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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 L4
管理番号 1349720 
審判番号 不服2018-6706
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2019-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-05-16 
確定日 2019-02-12 
意匠に係る物品 建物用戸 
事件の表示 意願2017- 2666「建物用戸」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする意匠登録出願であって、手続の経緯は、以下のとおりである。

平成29年 2月13日 意匠登録出願
平成29年 8月 2日付け 拒絶理由通知書
平成29年 9月14日 意見書提出
平成30年 2月 9日付け 拒絶査定
平成30年 5月16日 審判請求書提出
平成30年11月 2日付け 拒絶理由通知
平成30年12月 6日 意見書提出

第2 本願意匠
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、願書及び願書に添付した図面の記載によれば、意匠に係る物品を「建物用戸」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)を、願書及び願書に添付した図面に記載のとおりとしたものである。(別紙第1参照)

第3 当審における拒絶の理由及び引用意匠
当審における拒絶の理由は、本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当するとしたものであって、拒絶の理由に引用した意匠(以下「引用意匠」という。)は、独立行政法人工業所有権情報・研修館が平成18年(2006年)11月16日に受け入れた
ELEMOND S.P.A.が発行した外国雑誌「INTERNI」566巻72頁所載 の「建物用戸」の意匠であって(公知資料番号:HB1802302200)、その形態は、同雑誌に掲載された写真に現されたとおりのものである。(別紙第2参照)

第4 当審の判断
1 本願意匠と引用意匠の対比
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は、建築物に用いられる「建物用戸」であって、引用意匠の意匠に係る物品も、同じく「建物用戸」であるから、本願意匠及び引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、一致するものである。

(2)両意匠の形態
両意匠の形態については、主として、以下のとおりの共通点及び相違点がある。(本審決において、引用意匠の図面の向きを本願意匠に合わせるものとする。)

ア 共通点
(ア)全体を、正面視、縦長長方形の板状とした点、
(イ)正面部全体に、木目模様と暗調子の色彩を施した点。

イ 相違点
具体的な態様として、
(ア)正面部の縦横の長さの比率について、本願意匠は、約1.7:1であるのに対し、引用意匠は、約2.9:1である点、
(イ)手掛け部の有無について、本願意匠は、手掛け部は無いのに対し、引用意匠は、左端部のやや下方寄りに、略横長矩形状の手掛け部を取り付けている点、
(ウ)正面部の木目模様について、本願意匠は、板目状の模様であるのに対し、引用意匠は、柾目状の模様である点、
(エ)正面部全体に施した色彩について、本願意匠は、紺色(藍色)で着色し、5本の略縦帯状に濃淡(中央部及び左右端部を濃色の帯状とし、濃色の帯状の間をやや淡色の帯状としている。)を付けているのに対し、引用意匠は、黄土色で着色し、濃淡は付けていない点。

2 類否判断
以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に与える影響を評価・総合して、両意匠の類否を意匠全体として検討し、判断する。

(1)意匠に係る物品
両意匠の意匠に係る物品は、同一である。

(2)形態の共通点及び相違点の評価
両意匠の意匠に係る物品は、建物用戸であるから、需要者は、最も目立つ戸の表面である正面部の形態に着目するものといえ、正面部の形態が、需要者の注意を強く惹く部分であるということができる。

A 両意匠の形態
(A)形態の共通点
共通点(ア)の全体を、正面視、縦長長方形の板状とした点、及び共通点(イ)の正面部全体に木目模様と暗調子の色彩を施した点は、いずれも両意匠の形態を概括的に捉えた場合における共通点であって、この点が両意匠の類否判断に与える影響は小さいものであるから、意匠全体の美感に与える影響は小さいものである。

(B)形態の相違点
相違点(ア)の正面部の縦横の長さの比率については、引用意匠の方が、本願意匠よりもやや縦長としたものであるが、いずれも、建物用戸の縦横比率としては、従来からみられる改変の範囲内のものであるから、相違点(ア)が両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
次に、相違点(イ)の手掛け部の有無についてであるが、本願意匠のように手掛け部を取り付けていない建物用戸が、この種物品分野においてごく普通に見受けられるものであり、引用意匠の手掛け部も格別特徴のない略横長矩形状の手掛け部であることから、この差異は、全体としてみると部分的な差異に止まるものであって、相違点(イ)が両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
一方、相違点(ウ)の正面部の木目模様については、本願意匠の板目状の模様は、上下に連続したまだら状のような斑紋を描いた模様であるのに対し、引用意匠の柾目状の模様は、縦筋状の模様が横に多数並んだような模様であるから、需要者に異なる美感を与えるものといえ、両意匠の類否判断に与える影響は大きいものである。
次に、相違点(エ)の正面部全体に施した色彩についてであるが、色彩そのものの差異(本願意匠は紺色(藍色)で、引用意匠は黄土色である。)については、異なる色彩の選択によって生じる差異に過ぎないものであって、その差異のみによって、両意匠を別異のものとする程の大きな差異であるとは認めることはできないが、本願意匠は、この色彩に、5本の略縦帯状の濃淡を付けて色分け模様を構成している点において、モアレ状の独特な美感をもたらしているものであるから、需要者の関心を惹くものであるのに対し、引用意匠は、正面部の全面を一様に着色し、濃淡は付けていないものであるから、需要者に異なる美感を与えるものといえ、両意匠の類否判断に与える影響は大きいものである。

(3)両意匠の類否判断
両意匠の形態における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察した場合、両意匠は、上記(2)の前文のとおり、正面部の形態が需要者の注意を強く惹く部分であり、上記(2)A(B)のとおり、相違点(ウ)の正面部の木目模様及び相違点(エ)の色彩の美感には大きな差異があり、正面部の形態は需要者に異なる美感を与えるものである。
そうすると、上記(2)A(A)の共通点が両意匠の類否判断に与える影響が小さいことに加え、(2)A(B)の相違点のうち、相違点(ア)及び相違点(イ)が両意匠の類否判断に与える影響が小さいことを考慮しても、意匠全体として観察した際には異なる美感を起こさせるものといえる。
したがって、両意匠は、意匠に係る物品は同一であるが、その形態において、需要者に異なる美感を起こさせるものであるから、両意匠は類似しない。

第5 むすび
以上のとおり、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって、当審の拒絶の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲

審決日 2019-01-28 
出願番号 意願2017-2666(D2017-2666) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (L4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 住 康平 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 内藤 弘樹
宮田 莊平
登録日 2019-03-08 
登録番号 意匠登録第1627901号(D1627901) 
代理人 斉藤 達也 

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