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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 K8
管理番号 1344899 
審判番号 不服2018-9554
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2018-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-07-11 
確定日 2018-09-28 
意匠に係る物品 消音器用吸音器 
事件の表示 意願2017- 14838「消音器用吸音器」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年(2017年)7月10日の意匠登録出願であって、平成29年12月25日付けの拒絶理由の通知に対し、平成30年2月7日に意見書が提出されたが、平成30年4月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成30年7月11日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願意匠
本願意匠は、意匠に係る物品を「消音器用吸音器」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠
原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることができない意匠)に該当する、というものである。
引用意匠は、日本国特許庁発行の意匠公報(公報発行日:平成11年(1999年)8月10日)に記載された、意匠登録第1046254号(意匠に係る物品、サイレンサ用吸音器)の意匠であって、その形態を、同公報に記載されたとおりとしたものである(別紙第2参照)。

第4 対比
1 意匠に係る物品の対比
本願意匠の意匠に係る物品は、「消音器用吸音器」であり、引用意匠の意匠に係る物品は、「サイレンサ用吸音器」であるが、単なる表記の違いにすぎず、いずれも消音器に用いられる吸音器であると認められるから、本願意匠及び引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は一致する。

2 形態の対比
本願意匠と引用意匠を対比すると、両意匠の形態については、以下のとおり、主な共通点及び相違点がある。
なお、対比のため、本願意匠の図面における正面、平面等の向きを、引用意匠にもあてはめ、引用意匠の「右側面図」を引用意匠の「正面図」とし、同じく引用意匠の「正面図」を引用意匠の「左側面図」とし、その他は、これに準じて表されているものとする。
ただし、引用意匠の「正面図」として対比する「右側面図」は、実際には「参考写真」に現れているように、多数の円孔が形成された中空円板状が配設された形態である。

(1)形態の共通点
(共通点1)両意匠は、全体の基本的な構成態様が、全面に小円孔を一様に形成した正面視中空円形状の板体(以下「中空円板体」という。)を対向させて平行配置し、この間に同一形状の吸音エレメント(引用意匠では「吸音スプリッタ」と表記されているが、本願意匠の「吸音エレメント」と実質同一のものであるので、引用意匠の「吸音スプリッタ」も「吸音エレメント」と以下表記する。)を、略放射線状になるように等間隔に複数配設した構成である点で共通する。

(2)形態の相違点
(相違点1)本願意匠の中空円板体の中空部分の半径と中空円板体の直径の長さの比率が、約1:1.9であるのに対し、引用意匠の中空円板体の中空部分の半径と中空円板体の直径の長さの比率が、約1:1.6である点で、両意匠は相違する。
(相違点2)本願意匠の吸音エレメントの数が22個であるのに対し、引用意匠の吸音エレメントの数が48個である点で、両意匠は相違する。
(相違点3)本願意匠の中空円板体の小円孔越しに見える吸音エレメントの形態が、中空円板体の内円部分では略垂直に立ち上がり、そこから外側に向かって略円弧状に湾曲し、外円部分で再び略垂直になるように形成したものであるのに対し、引用意匠の中空円板体の小円孔越しに見える吸音エレメントの形態が、中空円板体の内円部分では正面視左傾斜で立ち上がり、そこから外側に向かって略逆「く」の字状に折曲して形成したものである点で、両意匠は相違する。

第5 判断
1 意匠に係る物品の類否判断
本願意匠と引用意匠の意匠に係る物品は、同一である。

2 形態の共通点及び相違点の評価
両意匠の意匠に係る物品は、送風機や圧縮機の吸入口、吐出口、放風口等に設置される、大型の消音器の内部に取付けられる消音器用の吸音器であり、吸音器の内部に配設された吸音エレメント間の通路を空気が通過することにより騒音が消音若しくは低減されるものであるから、この意匠に係る物品の需要者は、消音性能に大いに関係する吸音エレメントの形態及びその配置態様について、注視して観察するということができる。
したがって、中空円板体の小円孔越しに見えるものであるとしても、吸音エレメントの形態及びその配置態様が需要者の注意を強く惹く部分であるということができる。

(1)形態の共通点
(共通点1)は、送風機や圧縮機に取り付けられるタイプの消音器用吸音器に係る基本的な構成態様を概括的に捉えた場合の共通点に過ぎないものであり、意匠全体の美感に与える影響は小さい。

(2)形態の相違点
(相違点1)及び(相違点2)は、中空円板体の中空部分の半径と中空円板体の直径の長さの比率及び吸音エレメントの数といった具体的な構成態様に係るものであって、本願意匠が、中空円板体の中空部分が小さく、吸音エレメントの数が少ないコンパクトなものであるとの印象を与えるのに対して、引用意匠は、中空円板体の中空部分が大きく、吸音エレメントの数が本願意匠の倍以上で大型のものであるとの印象を与えるから、両意匠は具体的な構成態様が与える美感に大きな差異がある。
(相違点3)は、中空円板体の小円孔越しに見える吸音エレメントの形態についての相違点であるが、消音性能に直結する該部位の形態は、需要者が特に注視して観察する部分であるところ、本願意匠が、中空円板体の内円から外円にかけて略円弧状の吸音エレメントが螺旋状に広がっているとの印象を与えるのに対して、引用意匠は、中空円板体の内円から外円にかけてジグザグ状の吸音エレメントが放射線状に広がっているとの印象を与えるから、両意匠は需要者が注視する吸音エレメントの形態が与える美感に大きな差異がある。

3 両意匠の類否判断
両意匠の形態における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察した場合、両意匠は、上記2(2)のとおり、具体的な構成態様が与える美感に大きな差異がある上に、上記2の前文のとおり需要者の注意を強く惹く吸音エレメントの形態が与える美感にも大きな差異があるから、全体の基本構成が共通することを考慮しても、意匠全体として観察した際に異なる美感を起こさせるものといえる。
したがって、両意匠は、意匠に係る物品は同一であるが、その形態において、需要者に異なる美感を起こさせるものであるから、両意匠は類似しないものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2018-09-13 
出願番号 意願2017-14838(D2017-14838) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (K8)
最終処分 成立  
前審関与審査官 八重田 季江 
特許庁審判長 内藤 弘樹
特許庁審判官 江塚 尚弘
渡邉 久美
登録日 2018-10-12 
登録番号 意匠登録第1617010号(D1617010) 
代理人 前野 房枝 
代理人 中尾 俊輔 
代理人 伊藤 高英 

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