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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H7 |
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管理番号 | 1346814 |
審判番号 | 不服2018-11341 |
総通号数 | 229 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2019-01-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-08-21 |
確定日 | 2018-12-04 |
意匠に係る物品 | 携帯電話機 |
事件の表示 | 意願2017- 24851「携帯電話機」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成29年11月7日(パリ条約による優先権主張2017年5月11日、中華人民共和国)の意匠登録出願であって、平成30年1月26日付けの拒絶理由の通知に対し、平成30年4月26日に意見書が提出されたが、平成30年5月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成30年8月21日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本願意匠 本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり、その意匠は、意匠に係る物品を「携帯電話機」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり、本願意匠において部分意匠として意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)を、「実線で表した部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(別紙第1参照)。 第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠 原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。 引用意匠は、欧州連合意匠公報(公報発行日:2017年3月15日)に記載された、「携帯情報端末機(登録番号003797307-0001)」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HH29201716号)であり、その形態は、同公報に記載されたとおりのものであって、引用意匠において本願部分と対比、判断する部分を、本願部分に相当する部分(以下「引用部分」という。)としたものである(別紙第2参照)。 第4 対比 1 意匠に係る物品の対比 本願意匠の意匠に係る物品は、「携帯電話機」であり、引用意匠の意匠に係る物品は、「携帯情報端末機」であるが、いずれも移動通信、データ処理に用いられる携帯用の電子機器であるから、本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、主な用途及び機能が共通する。 2 本願部分と引用部分の用途及び機能の対比 本願部分と引用部分(以下「両部分」という。)は、いずれもイヤフォンジャック、データインターフェース、及びスピーカーホール等の機能ホールを配設するために用いられる部分であり、イヤフォンプラグ等を接続する機能やスピーカーの開口部の機能をもつ部分であるから、用途及び機能が一致する。 3 両部分の位置、大きさ及び範囲の対比 両部分は、いずれも本体部の下端部の位置にある、全長の約1/12の高さの前面パネルを除く周側面及び背面の部分であるから、位置、大きさ及び範囲が一致する。 4 両部分の形態の対比 両部分の形態を対比すると、以下のとおり、主な共通点及び相違点がある。 以下、対比のため、引用意匠の図面の記載を本願意匠の図面の記載に合わせ、引用意匠の「0001.6」を引用意匠の「背面図」とし、同じく引用意匠の「0001.7」を引用意匠の「底面図」とし、その他は、これに準じて表されているものとする。 (1)両部分の形態の共通点 (共通点1)両部分は、部分全体の形状が、背面視略扁平な横D字状の背面部分とその周囲に形成された左右側面部分及び底面部分からなり、背面部分から左右側面部分及び底面部分にかけて角部を設けず、なだらかで一体的に形成したものである点で共通する。 (共通点2)両部分は、左右周側面部及び背面部に施された帯状のライン部分の形状が、左右周側面部に水平に形成された二重線からなるライン部分と、背面部に略横長U字状に形成された二重線からなるライン部分の端部同士を接合して、一体的に形成したものである点で共通する。 (共通点3)両部分は、底面部に形成された機能ホールの部分の形状が、底面部の中央部分に略倒隅丸六角形状の枠状部分を1つ、右寄りの部分に小円部分を横一列に6つ、左寄りの部分に大円部分を1つ配設したものである点で共通する。 (2)両部分の形態の相違点 (相違点1)本願部分の周側面部分の形状が、背面部分の縁部分から前面パネルの部分にかけて、底面視が略横向き放物線状になるように形成したものであるのに対し、引用部分の周側面部分の形状が、背面部分の縁部分から前面パネルの部分にかけて、底面視略円弧状になるように形成したものである点で、両部分は相違する。 (相違点2)本願部分の底面部分の形状が、全体を平坦な面に形成し、長手方向の中央部分に、底面視略横長長円形状の浅い凹溝部を形成したものであるのに対し、引用部分の底面部分の形状が、背面部分の縁部分から前面パネルの部分にかけて、周側面部分の形状と同様の側面視略円弧状になるように形成したものである点で、両部分は相違する。 (相違点3)本願部分の底面部中央付近の態様が、略倒隅丸六角形状の枠状部分の左側に小面部分を2つ、右側に小面部分を1つ形成しているのに対し、引用部分の底面部中央付近の態様が、略倒隅丸六角形状の左右に二重小円部分を1つずつ形成している点で、両部分は相違する。 第5 判断 1 意匠に係る物品の類否判断 両意匠の意匠に係る物品は、主な用途及び機能が共通するから、類似する。 2 両部分の用途及び機能の類否判断 両部分の用途及び機能は、一致するから、同一である。 3 両部分の位置、大きさ及び範囲の評価 両部分の位置、大きさ及び範囲は、物品全体の形態の中における位置、大きさ及び範囲が一致するから、同一である。 4 両部分の形態の共通点及び相違点の評価 (1)両部分の形態の共通点 (共通点1)は、部分全体の形状に係るものではあるが、両部分の形状を概括的に捉えた場合の共通点に過ぎないものであるから、この(共通点1)が部分全体の美感に与える影響は小さい。 (共通点2)における帯状のライン部分については、目につきやすい位置に形成されているものの、このようなライン部分の形状は、この種物品分野において本願意匠出願前に既に見られるものであって、両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえないものであるから、この(共通点2)が部分全体の美感に与える影響は小さい。 (共通点3)に係る機能ホールの部分の形状については、機能ホールを使用する状態でのみ観察される部位であり、通常の使用状態では観察される部分ではないから、この(共通点3)が部分全体の美感に与える影響は小さい。 (2)両部分の形態の相違点 (相違点1)の周側面部分の形状については、背面部分の縁部分から前面パネルの部分にかけて形成されたものであり、両意匠に係る物品を手で保持する際には、特に注視する部分の形状といえるところ、本願意匠が底面視略横向き放物線状になるように形成したものであり、周側面の中央部分が尖ったような板体であるとの印象を与えるのに対して、引用意匠は底面視略円弧状になるように形成したものであり、周側面部分全体が丸く面取りされたような板体であるとの印象を与えるものであるから、需要者が注視するところの周側面部分の視覚的印象が明確に異なる両部分は、この周側面部分の美感に大きな相違がある。 (相違点2)における底面部分の形状については、本願意匠が底面視横長長円形状の浅い凹溝部を形成したものであり、機能ホールを底面部よりやや奥まった位置に配して保護することを意図した形状であるとの印象を与えるものであるのに対し、引用意匠は周側面部分の形状と合わせて周囲全体を底面視略円弧状に形成したとの印象を与えるものであるから、両部分は底面部分の美感に大きな相違がある。 (相違点3)は、底面部中央付近の態様については、底面部中央付近に形成された円孔部分の相違は、その部分を注視して気づく程度の細部に係るものにすぎず、これらの円孔部分が部分全体の美感に与える影響は小さい。 5 両意匠の類否判断 両部分の形態における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察した場合、両部分は、周側面部分及び底面部分の美感に相違があり、これらを総合すると、両部分は全体として美感に大きな相違がある。 そうすると、部分全体の形状、帯状のライン部分の形状及び機能ホールの大部分の形状が共通することを考慮しても、これらの共通点が部分全体の美感に与える影響は小さく、両部分は、部分全体として観察した際に異なる美感を起こさせるものといえる。 したがって、両意匠は、意匠に係る物品が類似し、両部分の用途及び機能が同一であり、両部分の位置、大きさ及び範囲も同一であるが、両部分の形態において、需要者に異なる美感を起こさせるものであるから、両意匠は類似しないものである。 第6 むすび 以上のとおり、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2018-11-22 |
出願番号 | 意願2017-24851(D2017-24851) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(H7)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 木村 智加 |
特許庁審判長 |
内藤 弘樹 |
特許庁審判官 |
江塚 尚弘 渡邉 久美 |
登録日 | 2018-12-21 |
登録番号 | 意匠登録第1622400号(D1622400) |
代理人 | 井関 勝守 |