと認められる。
これに対して,引用意匠に係る物品は「飲料容器用ラベル」であり,その内容は,フィルム状の飲料容器用ラベルである。

2.両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲の対比
本願部分は,包装用フィルムの部分であって,容器本体をほぼ全て覆う程度の大きさで,左右両端を接着して円筒状にした包装用フィルムの,切取部側の2分の1部分を占める位置及び範囲であって,包装用フィルムの切取部側の2分の1部分の用途及び機能を有しているのに対して,引用部分は,飲料容器用ラベルの部分であって,それは,飲料容器用ラベルの内の本願部分に対応する位置及び範囲であって,飲料容器用ラベルの切取部側の2分の1部分の用途及び機能を有しているもので,その大きさは,摘み部の大きさからして,容器の胴部の一部を覆う程度のものと推認できる。

3.両部分の形状の対比
両部分の形状を対比すると,以下に示す主な共通点と相違点が認められる。
(1)共通点について
ア.略長方形のフィルムの左右両端を接着して円筒状にしたものの切取部側の2分の1部分である点,
イ.中央に切取部を設けている点,
ウ.切取部上端を凸状とし,摘み部を形成している点,
エ.切取部下端は,摘み部と同形状の凹部としている点,
が認められる。

(2)相違点について
ア.全体の,半径と高さの長さの比率につき,本願部分は,約1:5であるのに対して,引用部分は,約1:1である点,
イ.切取部の幅と摘み部の高さの長さの比率につき,本願部分は,約7:2であるのに対して,引用部分は,約2:1である点,
ウ.摘み部の形状につき,本願部分は,ごく僅か立ち上がってから頂角を丸くした扁平な二等辺三角形(略扁平ホームベース型)であるのに対して,引用部分は,半円形である点,
が認められる。

第5 判断
1.意匠に係る物品の類否判断
本願意匠に係る物品は,ラベルとして用いる「包装用フィルム」であり,引用意匠に係る物品は,フィルム状の「飲料容器用ラベル」であるから,両意匠の意匠に係る物品は共通する。

2.両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲の評価
本願部分の位置及び範囲は,左右両端を接着して円筒状にした包装用フィルムの,切取部側の2分の1部分であって,包装用フィルムの切取部側の2分の1部分の用途及び機能を有しているのに対して,引用部分は,「飲料容器用ラベル」の内の本願部分に対応する位置及び範囲であって,包装用フィルムの切取部側の2分の1部分の用途及び機能を有している。
よって,両部分の,用途及び機能,並びに位置及び範囲は,一致する。
また,本願部分の大きさは,容器本体をほぼ全て覆う程度の大きさであるのに対して,引用部分の大きさは,容器の胴部の一部を覆う程度のものである点で相違する。

3.両部分における形態の評価
(1)共通点
共通点ア.については,ペットボトル等の縦長円筒状の飲料容器用ラベルにおいては,ごくありふれた態様であるので,類否判断に与える影響はない。
飲料容器用ラベルのフィルムにおいては,容器本体と分別する際に,接着部から剥がすものと,切取部を切り取るものとに大別できるが,切取部を切り取るタイプのものとしては,共通点イ.及び同ウ.は,ごくありふれた態様であるので,類否判断に与える影響は限定的といえる。
共通点エ.については,材料であるフィルムを切断する際に,効率を良くするために一種類の刃物で裁断した場合,おのずと表れる形状であるから,類否判断に与える影響は限定的といえる。

(2)相違点
相違点ア.については,ラベルとして使用する際の,印刷する量や配置など,ラベル・デザインに関わる点,内容物の保護の観点から,その使用態様が異なり,この種物品の選定基準として,大きく関わる要素であるため,両部分の類否判断に与える影響は大きい。
相違点イ.及び同ウ.については,本願部分は,突出度合いが小さく扁平な二等辺三角形であるから,分別する際までは余り目立たず,フィルム本体になじむような形状と認められるが,引用部分は,突出度合いが大きく単純な半円形であるから,通常から目に付きやすく,フィルム本体になじむ形状ではないという点からも,目に付きやすい形状と認められるから,両部分の類否判断に与える影響は大きい。

(3)両部分における形状の類否判断
以上のとおり,共通点ア.ないしエ.によっては,両部分の類否判断を決するものとまではいえないのに対して,相違点ア.ないしウ.による形状の相違は,需要者に別異の印象を起こさせるものであるから,両部分の類否判断を決するものといえる。
よって,本願部分の形状と引用部分の形状は,部分における全体観察においては類似しないと認められる。

4.両意匠における類否判断
以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が共通し,両部分の用途及び機能,並びに位置及び範囲は一致していると認められるが,両部分の大きさが相違し,両部分の形状が,上記のとおり類似しないから,本願意匠と引用意匠とは類似しないものといえる。

第6 結び
以上のとおりであって,本願意匠は,引用意匠に類似せず,原査定の引用意匠をもって,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできず,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2018-09-11 
出願番号 意願2017-5698(D2017-5698) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (F4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 下村 圭子 
特許庁審判長 刈間 宏信
特許庁審判官 橘 崇生
正田 毅
登録日 2018-10-19 
登録番号 意匠登録第1617934号(D1617934) 
代理人 野村 慎一 
代理人 藤本 昇 

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