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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 D5
管理番号 1345949 
審判番号 不服2018-847
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-01-22 
確定日 2018-11-06 
意匠に係る物品 取付用洗面器 
事件の表示 意願2016- 26437「取付用洗面器」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
平成28年12月 6日 意匠登録出願
平成29年 5月31日付け 拒絶理由通知書
平成29年 7月14日 意見書提出
平成29年10月13日付け 拒絶査定
平成30年 1月22日 審判請求書提出

第2 本願意匠
本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする、平成28年12月6日の意匠登録出願(意願2016-26437号)であって、その意匠は、願書及び願書に添付した図面の記載によれば、意匠に係る物品を「取付用洗面器」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形態」という。)は、願書及び願書に添付した図面の記載のとおりとしたものであって、(以下、「本願意匠」という(別紙第1参照)。)「各図において、赤色で着色を施した部分以外の部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである。(本願の部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を以下、「本願部分」という。)

第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は、本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当するとしたものであって、拒絶の理由に引用した意匠(以下、「引用意匠」といい、本願意匠と合わせて、両意匠という。)は、以下のとおりである。
「特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1493928号
(意匠に係る物品、洗面器)の当該部分の意匠」
以下、本願の意匠登録を受けようとする部分に相当する部分を「引用部分」という(別紙第2参照)。

第4 当審の判断
1.本願意匠と引用意匠の対比
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は、「取付用洗面器」であり、引用意匠の意匠に係る物品は、「洗面器」であって、本願意匠は洗面器として、壁などに取付け可能な洗面器であって、引用意匠は主に台などに設置されて用いられる洗面器であって、共に手洗い、洗顔などを行う際に用いられる洗面器であるから、両意匠に係る物品は共通する。
(2)本願部分と引用部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲
本願部分は、「取付用洗面器」の外周壁面の下方の任意の幅の外周壁面(以下、上段部ともいう。)から1段内方に落ち込んだごく細幅の下段部までの下側縁の階段状部分であって、正面から左右側面に亘り、背面においては、全幅に亘って略フラット状の取付壁面に占める左右下寄りの略クランク状端面部分であり、引用部分は原審拒絶理由において「当該部分」とされているから「洗面器」の本願の意匠登録を受けようとする部分に相当する部分であるが、引用部分を含む洗面器全体の形態は、背面側に外周壁面は存在するものの、本願部分のように全幅に亘って略フラット状ではない。とすると、本願部分と対比可能な具体的な引用部分は、正面から左右側面に亘り、背面においては、本願部分のクランク状端面部分と同等の背面側の外周壁面の上段部及び下段部の左右下寄りの端面部分であって、外周壁面の本願部分と同等の幅の上段部から1段内方に落ち込んだごく細幅の下段部までの下側縁の階段状部分と認められる。そして、本願部分は、壁のみに取付けられる際には、外周壁面の装飾的な下側縁として、台にもはめ込まれる際には、加えて台部に対して外周壁面の下側自重支持部としての用途及び機能を有するのに対して、引用部分は、台にはめ込まれる際に外周壁面の装飾的な下側縁及び台部に対して外周壁面の下側自重支持部としての用途及び機能を有するから、どちらも、洗面器の外周壁面の下側縁として、主たる用途及び機能については共通する。
次に、位置については、本願部分は、正面視、右側面視、左側面視、背面視において外周壁面下側に位置し、引用意匠も正面視、右側面視、左側面視、背面視において外周壁面下側の位置であるから、共通する。
そして、大きさ及び範囲については、共に手洗いや洗顔に用いられる洗面器の外周壁面の下側縁部であるからほぼ共通する大きさのものと認められ、範囲は、本願部分は正面から左右側面に亘って、背面の左右下寄り略クランク状端面部分に亘る、上段部から下段部までの下側縁の階段状部分あり、引用部分は、正面から左右側面に亘って、背面の上段部と下段部の左右下寄り端面部に亘る、上段部から下段部までの下側縁の階段状部分あるから、概ね共通する。
したがって、洗面器の外周壁面の下側縁として、主たる用途及び機能については共通し、位置、大きさ、及び範囲は共通する。
(3)形態
両部分の形態を対比すると、主として、以下の共通点と相違点が認められる。
引用部分の向きは本願部分の向きに合わせて認定する。
(ア)共通点
基本的構成態様
(A)両部分は、略扁平直方体形状の正面から左右側面を経て、背面左右端面部に亘る略倒コの字状の下側縁部であって、階段状に形成され、上方は外周壁面と面一の上段部であって、下方は1段落ち込んだごく細幅の下段部を形成している点。
具体的構成態様
(B)両部分の底面視の縦方向(奥行き)の長さと横方向の長さ比率は、約5.5:7である点。
(C)両部分の正面視での下段部の縦横比率は約3:145である点。
(イ)相違点
具体的構成態様
(a)本願部分の正面視での上段部下辺の横方向長さと下段部横方向長さが約30:29であって、下段部縦幅と上段部の下段部より外方の横幅の長さ比が約3:2であるのに対し、引用部分は上段部下辺の横方向長さと下段部横方向長さが約31:29であって、下段部縦幅と上段部の下段部より外方の横幅の長さ(以下、上段部外方長さという。)比が約3:4である点、
(b)本願部分は洗面ボウル手前側角部(底面視で下方左右角部)が横方向全幅に対する横方向丸み幅が上段部、下段部共に約60分の1で、僅かに丸みを帯びたものであるのに対し、引用部分の洗面ボウル手前側角部は、底面視で上段部は約14分の1で大きめの丸みを帯び、下段部は約70分の1で僅かな丸みを帯びたものであって、上段部と下段部の丸みが異なるものである点、
(c)本願部分は、背面の全幅に亘って略フラット状の取付壁面が形成されているから、上段部と下段部は左右側面視で直線状のほぼ面一であって、背面視において略クランク状の左右端面が表れているのに対し、引用部分の本願部分に相当する部分は、正面から左右側面に亘り、背面の左右端面部に亘る下側縁の階段状部分であって、引用部分の背面の外周壁面は、本願部分のように全幅に亘って略フラット状ではなく、下方が階段状に形成されているから、背面視の左右端面部及び左右側面視の背面側の上段部と下段部は略クランク状に表れ、その背面側角部は、丸みを帯び、背面視で上段部は大きめな丸みを、下段部はごく僅かな丸みを横方向内方に向けて帯びたものである点。

2.本願意匠と引用意匠の類否
以上の「意匠に係る物品」、「両部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲」及び「形態」の共通点と相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価し、総合して、両意匠の類否を意匠全体として検討し、判断する。
(1)意匠に係る物品の評価
上記、1.(1)のとおり、両意匠の意匠に係る物品は、共通する。
(2)両部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲の評価
上記、1.(2)のとおり、両部分は、洗面器の外周壁面の下側縁部としての主たる機能及び用途並びに、位置、大きさ及び範囲は共通し、「取付用洗面器」及び「洗面器」の物品分野において、両部分と同様の取付用洗面器又は洗面器の外周壁面の下側縁部分、すなわち両部分のような外周壁面の下側縁部の位置、大きさ及び範囲の意匠は、本願出願前にごく普通に見受けられるので、両部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲の共通点が、両部分の類否判断に与える影響は小さい。
(3)両部分の形態の評価
(3-1)両部分の形態の共通点の評価
共通点(A)の全体形状については、両部分の形態を概括的に捉えた場合の基本的構成態様の共通点にすぎないものであり、「取付用洗面器」及び「洗面器」の物品分野において、階段状の下側縁部を形成したものは本願の出願前によく見受けられる構成態様であるから、この共通点が両部分の類否判断に与える影響は小さい。
共通点(B)及び(C)については、確かに両部分に共通するプロポーションに関わる具体的態様の共通点といえるが、縦方向(奥行き)の長さと横方向の長さ比率が底面視で約5.5:7であるものは「取付用洗面器」及び「洗面器」の物品分野において本願の出願前によく見受けられる「洗面器」の縦横比率であるから共通点(B)が、両部分の類否判断に与える影響は小さい。
そして、共通点(C)の下段部の正面視での縦横比率については、後述する具体的態様の相違点(b)もあり、この共通点が両部分の類否判断に及ぼす影響は一定程度にとどまるものである。
よって、共通点(C)が両部分の類否判断に及ぼす影響は一定程度あるものであったとしても、共通点(A)および共通点(B)の両部分の類否判断に及ぼす影響は、いずれも小さく、共通点全体があいまって生ずる効果を考慮したとしても、両部分の共通点は、両部分の類否判断を決定付けるまでには至らないということができる。
(3-2)両部分の形態の相違点の評価
これに対して、相違点(a)については、両部分の正面視での上段部下辺の横方向長さと下段部横方向長さの比及び下段部縦幅と上段部外方長さの比の相違であって、本願部分の上段部と下段部の幅差が短く、引用部分の上段部の下段部に対する幅差がより長い点は、本願部分の下段部縦幅と上段部外方長さの比が約3:2であるのに対し引用部分が約3:4、すなわち、上段部の下段部より上段部外方長さが本願部分より引用部分が2倍ほど長いものである点とあいまって、一見して看取できる態様の相違であって、両部分の別異の印象を強めるものであり、この相違点が両部分の類否判断に与える影響は大きい。
相違点(b)は、洗面ボウル手前側角部の丸みについての相違であって、本願部分が横方向全幅に対する横方向丸み幅が約60分の1で上段部、下段部共に、僅かに丸みを帯びたものであるのに対し、引用部分の洗面ボウル手前側角部は、上段部が約14分の1で大きめの丸みを帯び、下段部が約70分の1で僅かな丸みを帯びたものである点は、上下段の角部の丸みがほぼ同じくそろったものと上下段の角部の丸みがそれぞれ異なったものとでは、両部分の角部の視覚的印象を異にするものであって、加えて、両部分の上段部の丸みの相違は、全体の外周形状から見ても、本願部分がやや角張った略倒コの字状であるのに対し引用意匠は大きく丸みを帯びた略倒コの字状で、全体のプロポーションが異なる印象を与えるから、この相違点が、両部分の否判断に与える影響は大きい。
相違点(c)は両部分の背面側の部分的な態様の相違であるが、背面視からも左右側面視からも一見して明らかな形状の相違であり、この点が、両部分の類否判断に与える影響は大きい。
(3-3)両部分の形態の総合評価
そうすると、共通点(C)の両部分の類否判断に及ぼす影響は、一定程度あるとしても、共通点(A)及び共通点(B)の両部分の類否判断に及ぼす影響は、小さく、両部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対し、相違点(a)ないし(c)は、類否判断に与える影響が大きく、それら相違点(a)ないし(c)があいまった視覚的効果も考慮して総合すると、相違点は、共通点を凌駕して、両部分を別異のものと印象付けるものである。

3.小括
したがって、両意匠は、意匠に係る物品が共通し、主たる用途及び機能、並びに位置、大きさ及び範囲は共通し、その共通点が両部分の類否判断に与える影響は小さく、形態においては、共通点が未だ両部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して、相違点が両部分の類否判断に及ぼす影響は共通点のそれを凌駕し、両部分を、全体として別異のものと印象付けるものであって、これらを総合して判断すると、本願意匠は、引用意匠に類似するということはできない。

第5 むすび
以上のとおりであって、原査定の引用意匠をもって、本願意匠は、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから、原査定の拒絶の理由によって、本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。

また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲

審決日 2018-10-24 
出願番号 意願2016-26437(D2016-26437) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (D5)
最終処分 成立  
前審関与審査官 樫本 光司 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 竹下 寛
渡邉 久美
登録日 2018-11-22 
登録番号 意匠登録第1620413号(D1620413) 
代理人 瓜本 忠夫 
代理人 星野 寛明 
代理人 正林 真之 
代理人 芝 哲央 
代理人 岩池 満 

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