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審決分類 審判 査定不服  意10条1号類似意匠 取り消して登録 H2
管理番号 1348773 
審判番号 不服2018-13003
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2019-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-10-01 
確定日 2019-01-15 
意匠に係る物品 プログラマブルコントローラ 
事件の表示 意願2017- 26363「プログラマブルコントローラ」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年(2017年)11月28日の意匠登録出願であって、平成30年3月27日付けの拒絶理由の通知に対し、平成30年5月11日に意見書が提出されたが、平成30年6月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成30年10月1日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願意匠
本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとし、本意匠の出願番号を意願2017-26361(意匠登録第1606756号)とする関連意匠の意匠登録出願であって、その意匠は、意匠に係る物品を「プログラマブルコントローラ」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり、本願意匠において部分意匠として意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)を、「実線で表された部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由
原査定における拒絶の理由は、本願意匠が、願書に記載した本意匠に類似する意匠と認められないので、意匠法第10条第1項の規定に該当しないとしたものであり、拒絶理由通知書には、以下の理由が記載されている。
「この意匠登録出願の意匠と願書に本意匠として記載した意願2017-026361の意匠とは、意匠登録を受けようとする部分が共に正面側の面部分であって、くの字に屈折した態様が共通します。
しかしながら、意願2017-026361の意匠は、大きなコネクタ部部分を意匠登録を受けようとする部分の面から除外しているのに対し、本願意匠は、正面側の面にはコネクタ部分等によって除外する部分がなく、その結果、意匠登録を受けようとする部分である面の形態が大きく異なるものです。
したがって、両意匠は、意匠登録を受けようとする部分の具体的形態が異なるものであるので、類似しないものと認められます。」

第4 本意匠
本意匠に係る出願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする、本願の出願日と同日の平成29年11月28日の意匠登録出願(意願2017-26361)であって、平成30年5月25日に意匠登録の設定(意匠登録第1606756号)がなされ、平成30年6月18日に意匠公報が発行されたものであり、その意匠は、意匠に係る物品を「プログラマブルコントローラ」とし、その形態を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり、本意匠において部分意匠として意匠登録を受けようとする部分(以下「本意匠部分」という。)を、「実線で表された部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(別紙第2参照)。

第5 当審の判断
本願意匠と本意匠(以下「両意匠」という。)の認定を行った上で、両意匠について類否判断をし、原査定の適否についての判断を行う。
1.意匠の認定
(1)本願意匠
ア 意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は、「プログラマブルコントローラ」である。

イ 本願部分の用途及び機能
本願部分は、プログラマブルコントローラにおける筐体の前面部分として用いられるものであり、内部機構を保護する等の筐体の機能をもつものである。

ウ 本願部分の位置、大きさ及び範囲
本願部分は、筐体の前面側に位置し、上方に向かって背面側に傾斜する前面上方部分(以下「前面上部」という。)、及び下方に向かって背面側に傾斜する前面下方部分(以下「前面下部」という。)の部分の大きさ及び範囲とするものである。

エ 本願部分の形態
(ア)本願部分の全体の態様は、プログラマブルコントローラの筐体における、上方に向かって背面側に約10°傾斜する前面上部、及び下方に向かって背面側に約5°傾斜する前面下部から構成され、
(イ)前面上部の形態は、正面視の縦横比を約2.2:1とする略縦長長方形状の平面状に形成したものであり、
(ウ)前面下部の形態は、正面視の縦横比を約4.6:1とする略縦長長方形状の平面状に形成したものである。

(2)本意匠
ア 意匠に係る物品
本意匠の意匠に係る物品は、「プログラマブルコントローラ」である。

イ 本意匠部分の用途及び機能
本意匠部分は、プログラマブルコントローラにおける筐体の前面部分として用いられるものであり、内部機構を保護する等の筐体の機能をもつものである。

ウ 本意匠部分の位置、大きさ及び範囲
本意匠部分は、筐体の前面側に位置し、上方に向かって背面側に傾斜する前面上部、及び下方に向かって背面側に傾斜する前面下部の、破線で表された端子台によるインターフェース部分(以下「インターフェース部」という。)を除いた部分の大きさ及び範囲とするものである。

エ 本意匠部分の形態
(ア)本意匠部分の全体の態様は、プログラマブルコントローラの筐体における、上方に向かって背面側に約10°傾斜する前面上部、及び下方に向かって背面側に約5°傾斜する前面下部から構成され、
(イ)前面上部の形態は、正面視の縦横比を約1.5:1とする略縦長長方形状の平面状に形成したものであり、
(ウ)前面下部の形態は、正面視の縦横比を約3.1:1とする略縦長長方形状の平面状に形成し、その中央部分に破線で表されたインターフェース部を周囲に余白部分を設けて配設したものである。

2.対比
(1)意匠に係る物品の対比
両意匠の意匠に係る物品は、いずれも「プログラマブルコントローラ」であるから、用途及び機能が一致する。

(2)本願部分と本意匠部分の用途及び機能の対比
本願部分と本意匠部分(以下「両部分」という。)は、いずれも、プログラマブルコントローラにおける筐体の前面部分として用いられるものであり、内部機構を保護する等の筐体の機能をもつものであるから、両部分の用途及び機能が一致する。

(3)両部分の位置、大きさ及び範囲の対比
両部分は、いずれも筐体の前面側に位置し、上方に向かって背面側に傾斜する前面上部、及び下方に向かって背面側に傾斜する前面下部の部分であるが、両部分の縦横比が相違し、両部分の前面下部には、破線で表されたインターフェース部の有無の相違があることから、両部分の位置については一致するものの、両部分の大きさ及び範囲については相違する。

(4)両部分の形態の対比
両部分の形態を対比すると、主として、以下のとおりの共通点及び相違点がある。
ア 両部分の形態の共通点
(共通点1)両部分は、部分全体の態様が、プログラマブルコントローラの筐体における、上方に向かって背面側に約10°傾斜する前面上部、及び下方に向かって背面側に約5°傾斜する前面下部から構成されている点で共通する。
(共通点2)両部分は、前面上部の形態が、略縦長長方形状の平面状に形成したものである点で共通する。
(共通点3)両部分は、前面下部の形態が、略縦長長方形状の平面状に形成したものである点で共通する。

イ 両部分の形態の相違点
(相違点1)本願部分の前面上部における正面視の縦横比が、約2.2:1であるのに対し、本意匠部分の前面上部における正面視の縦横比は、約1.5:1である点で、両部分は相違する。
(相違点2)本願部分の前面下部における正面視の縦横比が、約4.6:1であるのに対し、本意匠部分の前面下部における正面視の縦横比は、約3.1:1である点で、両部分は相違する。
(相違点3)本願部分の前面下部には、何も配設していないのに対し、本意匠部分の前面下部の中央部分に、破線で表された端子台によるインターフェース部を周囲に余白部分を設けて配設しており、この破線で表された部分の有無の点で、両部分は相違する。

3.判断
(1)意匠に係る物品の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は、用途及び機能が一致するから、同一である。

(2)両部分の用途及び機能の類否判断
両部分の用途及び機能は、一致するから、同一である。

(3)両部分の位置、大きさ及び範囲の評価
両部分の位置については、物品全体の形態の中における位置が一致するから同一である。また、両意匠に係るプログラマブルコントローラの分野において、プログラマブルコントローラの前面部分にインターフェース部を設けることはごく普通に行われているところであるから、両部分の大きさ及び範囲については、物品全体の形態の中における大きさ及び範囲が当該意匠の属する分野においてありふれた範囲内のものであるから、その相違を大きく評価することはできない。

(4)両部分の形態の共通点及び相違点の評価
ア 両部分の形態の共通点
(共通点1)の部分全体の態様について共通し、(共通点2)の前面上部の形態、及び(共通点3)の前面下部の形態についても共通している両部分は、意匠の基調において共通しているものであり、使用状態を示す参考図にあるように連結して配置した際には、両部分の傾斜する角度が一致することで、さらに共通する印象を需要者に与えるものであるから、これらの共通点が部分意匠全体の美感に与える影響は大きいものである。

イ 両部分の形態の相違点
(相違点1)の前面上部における正面視の縦横比の相違、及び(相違点2)の前面下部における正面視の縦横比の相違については、両部分はいずれも正面視が略縦長長方形状であり、使用状態を示す参考図にあるように連結して配置した際に、その比率の違いによって与える印象が大きく変わるとまではいえないものであるから、この(相違点1)及び(相違点2)が部分意匠全体の美感に与える影響は小さいものである。
(相違点3)の前面下部における破線で表された部分の有無の相違については、このプログラマブルコントローラの分野においては、前面部分にインターフェース部を設けることはごく普通に行われているところであって、この破線で表されたありふれた範囲内の相違によって両部分の印象が異なるとまではいうことはできないから、この(相違点3)が両部分の類否判断に及ぼす影響は小さいといえる。

(5)両意匠の類否判断
両部分の形態における共通点及び相違点についての個別評価に基づき、部分意匠全体として全ての共通点及び相違点を総合的に観察した場合、両部分は、部分全体の態様に加え、前面上部の形態及び前面下部の形態における美感が共通するものであり、前面上部及び前面下部における正面視の縦横比や前面下部における破線で表された部分の有無の相違を考慮しても、両部分を全体として観察した際には共通する美感を起こさせるものといえる。
したがって、両意匠は、意匠に係る物品が同一であり、両部分の用途及び機能、並びに位置も同一であって、両部分の大きさ及び範囲は相違するものの、その相違は当該意匠の属する分野においてありふれた範囲内のものであって、大きく評価することはできず、両部分の形態においても、相違点の与える印象は共通点のそれに埋没し、両部分全体として需要者に共通する美感を起こさせるものであるから、本願意匠は本意匠に類似するものと認められる。

4 小括
上記のとおり、本願意匠は本意匠に類似するものであり、本意匠の意匠権について専用実施権が設定されておらず、意匠法第10条第1項の条件規定である同法同条第2項の要件を充足し、かつ、本意匠の意匠権者と本願意匠の出願人とは同一の者であるから、本意匠については出願人の自己の登録意匠であると認められ、なおかつ、本願意匠の意匠登録出願の日がその本意匠の意匠登録出願の日以後であって、その本意匠の意匠公報の発行の日前であるので、意匠法第10条第1項の要件を充足しているものである。
よって、本願意匠は、意願2017-26361(意匠登録第1606756号)の意匠を本意匠とする関連意匠として意匠登録を受けることができるものである。

第6 むすび
以上のとおりであって、本願意匠は、本意匠に類似し、意匠法第10条第1項の規定に該当するものであるから、原査定の拒絶理由によって、本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。

また、当審が更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲
審決日 2018-12-26 
出願番号 意願2017-26363(D2017-26363) 
審決分類 D 1 8・ 3- WY (H2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 前畑 さおり北代 真一 
特許庁審判長 内藤 弘樹
特許庁審判官 江塚 尚弘
渡邉 久美
登録日 2019-03-01 
登録番号 意匠登録第1627688号(D1627688) 
代理人 鎌田 健司 
代理人 前田 浩夫 

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