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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 F4 |
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管理番号 | 1356018 |
審判番号 | 不服2019-4841 |
総通号数 | 239 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2019-11-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-04-11 |
確定日 | 2019-09-17 |
意匠に係る物品 | 包装用容器 |
事件の表示 | 意願2018-15427「包装用容器」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の主な経緯 本願は,平成30年(2018年)7月12日の意匠登録出願であって,同年11月26日付けの拒絶理由の通知に対し,平成31年1月10日に意見書が提出されたが,同年1月15日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,同年4月11日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本願意匠 本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。 第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用された意匠(以下「引用意匠」といい,本願意匠と併せて「両意匠」ともいう。)は,下記のとおりである(別紙第2参照)。 引用意匠 特許庁発行の意匠公報記載 意匠登録第1440575号 (意匠に係る物品,包装用容器)の意匠 第4 当審の判断 1 本願意匠 (1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は「包装用容器」である。 (2)本願意匠の形状 本願意匠の形状認定においては,正面図で左側を「前」,右側を「後」とする。 ア.頭頂部に雄ねじ状口(以下,単に「口」という。)を設けた容器であって, イ.容器本体の全高の約5分の2の上部は,頭部,首部及び肩部から成り, ウ.容器本体の下側約5分の3は,平面視で角丸の略樽形有底筒状の胴部としたものである。 エ.上部の左右側面と前面は,垂直面よりも内方に傾斜するものであり, オ.胴部の平面視樽形状は,比較的丸みの強い形状である。 カ.口直下の頭部は,前後左右面とも比較的大きな曲面で成り,前後長が,胴部の前後長の約2分の1の長さで,左右幅は,胴部の左右幅の2分の1強であり, キ.頭部より,下方に向かって,左右幅が漸次すぼまって首部を形成するもので,最小幅の位置の高さは,上部の上から約3分の2であり, ク.そこから,胴部上端につながる左右肩部の外形線は,比較的大きな凹曲線と同程度の大きさの凸曲線で構成している。 ケ.上部における後面の外形線は,二山の凸部が上下に連なっており,中央に凹部を形成している。 2 引用意匠 (1)意匠に係る物品 引用意匠の意匠に係る物品は「包装用容器」である。 (2)引用意匠の形状 引用意匠の形状認定においては,本願意匠と同じ向きにして認定し,右側面図で左側を「前」,右側を「後」とする。 ア.頭頂部に雄ねじ状口(以下,単に「口」という。)を設けた容器であって, イ.容器本体の全高の約5分の2の上部は,頭部,首部及び肩部から成り, ウ.容器本体の下側約5分の3は,平面視で角丸の略樽形有底筒状の胴部としたものである。 エ.上部の左右側面と前面は,垂直面よりも内方に傾斜するものであり, オ.胴部の平面視樽形状は,比較的に角部がやや尖っている形状である。 カ.口直下の頭部は,前後左右面とも比較的小さな曲面で成り,前後長が,胴部の前後長の約3分の1の長さで,左右幅は,胴部の左右幅の2分の1であり, キ.頭部より,下方に向かって,左右幅が漸次すぼまって首部を形成するもので,最小幅の位置の高さは,上部の上から約2分の1であり, ク.そこから,胴部上端につながる左右肩部の外形線は,直線状の斜線であって,比較的小さな凸曲線で胴部につながっている。 ケ.上部における後面の外形線は,大きな凹曲線である。 3 両意匠の対比 (1)意匠に係る物品の対比 両意匠共に,意匠に係る物品は「包装用容器」である。 (2)両意匠の形状の対比 両意匠の形状を対比すると,以下に示す主な共通点と相違点が認められる。 ア.共通点について (ア)頭頂部に口を設けた点。 (イ)容器本体の全高の約5分の2の上部が,頭部,首部及び肩部から成る点。 (ウ)容器本体の下側約5分の3は,平面視で角丸の略樽形有底筒状の胴部としたものである点。 (エ)上部の左右側面と前面は,垂直面よりも内方に傾斜している点。 イ.相違点について (ア)胴部の平面視樽形状につき,本願意匠は,比較的丸みの強い形状であるのに対して,引用意匠は,比較的に角部がやや尖っている形状である点。 (イ)頭部の形状及び大きさにつき,本願意匠は,前後左右面とも比較的大きな曲面で成り,前後長が,胴部の前後長の約2分の1の長さで,左右幅は,胴部の左右幅の2分の1強であるのに対して,引用意匠は,前後左右面とも比較的小さな曲面で成り,前後長が,胴部の前後長の約3分の1の長さで,左右幅は,胴部の左右幅の丁度2分の1である点。 (ウ)上部における最小幅の位置につき,本願意匠は,上部の上から約3分の2の位置であるのに対して,引用意匠は,上部の上から約2分の1の位置である点。 (エ)肩部の左右外形状につき,本願意匠は,比較的大きな凹曲線と同程度の大きさの凸曲線で構成しているのに対して,引用意匠は,直線状の斜線であって,比較的小さな凸曲線で胴部につながっている点。 (オ)上部における後面の形状につき,本願意匠は,二山の凸部が上下に連なっており,中央に凹部を形成しているのに対して,引用意匠は,大きな凹曲線である点。 4 判断 (1)意匠に係る物品の類否判断 意匠に係る物品は,両意匠共に「包装用容器」であるから,一致している。 (2)両意匠における形状の評価 ア.共通点について (ア)共通点の内,(ア)及び(ウ)の点,並びに,上部の前面を垂直面よりも内方に傾斜する点は,両意匠の全体形状に関わる根幹的な形状ではあるが,この種物品分野において,ごくありふれた形状と認められるから,両意匠の類否判断に与える影響は小さい。 (イ)共通点(イ)については,あまたあるこの種包装用容器においては,一定程度の共通感を生み出しているが,本願の出願前より散見される形状であり,両意匠のみの特徴とはいえないから,両意匠の類否判断に与える影響は一定程度にとどまる。 (ウ)共通点(エ)によって,上部に,頭部,首部及び肩部が形成されるものであって,特に,左右側面が垂直面よりも内方に傾斜している点は,両意匠の特徴といえるものであるから,その点のみにおいては共通感を生み出しており,両意匠の類否判断に与える影響は,多少認められる。 イ.相違点について (ア)相違点(ア)については,通常の使用状態において俯瞰(ふかん)した場合は,側面と奥行面(前面又は後面)の2面が見えるが,その状態では,見分けがつかない程のごく小さな曲率の相違であるといえるから,両意匠の類否判断に与える影響は小さい。 (イ)相違点(イ)については,通常の使用状態において俯瞰した場合に目に付きやすい頭部の形状及び大きさの相違であるから,両意匠の類否判断に与える影響は大きい。 (ウ)相違点(ウ)ないし(オ)については,これらの相違によって,通常の使用状態において俯瞰した場合に目に付きやすい両意匠の肩部における面の具体的な形状の相違が認められるものであるから,両意匠の類否判断に与える影響は大きい。 (3)両意匠における形状の類否判断 以上のとおり,共通点は,両意匠の類否判断に与える影響は,小さい,一定程度にとどまる,または多少認められる程度であり,これらの共通点によっては,両意匠の類否判断を決するものといえないのに対して,相違点(イ)ないし(オ)は,需要者に別異の印象を起こさせるものであるから,両意匠の類否判断を決するものといえる。 そうすると,本願意匠の形状と引用意匠の形状は,類似しないと認められる。 (4)両意匠における類否判断 よって,両意匠は,意匠に係る物品が一致するが,上記のとおり本願意匠と引用意匠の形状は類似するものではないから,本願意匠と引用意匠は類似しない。 5 結び したがって,本願意匠は,引用意匠に類似せず,原査定の引用意匠をもって,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできず,本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2019-09-02 |
出願番号 | 意願2018-15427(D2018-15427) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(F4)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 富永 亘 |
特許庁審判長 |
刈間 宏信 |
特許庁審判官 |
正田 毅 橘 崇生 |
登録日 | 2019-10-04 |
登録番号 | 意匠登録第1644198号(D1644198) |
代理人 | 特許業務法人栄光特許事務所 |