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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H7
管理番号 1350704 
審判番号 不服2018-15804
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2019-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-11-28 
確定日 2019-04-02 
意匠に係る物品 携帯電話機 
事件の表示 意願2017- 27134「携帯電話機」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年12月5日(パリ条約による優先権主張2017年9月28日、中華人民共和国)の意匠登録出願であって、平成30年4月19日付けの拒絶理由の通知に対し、平成30年7月24日に意見書が提出されたが、平成30年8月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成30年11月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願意匠
本願意匠は、意匠に係る物品を「携帯電話機」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠
原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。
引用意匠は、中華人民共和国意匠公報2017年6月16日17-24号に記載された「携帯電話機(公開番号CN304180224S)」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HH29004432号)であり、その形態は、同公報に記載されたとおりのものである(別紙第2参照)。

第4 対比
1 意匠に係る物品の対比
本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、いずれも「携帯電話機」であり、主たる用途及び機能が一致する。

2 形態の対比
両意匠の形態を対比すると、以下のとおり、主な共通点及び相違点がある。
以下、対比のため、引用意匠の図面の記載を本願意匠の図面の記載に合わせ、引用意匠の図面における正面、平面等の向きを本願意匠に合わせることとする。
(1)形態の共通点
(共通点1)両意匠は、全体の形態が、正面視隅丸長方形板状体で、正面側に設けられたパネル(以下「正面パネル」という。)と背面及び周側面が一体に形成された筐体部分(以下「本体部」という。)を一体的に形成した構成である点で共通する。
(共通点2)両意匠は、正面パネルの中央部分に、上下に広幅の余地部を、左右はごく細幅の余地部を残して、略縦長長方形状の表示部を配設し、その表示部の上方中央部分に略細長長円形状の形態を1つ、その左側部分に小円形状の形態を2つ形成したものである点で共通する。
(共通点3)両意匠は、本体部の左右側面部及び背面部の上端部付近に、背面視略逆U字状の形態の帯状部(以下「上部帯状部」という。)を形成し、本体部の左右側面部及び背面部の下端部付近に、背面視略U字状の形態の帯状部(以下「下部帯状部」という。)を形成したものである点で共通する。
(共通点4)両意匠は、本体部の背面部左上端部付近に、その内側左右端部に略小円形状の形態が1つずつ表れている横長長円形状のカメラ部を、本体部表面から突出して1つ形成し、その右側に小円形状の形態を、本体部表面から突出せずに1つ形成したものである点で共通する。
(共通点5)両意匠は、本体部の右側面部上半分側に、略縦長長円形状の形態を1つ、その直近下側に小円形状の形態を1つ、その下側に間隔をあけて略細長長円形状の形態を1つ配設し、本体部の左側面部中央やや上方寄りの部分に、略細長長円形状の形態を接近させて2つ配設したものである点で共通する。
(共通点6)両意匠は、本体部の底面部に、略中央部分に略隅丸六角形枠状の形態を1つ、その左右に小円形状の形態を1つずつ、右寄りの部分に大円形状の形態を1つ、左寄りの部分に小円形状の形態を横一列に6つ配設したものである点で共通する。
(共通点7)両意匠は、本体部の周側面と正面パネルとの境界部分に段差部を1段形成したものである点で共通する。

(2)形態の相違点
(相違点1)本願意匠の表示部上方側の余地部の形態が、表示部下方側の余地部とほぼ同じ縦幅の狭い形態としているのに対し、引用意匠の表示部上方側の余地部の形態が、表示部下方側の余地部の約2倍の縦幅の広い形態としている点で、両意匠は相違する。
(相違点2)本願意匠の背面中央部のやや上方部分に、略長円形状の形態(以下「指紋認証部」という。)を1つ配設したものであるのに対し、引用意匠の背面部には、そのような形態が設けられていない点で、両意匠は相違する。
(相違点3)本願意匠の上面部の形態が、長手方向の中央部分に、平面視略へん平横長楕円形状の浅い凹溝部を形成した側面視略水平状の平坦面とし、上面部中央やや左側部分に小円形状の形態を1つ配設したものであるのに対し、引用意匠の上面部の形態が、側面視略円弧状の凸状面になるように形成したものである点で、両意匠は相違する。
(相違点4)本願意匠の底面部の形態が、長手方向の中央部分に、底面視略へん平横長楕円形状の浅い凹溝部を形成した側面視略水平状の平坦面とし、右寄りの部分にある大円形状の形態の左側に、さらに小円形状の形態を1つ配設したものであるのに対し、引用意匠の底面部の形態が、側面視略円弧状の下に凸の凸状面になるように形成したものである点で、両意匠は相違する。
(相違点5)本願意匠の上部帯状部及び下部帯状部を構成する背面視略逆U字状若しくは略U字状の線模様の形態が、一重線からなるものであるのに対し、引用意匠の上部帯状部及び下部帯状部を構成する背面視略逆U字状若しくは略U字状の線模様の形態が、二重線からなるものである点で、両意匠は相違する。

第5 判断
1 意匠に係る物品の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は、主たる用途及び機能が一致するから、同一である。

2 形態の共通点及び相違点の評価
(1)形態の共通点
(共通点1)の全体の形態、(共通点2)の正面パネルの形態、及び(共通点3)の上部帯状部及び下部帯状部の形態については、両意匠の形態を具体的ではなく概括的に捉えた場合の共通点に過ぎないものであるから、これらの(共通点1)ないし(共通点3)が意匠全体の美感に与える影響は小さい。
(共通点4)のカメラ部の形態、(共通点5)の本体部の左右側面部の形態、(共通点6)の底面部に形成された各部位の形態、及び(共通点7)の周側面と正面パネルとの境界部分の形態については、この携帯電話機の分野において本願意匠出願前に既に見られるもの(例えば、平成29年(2017年)5月15日発行の大韓民国意匠商標公報に記載された「携帯情報端末(登録番号第30-0906037)の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HH29415616号)、別紙第3参照)であり、また、先行する意匠の細部を僅かに変更したにすぎないものであって、両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえないものであるから、これら(共通点4)ないし(共通点7)が部分全体の美感に与える影響は小さい。

(2)形態の相違点
(相違点1)の表示部上方側の余地部の形態については、使用時に最も目に付く正面パネルに表れるものであり、需要者が特に注視する部分の形態といえるところ、本願意匠が正面パネルのほぼ全面に大きな表示部を形成したものであるとの印象を与えるのに対して、引用意匠は正面パネルの下方寄りに上下非対称になるように表示部を形成したものであるとの印象を与えるから、需要者が注視するところの正面パネルの視覚的印象が明確に異なる両意匠は、表示部上方側の余地部の形態の美感に大きな相違がある。
(相違点2)における指紋認証部の有無については、本願意匠にのみ背面中央部に、操作時に目に付く大きさの略長円形状の形態を形成したものであるのに対し、引用意匠にはそのようなものがないのであるから、両意匠は背面部中央部の形態の美感に大きな相違がある。
(相違点3)及び(相違点4)における上面部及び底面部の形態については、略へん平横長楕円形状の浅い凹溝部の有無に加えて、該部位の側面視の形態も大きく異なるから、小円形状の形態の有無の相違を含め、両意匠は上面部及び底面部の形態の美感に大きな相違がある。
(相違点5)における上部帯状部及び下部帯状部を構成する背面視略逆U字状若しくは略U字状の線模様の形態については、逆U字状若しくはU字状に表れる帯状部の形態の共通性に埋没する程度のものであるから、この(相違点5)が意匠全体の美感に与える影響は小さい。

3 両意匠の類否判断
両意匠の形態における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察した場合、両意匠は、表示部上方側の余地部の形態、指紋認証部の有無、及び上面部及び底面部の形態の美感に大きな相違があり、これらを総合すると、両意匠は全体として美感に大きな相違がある。
そうすると、上記第4の2(1)で述べた、全体の形態及び各部の形態が共通することを考慮しても、これらの共通点が意匠全体の美感に与える影響は小さく、両意匠は、意匠全体として観察した際に異なる美感を起こさせるものといえる。
したがって、両意匠は、意匠に係る物品が同一であるが、その形態において、需要者に異なる美感を起こさせるものであるから、両意匠は類似しないものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲
審決日 2019-03-20 
出願番号 意願2017-27134(D2017-27134) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (H7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 木村 智加 
特許庁審判長 内藤 弘樹
特許庁審判官 渡邉 久美
江塚 尚弘
登録日 2019-04-19 
登録番号 意匠登録第1631921号(D1631921) 
代理人 井関 勝守 

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