ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項容易に創作 取り消して登録 H7 |
---|---|
管理番号 | 1357746 |
審判番号 | 不服2019-7162 |
総通号数 | 241 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2020-01-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-05-31 |
確定日 | 2019-12-23 |
意匠に係る物品 | 携帯情報端末 |
事件の表示 | 意願2015- 26814「携帯情報端末」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成27年(2015年)12月1日(パリ条約による優先権主張2015年6月4日、アメリカ合衆国)の意匠登録出願であって、平成28年(2016年)7月25日付けの拒絶理由の通知(一回目 7条区分)に対し、同年10月31日に手続補正書が提出され、平成30年(2018年)1月25日付けの拒絶理由の通知(二回目 創作性)に対し、同年4月27日の期間延長請求ののち、同年5月28日に意見書が提出されたが、平成31年(2019年)2月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対して令和元年(2019年)5月31日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本願意匠 本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「携帯情報端末」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって、本願意匠の正面側に配された表示部に表示された画像(以下「表示画像」という。)のうち、本願意匠において部分意匠として意匠登録を受けようとする部分は、「実線で表された部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(以下、表示画像のうち、実線で表された部分を「本願画像部分」という。)(別紙第1参照)。 第3 原査定の拒絶の理由と引用意匠 1 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、本願意匠が、下記に示すように、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が日本国内又は外国において公然知られた形態に基づいて容易に創作をすることができたものと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当するというものであって、具体的には、以下のとおりである。 「この意匠登録出願の意匠は、引用画像1に見られる「吹き出しの中に図形を表す態様」で、吹き出しの中に広く知られた矢印図形を表したアイコンを、引用画像2及び引用画像3に見られる「平行線の両端を半円でつないだ形状(以下『陸上トラック形』)の内部にアイコンを表す態様」で、陸上トラック形の内部に表した形態を有するものです。この意匠登録出願の意匠は、この形態を表示部の右端の高さ中央付近に表して、携帯情報端末に係る、音声メッセージの送信に関する機能を発揮できる状態にするための操作に用いられる画像として使用した程度に過ぎませんから、当業者が容易に創作することができたものと認められます。 ・引用画像1(当審注:別紙第2参照) 電気通信回線の種類 インターネット 掲載確認日(公知日) 2007年 9月25日 受入日 特許庁意匠課受入2007年 9月28日 掲載者 Yellow Icon : Stock Icons 表題 Yellow Icon : Stock Icons 掲載ページのアドレス http://yellowicon.com/stockicon/view/16/itoolbar_icons に掲載されたアイコンの画像 (特許庁意匠課公知資料番号第HJ19214118号) ・引用画像2 (当審注:別紙第3参照) 大韓民国意匠商標公報 2014年 4月16日14-12号 携帯情報端末機(登録番号30-0739156)の意匠に表示された画像のうち、右上方の陸上トラック形とその内部のアイコンの画像 (特許庁意匠課公知資料番号第HH26418170号) (添付イメージの右上、左下、右下の図における当該画像) (当審注:原審において「添付イメージの右上、左下、右下の図」と表したのは、別紙第3においては、「右上」の図は「図B1.1」に、「左下」の図は「図D1.1」に、「右下」の図は「図E1.1」に、それぞれ対応する。) ・引用画像3 (当審注:別紙第4参照) 特許庁発行の意匠公報記載 意匠登録第1445466号の意匠 に表示された画像のうち、左下の陸上トラック形とその内部のアイコンの画像」 第4 当審の判断 以下において、本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性、すなわち、本願意匠が当業者であれば容易に創作をすることができたか否かについて検討し、判断する。 1 本願意匠の認定 (1)意匠に係る物品 本願意匠は、意匠に係る物品を「携帯情報端末」とし、その形態を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。 (2)本願画像部分の用途及び機能、並びに位置、大きさ及び範囲 本願画像部分は、願書の意匠に係る物品の説明欄の記載によれば、「音声メッセージの送信に関する機能を発揮できる状態にするための操作に用いられる画像」であって、表示画面は、横幅に対する縦の長さの比を略1:1.7とするものであり、本願画像部分は、表示画面の右端寄り中央やや下寄りに設けられた部分であって、当該部分は、表示画面全体に対し、縦方向で略1/4.5、横方向で略1/5の位置を占める範囲に配したものである。 (3)本願画像部分の形態 ア 本願画像部分全体の外形状は、縦長長方形の上下端を半円状とした形状(以下「トラック形状」という。)とするものであって、横幅に対する長さの比を略1:2.5としたものである。 イ トラック形状の上寄り略1/2.5を占める範囲、及び下寄り略1/2.5を占める範囲に、それぞれアイコンを表したものであり、上寄りに表されたアイコン(以下、「本願アイコン部分」という。)は、本願画像部分に含まれる部分であり、下寄りに表されたアイコンは本願画像部分に含まれない部分である。 ウ 本願アイコン部分は、当該アイコンの構成要素として、(ア)吹き出し型アイコンの内部に(イ)矢印記号状の模様を表したものであって、(ア)吹き出し型アイコンは、縦横比略5:6とする楕円形状の左下部に、鮫の背びれが海面に表れたような態様の吹き出し部(以下「背びれ状吹き出し部」という。)を、先端部を左下方向に向けて設けているものであり、当該吹き出し部の具体的形状は、頂点を下にして、全体を左に倒した小さな背びれ状吹き出し部であって、右辺を左辺よりやや長く形成し、全体を左方向にやや湾曲させてなる態様としたものである。また、吹き出し型アイコン内部に表された(イ)矢印記号状の模様は、シャフト部とアローヘッド部の長さの比率を略7:4とし、先端角を90度よりやや鋭角に形成した上向き矢印として表したものであって、矢印の端部はそれぞれ隅丸に形成されているものである。 2 引用意匠の認定 原査定における拒絶の理由で引用された、引用画像1ないし引用画像3に表れた画像を含む意匠の意匠に係る物品及び形態は、概要以下のとおりである。 (1)引用画像1 引用画像1は、「アイコン」の画像である。また、引用画像1のうち、4本の水平状線分を除くアイコンの画像は、吹き出し型アイコンの内部に感嘆符記号状の模様を表したものであって、吹き出し型アイコンは、縦横比略5:6とする楕円形状の左下部に、背びれ状吹き出し部を、先端部を左下方向に向けて設けているものであり、当該吹き出し部の具体的形状は、頂点を下にして全体を左方向に倒したやや大ぶりの背びれ状吹き出し部であって、右辺を左辺よりやや長く形成し、全体を左方向に大きく湾曲させてなる態様としたものである。また、吹き出し型アイコン内部に表された感嘆符記号状の模様は、縦長長方形状部の下に横辺とほぼ同径の略円形状部を、それぞれ黒色で塗りつぶして表したものである。 (2)引用画像2 引用画像2における、画像を含む意匠の意匠に係る物品は、「携帯情報端末機」である。また、引用画像2は、添付イメージの右上、左下、右下の図において、それぞれ縦長長方形状の表示画面の右端上方に表れたトラック形状とその内部のアイコンの画像である。 ア 右上の図(図B1.1)における、縦長トラック形状の画像は、横幅に対する長さの比を大略1:3.75としたものであり、トラック形状の上寄り略1/3.75を占める範囲にアイコンを表したものである。 イ 左下の図(図D1.1)における、縦長トラック形状の画像は、横幅に対する長さの比を大略1:5.6としたものであり、トラック形状の全域に5つのアイコンを縦に並べて表したものである。 ウ 右下の図(図E1.1)における、縦長トラック形状の画像は、横幅に対する長さの比を略1:4としたものであり、トラック形状の上寄り略3/5を占める範囲に3つのアイコンを縦に並べて表し、下寄り略2/5を占める範囲に1つのアイコンを表したものである。 (3)引用画像3 引用画像3における、画像を含む意匠の意匠に係る物品は、「携帯情報端末」であって、意匠に係る物品の説明欄の記載によれば、「本物品の有する機能のうちの、写真や動画等のカメラコントロール機能を発揮するために行われる操作に用いられる画像であって、写真や動画を撮影するなどのカメラ操作を行うものである。」。また、引用画像3は、横長長方形状の表示画面の左端下寄りに表示されたトラック形状とその内部のアイコン画像である。引用画像3の縦長トラック形状の画像は、横幅に対する長さの比を略1:1.8としたものであり、上寄り略1/1.8を占める範囲、及び下寄り略1/1.8を占める範囲にそれぞれアイコン画像を表したものである。 3 本願意匠の創作非容易性の判断 意匠法第3条第2項の規定の適用についての判断は、画像を含む意匠の構成態様において、それらの基礎となる構成要素や具体的態様が本願出願前に公然知られ、又は広く知られており、それらの構成要素を、ほとんどそのまま、又は当該分野においてよく見られる改変を加えた程度で、当該分野においてありふれた手法である単なる組合せ、若しくは、構成要素の全部又は一部の単なる置換えなどがされたにすぎないものであるか否かを判断することにより行うものであるところ、本願意匠の形態は、上記第4 1(3)アないしウに示すとおりである。 そして、「携帯情報端末」の物品分野において、上記第4 1(3)ア 本願画像部分の外形状を縦長トラック形状とすることや、同イ 当該縦長トラック形状の上寄り部にアイコンを配する形態は、引用画像2及び3に見られるように、本願出願前より公然知られており、縦長トラック形状の横幅に対する長さの比率にも、引用画像2によれば、トラック形状の内部に表すアイコンの数に応じて変更されるものであり、本願出願前より様々な比率のものが見受けられること、またトラック形状の上部にアイコンを配設して表すことも本願出願前より見受けられるものである。 しかしながら、上記第4 1(3)ウ 本願画像部分に表れた本願アイコン部分の(ア)及び(イ)の構成要素からなる具体的態様について、(ア)吹き出し型アイコンの背びれ状吹き出し部の具体的態様は、本願出願前に公然知られた態様とはいえず、よく見られる改変を加えた程度のものともいえない。また、(イ)アイコンとして表した矢印記号状模様についても、公然知られた態様ではないし、各種記号状模様をアイコンとして表すことが一般的であるとしても、数多ある矢印状模様の中から、シャフト部とアローヘッド部の長さの比率を略7:4とし、先端角を90度よりやや鋭角に形成した上向き矢印として表したうえに、矢印の端部をそれぞれ隅丸に形成されているものを当該アイコンとして選択した点には、一定程度の創作が認められるといえる。さらに、(ア)及び(イ)を組み合わせてなる態様についても、いずれも引用画像1ないし3に見られず、また、本願出願前に公然知られた態様でもないため、本願意匠の特徴的な形態というべきである。 そうすると、画像を含む意匠の構成態様において、それらの基礎となる構成要素や具体的態様が本願出願前に公然知られ、又は広く知られており、それらの構成要素を、ほとんどそのまま、又は当該分野においてよく見られる改変を加えた程度で、当該分野においてありふれた手法である単なる組合せ、若しくは、構成要素の全部又は一部の単なる置換えなどがされたにすぎないものであるということはできず、本願意匠は、ありふれた手法を用いて僅かに改変した程度のものといえないから、本願意匠は、当業者が公然知られた形状に基づいて容易に創作することができたものということはできない。 第5 むすび 以上のとおりであって、本願意匠は、意匠法第3条第2項が規定する、意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものに該当しないので、原査定の拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
|
審決日 | 2019-12-09 |
出願番号 | 意願2015-26814(D2015-26814) |
審決分類 |
D
1
8・
121-
WY
(H7)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 中田 博康 |
特許庁審判長 |
内藤 弘樹 |
特許庁審判官 |
木村 恭子 佐々木 朝康 |
登録日 | 2020-01-15 |
登録番号 | 意匠登録第1651884号(D1651884) |
代理人 | 山本 泰史 |
代理人 | 倉澤 伊知郎 |
代理人 | 松下 満 |
代理人 | 鈴木 博子 |
代理人 | 田中 伸一郎 |