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審決分類 審判 査定不服  意10条1号類似意匠 取り消して登録 H7
管理番号 1357724 
審判番号 不服2019-4102
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2020-01-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-03-28 
確定日 2019-10-29 
意匠に係る物品 トレーニング情報表示機 
事件の表示 意願2018- 4696「トレーニング情報表示機」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成30年(2018年)3月6日に、本意匠を意願2018-4697として出願された関連意匠の意匠登録出願であって、同年8月22日付けの拒絶理由の通知に対し、同年10月11日に意見書が提出されたが、同年12月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成31年(2019年)3月28日に拒絶査定不服審判の請求と、本意匠を意願2018-4695とする手続補正がなされ、同年9月3日に願書の「意匠に係る物品の説明」及び「意匠の説明」の記載内容を変更する手続補正がなされたものである。

第2 本願意匠
本願意匠の意匠に係る物品は、本願の願書の記載によれば「トレーニング情報表示機」であり、本願意匠の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)は、願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりである(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由及び本意匠
1 原査定における拒絶の理由
原査定における拒絶の理由は、本願意匠が、願書に記載した本意匠(意願2018-4697の意匠。)に類似する意匠と認められないので、意匠法第10条第1項の規定に該当しないとしたものであって、具体的には以下のとおりである。
「本願意匠は意願2018-4697の意匠を本意匠とする関連意匠として出願されていますが、部分意匠として意匠登録を受けようとする実線部分の態様について、例えば、意願2018-4697は直線の両端に2つの同心円、中央に略菱形の線模様が表されているのに対し、本願意匠は略Y字の先端に3つの同心円、中央に逆三角形状の線模様が表されているなどの差異があり、それらの差異は微弱なものとはいえないことから、本願意匠は意願2018-4697の関連意匠とは認められません。」

2 本意匠
本意匠に係る出願(意願2018-4697)は、本願と同日の平成30年(2018年)3月6日に意匠登録出願され、本意匠の意匠に係る物品は、本意匠の出願の願書の記載によれば「トレーニング情報表示機」であり、本意匠の形態は、同願書及び同願書に添付した図面に記載されたとおりである(別紙第2参照)。

第4 本意匠の表示を変更する手続補正
拒絶の理由(前記第3の1)に対して請求人は意見書を提出し、本願意匠と本意匠は類似し、本願意匠が本意匠の関連意匠として登録となる旨主張したが、同主張を採用することなく拒絶の査定がなされたため、同査定を不服として審判を請求し、「原査定を取り消す。本願の意匠は登録すべきものとする」との審決を求めた。そして、請求人は審判請求と同日である平成31年(2019年)3月28日に手続補正により本願の本意匠の表示を「意願2018-4695」に変更した。

第5 当審の判断
以下、本願意匠が、出願当初の本意匠(意願2018-4697。以下、「出願当初本意匠」という。)の関連意匠として第10条第1項の規定に該当するか否かについて検討し、続けて、変更後の本意匠(意願2018-4695。以下、「変更後本意匠」という。)の関連意匠として第10条第1項の規定に該当するか否かについて検討する。

1 本願意匠
当審では、本願意匠について、以下のとおり認定する(別紙第1参照)。
(1)意匠に係る物品
ア 本願意匠の意匠に係る物品(以下「本願物品」という。)はユーザーの身体の各部位の位置状態・動作状態などのトレーニング情報を表示する「トレーニング情報表示機」であり、願書の「意匠に係る物品の説明」及び「意匠の説明」には、以下のとおり記載されている。
(ア)意匠に係る物品の説明
本物品は、フィットネスジム等において用いられる、ユーザーの身体の各部位の位置状態・動作状態及び動作の案内などのトレーニング情報を表示するトレーニング情報表示機である。正面図に表された図形はユーザーの身体の各部位の位置状態・動作状態及び動作の案内を表示するものである。本物品は、正面側にミラーディスプレイを備え、また、ユーザーの姿勢を検出する姿勢センサを備え、使用状態を示す参考図のように、ミラーに反射されたユーザーの身体の像に応じて当該図形を表示する。当該図形は、ユーザーの身体の動作に応じて変化し、また、運動プログラムに基づきユーザーの行う動作を案内する。ユーザーは、自己の身体の各部位の位置状態・動作状態を視覚的に把握し、また、案内表示に応じて運動を行うことにより適切で効果的なトレーニングを行うことが可能となる。正面図に表された図形は、ユーザーの腕の上げ下げ動作における上腕の移動範囲の角度及び膝から腰にかけての大腿部と水平面との角度に対応して変化する。
(イ)意匠の説明
実線で表された部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。背面図、左側面図及び底面図は、意匠登録を受けようとする部分以外の部分のみが現れるので省略する。
イ これらの願書の記載によれば、本願物品の正面表示部に表された図形は、ユーザーの身体の各部位の位置状態・動作状態及び動作の案内を表示するものであり、当該図形は、ミラーに反射されたユーザーの身体の像に応じて表示され、ユーザーの腕の上げ下げ動作における上腕の移動範囲の角度及び膝から腰にかけての大腿部と水平面との角度に対応して変化する。すなわち、ユーザーが腕や体を動かすことによって表示部に表される図形を変化させ、その変化によってユーザーに身体の各部位の位置状態・動作状態を視覚的に把握させ、動作の案内を表示させる用途及び機能を有している。
ウ なお、出願当初における願書の「意匠の説明」の末尾に「正面図に表された図形は、ユーザーの腕の上げ下げ動作における上腕の移動範囲の角度及び膝から腰にかけての大腿部と水平面との角度に対応して変化する。」の一文が記載されていたところ、請求人は平成31年(2019年)9月3日に手続補正により同文を「意匠の説明」から削除し、願書の「意匠に係る物品の説明」の末尾に追加する補正を行った。この補正は、出願当初の願書の記載又は願書に添付した図面の要旨を変更するものではないと認められる。
(2)本願意匠に表された画像
願書及び願書に添付した図面の記載によれば、本願意匠は縦長板状であって、その正面の上端寄りから中央部にかけて、縦長長方形状の表示部(物理的表示部)を設けて、その表示部内に、「使用状態を示す参考図」に見られるように縦長長方形状の画像(以下「本願画像」という。)が表示され、本願意匠において部分意匠として意匠登録を受けようとする部分は、本願画像内で実線で表された部分(以下「本願画像部分」という。)である。
(3)本願画像部分の用途及び機能
上記(1)の願書の記載によれば、本願画像部分の用途及び機能は、ユーザーの腕や体を動かす行為(トレーニング行為)によってそれ自体を変化させることであり、その変化によってユーザーに身体の各部位の位置状態・動作状態を視覚的に把握させ、動作の案内を表示させて、ユーザーの身体の各部位の位置状態・動作状態及び動作の案内などのトレーニング情報を表示する本願物品の機能が発揮できる状態になる。
(4)本願画像部分の位置、大きさ及び範囲
ア 本願意匠における本願画像の位置、大きさ及び範囲
本願画像は、縦長板状である本願意匠正面部の上端寄りから中央部の位置にあり、本願意匠正面部の縦幅の約2/3、横幅の約5/7の大きさ及び範囲を占めている。
イ 本願画像内における本願画像部分の位置、大きさ及び範囲
実線で表された本願画像部分は、本願画像の外周枠と、本願画像の中央やや上に表された図形から成り、図形の最大縦幅は本願画像の縦幅の約2/5、最大横幅は本願画像の横幅の約1/1.3である。
(5)本願画像部分の形態
ア 図形
(ア)図形の全体構成
図形は3方向に放射状に伸びて、左斜め上に伸びる線分(以下「左線分」という。)、右斜め上に伸びる線分(以下「右線分」という。)及び下方に伸びる線分(以下「下線分」という。)から成り、これら3つの線分が交わって図形全体として略Y字状を形成している。また、3つの線分の交点付近には、近接する線分間を結ぶ短い線分が複数表されており、3つの線分の端部付近には同形同大の3重円が表されている。
(イ)3つの線分の長さと角度
左線分と右線分はほぼ同じ長さであって左右対称状に配されており、その長さと下線分の長さの比は約3:2である。
また、左線分と右線分の成す角度は約96°であり、左線分と下線分の成す角度(及び右線分と下線分の成す角度)は約132°である。
(ウ)3つの線分の交点付近
左線分と右線分の交点付近ではこれらの線分を結ぶように水平方向の短い線分が上下平行に2本配されており、また、左線分と下線分の交点付近ではこれらの線分を結ぶように右斜め下方向の短い線分が2本平行に配されて、右線分と下線分の交点付近でも左斜め下方向の短い線分が2本平行に配されて、平行に配された短い線分が3つの線分に接する点が同位置であるために、合計6つの短い線分が互いに連結して、2重の下向き二等辺三角形状を形成している。
大きい二等辺三角形と小さい二等辺三角形は相似形であり、前者の一辺の長さ:後者の一辺の長さは、約5:2である。大きい二等辺三角形の底辺の長さは、図形全体の横幅の約1/6.5である。
大きい二等辺三角形の頂点、すなわち、外側の短い線分と3つの線分が交わる点は黒い小円形状に表されており、内側の短い線分と3つの線分が交わる点は一重の小円形状に表されている。
(エ)3つの線分の端部付近
3重円は同心円状に表されており、大円の径:中円の径:小円の径は、約3:1.5:1である。大円の径は、図形全体の横幅の約1/9である。3つの線分の端部は中円に接している。
イ 外周枠
外周枠は、縦横比約9:5の縦長長方形状である。

2 本願意匠が出願当初本意匠の関連意匠として第10条第1項の規定に該当するか否かについて
(1)出願当初本意匠
当審では、出願当初本意匠(意願2018-4697)について、以下のとおり認定する(別紙第2参照)。
ア 意匠に係る物品
(ア)出願当初本意匠の意匠に係る物品(以下「出願当初本意匠物品」という。)はユーザーの身体の各部位の位置状態・動作状態などのトレーニング情報を表示する「トレーニング情報表示機」であり、出願当初本意匠の意匠登録出願の願書の「意匠に係る物品の説明」及び「意匠の説明」には、以下のとおり記載されている。
a 意匠に係る物品の説明
本物品は、フィットネスジム等において用いられる、ユーザーの身体の各部位の位置状態・動作状態及び動作の案内などのトレーニング情報を表示するトレーニング情報表示機である。正面図に表された図形はユーザーの身体の各部位の位置状態・動作状態及び動作の案内を表示するものである。本物品は、正面側にミラーディスプレイを備え、また、ユーザーの姿勢を検出する姿勢センサを備え、使用状態を示す参考図のように、ミラーに反射されたユーザーの身体の像に応じて当該図形を表示する。当該図形は、ユーザーの身体の動作に応じて変化し、また、運動プログラムに基づきユーザーの行う動作を案内する。ユーザーは、自己の身体の各部位の位置状態・動作状態を視覚的に把握し、また、案内表示に応じて運動を行うことにより適切で効果的なトレーニングを行うことが可能となる。正面図に表された図形は、ユーザーの腕の水平方向の移動角度に対応して変化する。
b 意匠の説明
実線で表された部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。背面図、左側面図及び底面図は、意匠登録を受けようとする部分以外の部分のみが現れるので省略する。
(イ)これらの願書の記載によれば、出願当初本意匠物品の正面表示部に表された図形は、ユーザーの身体の各部位の位置状態・動作状態及び動作の案内を表示するものであり、当該図形は、ミラーに反射されたユーザーの身体の像に応じて表示され、ユーザーの腕の水平方向の移動角度に対応して変化する。すなわち、ユーザーが腕を動かすことによって表示部に表される図形を変化させ、その変化によってユーザーに身体の各部位の位置状態・動作状態を視覚的に把握させ、動作の案内を表示させる用途及び機能を有している。
イ 出願当初本意匠に表された画像
願書及び願書に添付した図面の記載によれば、出願当初本意匠は縦長板状であって、その正面の上端寄りから中央部にかけて、縦長長方形状の表示部(物理的表示部)を設けて、その表示部内に、「使用状態を示す参考図」に見られるように縦長長方形状の画像(以下「出願当初本意匠画像」という。)が表示され、出願当初本意匠において部分意匠として意匠登録を受けようとする部分は、出願当初本意匠画像内で実線で表された部分(以下「出願当初本意匠画像部分」という。)である。
ウ 出願当初本意匠画像部分の用途及び機能
上記アの願書の記載によれば、出願当初本意匠画像部分の用途及び機能は、ユーザーの腕を動かす行為(トレーニング行為)によってそれ自体を変化させることであり、その変化によってユーザーに身体の各部位の位置状態・動作状態を視覚的に把握させ、動作の案内を表示させて、ユーザーの身体の各部位の位置状態・動作状態及び動作の案内などのトレーニング情報を表示する出願当初本意匠物品の機能が発揮できる状態になる。
エ 出願当初本意匠画像部分の位置、大きさ及び範囲
(ア)出願当初本意匠における出願当初本意匠画像の位置、大きさ及び範囲
出願当初本意匠画像は、縦長板状である出願当初本意匠正面部の上端寄りから中央部の位置にあり、出願当初本意匠正面部の縦幅の約2/3、横幅の約5/7の大きさ及び範囲を占めている。
(イ)出願当初本意匠画像内における出願当初本意匠画像部分の位置、大きさ及び範囲
実線で表された出願当初本意匠画像部分は、出願当初本意匠画像の外周枠と、出願当初本意匠画像の中央上に表された図形から成り、図形の最大縦幅は本願画像の縦幅の約1/12、最大横幅は本願画像の横幅の約1/2である。
オ 出願当初本意匠画像部分の形態
(ア)図形
a 図形の全体構成
図形は、左右に伸びた水平状の線分(以下「水平線分」という。)と、その中央で十字状に交差する垂直状の線分(以下「垂直線分」という。)から成り、2つの線分の交点付近には、線分間を結ぶ短い線分が複数表されており、2つの線分の端部付近には同形同大の3重円が表されている。
b 2つの線分の長さ
水平線分の長さと垂直線分の長さの比は、約2.6:1である。
c 2つの線分の交点付近
水平線分と垂直線分の交点付近ではこれらの線分を結ぶように、左斜め方向又は右斜め方向の短い線分が合計8本配されて、左側4本の線分が水平線分と交わる点が同位置であって右側4本も同様であり(左右の交点間の距離は垂直線分の長さと同じ)、また、左側4本の線分と右側4本の線分が左右対称状に表されて、それらが垂直線分と交わる点が等間隔に4つ表されているために、8つの短い線分が左右の頂点を共有する斜め正方形状と菱形形状を形成している。
斜め正方形状の高さは菱形形状の高さの2倍である。斜め正方形状(及び菱形形状)の左右幅は、図形全体の横幅の約1/3.6である。
斜め正方形状の頂点は黒い小円形状に表されており、内側の菱形形状の上下の頂点は一重の小円形状に表されている。
d 2つの線分の端部付近
3重円は同心円状に表されており、大円の径:中円の径:小円の径は、約3:1.5:1である。大円の径は、図形全体の横幅の約1/5.6である。水平線分の端部は中円に接している。
(イ)外周枠
外周枠は、縦横比約9:5の縦長長方形状である。
(2)本願意匠と出願当初本意匠の対比
ア 意匠に係る物品の対比
本願意匠と出願当初本意匠の意匠に係る物品は、いずれも「トレーニング情報表示機」であり、一致する。
イ 本願画像部分と出願当初本意匠画像部分の用途及び機能
(ア)共通点
本願画像部分と出願当初本意匠画像部分の用途及び機能は、ユーザーの腕を動かす行為(トレーニング行為)によってそれ自体を変化させ、その変化によってユーザーに身体の各部位の位置状態・動作状態を視覚的に把握させて、ユーザーの身体の各部位の位置状態・動作状態及び動作の案内などのトレーニング情報を表示する出願当初本意匠物品の機能が発揮できる状態になる点で共通する。
(イ)相違点
しかし、本願画像部分の用途及び機能は、腕以外に、ユーザーの体を動かす行為(トレーニング行為)によっても本願物品の機能が発揮できる状態になるところ、出願当初本意匠画像部分の用途及び機能はユーザーの体を動かす行為に関係しないので、この点で相違する。
ウ 本願画像部分と出願当初本意匠画像部分の位置、大きさ及び範囲
(ア)意匠における画像の位置、大きさ及び範囲
本願画像は、縦長板状である本願意匠正面部の上端寄りから中央部の位置にあり、本願意匠正面部の縦幅の約2/3、横幅の約5/7の大きさ及び範囲を占めており、出願当初本意匠画像も、縦長板状である出願当初本意匠正面部の上端寄りから中央部の位置にあり、出願当初本意匠正面部の縦幅の約2/3、横幅の約5/7の大きさ及び範囲を占めているので、本願意匠における本願画像の位置、大きさ及び範囲と、出願当初本意匠における出願当初本意匠画像の位置、大きさ及び範囲は同一である。
(イ)画像内における画像部分の位置、大きさ及び範囲
a 共通点
本願画像部分と出願当初本意匠画像部分は、共に外周枠を有しており、本願画像/出願当初本意匠画像の中央上に図形が表されている点で共通する。
b 相違点
しかし、本願画像部分の図形の最大縦幅が本願画像の縦幅の約2/5、最大横幅が本願画像の横幅の約1/1.3であるのに対し、出願当初本意匠画像部分の図形の最大縦幅が出願当初本意匠画像の縦幅の約1/12、最大横幅が出願当初本意匠画像の横幅の約1/2であり、これらの点で相違する。
エ 本願画像部分と出願当初本意匠画像部分の形態
本願画像部分と出願当初本意匠画像部分の形態を対比すると、主として、以下の共通点と相違点が認められる。
(ア)形態の共通点
(共通点1)図形における線分の交点付近と端部付近
図形において、線分の交点付近には、線分間を結ぶ短い線分が複数表されており、線分の端部付近には同形同大の3重円が表されている。
(共通点2)黒い小円形状と一重の小円形状
線分の交点付近において、大きい多角形の頂点が黒い小円形状に表されており、小さい多角形の頂点が一重の小円形状に表されている。
(共通点3)3重円
3重円は同心円状に表されており、大円の径:中円の径:小円の径が約3:1.5:1である。線分の端部が中円に接している。
(共通点4)外周枠
外周枠は、縦横比約9:5の縦長長方形状である。
(イ)形態の相違点
(相違点1)図形の全体構成
本願画像部分の図形は3方向に放射状に伸びて、左線分、右線分及び下線分の3つから成り、これら3つの線分が図形全体として略Y字状を形成しているが、出願当初本意匠画像部分の図形は、左右に伸びた水平線分と垂直線分が十字状に交差している。
(相違点2)線分の長さ
本願画像部分の左線分と右線分はほぼ同じ長さであって左右対称状に配されており、その長さと下線分の長さの比は約3:2である。これに対して、出願当初本意匠画像部分の水平線分の長さと垂直線分の長さの比は約2.6:1である。
(相違点3)線分の交点付近
本願画像部分の線分の交点付近には、2重の下向き二等辺三角形状が形成されて、大きい二等辺三角形と小さい二等辺三角形は相似形であり、前者の一辺の長さ:後者の一辺の長さは、約5:2である。大きい二等辺三角形の底辺の長さは、図形全体の横幅の約1/6.5である。
これに対して、出願当初本意匠画像部分の交点付近には、左右の頂点を共有する斜め正方形状と菱形形状が形成されて、斜め正方形状の高さは菱形形状の高さの2倍である。斜め正方形状(及び菱形形状)の左右幅は、図形全体の横幅の約1/3.6である。
(3)本願意匠と出願当初本意匠の類否判断
ア 意匠に係る物品の類否判断
本願意匠と出願当初本意匠の意匠に係る物品は、同一である。
イ 本願画像部分と出願当初本意匠画像部分の用途及び機能の類否判断
本願画像部分と出願当初本意匠画像部分の用途及び機能は、大略共通するものの、本願画像部分の用途及び機能が、腕以外に、ユーザーの体を動かす行為(トレーニング行為)によっても本願物品の機能が発揮できる状態になる点で相違する。本願画像部分の用途及び機能が腕以外のトレーニング行為に対応している点は、本願意匠と出願当初本意匠の類否判断に一定程度の影響を及ぼすということができる。
ウ 本願画像部分と出願当初本意匠画像部分の位置、大きさ及び範囲の評価
(ア)意匠における画像の位置、大きさ及び範囲が同一であることの評価
本願画像と出願当初本意匠画像は、共に縦長板状である意匠の正面部の上端寄りから中央部の位置にあり、正面部の縦幅の約2/3、横幅の約5/7の大きさ及び範囲を占めている点で、意匠における画像の位置、大きさ及び範囲が同一であるが、縦長板状の情報表示機や、その情報表示機の正面部上端寄りから中央部の位置に画像を表示するものは例を挙げるまでもなくありふれたものであり、また、正面部の縦幅の約2/3、横幅の約5/7の大きさ及び範囲を占めている点も、画像の周囲に余地部が設けられていることを意味するから、情報表示機において画像の周囲に余地部を設けることはありふれているというべきである。したがって、意匠における画像の位置、大きさ及び範囲の共通点が本願意匠と出願当初本意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
(イ)画像内における大きさ及び範囲の共通点及び相違点の評価
a 共通点の評価
本願画像部分と出願当初本意匠画像部分は、共に外周枠を有し、画像内の中央上に図形が表されている点で共通するものの、画像の周囲に枠を設けたものや、見やすい位置である中央上に図形を配置したものも例を挙げるまでもなくありふれているから、これらの共通点が本願意匠と出願当初本意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
b 相違点の評価
他方、本願画像部分の図形の最大縦幅が本願画像の縦幅の約2/5、最大横幅が本願画像の横幅の約1/1.3であるのに対し、出願当初本意匠画像部分の図形の最大縦幅が出願当初本意匠画像の縦幅の約1/12、最大横幅が出願当初本意匠画像の横幅の約1/2である相違点は、特に出願当初本意匠画像部分の図形の最大縦幅が占める割合が本願画像部分に比べて著しく小さいことから、需要者に異なる視覚的印象を与えており、本願意匠と出願当初本意匠の類否判断に大きな影響を及ぼしているというべきである。
エ 本願画像部分と出願当初本意匠画像部分の形態の共通点及び相違点の評価
(ア)ユーザーの身体の各部位の位置状態・動作状態などのトレーニング情報を表示する「トレーニング情報表示機」のユーザーは、自己の身体の各部位の位置状態・動作状態を視覚的に把握することが必要であるから、その位置状態・動作状態を表示する図形を常に注視する。したがって、「トレーニング情報表示機」の意匠の類否判断においては、画像に表示される図形の構成態様を特に評価する。
(イ)形態の共通点の評価
形態の共通点のうち、共通点1及び共通点3、すなわち、線分の交点付近に線分間を結ぶ短い線分を複数表わして、線分の端部付近には同形同大で同心円状の3重円を表して、大円の径:中円の径:小円の径を約3:1.5:1とし、線分の端部を中円に接した共通点は、3つの円の比率が同一の3重円を線分の端部に配した態様については、特徴のある3重円によって需要者に線分の端部を同様に意識させるという点では一定程度評価できるものの、線分の交点付近に複数の短い線分を表した態様は、後述するようにその短い線分がどのような形状を成すかに需要者は着目することになるから、複数の短い線分が交点付近に存すること自体については概括的なものに止まり、意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいといわざるを得ない。
次に、黒い小円形状と一重の小円形状に係る共通点2については、それらの小円形状が小さいものであって、需要者に確たる美感をもたらすほどのものであるとはいい難く、一方でその小円形状は多角形の頂点に位置していることから、後述する多角形の相違点がもたらす視覚的印象が共通点2を圧しているともいうべきであるから、共通点2が意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
また、外周枠が縦横比約9:5の縦長長方形状である共通点4も、画像の縦横比には様々なものがあることを踏まえると、需要者が約9:5の縦横比の画像外周枠に特に注目するとはいい難いので、共通点2が意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
そうすると、3重円を線分の端部に配した態様は一定程度評価できるものの、本願画像部分と出願当初本意匠画像部分の形態の共通点が意匠の類否判断に及ぼす影響は総じて小さいということができる。
(ウ)形態の相違点の評価
これに対して、本願画像部分と出願当初本意匠画像部分の形態の相違点については、以下のとおり評価され、相違点はいずれも意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすといわざるを得ない。
まず、相違点1で指摘した、放射状に伸びた3つの線分が図形全体として略Y字状を形成している本願画像部分の図形と、水平線分と垂直線分が十字状に交差している出願当初本意匠画像部分の図形は、需要者が放射状と十字交差の違いに一見して気が付くことから、需要者に異なる視覚的印象を与えるものであって、相違点2で指摘した線分の長さの相違(本願画像部分の左線分と下線分の長さの比は約3:2であり、出願当初本意匠画像部分の水平線分の長さと垂直線分の長さの比は約2.6:1である。)とあいまって、需要者の視覚を通じて起こさせる美感を異にするというべきである。したがって、相違点1及び相違点2が意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
次に、線分の交点付近に係る相違点3についても、2重の下向き二等辺三角形状(本願画像部分)と、斜め正方形状と菱形形状(出願当初本意匠画像部分)は、需要者が一見して気が付く多角形形状の相違であって、2つの二等辺三角形が相似形であるのに対して、斜め正方形状と菱形形状は左右の頂点を共有して相似形ではない相違とあいまって、需要者に別異の視覚的印象を与えているといえる。そして、本願画像部分の大きい二等辺三角形の底辺の長さが図形全体の横幅の約1/6.5であるのに対して、出願当初本意匠画像部分の斜め正方形状の左右幅が図形全体の横幅の約1/3.6である相違は、前記(2)ウ(イ)bで指摘した「画像内における画像部分の位置、大きさ及び範囲の相違点」に起因する相違であって、その相違とあいまって、需要者に異なる視覚的印象を与えているというべきである。したがって、相違点3が意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
オ 総合判断
本願意匠と出願当初本意匠は意匠に係る物品が同一であり、画像部分の用途及び機能も大略共通するものの、本願画像部分の用途及び機能が腕以外のトレーニング行為に対応している点が類否判断に一定程度の影響を及ぼしており、画像部分の位置、大きさ及び範囲については、意匠における画像の位置、大きさ及び範囲が同一であることと画像内における大きさ及び範囲の共通点が類否判断に及ぼす影響が小さい反面、画像内における大きさ及び範囲の相違点が類否判断に及ぼす影響は大きいというべきであり、画像部分の形態についても、共通点が意匠の類否判断に及ぼす影響は総じて小さいのに対して、相違点はいずれも意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすといわざるを得ない。したがって、本願意匠は出願当初本意匠に類似しない。
(4)本願意匠が第10条第1項の規定に該当するか否かについて
出願当初本意匠は、本願の意匠登録出願人の意匠登録出願に係る意匠であるから、意匠法第10条第1項に規定されている本意匠の要件を満たしている。
また、本願意匠の意匠登録出願の日は、出願当初本意匠の意匠登録出願の日以後であって出願当初本意匠の意匠公報の発行の日前であるから、意匠法第10条第1項に規定されている関連意匠の意匠登録出願の日の要件を満たしている。
しかし、上述のとおり、本願意匠は、出願当初本意匠に類似するものとは認められないので、意匠法第10条第1項に規定されている、本意匠に類似する意匠(関連意匠)の要件を満たさない。
したがって、本願意匠は、出願当初本意匠の関連意匠として、意匠法第10条第1項の規定の適用を受けることができない。

3 本願意匠が変更後本意匠の関連意匠として第10条第1項の規定に該当するか否かについて
(1)変更後本意匠
当審では、変更後本意匠(意願2018-4695)について、以下のとおり認定する(別紙第3参照)。
ア 意匠に係る物品
(ア)変更後本意匠の意匠に係る物品(以下「変更後本意匠物品」という。)はユーザーの身体の各部位の位置状態・動作状態などのトレーニング情報を表示する「トレーニング情報表示機」であり、変更後本意匠の意匠登録出願の願書の「意匠に係る物品の説明」及び「意匠の説明」には、以下のとおり記載されている。
a 意匠に係る物品の説明
本物品は、フィットネスジム等において用いられる、ユーザーの身体の各部位の位置状態・動作状態及び動作の案内などのトレーニング情報を表示するトレーニング情報表示機である。正面図に表された図形はユーザーの身体の各部位の位置状態・動作状態及び動作の案内を表示するものである。本物品は、正面側にミラーディスプレイを備え、また、ユーザーの姿勢を検出する姿勢センサを備え、使用状態を示す参考図のように、ミラーに反射されたユーザーの身体の像に応じて当該図形を表示する。当該図形は、ユーザーの身体の動作に応じて変化し、また、運動プログラムに基づきユーザーの行う動作を案内する。ユーザーは、自己の身体の各部位の位置状態・動作状態を視覚的に把握し、また、案内表示に応じて運動を行うことにより適切で効果的なトレーニングを行うことが可能となる。正面図に表された図形は、ユーザーの腕の水平方向に開く動作の移動範囲の角度及び膝から腰にかけての大腿部と水平面との角度に対応して変化する。
b 意匠の説明
実線で表された部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。背面図、左側面図及び底面図は、意匠登録を受けようとする部分以外の部分のみが現れるので省略する。
(イ)これらの願書の記載によれば、変更後本意匠物品の正面表示部に表された図形は、ユーザーの身体の各部位の位置状態・動作状態及び動作の案内を表示するものであり、当該図形は、ミラーに反射されたユーザーの身体の像に応じて表示され、ユーザーの腕の水平方向の移動角度及び膝から腰にかけての大腿部と水平面との角度に対応して変化する。すなわち、ユーザーが腕や体を動かすことによって表示部に表される図形を変化させ、その変化によってユーザーに身体の各部位の位置状態・動作状態を視覚的に把握させ、動作の案内を表示させる用途及び機能を有している。
イ 変更後本意匠に表された画像
願書及び願書に添付した図面の記載によれば、変更後本意匠は縦長板状であって、その正面の上端寄りから中央部にかけて、縦長長方形状の表示部(物理的表示部)を設けて、その表示部内に、「使用状態を示す参考図」に見られるように縦長長方形状の画像(以下「変更後本意匠画像」という。)が表示され、変更後本意匠において部分意匠として意匠登録を受けようとする部分は、変更後本意匠画像内で実線で表された部分(以下「変更後本意匠画像部分」という。)である。
ウ 変更後本意匠画像部分の用途及び機能
上記アの願書の記載によれば、変更後本意匠画像部分の用途及び機能は、ユーザーの腕や体を動かす行為(トレーニング行為)によってそれ自体を変化させることであり、その変化によってユーザーに身体の各部位の位置状態・動作状態を視覚的に把握させ、動作の案内を表示させて、ユーザーの身体の各部位の位置状態・動作状態及び動作の案内などのトレーニング情報を表示する変更後本意匠物品の機能が発揮できる状態になる。
エ 変更後本意匠画像部分の位置、大きさ及び範囲
(ア)変更後本意匠における変更後本意匠画像の位置、大きさ及び範囲
変更後本意匠画像は、縦長板状である変更後本意匠正面部の上端寄りから中央部の位置にあり、変更後本意匠正面部の縦幅の約2/3、横幅の約5/7の大きさ及び範囲を占めている。
(イ)変更後本意匠画像内における変更後本意匠画像部分の位置、大きさ及び範囲
実線で表された変更後本意匠画像部分は、変更後本意匠画像の外周枠と、変更後本意匠画像の中央やや上に表された図形から成り、図形の最大縦幅は本願画像の縦幅の約1/3.6、最大横幅は本願画像の横幅の約3/5である。
オ 変更後本意匠画像部分の形態
(ア)図形
a 図形の全体構成
図形は、左右に伸びた水平状の線分(以下「水平線分」という。)と、その中央から垂下する垂直状の線分(以下「垂直線分」という。)から成り、図形全体として略T字状を形成している。2つの線分の交点付近には、線分間を結ぶ短い線分が複数表されており、2つの線分の端部付近には同形同大の3重円が表されている。
b 2つの線分の長さ
水平線分の長さと垂直線分の長さの比は、約1.2:1である。
c 2つの線分の交点付近
水平線分と垂直線分の交点付近ではこれらの線分を結ぶように、右斜め方向又は左斜め方向の短い線分が合計4本配されて、左側2本の線分と右側2本の線分が左右対称状に表されて、それぞれ平行に表されているために、4つの短い線分が2重の下向き二等辺三角形状を形成している。
大きい二等辺三角形と小さい二等辺三角形は相似形であり、前者の一辺の長さ:後者の一辺の長さは、約9:5である。大きい二等辺三角形の底辺の長さは、図形全体の横幅の約1/4である。
大きい二等辺三角形の頂点(外側の短い線分と2つの線分が交わる点)は黒い小円形状に表されており、小さい二等辺三角形の頂点(内側の短い線分と2つの線分が交わる点)は一重の小円形状に表されている。
d 2つの線分の端部付近
3重円は同心円状に表されており、大円の径:中円の径:小円の径は、約3:1.5:1である。大円の径は、図形全体の横幅の約1/5である。水平線分の端部は中円に接している。
(イ)外周枠
外周枠は、縦横比約9:5の縦長長方形状である。
(2)本願意匠と変更後本意匠の対比
ア 意匠に係る物品の対比
本願意匠と変更後本意匠の意匠に係る物品は、いずれも「トレーニング情報表示機」であり、一致する。
イ 本願画像部分と変更後本意匠画像部分の用途及び機能
本願画像部分と変更後本意匠画像部分の用途及び機能は、ユーザーの腕や体を動かす行為(トレーニング行為)によってそれ自体を変化させ、その変化によってユーザーに身体の各部位の位置状態・動作状態を視覚的に把握させて、ユーザーの身体の各部位の位置状態・動作状態及び動作の案内などのトレーニング情報を表示する変更後本意匠物品の機能が発揮できる状態になる点で共通する。
ウ 本願画像部分と変更後本意匠画像部分の位置、大きさ及び範囲
(ア)意匠における画像の位置、大きさ及び範囲
本願画像は、縦長板状である本願意匠正面部の上端寄りから中央部の位置にあり、本願意匠正面部の縦幅の約2/3、横幅の約5/7の大きさ及び範囲を占めており、変更後本意匠画像も、縦長板状である変更後本意匠正面部の上端寄りから中央部の位置にあり、変更後本意匠正面部の縦幅の約2/3、横幅の約5/7の大きさ及び範囲を占めているので、本願意匠における本願画像の位置、大きさ及び範囲と、変更後本意匠における変更後本意匠画像の位置、大きさ及び範囲は同一である。
(イ)画像内における画像部分の位置、大きさ及び範囲
a 共通点
本願画像部分と変更後本意匠画像部分は、共に外周枠を有しており、本願画像/変更後本意匠画像の中央やや上に図形が表されている点で共通する。
b 相違点
しかし、本願画像部分の図形の最大縦幅が本願画像の縦幅の約2/5、最大横幅が本願画像の横幅の約1/1.3であるのに対し、変更後本意匠画像部分の図形の最大縦幅が変更後本意匠画像の縦幅の約1/3.6、最大横幅が変更後本意匠画像の横幅の約3/5であり、これらの点で相違する。
エ 本願画像部分と変更後本意匠画像部分の形態
本願画像部分と変更後本意匠画像部分の形態を対比すると、主として、以下の共通点と相違点が認められる。
(ア)形態の共通点
(共通点1)図形における線分の交点付近と端部付近
図形において、線分の交点付近には、線分間を結ぶ短い線分が複数表されており、線分の端部付近には同形同大の3重円が表されている。
(共通点2)垂直線分と左右の線分の対称性
線分の1つは垂直線分である。本願画像部分では、左線分と右線分はほぼ同じ長さであって左右対称状に配されており、変更後本意匠画像部分でも、水平線分の中央(=垂直線分との交点)から左側と右側は当然同じ長さであって、左右対称状に配されている。
(共通点3)2重の下向き二等辺三角形状
線分の交点付近には、2重の下向き二等辺三角形状が形成されて、大きい二等辺三角形と小さい二等辺三角形は相似形である。
(共通点4)黒い小円形状と一重の小円形状
線分の交点付近において、大きい二等辺三角形の頂点が黒い小円形状に表されており、小さい二等辺三角形の頂点が一重の小円形状に表されている。
(共通点5)3重円
3重円は同心円状に表されており、大円の径:中円の径:小円の径が約3:1.5:1である。線分の端部が中円に接している。
(共通点6)外周枠
外周枠は、縦横比約9:5の縦長長方形状である。
(イ)形態の相違点
(相違点1)図形の全体構成
本願画像部分の図形は、左線分、右線分及び下線分の3つから成り、これら3つの線分が図形全体として略Y字状を形成しているが、変更後本意匠画像部分の図形は、左右に伸びた水平線分と、その中央から垂下する垂直線分によって図形全体として略T字状を形成している。
(相違点2)線分の長さ
本願画像部分の左線分と右線分はほぼ同じ長さであって左右対称状に配されており、その長さと下線分の長さの比は約3:2である。これに対して、変更後本意匠画像部分の水平線分の長さと垂直線分の長さの比は約1.2:1である。
(相違点3)二等辺三角形状の構成態様
大きい二等辺三角形の一辺の長さ:小さい二等辺三角形の一辺の長さが、本願画像部分では約5:2であって前者が後者の約2.5倍であるが、変更後本意匠画像部分では約9:5であって前者が後者の約1.8倍である。
また、図形全体の横幅に占める大きい二等辺三角形の底辺の長さが、本願画像部分では約1/6.5であり、変更後本意匠画像部分では約1/4である。
(3)本願意匠と変更後本意匠の類否判断
ア 意匠に係る物品の類否判断
本願意匠と変更後本意匠の意匠に係る物品は、同一である。
イ 本願画像部分と変更後本意匠画像部分の用途及び機能の類否判断
本願画像部分と変更後本意匠画像部分の用途及び機能は、共通する。
ウ 本願画像部分と変更後本意匠画像部分の位置、大きさ及び範囲の評価
(ア)意匠における画像の位置、大きさ及び範囲が同一であることの評価
本願画像と変更後本意匠画像は、共に縦長板状である意匠の正面部の上端寄りから中央部の位置にあり、正面部の縦幅の約2/3、横幅の約5/7の大きさ及び範囲を占めている点で、意匠における画像の位置、大きさ及び範囲が同一であるが、縦長板状の情報表示機や、その情報表示機の正面部上端寄りから中央部の位置に画像を表示するものは例を挙げるまでもなくありふれたものであり、また、正面部の縦幅の約2/3、横幅の約5/7の大きさ及び範囲を占めている点も、画像の周囲に余地部が設けられていることを意味するから、情報表示機において画像の周囲に余地部を設けることはありふれているというべきである。したがって、意匠における画像の位置、大きさ及び範囲の共通点が本願意匠と変更後本意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
(イ)画像内における大きさ及び範囲の共通点及び相違点の評価
a 共通点の評価
本願画像部分と変更後本意匠画像部分は、共に外周枠を有し、画像内の中央やや上に図形が表されている点で共通するものの、画像の周囲に枠を設けたものや、見やすい位置である中央やや上に図形を配置したものも例を挙げるまでもなくありふれているから、これらの共通点が本願意匠と変更後本意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
b 相違点の評価
他方、本願画像部分の図形の最大縦幅が本願画像の縦幅の約2/5、最大横幅が本願画像の横幅の約1/1.3であるのに対し、変更後本意匠画像部分の図形の最大縦幅が変更後本意匠画像の縦幅の約1/3.6、最大横幅が変更後本意匠画像の横幅の約3/5である相違点は、特に変更後本意匠画像部分の図形の最大横幅が占める割合が本願画像部分に比べて小さいことから、需要者にやや異なる視覚的印象を与えており、本願意匠と変更後本意匠の類否判断に一定程度の影響を及ぼしているというべきである。
エ 本願画像部分と変更後本意匠画像部分の形態の共通点及び相違点の評価
(ア)ユーザーの身体の各部位の位置状態・動作状態などのトレーニング情報を表示する「トレーニング情報表示機」のユーザーは、自己の身体の各部位の位置状態・動作状態を視覚的に把握することが必要であるから、その位置状態・動作状態を表示する図形を常に注視する。したがって、「トレーニング情報表示機」の意匠の類否判断においては、画像に表示される図形の構成態様を特に評価する。
(イ)形態の共通点の評価
まず、共通点1のうち、複数の短い線分が交点付近に存すること自体については概括的なものに止まるものの、短い線分によって構成される形状、すなわち、相似形である2重の下向き二等辺三角形状が形成された共通点3は、同じ長さの線分が中央から左右対称状に配された共通点2とあいまって、需要者の視覚を通じてまとまった美感を起こさせるというべきである。そして、共通点1及び共通点5で摘示した、3つの円の比率が同一の3重円を線分の端部に配した態様については、特徴のある3重円によって需要者に線分の端部を同様に意識させるという点では一定程度評価できるものである。したがって、共通点1ないし共通点3及び共通点5が意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいということができる。
他方、大きい二等辺三角形の頂点が黒い小円形状に表されて、小さい二等辺三角形の頂点が一重の小円形状に表されている共通点4については、それらの小円形状が小さいものであって、需要者に確たる美感をもたらすほどのものであるとはいい難く、また、外周枠が縦横比約9:5の縦長長方形状である共通点6も、画像の縦横比には様々なものがあることを踏まえると、需要者が約9:5の縦横比の画像外周枠に特に注目するとはいい難い。したがって、共通点4及び共通点6が意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
そうすると、共通点4及び共通点6が意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいものの、本願画像部分と変更後本意匠画像部分の形態の共通点が意匠の類否判断に及ぼす影響は総じて大きいといえる。
(ウ)形態の相違点の評価
これに対して、本願画像部分と変更後本意匠画像部分の形態の相違点については、以下のとおり評価され、相違点が意匠の類否判断に及ぼす影響はいずれも小さいといわざるを得ない。
まず、相違点1で指摘した、図形全体として略Y字状を形成しているか(本願画像部分)、略T字状を形成しているか(変更後本意匠画像部分)の相違は、要するに、本願画像部分の左線分と右線分が斜め方向に伸びているのに対して、変更後本意匠画像部分ではそれらが水平状であるという相違であって、左線分と右線分が共に左右対称状に表されて、向きの相違は共に形成されている2重の下向き二等辺三角形状の態様には影響しないことから、相違点1は上述した共通点1ないし共通点3に包摂される相違であるというべきであって、線分の長さに係る相違点2を考慮したとしても、これらの共通点を圧して、需要者に異なる視覚的印象を与える程の相違であるということはできない。したがって、相違点1及び相違点2が意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
次に、相違点3で摘示した、大きい二等辺三角形の一辺の長さが小さい二等辺三角形の一辺の長さの約2.5倍であるか(本願画像部分)、約1.8倍であるか(変更後本意匠画像部分)の相違については、軽微な相違であって、需要者がその部位のみに着目して気付く程度の相違であるというべきであり、また、図形全体の横幅に占める大きい二等辺三角形の底辺の長さが、本願画像部分では約1/6.5であり、変更後本意匠画像部分では約1/4である相違についても、前記(2)ウ(イ)bに起因する相違であることを考慮したとしても、需要者に異なる美感をもたらすほどの相違であるとはいい難い。したがって、相違点3が意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
オ 総合判断
本願意匠と変更後本意匠は意匠に係る物品が同一であり、画像部分の用途及び機能も共通し、画像部分の形態についても、共通点が意匠の類否判断に及ぼす影響は総じて大きいのに対して、相違点が意匠の類否判断に及ぼす影響はいずれも小さいから、画像内における大きさ及び範囲の相違点が類否判断に及ぼす影響が一定程度あるとしても、本願意匠は変更後本意匠に類似する。
(4)本願意匠が第10条第1項の規定に該当するか否かについて
変更後本意匠は、本願の意匠登録出願人の意匠登録出願に係る意匠であるから、意匠法第10条第1項に規定されている本意匠の要件を満たしている。
また、本願意匠の意匠登録出願の日は、変更後本意匠の意匠登録出願の日以後であって変更後本意匠の意匠公報の発行の日前であるから、意匠法第10条第1項に規定されている関連意匠の意匠登録出願の日の要件を満たしている。
そして、前記(3)のとおり、本願意匠は、変更後本意匠に類似するものと認められるので、意匠法第10条第1項に規定されている、本意匠に類似する意匠(関連意匠)の要件を満たす。
したがって、本願意匠は、変更後本意匠の関連意匠として、意匠法第10条第1項の規定の適用を受けることができる。

第6 むすび
以上のとおり、本願意匠は出願当初本意匠(意願2018-4697)の関連意匠として意匠法第10条第1項の規定の適用を受けることができないところ、本願については願書の本意匠の表示を変更する手続補正がなされているから、原審の拒絶の理由によっては拒絶することができない。
また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
そして、本願意匠は、変更後本意匠(意願2018-4695)の関連意匠として意匠法第10条第1項の規定の適用を受けることができる。すなわち、意匠登録を受けることができる。

よって、結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2019-10-15 
出願番号 意願2018-4696(D2018-4696) 
審決分類 D 1 8・ 3- WY (H7)
最終処分 成立 
前審関与審査官 清水 玲香 
特許庁審判長 北代 真一
特許庁審判官 小林 裕和
木村 智加
登録日 2019-12-06 
登録番号 意匠登録第1649182号(D1649182) 
代理人 森下 賢樹 
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