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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 L4
管理番号 1345941 
審判番号 不服2018-10153
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-07-25 
確定日 2018-10-26 
意匠に係る物品 廻り階段用踏板受台 
事件の表示 意願2017-18019「廻り階段用踏板受台」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成29年(2017年)8月23日の意匠登録出願であって,同年12月12日付けの拒絶理由の通知に対し,平成30年1月24日に意見書が提出されたが,同年4月25日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,同年7月25日に拒絶査定不服審判の請求がなされ,同年8月30日に手続補正書が提出されたものである。

第2 本願意匠
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「廻り階段用踏板受台」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用された意匠(以下「引用意匠」といい,本願意匠と併せて「両意匠」という。)は,下記のとおりである(別紙第2参照)。

引用意匠
特許庁発行の公開特許公報記載
平成11年特許出願公開第181980号
【図5】(b)に表された廻り部用ささら桁(2b)の意匠

第4 対比
1.意匠に係る物品の対比
本願意匠の意匠に係る物品は「廻り階段用踏板受台」であるのに対して,引用意匠の意匠に係る物品は「廻り部用ささら桁」である。

2.両意匠の形状の対比
両意匠の形状を対比すると,以下に示す主な共通点と相違点が認められる。
(1)共通点について
両意匠は共に,
ア.上面を,段違いにして1段目の踏板設置面(以下「下側設置面」という。)と2段目の踏板設置面(以下「上側設置面」といい,下側設置面と併せて,単に「設置面」という。)とした,板状のものであって,
イ.上側設置面と下側設置面を水平面とし,
ウ.上側設置面と下側設置面の間を鉛直面(本願意匠においては「踏板端部接触面」,引用意匠においては「蹴込み板取付面」)とし,
エ.奥側下方に,次の踏板受け台を接合するための切り欠き部を形成し,
オ.床と接する底面の奥側に傾斜部を形成している点,
が認められる。

(2)相違点について
ア.上側設置面と下側設置面の間の鉛直面につき,本願意匠は,長手方向から60度の角度を有するのに対して,引用意匠は,長手方向に対して直角である点,
イ.固定金具を差し込むための貫通穴につき,本願意匠は,上側設置面奥側端部(切り欠き部中央)と,下側設置面手前側に設けているのに対して,引用意匠は設けていない点,
ウ.各段差につき,本願意匠は,上側設置面と下側設置面との段差の高さの方が,下側設置面と底面との段差の高さよりも高いのに対して,引用意匠は,上側設置面と下側設置面との段差の高さの方が,下側設置面と底面との段差の高さよりも低い点,
エ.設置面の長さにつき,本願意匠は,上側設置面より下側設置面の方が長いのに対して,引用意匠は,上側設置面より下側設置面の方が短い点,
オ.切り欠き部の長さにつき,本願意匠は,本願意匠の厚さと同じ長さの切欠であるのに対して,引用意匠は,引用意匠の厚さの約3倍の長さとしている点,
が認められる。

第5 判断
1.意匠に係る物品に対する判断
本願意匠の意匠に係る物品は「廻り階段用踏板受台」であり,引用意匠の意匠に係る物品は「廻り部用ささら桁」であるが,共に,廻り階段用の廻り部に用いる踏板を受ける桁であるから,両意匠の意匠に係る物品は,共通する。

2.両意匠における形状の評価
(1)共通点
共通点ア.及び同イ.については,この種物品にとっては当たり前の形状であるから,需要者の注意を引くことはなく,両意匠の類否判断に与える影響はないといえる。
共通点ウ.については,必ずしも鉛直面としなくても良いところ,鉛直面にしているところに共通感が認められるが,階段の踏板と踏板の間を鉛直面とすることは,ごくありふれた形状であるから,類否判断に与える影響は小さい。
共通点エ.及び同オ.については,共に,必ずしも設けなければならないといえないものであるにも関わらず,設けてある点で共通感を醸し出しており,類否判断に与える影響は限定的ながら認められる。

(2)相違点について
相違点ア.については,廻り階段の廻り部にて,3段で90度回るためには,踏板の内側角度を30度とするのが常とうで,そうするならば,踏板の外側奥の角度は60度となるのが当たり前のところ,見た目を良くするために,その踏板と隙間が生じないように踏板端部接触面である鉛直面を60度傾けて形成することは,ありふれた手法であるから,本願意匠の形状に高度な創作性は認められないが,該部を直角とした引用意匠とは,明確に異なるものであって,限られた部位であるが,両意匠の類否判断に与える影響は少なからず認められる。
相違点イ.については,本願出願前から見受けられる形状ではあるが,この有無により,施工場所と施工方法が明らかに異なることから,両意匠の類否判断に与える影響は,一定程度認められる。
相違点ウ.及び同エ.については,廻り階段の廻り部における,階段の傾斜角度や段数が異なることにつながる形状の相違であるから,両意匠の類否判断に与える影響は,大きい。
相違点オ.については,本願意匠は,次の踏板受け台が本願意匠と同じ厚さの場合,切り欠き部に隙間なく接合するものであるが,引用意匠は,次の踏板受け台が同じ厚さの場合,大きな隙間ができる若しくは端部がはみ出てしまう形状である,または次の踏板受け台の厚さが約3倍のものを隙間無く,はみ出すことなく接合するための長さと考えられるから,両意匠の類否判断に与える影響は,大きい。

(3)両意匠における形状の類否判断
以上のとおりであって,共通点によって,一見,小さな共通感が生じているが,相違点ウ.ないしオ.によって,全体のプロポーションに別異の印象をもたらし,相違点ア.とも相まって,共通感を覆すものであるから,全体観察においては,本願意匠の形状と引用意匠の形状は類似しないと認められる。

3.両意匠における類否判断
したがって,両意匠は,意匠に係る物品は共通するが,上記のとおり本願意匠と引用意匠の形状は類似するものではないから,本願意匠と引用意匠とは類似しない。

第6 結び
以上のとおりであって,本願意匠は,引用意匠に類似せず,原査定の引用意匠をもって,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできず,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2018-10-10 
出願番号 意願2017-18019(D2017-18019) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (L4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 上島 靖範 
特許庁審判長 刈間 宏信
特許庁審判官 正田 毅
橘 崇生
登録日 2018-11-22 
登録番号 意匠登録第1620621号(D1620621) 
代理人 岩本 牧子 
代理人 山広 宗則 

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