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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H1
管理番号 1356876 
審判番号 不服2019-7108
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2019-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-05-31 
確定日 2019-10-29 
意匠に係る物品 気中遮断器 
事件の表示 意願2018-2549「気中遮断器」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成30年(2018年)2月8日の意匠登録出願であって,同年11月22日付けの拒絶理由の通知に対し,平成31年1月10日に意見書が提出されたが,同年3月11日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,令和元年(2019年)5月31日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願意匠
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「気中遮断器」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用された意匠(以下「引用意匠」といい,本願意匠と併せて「両意匠」ともいう。)は,下記のとおりである(別紙第2参照)。

引用意匠
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第913891号の類似意匠登録第1号
(意匠に係る物品,低圧気中遮断器)の意匠

第4 当審の判断
1 本願意匠
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「気中遮断器」である。

(2)本願意匠の形状
本願意匠は,本体部,正面パネル部及び端子部から成るものであって,本体部は縦長の略直方体形状のものであって,本体部前面には,四周に細い段差を設けて,本体部の奥行きの約4分の1の奥行の,段差の無い正面パネル部が備えられている。そして,本体部上面の前端には,本体部左右幅一杯にわたって,横長略四角柱状の端子部を設けている。
以下において,正面パネル部を正面から見た場合の認定を行う。
本願意匠の正面パネル部の前面は,分割線によって区画した7つの長方形の区画から成る。
まず,中央やや右上に,略正方形のボタン区画,その直下に,ボタン区画と横の長さが同じ横長長方形の表示窓区画があり,このボタン区画と表示窓区画を合わせると,縦長長方形(以下「中央区画」という。)になる。
正面パネル部の右端やや下には,中央区画の右辺に接して下に延びる縦に細長いチャージ機構区画,正面パネル部の左下には,中央区画の下辺に接して左に延びるキーロック区画,正面パネル部の左上には,中央区画の左辺に接して上に延びるリレー区画,及び,正面パネル部の右上には,中央区画の上辺に接して右に延びるカバー区画があり,中央区画を中心にして,4つの区画が風車のように取り巻いている(「風車柄」。四畳半における畳の敷き方で「(右)巴敷き」のように並んでいる。)。
加えて,正面パネル部の下端には,高さのごく低い下端区画を設けている。
ボタン区画内には,やや上(正面パネル部全体では,中央やや右で,上から約3分の1の位置)に僅かに縦長の長方形のオンとオフのボタンが左右に並べてある。
ボタン区画の下に位置する表示窓区画には,横長長方形の表示窓が2つ左右に並べてある。
チャージ機構区画には,下半分が奥へと屈曲した,縦長さが正面パネル部の高さの約3分の2になるごく細い縦長長方形のチャージ機構部を設けている。
キーロック区画には,区画内の左寄り(正面パネル部の左下側)に二重円に表れるキーロック装置取付部を備えており,その上に横長長方形部を設けている。
リレー区画には,当該区画をおおむね占める縦長長方形のリレー部を設けている。リレー部は,正面パネル部の略上半分で,正面パネル部の幅の約3分の1の幅の大きさである。このリレー部は,ディスプレイ部,設定モジュール部,USB差込口,及び端子のエリア等の5区画から成っている。
カバー区画は,オプションパーツ収納部を覆う取り外し可能なカバーである。
下端区画内には,左にハンドル収納部という横長長方形の凹部があり,右側に横長長方形の引出機構部を備えている。

2 引用意匠
(1)意匠に係る物品
引用意匠の意匠に係る物品は「低圧気中遮断器」である。

(2)引用意匠の形状
引用意匠は,本体部,正面パネル部及び端子部から成るものであって,本体部は縦長の略直方体形状のものであって,本体部前面には,四周に細い段差を設けて,本体部の奥行きの約4分の1の奥行の,左側約5分の2が僅かに手前に突出している(以下,この突出している区画を「左側区画」,残りの右側を「右側区画」という。),段差の有る正面パネル部が備えられている。そして,本体部上面の前端には,本体部左右幅一杯にわたって,横長略四角柱状の端子部を設けている。
以下において,正面パネル部を正面から見た場合の認定を行う。
左側区画の略上半分に正面パネル部の幅の約3分の1の幅のリレー部を設けている。このリレー部は,表示部及び設定モジュール部の2区画から成っている。
左側区画の下端には,二重円に表れるキーロック装置取付部を備えており,その上に横長長方形部を設けている。
右側区画のやや左寄り(正面パネル部全体から見ると,中央やや右),かつ正面パネル部全体の上から約3分の1の位置に僅かに縦長の長方形のオンとオフのボタンが左右に並べてある。
オンとオフのボタンの下に,横長長方形の表示窓が2つ左右に並べてある。
右側区画の右端には,下半分が奥へと屈曲した,縦長さが正面パネル部の高さの約3分の2になるごく細い縦長長方形のチャージ機構部を設けている。
右側区画の下端には,横長長方形の引出機構部を備えている。

3 両意匠の対比
(1)意匠に係る物品の対比
本願意匠に係る物品は「気中遮断器」であり,引用意匠に係る物品は「低圧気中遮断器」である。

(2)両意匠の形状の対比
両意匠の形状を対比すると,以下に示す主な共通点と相違点が認められる。
ア.共通点について
(ア)両意匠は共に,本体部,正面パネル部及び端子部から成るものであって,本体部は縦長の略直方体形状のものであって,本体部前面には,四周に細い段差を設けて,本体部の奥行きの約4分の1の奥行の,正面パネル部が備えられており,本体部上面の前端には,本体部左右幅一杯にわたって,横長略四角柱状の端子部を設けている点。
(イ)正面パネル部全体の中央やや右,かつ上から約3分の1の位置に僅かに縦長の長方形のオンとオフのボタンが左右に並べてある点。
(ウ)オンとオフのボタンの下に,横長長方形の表示窓が2つ左右に並べてある点。
(エ)正面パネル部の右端には,下半分が奥へと屈曲した,縦長さが正面パネル部の高さの約3分の2になるごく細い縦長長方形のチャージ機構部を設けている点。
(オ)正面パネル部の左下に,二重円に表れるキーロック装置取付部を備えており,その上に横長長方形部を設けている点。
(カ)正面パネル部の左上に,リレー部を設けている。当該リレー部は,正面パネル部の略上半分で正面パネル部の幅の約3分の1の幅の大きさである点。
(キ)正面パネルの下端右側に,横長長方形の引出機構部を備えている点。

イ.相違点について
(ア)正面パネルの段差につき,本願意匠は,段差が無いのに対して,引用意匠は,正面パネル部の左端から約5分の2の位置に段差が有り,正面パネル部の左側が僅かに手前に突出している点。
(イ)正面パネルの区画につき,本願意匠は,中央やや右上に位置する略正方形のボタン区画,及びその直下に位置するボタン区画と横長さが同じ横長長方形の表示窓区画から成る中央区画があり,そして,正面パネル部の右端やや下には,中央区画の右辺に接して下に延びる縦に細長いチャージ機構区画,中央区画の下辺に接して左に延びるキーロック区画,中央区画の左辺に接して上に延びるリレー区画,及び中央区画の上辺に接して右に延びるカバー区画があり,中央区画を中心にして,4つの区画が風車柄のように並び,その下に高さのごく低い下端区画を設けているのに対して,引用意匠は,正面パネルの段差を挟んで,左側区画と右側区画としている点。
(ウ)オプションパーツ収納部を覆うカバーにつき,本願意匠は,正面パネル部の右上に,中央区画の上辺に接して右に延びるように設けてあるのに対して,引用意匠は,設けていない点。
(エ)ハンドル収納部につき,本願意匠は,正面パネル部の下端に設けた下端区画の左側にハンドル収納部を設けているのに対して,引用意匠は,設けていない点。
(オ)キーロック装置取付部につき,本願意匠は,正面パネル部の左下側に配置しているのに対して,引用意匠は,正面パネル部の下端の左端に配置している点。
(カ)リレー部につき,本願意匠は,ディスプレイ部,分割した設定モジュール部,USB差込口,及び端子のエリア等の5区画から成っているのに対して,引用意匠は,表示部及び設定モジュール部の2区画から成っている点。

4 判断
(1)意匠に係る物品の類否判断
本願意匠の意匠に係る物品は「気中遮断器」であり,引用意匠の意匠に係る物品は「低圧気中遮断器」であるが,共に,気中遮断器であるから,両意匠の意匠に係る物品は共通する。

(2)両意匠における形状の評価
ア.共通点について
共通点(ア)ないし(キ)は,両意匠の全体形状に関わる根幹的な形状及び操作部である正面パネル部前面における具体的な形状であって,一定の共通感を生じさせているが,この種物品においては,ごくありふれた形状と認められ,両意匠のみの特徴とは認められないから,両意匠の類否判断に与える影響は小さい。

イ.相違点について
(ア)相違点(ア)及び(イ)については,操作部である正面パネル部前面の全体に係る形状についての違いであり,これらの相違点によって,視認性や操作性が異なってくるものと考えられるから,両意匠において異なる印象を与えるものであり,両意匠の類否判断に与える影響は大きい。
(イ)相違点(ウ)については,カバー部を付けたままである通常の使用状態における本願意匠と,引用意匠との類否判断においては,分割線の有無という僅かな相違でしかなく,両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
(ウ)相違点(エ)については,左下というやや見えにくい部分での相違といえるが,気中遮断器を引き出す際に必要なハンドルが,気中遮断器に収納されているか否かが視覚的に分かるものであるから,需要者にとっては関心のあるところであり,加えて,相違点(オ)を生じさせることも考慮すると,両意匠の類否判断に与える影響は,認められる。
(エ)相違点(オ)については,相違点(エ)によって生じる相違であるから,両意匠の類否判断に与える影響は一定程度にとどまる。
(オ)相違点(カ)については,具体的な操作をするときに見る部分であるから,需要者にとっては関心のある所の相違であり,両意匠の類否判断に与える影響は,認められる。

(3)両意匠における形状の類否判断
以上のとおり,共通点は,両意匠の類否判断に与える影響は,小さいものであり,これらの共通点によっては,両意匠の類否判断を決するものといえないのに対して,相違点(ア)及び(イ)によっては,需要者に別異の印象を起こさせるものであるから,相違点(エ)ないし(カ)を加えて,両意匠の類否判断を決するものといえる。
そうすると,本願意匠の形状と引用意匠の形状は,類似するとは認められない。

(4)両意匠における類否判断
よって,両意匠は,意匠に係る物品が共通するが,上記のとおり本願意匠と引用意匠の形状は類似するものではないから,本願意匠と引用意匠は類似するとはいえない。

5 結び
したがって,本願意匠は,引用意匠に類似せず,原査定の引用意匠をもって,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできず,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2019-10-15 
出願番号 意願2018-2549(D2018-2549) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (H1)
最終処分 成立  
前審関与審査官 前畑 さおり 
特許庁審判長 刈間 宏信
特許庁審判官 正田 毅
橘 崇生
登録日 2019-11-08 
登録番号 意匠登録第1646897号(D1646897) 
代理人 倉谷 泰孝 
代理人 村上 加奈子 
代理人 松井 重明 

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