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審決分類 審判    J3
管理番号 1364986 
審判番号 無効2018-880015
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2020-09-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2018-12-25 
確定日 2020-07-13 
意匠に係る物品 眼鏡型拡大鏡 
事件の表示 上記当事者間の意匠登録第1580775号「眼鏡型拡大鏡」の意匠登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 意匠登録第1580775号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由
第1 手続の経緯
平成28年10月 4日 登録第1580775号の意匠(以下「本件登録意匠」という。)に係る出願(意願2016-21551号)
平成29年 6月16日 設定の登録(意匠登録第1580775号)
平成29年 7月10日 意匠公報発行
平成30年12月25日 本件審判請求書提出(請求人)
平成31年 4月 1日 答弁書提出(被請求人)
令和 1年 6月13日 弁駁書(請求人)
令和 1年 8月30日付け 審尋
令和 1年 9月18日 回答書提出(被請求人)
令和 1年 9月19日 回答書提出(請求人)
令和 1年10月25日 検証申出書及び検証物指示説明書提出
令和 2年 1月31日付け 審理事項通知
令和 2年 2月26日 口頭審理陳述要領書提出(被請求人)
令和 2年 2月28日 口頭審理陳述要領書提出(請求人)
令和 2年 3月13日 口頭審理

第2 請求の趣旨及び理由
請求人は,本件登録意匠の登録を無効とする,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由として,本件登録意匠が意匠法第3条第1項第1号に掲げる意匠に類似する旨の第3条第1項第3号の理由,及び第3条第1項第2号に掲げる意匠に類似する旨の第3条第1項第3号の理由について,要旨以下のとおり主張(「弁駁書」「回答書」及び「口頭審理陳述要領書」の内容を含む。)し,証拠として甲第1号証ないし甲第9号証,及び検甲第1号証を提出した。

1 審判請求書における主張
(1)本件登録意匠の内容
本件登録意匠は,「眼鏡型拡大鏡」を「意匠に係る物品」とするものであって,その形態は,意匠登録第1580775号の意匠公報(以下「本件意匠公報」という。)に記載のとおりである(甲第1号証)。

(2)本件登録意匠の形態
ア 本件登録意匠に係る物品は,「拡大鏡」であって「眼鏡」ではない。
イ 本件登録意匠には,通常の眼鏡における「リム」や「ブリッジ」に相当する部分がない。
ウ 本件登録意匠の「レンズ」は,透明な「一枚レンズ」(以下,単に「一枚レンズ」という。)である。
エ 一枚レンズは,その上辺中央部が,僅かながら下方に向かって凹むようなカーブを描くように成形されている。
オ 一枚レンズの表面は平滑ではなく,左右二つの凸状レンズが,一枚レンズの中央部で連結したかのような概型を有し,このため一枚レンズの正面中央部に谷折りしたことによるかのような縦方向の直線が生じている(以下,この直線形状を「中央部縦線形状」という。)。
カ 一枚レンズの下辺中央部には,鼻梁に沿った下向きの凹状部があり,下辺の全体は,両端に向かってレンズが細くなるように緩やかなカーブを描きつつテーパー状に成形され,左右両下端部は角が丸くカットされている。
キ 一枚レンズの左右両端部は,表面側が凹凸のない局面から成るのに対し,裏面側には,当該一枚レンズ左右両端部を背面に向かって谷折りするかのように屈曲させた段差が設けられ,このため縦方向に,略直線状の緩やかな曲線が生じている(以下,この曲線形状を「両端部縦線形状」という。)。
ク 「つる」は,「一枚レンズ」の「智」の部分に直接接合されているかのような形態を有する。
ケ 「鼻パッド」も「一枚レンズ」に直接接合しているかのような形態を有する。

(3)無効理由の要点
本件登録意匠は,その登録出願日である平成28年10月4日(以下「本件出願日」という。)よりも前の,同年4月25日頃から販売が開始され,遅くとも同年7月27日には,日本国内で頒布された刊行物に記載されていた「眼鏡型拡大鏡」の意匠に類似する意匠(意匠法第3条第1項第3号)であり,同条同項柱書の規定により意匠登録を受けることができなかったにもかかわらず登録されたものであるから,本件登録意匠に係る意匠登録は,同法第48条第1項の規定により無効とされるべきである。

(4)本件登録意匠の登録を無効とすべき理由
ア 引用意匠が公然知られた意匠となった経緯
本件出願日前の2016年4月25日から本格的に販売開始されていた,愛知県名古屋市東区東桜一丁目13番3号(本件審判請求書には「東桜一町目」と記載されているが,明らかな誤記と認められる。)NHK名古屋放送センタービル14Fに所在する「株式会社オークローンマーケティング」の,「両手が使える拡大鏡ビッグビジョン」という製品(以下「本件製品」という。)の購入を,2016年4月30日に知人に依頼した。
本件製品は,同年5月15日頃に知人の元に配達された。
そして,請求人は,知人の元に配達された本件製品を受領したが,それが引用意匠である。
すなわち,引用意匠は,本件出願日の前から一般に向けて販売がされ,実際に購入することもできていたのであり,「意匠登録出願前に日本国内において公然知られた意匠」(意匠法第3条第1項第1号)に該当する。
イ 引用意匠が刊行物に記載された意匠となった事実
本件製品は,本件出願日より前の2016年(平成28年)7月27日,刊行物である以下の新聞紙(以下「本件新聞紙」という。)紙上でも宣伝広告されていたこととなるから,本件新聞紙上に現れている引用意匠は,「意匠登録出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された意匠」(意匠法第3条第1項第2号)にも該当する。

・媒体名 信濃毎日新聞
・発行者 信濃毎日新聞社
・発行者所在地 長野県長野市南県町657番地 信濃毎日新聞社長野本社
・発行日 2016年(平成28年)7月27日水曜日 日刊9版
・広告掲載面 28面 全面広告(総面数:32)

(5)引用意匠の内容と形態
ア 引用意匠は,「拡大鏡」であって「眼鏡」ではない。
イ 引用意匠には,通常の眼鏡における「リム」や「ブリッジ」に相当する部分がない。
ウ 引用意匠の「レンズ」は,メガネの上から重ね掛けができる程度の大きさを持った透明な「一枚レンズ」である。
エ 一枚レンズは,その上辺中央部が,若干ながら下方に向かって凹むようなカーブを描くように成形されている。
オ 一枚レンズの表面は平滑ではなく,左右二つのレンズが,中央部で連結したかのような概型を有し,このため一枚レンズの正面中央部に谷折りしたことによるかのような縦方向の直線が生じている。
カ 一枚レンズの下辺中央部には,鼻梁に沿った下向きの凹状部があり,下辺の全体は,両端に向かってレンズが細くなるように緩やかなカーブを描きつつテーパー状に成形され,左右下端部は丸くカットされている。
キ 一枚レンズの左右両端部は,表面側が凹凸のない曲面から成るのに対し,表面側には,当該一枚レンズ左右両端部を背面に向かって谷折りするかのように屈曲させた段差が設けられ,このため縦方向に,略直線状の緩やかな曲線が生じている。
ク 「つる」は,「一枚レンズ」の「智」の部分に直接接合されているかのような形態を有する。

(6)引用意匠と本件登録意匠との同一性
以上から明らかなように,本件登録意匠の形態は,ほとんど全ての点において引用意匠の形態的特徴及びその要旨と同一ないしは共通するものである。
すなわち,本件登録意匠も引用意匠も,共に「一枚レンズ」から成る眼鏡型拡大鏡であり,左右二つの凸レンズが「中央部」で連結しているかのような概型を有し,このため一枚レンズの中央部に,正面に向かって,当該一枚レンズを谷折りしたかのような縦方向の直線が生じている。
また,一枚レンズ自体の概外形も,略同一といえる形状から成るものである。
また,これらに加え,一枚レンズの「左右両端部」は,双方共に表面側が凹凸のない曲面から成るのに対し,裏面側には,当該一枚レンズ左右両端部を背面に向かって谷折りするかのように屈曲させた段差が設けられており,このため縦方向に,略直線状の緩い曲線が生じている。

(7)本件登録意匠と引用意匠との差異点
本件登録意匠と引用意匠とが共通するものであることは明らかであるが,細かい点では差異がある。
すなわち,「一枚レンズ」に接合されている「鼻パッド」の形状は,両者において異なっている。
しかしながら「鼻パッド」の形状を,この種の商品における重要な部位と考えることができないことは明らかであり,鼻パッドの形状の差異が両意匠の要旨に影響を与えることはないと解される。
すなわち本件登録意匠と引用意匠との類否を判断するにおいて,この点を考慮する必要はない。

(8)まとめ
以上述べたとおり,引用意匠と本件登録意匠とは,その物品と形態とが共に共通し,本件登録意匠に,引用意匠以上の何らかの価値を見出すことは不可能である。
また,引用意匠と本件登録意匠の需要者は,視力に何らかの問題を抱える年代に属していると予想されるが,そのような需要者が,これ程までに似た形状を有する両意匠について,異なる美感を感得したり,あるいはこれらの別異なる意匠として認識したりするとは到底考えられない。引用意匠と本件登録意匠とは,需要者の視覚を通じた美感においても共通し,相互に類似する意匠であると解するのが相当である。
そして本件登録意匠の出願時である本件出願日において,既に引用意匠が公に知られ刊行物に記載されていたのだから,本件登録意匠は新規性を欠く。
よって本件登録意匠は,意匠法第3条第1項第3号の規定に違反して登録されたものであって同法第48条第1項の規定に基づき無効とされるべきである。

2 「弁駁書」における主張
(1)「両端部縦線形状」に係る表面側・裏面側の構成態様
ア 被請求人は,引用意匠の形態的特徴点の1つである「両端部縦線形状」について,請求人が「立証していない」点があると主張している(後記第3の1)ので,請求人はこれを明らかにすべく,新たに甲第9号証を提出する。
甲第9号証は,本件製品の「両端部」のうち,右側端部を,本件製品の下方から撮影したものである。甲第9号証の上の写真は「表面側」を,下の写真は「裏面側」を捉えたものであり,表面側には凹凸がない一方,裏面側には段差により屈曲線が表れていることを確認できる。
イ 「両端部縦線形状」は確かに重要な特徴であるが,需要者の注意は,当該縦線形状より生じている直接的な美感に払われているのであり,表面側・裏面側の何れが屈曲しているのかにかかわらず,引用意匠の当該形態的特徴が,本件登録意匠の同じ部位に表れていることに変わりない以上,被請求人の当該主張は,本件登録意匠が引用意匠と同一又は類似するものであるという結論の妥当性には影響しないと解するのが相当である。

(2)被請求人のその他の主張について
ア 乙第1号証との関係
被請求人は,他の意匠登録第1543212号に係る意匠(以下「乙1意匠」という。)と本件登録意匠とが併存して意匠登録されていることを掲げながら種々の主張をしている(後記第3の1)が,そのほとんどは牽強附会な説であって請求人をして不知というほかない。
イ 乙第2号証について
被請求人が提出する乙第2号証は,引用意匠と本件登録意匠の正面図のみを対比するものであって,その立証趣旨は,両端部縦線形状の具体的形状の相違にあるとしているが,これに基づき展開されている「レンズ本体」に関する記述,及び被請求人の主張する引用意匠の両端部縦線形状の態様の相違についてはいずれも不知ないしこれを争う。引用意匠の両端部縦線形状と,本件登録意匠のそれとの間には,その具体的形態において需要者の美感を左右するほどの違いは見られない。両端部縦線形状が,引用意匠によって初めて開示されたものであるならばなおさらである。
また,被請求人は,「引用意匠の正面図の上下高さを本件登録意匠に合わせた図」ほかの図を作成しつつ種々述べているが,ここで示されている両端部縦線形状を表す線の適否やその主張についても不知ないし争う。
被請求人の主張は,独自の特殊な見解に基づくものであって,その立証の趣旨である「本件登録意匠が引用意匠と非類似であること」を合理的に論証していない。

3 「回答書」における主張
請求人は,当合議体からの審尋に対して,以下の回答を提出した。

(1)意見の内容
令和1年8月30日付けの審尋において示された,本件登録意匠,並びに引用意匠1及び引用意匠2の形状に係る,審判合議体の暫定的認定に対し,以下,意見を申し述べる。

ア 本件登録意匠の形状について
(ア)「レンズの上辺は,中央の約2分の1部分が,僅かにへこんでいる。」は「レンズの上辺…(中略)点は,正面視における中央の約2分の1部分が,下方にへこんでいる」とするのがより適当であると考える。
(イ)「右側凸湾曲面と,左側凸湾曲面が,レンズ中央で連結したような形状になっており,平面視で,レンズ中央で谷折り状の形状で,正面視で,レンズ中央に鉛直方向の直線が表れている。」とするのがより適当であると考える。
(ウ)「レンズの下辺は,智の真下で角を造らずに丸く曲線を描きながら左右の縦辺に繋がっている。」とするのがより適当であると考える。
(エ)「智は,…(中略)…外側辺を表す形状線は,存在しない。」としているが,「凸曲線状に現れる」と解するのが相当と考える。
(オ)智とつるとの関係は,「1:5」又は「約6分の1」とするのが適当であると考える。
イ 引用意匠1(甲第3,5,6及び9号証に表れる意匠)について
(ア)「レンズの下辺は,智の真下で角を造らずに丸く曲線を描きながら左右の縦辺に繋がっている。」程度で表現するのが適当と考える。
(イ)智の長さが「約5分の1」としているが,「約6分の1」が適当であると考える。
(ウ)なお,引用意匠1について,合議体が不明としている点は,検証により明らかになるものと考える。
ウ 引用意匠2(甲第8号証に表れる意匠)について
(ア)中央縦線については,「甲第8号証上では,中央縦線を視認することができない」とするのが適当であると考える。
(イ)なお,引用意匠2について,合議体が不明としている点は,検証により明らかになるものと考える。

4 「口頭審理陳述要領書」における主張
(1)「各意匠の形状についての合議体の暫定的認定」について
ア 審理事項通知における,本件登録意匠の智の形状は,「平面視」した場合の「智の長さ」と「智を含めたつるの長さ」とを比べたものであることが前提となっており,本件登録意匠を「側面視」した場合の比を述べたものではないと理解している。
イ 請求人は,引用意匠1の智の真下のレンズ下辺の湾曲した当該部位からは,「大きなRによる湾曲」というより「角」に相当する出っ張りを感じ取ることができると考える。

(2)被請求人の主張について
被請求人が,令和1年9月18日付けで提出した「審判事件回答書」(以下「被請求人回答書」という。)について,以下を申し述べる。
ア 被請求人回答書(下記第3の2(1)イ)において,引用意匠1のレンズ縦方向の長さが同横方向の長さの41%であるとしているが不適当であると考える。
イ 被請求人回答書(下記第3の2(2))において,本件登録意匠の端部縦線は「左右何れにも突起しない略直線状」であると,他方,引用意匠1の端部縦線は「略円形に大きく膨らんでレンズの左右端に向けて突起した形状」であるとの主張がされているが,両意匠を観察すれば,双方共に端部縦線は「カーブ」を描いており,かつ,カーブの曲率も大差ないはずであるから,この被請求人の主張は,その表現上,事実に反すると考える。
ウ 被請求人回答書(下記第3の2(2)なお書き)において,「『レンズ本体』は端部縦線と中央部縦線とに区切られて周囲とは独立してレンズ部分として視認される」旨の主張がされているが,両意匠は共に「一枚レンズ」から成ることを特徴としているのであり,両眼に相当する部分が独立したレンズとして認識されることはないと考える。
エ 被請求人回答書(下記第3の2(2)なお書き)の「引用意匠のレンズ本体は(後略)」から始まる主張は,その趣旨を含め意味が不明である。

5 請求人が提出した証拠方法
請求人は,以下の甲第1号証ないし甲第9号証を,審判請求書及び弁駁書の添付書類として提出した。

甲第1号証:本件登録意匠の意匠公報(本件意匠公報)
甲第2号証:本件登録意匠の意匠登録原簿
甲第3号証:2016年4月25日付ウェブサイト オークローンマーケティングニュースリリース「【ショップジャパン】両手が使える拡大鏡『ビッグビジョン』本格販売開始」
(https://www.oaklawn.co.jp/news/20160425post-32.html)を印刷した書面
甲第4号証:2016年5月14日付発行 青木(様)宛「お買い上げ明細書」(写し)
甲第5号証:本件製品の写真
甲第6号証:本件製品の写真(斜視図及び正面図)
甲第7号証:本件製品(ビッグビジョンデラックス2個セット)を購入した第三者による,オークローン社のウェブサイト「ショップジャパン公式レビューサイト|ビッグビジョンの口コミ・評判」への2016年8月12日付の投稿内容を印刷した書面
甲第8号証:平成28年7月27日に日本国内で頒布された信濃毎日新聞(本件新聞)写し
甲第9号証:本件製品の両端部縦線形状(右端部)の拡大写真

第3 答弁の趣旨及び理由の要点
被請求人は,審判事件答弁書を提出し,本件審判請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,との審決を求め,その理由として,要旨以下のとおり主張(「回答書」及び「口頭審理陳述要領書」の内容を含む。)し,証拠として乙第1号証及び乙第2号証を提出した。

1 「答弁書」における主張
無効審判請求に係る本件登録意匠は,審査において,意匠登録第1543212号(乙第1号証)と対比され,類似ではないと判断されて登録されたものである。
なお,請求人は,引用意匠と類似であることを無効理由としており,意匠登録第1543212号との類似を無効理由としていない。甲第1号証(本件登録意匠に係る意匠公報)に参考文献として記載されているので,請求人も意匠登録第1543212号を認識していたはずである。本件登録意匠が意匠登録第1543212号と非類似であることは,請求人も認めていることとなる。
請求人は,本件登録意匠の特徴として,上記第2の1(2)において,アないしケを挙げ,これらの特徴を引用意匠もが有していることを上記第2の1(5)において主張している。
ここで,上記特徴のうち,アとキを除く8つは,意匠登録第1543212号も有している。してみれば,意匠登録第1543212号の意匠と本件登録意匠とが非類似である以上,ア又はキの特徴が需要者の視覚を通じて起こさせる美感に与える影響が大きい場合を除き,引用意匠と本件登録意匠とも非類似である。
以下,検討する。
まず,アについては,意匠登録第1543212号は意匠に係る物品が「眼鏡」であり,「眼鏡型拡大鏡」ではない点で相違する。しかし,意匠登録第1543212号に表された図面は,「眼鏡型拡大鏡」としても成立するものである。物を拡大して見る目的で眼鏡をかけることもあり,「眼鏡」と「眼鏡型拡大鏡」との相違はイないしケの特徴のいずれでもないレンズの光学的性質であることから,「眼鏡」と「眼鏡型拡大鏡」との相違は,需要者の視覚を通じて起こさせる美感に与える影響がない(又は極めて小さい)。
したがって,意匠登録第1543212号には「眼鏡型拡大鏡」も含まれると解するべきである。アの特徴が需要者の視覚を通じて起こさせる美感に与える影響が大きいものではない。
すると,キの特徴が需要者の視覚を通じて起こさせる美感に与える影響が大きい場合にのみ,引用意匠と本件意匠とが類似であることとなる。
以下,詳細に検討する。
キの特徴は,審判請求書の記載によれば,「一枚レンズの左右両端部は,表面側が凹凸のない曲面から成るのに対し,裏面側には,当該一枚レンズを背面に向かって谷折りするかのように屈曲させた段差が設けられ,このため縦方向に略直線状の緩やかな曲線が生じている。」とされている。
ここで,引用意匠がキの特徴を備えることを,請求人は立証していない。甲第5号証,甲第6号証によれば,「両端部縦線形状を,正面・背面の双方から視認することができる。」ことが確認できるが,「表面側が凹凸のない曲面で,裏面側に屈曲させた段差が設けられた」ことは確認できない。屈曲させた段差が,表面側,裏面側のいずれか一方又は両方に設けられたことが確認できるのみである。被請求人は,「表面側が凹凸のない曲面で,裏面側に屈曲させた段差が設けられた」可能性を認めるが,請求人の提出した証拠では他の可能性を否定していない。請求人は,改めて「表面側が凹凸のない曲面で,裏面側に屈曲させた段差が設けられた」ことを立証されたい。
以下,上記立証がなされるものとして,検討する。(引用意匠に係る物品が実際に「表面側が凹凸のない曲面で,裏面側に屈曲させた段差が設けられた」ものであれば容易に立証できるはずなので,被請求人も,立証がなされる限りにおいてこの点を否定するものではない。)
本件意匠と意匠登録第1543212号との相違点として,(A)鼻パッドの形状,(B)レンズの上下方向の幅の相違,(C)としてキの特徴がある。
(A)については請求人も承知し,需要者の視覚を通じて起こさせる美観に与える影響が小さいと主張している。(B)については,請求人は審判請求書において述べていない。いずれにしても,(A)(B)の相違は引用意匠と意匠登録第1543212号とで共通なので,意匠登録第1543212号と本件意匠との対比において,上記(A)(B)の相違によっては非類似でなく,(C)の相違によって非類似となるのでない限り,本件意匠と引用意匠とは非類似である。以下,(A)(B)(C)の需要者の視覚を通じて起こさせる美観に与える影響について検討する。
(A)については,請求人は,「鼻パッド」の形状を,この種の商品における重要な部位と考えることはできないと主張する。確かに,「鼻パッド」の形状の微細な相違が意匠の類否に大きな影響を有さないことは,被請求人も同意する。しかし,引用意匠及び意匠登録第1543212号の「鼻パッド」の形状は,本件意匠にはない上方の係止部(乙第2号証)を有している。すなわち,引例意匠及び意匠登録第1543212号の眼鏡型拡大鏡は,鼻の高い需要者には使用困難なものとなっている。需要者は実際の使用を想定して物品を観察するので,使用可能性に影響を与える引用意匠と本件意匠との相違は,需要者の視覚を通じて起こさせる美観に与える影響が大きなものである。
(B)については,眼鏡型拡大鏡を装着した際に,引用意匠が「目の周囲の広い範囲を覆った視角の広いもの」との印象を与えるのに対し,本件意匠は,「目の上下の狭い範囲を覆ったスマートなもの」との印象を与える。すなわち装着時において他者が見た印象が全く異なる。してみれば,需要者の視覚を通じて起こさせる美観に与える影響が極めて大きなものである。
(C)については,鼻及びその上方の形態が需要者の視覚を通じて起こさせる美観に与える影響の大きな眼鏡型拡大鏡における,左右両端部の相違である。需要者の視覚を通じて起こさせる美観に与える影響は小さなものである。
以上によれば,(A)(B)の影響が大きく,(C)の影響は小さい。本件意匠は意匠登録第1543212号に表された意匠と類似でない。したがって,(C)の影響を加味しても評価しても,(A)(B)の影響によって引用意匠とも類似でない。
以下,請求人が(C)の影響が大きいと主張する場合に備え,予備的な被請求人の主張を述べる。(C)の影響を考慮しても,引用意匠と本件意匠とは類似でない。
乙第2号証に基づいて説明する。
引用意匠と本件登録意匠とは,「両端部縦線形状」を有する点が共通するとしても,「両端部縦線形状」の具体的形状が大きく相違する。乙第2号証において,甲第5号証及び甲第6号証に基づいて構成した引用意匠の正面図を示す。引用意匠の正面図を本件登録意匠の正面図と対比すると,以下の点で相違する。
鼻パッドの形状が相違する。この点は,上記のとおり,需要者の視覚を通じて起こさせる美観に与える影響が大きなものである。
レンズの上下方向の幅が相違する。なお,図面からはサイズが確定できないのでレンズの上下方向の幅が厳密には確定できないが,レンズの左右方向の幅は顔の幅に規定されてほぼ同一なので,レンズの左右方向の幅を同一として図示した。この点は,上記のとおり,需要者の視覚を通じて起こさせる美観に与える影響が大きなものである。
「両端部縦線形状」が相違する。両端部縦線形状が鼻パッドの形状,レンズの上下方向の幅よりも意匠の類否に影響する,すなわち「両端部縦線形状」が左右両端部の相違であるにもかかわらず需要者に明示的に観察されて視覚を通じて起こさせる美観に与える影響が大きいのであれば,漠然とした両端部縦線形状の存否のみでなく,両端部縦線形状の具体的形状の類否も問題となる。以下,レンズの両端部縦線形状から中央部縦線形状までの箇所を「レンズ本体」と呼ぶ。レンズ本体は,両端部縦線形状と中央部縦線形状とに区切られて周囲とは独立してレンズ部分として視認される。引用意匠と本件登録意匠の両端部縦線形状が需要者に強く観察されるのであれば,両端部縦線形状を含むレンズ本体の形状も強く観察される。この点,引用意匠と本件登録意匠の両端部縦線形状を比較すると,引用意匠の両端部縦線形は略円形に大きく膨らんで(「略直線状」ではない)レンズ端部に近づいているのに対し,本件登録意匠の両端部縦線形は「略直線状」でありレンズ端部にさほど近づいていない。レンズ上下方向の幅の相違を捨象するため,引用意匠の正面図の上下高さを本件意匠に合わせた図を示した。引用意匠と本件登録意匠のレンズ本体を比較すると,引用意匠のレンズ本体は,一端に張り出した略円形が上縁,下縁及び中央部において切断されたように見える。これに対し,本件登録意匠のレンズ本体は,中央部縦線形状と両端部縦線形状とによって両側が切断されたように見える。需要者の視覚を通じて起こさせる美観に与える影響が大きな形状の相違が明白であり,引用意匠と本件登録意匠の両端の形状は,非類似である。
以上のとおり,(C)の影響を考慮するとしても,「両端部縦線形状」の具体的形状が大きく相違するので,引用意匠と本件登録意匠とは非類似である。

2 「回答書」における主張
本件登録意匠,引用意匠1及び引用意匠2に係る,合議体の暫定的な認定は正しいものと考える。しかし,本件登録意匠及び引用意匠1について,以下の点を追加で認定するべきと考える。
なお,これらについては,答弁書において本件登録意匠及び引用意匠1の相違点として述べたものである。

(1)基本的形状のア(レンズの基本的形状)について
ア 本件登録意匠について
レンズは,透明で,右目から左目まで及ぶ横長の一枚ものである。レンズの縦方向の長さは,横方向の長さに対し,およそ35%である。
イ 引用意匠1について
レンズは,透明で,右目から左目まで及ぶ横長の一枚ものである。レンズの縦方向の長さは,横方向の長さに対し,およそ41%である。

なお,縦方向の長さの相違について,答弁書において,「眼鏡型拡大鏡を装着した際に,引用意匠が『目の周囲の広い範囲を覆った視角の広いもの』との印象を与えるのに対し,本件意匠は,『目の上下の狭い範囲を覆ったスマートなもの』との印象を与える。すなわち装着時において他者が見た印象が全く異なる。してみれば,需要者の視覚を通じて起こさせる美感に与える影響が極めて大きなものである。」との主張をしている。

(2)レンズの形状のコ(端部縦線)について
ア 本件登録意匠について
レンズは,表面側が滑らかな曲面で,裏面側は,レンズ左右両端よりやや内側にて屈曲している。このため,緩やかな曲線状の縦線(以下「端部縦線」という。)が表れている。端部縦線は,その上端を通る鉛直線と下端を通る鉛直線との間にのみ存し,左右いずれにも突起しない略直線状である。
イ 引用意匠1について
レンズは,表面側が滑らかな曲面で,裏面側は,レンズ左右両端よりやや内側にて谷折りに屈曲している。このため,緩やかな曲線状の端部縦線が表れている。端部縦線は,その上端を通る鉛直線と下端を通る鉛直線との間から,略円形に大きく膨らんでレンズの左右端に向けて突起した形状である。

なお「端部縦線」の相違について,答弁書において,「端部縦線が鼻パッドの形状,レンズの上下方向の幅よりも意匠の類否に影響する,すなわち『端部縦線』が左右両端部の相違であるにもかかわらず需要者に明示的に観察されて視覚を通じて起こさせる美感に与える影響が大きいのであれば,漠然とした端部縦線の存否のみでなく,端部縦線の具体的形状の類否も問題となる。以下,レンズの端部縦線から中央縦線までの箇所を『レンズ本体』と呼ぶ。レンズ本体は,端部縦線と中央部縦線とに区切られて周囲とは独立してレンズ部分として視認される。引用意匠と本件意匠の端部縦線が需要者に強く観察されるのであれば,端部縦線を含むレンズ本体の形状も強く観察される。この点,引用意匠と本件登録意匠の端部縦線を比較すると,引用意匠の両端部縦線形は略円形に大きく膨らんで(「略直線状」ではない)レンズ端部に近づいているのに対し,本件登録意匠の両端部縦線形は『略直線状』でありレンズ端部にさほど近づいていない。…引用意匠と本件登録意匠のレンズ本体を比較すると,引用意匠のレンズ本体は,一端に張り出した略円形が上縁,下縁及び中央部において切断されたように見える。これに対し,本件登録意匠のレンズ本体は,中央縦線と端部縦線とによって両側が切断されたように見える。需要者の視覚を通じて起こさせる美感に与える影響が大きな形状の相違が明白であり,引用意匠と本件登録意匠の両端の形状は,非類似である。」との主張をしている。

3 「口頭審理陳述要領書」における主張
(1)合議体の暫定的見解についての意見
合議体の暫定的見解に同意する。特に,本件登録意匠には存在する中央縦線が引用意匠1及び引用意匠2には存在しない点について,視覚を通じた美観に与える影響の大きな箇所であり,被請求人も主張する。また,レンズの縦方向の長さと横方向の長さについて,被請求人の意見が合議体の暫定的見解と相違するかのように指摘されたが,同一の形状について別の表現をしているだけであり,以下(2)に説明する。

(2)レンズの縦方向の長さと横方向の長さについて
縦方向と横方向の長さの比率について,合議体の暫定的見解として,正面側から視認される透明部分の長さの比率が略等しいことを述べている。被請求人は,横方向の長さについて合議体と別の定義で意見を述べた。
合議体は,例えばガラス製の正面視透明に見える箇所の全体をレンズとして,横方向の長さを測定したと推察する。しかし,請求人は,レンズに「両端部縦線形状」が存在することを言っている。してみれば,縦線形状が「両端部」であり,縦線形状よりも外側の部分は,ガラスなどの透明部分であり光の屈曲を発生させるとしても「レンズ」の一部ではないと,被請求人は判断した。

外接長方形の縦横比は,本件登録意匠と引用意匠1とで明白に相違し,引用意匠1の縦方向の長さ(外接長方形の縦辺の長さ)は,本件登録意匠の縦方向の長さよりも大きいものである。
被請求人は,上記の相違について,答弁書において,「眼鏡型拡大鏡を装着した際に,引用意匠が『目の周囲の広い範囲を覆った視角の広いもの』との印象を与えるのに対し,本件登録意匠は,『目の上下の狭い範囲を覆ったスマートなもの』との印象を与える。すなわち装着時において他者が見た印象が全く異なる。してみれば,需要者の視覚を通じて起こさせる美観に与える影響が極めて大きなものである。」との主張をしている。

(3)レンズ形状の端部縦線について
被請求人が,本件登録意匠について「端部縦線は,その上端を通る鉛直線と下端を通る鉛直線との間にのみ存し,左右いずれにも突起しない略直線状である。」と述べ,引用意匠1について「端部縦線は,その上端を通る鉛直線と下端を通る鉛直線との間から,略円形に大きく膨らんでレンズの左右端に向けて突起した形状である。」と述べた点について,釈明する。
本件登録意匠の端部縦線と引用意匠1の端部縦線とを破線で示し,対比した図面を示す(別紙第3参照)。上端を通る鉛直線と下端を通る鉛直線とを1点鎖線で示してある。本件登録意匠については右側の1点鎖線が上端を通る鉛直線で,左側の1点鎖線が下端を通る鉛直線である。引用意匠1については右側の1点鎖線が下端を通る鉛直線で,左側の1点鎖線が上端を通る鉛直線である。

図中に破線で示した端部縦線は,本件登録意匠では2本の1点鎖線の間(上端を通る鉛直線と下端を通る鉛直線との間)にのみ存する。一方,引用意匠1では左側の1点鎖線からさらに左寄りに膨らんで突起した形状である。被請求人は,この点を主張した。合議体の暫定的見解において,本件登録意匠について「端部縦線は,下端が略垂直の状態から始まり,上端が稲穂のように僅かにたわんだ状態で表れている」と判断され,引用意匠1について「端部縦線は,おおむね上下対称形の円弧状であり」と判断された点と同一のことを言ったものである。
さらに,「円弧」が大きく膨らんでいることを主張した。
被請求人は,答弁書において,「『端部縦線』が左右両端部の相違であるにもかかわらず需要者に明示的に観察されて視覚を通じて起こさせる美観に与える影響が大きいのであれば,漠然とした端部縦線の存否のみでなく,端部縦線の具体的形状の類否も問題となる。」との主張をしている。

4 証拠方法
乙第1号証 意匠登録第1543212号公報
乙第2号証 引用意匠と本件登録意匠との対比

第4 口頭審理及び検証
本件審判において,当審は,令和2年3月13日に口頭審理及び検甲第1号証についての検証を行った。(令和2年3月13日付け口頭審理調書及び検証調書参照。)

第5 当審の判断
請求人は,請求書において,引用意匠は,本件出願日前に日本国内において公然知られた意匠(意匠法第3条第1項第1号の意匠。以下「引用意匠A」とする。)に該当する,と主張する(第2 1(4)ア)と同時に,引用意匠は,本件出願日前に日本国内において頒布された刊行物に記載された意匠(意匠法第3条第1項第2号の意匠。以下「引用意匠B」とする。)に該当するとも主張し(第2 1(4)イ),それらの引用意匠に基づいて,本件登録意匠は,意匠法第3条第1項第3号の規定に違反して登録されたものであって,同法第48条第1項の規定に基づき無効とされるべきである(第2 1(8)),と主張するから,引用意匠A(意匠法第3条第1項第1号の意匠)に基づく意匠法第3条第1項第3号に係る理由を無効理由1として,また,引用意匠B(意匠法第3条第1項第2号の意匠)に基づく意匠法第3条第1項第3号に係る理由を無効理由2として,検討する。
まず,無効理由1から検討する。

1 本件登録意匠
本件登録意匠は,平成28年10月4日の意匠登録出願に係り,平成29年6月16日に意匠権の設定の登録がなされた意匠登録第1580775号の意匠であり,意匠に係る物品を「眼鏡型拡大鏡」とし,形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合を願書及び添付図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照(甲第1号証))。
そして,願書及び添付図面の記載によると,本件登録意匠は,本体レンズ部分,智及びつるから成るものであり,その形状は,以下のとおりである。

(1)基本的形状
ア レンズは,透明で,右目から左目まで及ぶ横長の一枚ものである。
イ 通常の眼鏡における「リム」や「ブリッジ」に相当する部分がない。
ウ 智は,レンズの左右端の上端に直接設けてあり,つるは,智の後端から後ろに延びている。

(2)レンズの形状
エ レンズの縦方向の長さは,横方向の長さに対し,およそ35%である。
オ レンズの上辺(左右の智の内側端と内側端との間の部分のこと。以下,同じ。)は,正面視において中央の約2分の1部分が,下方に僅かにへこんでいる。
カ レンズは,右目側部分も左目側部分も共に,上下方向にも左右方向にも,前方に僅かに突出するように湾曲している。
キ その結果,右側凸湾曲面と,左側凸湾曲面が,レンズ中央で連結したような形状になっており,平面視で,レンズ中央で谷折り状の形状で,正面視で,レンズ中央に鉛直方向の直線(以下「中央縦線」ともいう。)が表れている。
ク レンズの下辺は,鼻梁に沿うように中央に凹状部があり,そこから左右両端に向かって徐々にレンズが細くなるように緩やかなカーブを描いている。
ケ レンズの下辺から左右の縦辺にかけては,レンズの下辺が智の真下で角を認識させつつも丸く曲線を描きながら左右の縦辺につながっている。
コ 左右の縦辺は,外向きの湾曲で,上広がり状である。
サ レンズは,表面側が滑らかな曲面で,裏面側は,レンズ左右両端よりやや内側にて屈曲している。このため緩やかな曲線状の縦線(以下「端部縦線」ともいう。)が表れている。
シ 緩やかな曲線状の端部縦線は,下端が略垂直の状態から始まり,上端が,稲穂のように僅かにたわんだ状態で表れているものであって,その上端は智の内側辺と接している。

(3)智の形状
ス 智は,正面視で略扁平(へんぺい)な四角形で,上辺は水平で,内側辺が下に向かってすぼまるように傾斜しており,下辺は僅かに外に向かって下がってゆく傾斜辺であり,外側辺を表す形状線は,存在しない。
セ 平面視では,略L字状になっており,智の長さ(智の前端から智の後端までの長さ)は,側面視で,智の前端からつる後端までの長さの約5分の1を占める長さを有している。

(4)つるの形状
ソ つるは,平面視で,略中央まで左右に広がり,そこから後は内側に回り込んでいる。
タ 後側約3分の1は,耳に掛けるために下側へ湾曲している。

(5)鼻あての形状
チ 別体の半切長円形状(D文字形状)の鼻パッドをレンズの右目側部分と左目側部分それぞれに1つずつ設けて一組の鼻あてを形成している。

2 引用意匠Aに係る意匠
引用意匠Aは,2016年4月30日に請求人が知人に購入を依頼し,同年5月15日頃に知人に配送されたものと認められる(甲第4号証ないし6号証,及び9号証),「BIG Vision」(ビッグビジョン)に係る意匠であるが,請求人が提出の甲号証のみでは形状が不明確な箇所があったため,検甲第1号証について検証を行い,引用意匠Aの形状を明確にした。
引用意匠Aは,本体レンズ部分,智及びつるから成るものであり,その形状は,以下のとおりである(別紙第2(甲第6号証),別紙第3(甲第9号証)及び別紙第4(検甲第1号証)参照)。

(1)基本的形状
ア レンズは,透明で,右目から左目まで及ぶ横長の一枚ものである。
イ 通常の眼鏡における「リム」や「ブリッジ」に相当する部分がない。
ウ 智は,レンズの左右端の上端に直接設けてあり,つるは,智の後端から後ろに延びている。

(2)レンズの形状
エ レンズの縦方向の長さは,横方向の長さに対し,およそ35%である。
オ レンズの上辺は,正面視において中央の約2分の1部分が,僅かにへこんでいる。
カ レンズは,右目側部分も左目側部分も共に,上下方向にも左右方向にも,前方に僅かに突出するように湾曲している。
キ その結果,右側凸湾曲面と,左側凸湾曲面が,レンズ中央で連結したような形状になっており,平面視で,レンズ中央で谷折り状の形状で,正面視でレンズ中央に鉛直方向の中央縦線が表れている。
ク レンズの下辺は,鼻梁に沿うように中央に凹状部があり,そこから下辺は,左右両端に向かって僅かにレンズが細くなるように緩やかなカーブを描いている。
ケ レンズの下辺から左右の縦辺にかけては,レンズの下辺が智の真下で,大きなRで湾曲し,左右の縦辺につながっている。
コ 左右の縦辺は,外向きの湾曲で,上広がり状である。
サ レンズは,表面側が滑らかな曲面で,裏面側は,レンズ左右両端よりやや内側にて谷折りに屈曲している。このため緩やかな曲線状の端部縦線が表れている。
シ 緩やかな曲線状の端部縦線は,おおむね上下対称形の円弧状であり,その上端は智の内側辺と接している。

(3)智の形状
ス 智は,正面視で略扁平な四角形で,上辺及び下辺は水平で,内側辺が下に向かってすぼまるように傾斜しており,外側辺は凸曲線状である。
セ 平面視では,略L字状になっており,智の長さは,側面視で,智の前端からつる後端までの長さの約5分の1を占める長さを有している。

(4)つるの形状
ソ つるは,平面視で,略中央まで略平行で,そこから後は内側に回り込んでいる。
タ 後側約3分の1は,耳に掛けるために下側へ湾曲している。

(5)鼻あての形状
チ 平面視で横長長円形,前がやや低く後がやや高くした,正面視で倒立V字状に曲がった(山なりの)環状で,鼻パッドとしてその左約4分の1と右約4分の1に平板状部を設けて,鼻あてとしている。

3 本件登録意匠と引用意匠Aの対比
(1)両意匠に係る物品
本件登録意匠の意匠に係る物品は「眼鏡型拡大鏡」であり,引用意匠Aに係る物品は眼鏡型の「拡大鏡」である。

(2)両意匠の形状の対比
両意匠の形状を対比すると,以下に示す主な共通点と相違点が認められる。
ア 共通点について
ア-1 基本的形状
(ア)レンズは,透明で,右目から左目まで及ぶ横長の一枚ものである。
(イ)通常の眼鏡における「リム」や「ブリッジ」に相当する部分がない。
(ウ)智は,レンズの左右端の上端に直接設けてあり,つるは,智の後端から後ろに延びている。
ア-2 レンズの形状
(エ)レンズの縦方向の長さは,横方向の長さに対し,およそ35%である。
(オ)レンズの上辺は,正面視において中央の約2分の1部分が,下方に僅かにへこんでいる。
(カ)レンズは,右目側部分も左目側部分も共に,上下方向にも左右方向にも,前方に僅かに突出するように湾曲している。
(キ)その結果,右側凸湾曲面と,左側凸湾曲面が,レンズ中央で連結したような形状になっており,平面視で,レンズ中央で谷折り状の形状で,正面視で,レンズ中央に鉛直方向の直線(中央縦線)が表れている。
(ク)レンズの下辺は,鼻梁に沿うように中央に凹状部があり,そこから左右両端に向かってレンズが細くなるように緩やかなカーブを描いている。
(ケ)レンズの下辺から左右の縦辺にかけては,レンズの下辺が智の真下で曲がって左右の縦辺につながっている。
(コ)左右の縦辺は,外向きの湾曲で,上広がり状である。
(サ)レンズは,表面側が滑らかな曲面で,裏面側は,レンズ左右両端よりやや内側にて屈曲している。このため緩やかな曲線状の縦線(端部縦線)が表れている。
(シ)緩やかな曲線状の端部縦線は,その上端は智の内側辺と接している。
ア-3 智の形状
(ス)智は,正面視で略扁平な四角形で,上辺は水平で,内側辺が下に向かってすぼまるように傾斜している。
(セ)平面視では,略L字状になっており,智の長さは,側面視で,智の前端からつる後端までの長さの約5分の1を占める長さを有している。
ア-4 つるの形状
(ソ)つるは,平面視で,略中央から後は内側に回り込んでいる。
(タ)後側約3分の1は,耳に掛けるために下側へ湾曲している。
イ 相違点について
イ-1 レンズの形状
(ア)レンズの下辺につき,本件登録意匠は,左右両端に向かって徐々に細くなるように緩やかなカーブを描いているのに対して,引用意匠Aは,左右両端に向かって僅かに細くなるように緩やかなカーブを描いている点。
(イ)レンズの下辺から左右の縦辺にかけての形状につき,本件登録意匠は,角を認識させつつも丸く曲線を描いているのに対して,引用意匠Aは,大きなRで湾曲している点。
(ウ)レンズの裏面側のレンズ左右両端よりやや内側の形状につき,本件登録意匠は,屈曲しているのに対して,引用意匠Aは,谷折りに屈曲している点。
(エ)端部縦線の形状につき,本件登録意匠は,下端が略垂直の状態から始まり,上端が,稲穂のように僅かにたわんだ状態で表れているものであるのに対して,引用意匠Aは,おおむね上下対称形の円弧状である点。
イ-2 智の形状
(オ)智の正面視の形状につき,本件登録意匠は,下辺は僅かに外に向かって下がってゆく傾斜辺であり,外側辺を表す形状線は存在しないのに対して,引用意匠Aは,下辺は水平で,外側辺は凸曲線状である点。
イ-3 つるの形状
(カ)つるの平面視の形状につき,本件登録意匠は,レンズ側から略中央まで左右に広がっているのに対して,引用意匠Aは,レンズ側から略中央まで略平行である点。
イ-4鼻あての形状
(キ)鼻あての形状につき,本件登録意匠は,別体の半切長円形状の鼻パッドをレンズの右目側部分と左目側部分それぞれに1つずつ設けて一組の鼻あてを形成しているのに対して,引用意匠Aは,平面視で横長長円形,前がやや低く後がやや高くした,正面視で倒立V字状に曲がった(山なりの)環状で,鼻パッドとしてその左約4分の1と右約4分の1に平板状部を設けて,鼻あてとしている点。

4 判断
(1)意匠に係る物品の類否判断
本件登録意匠の意匠に係る物品は「眼鏡型拡大鏡」であり,引用意匠Aに係る物品は眼鏡型の「拡大鏡」であるから,一致している。

(2)両意匠における形状の評価
ア 共通点について
(ア)共通点(ア)については,眼鏡型拡大鏡においては,以前から散見される形状であるから,両意匠のみの特徴といえず,両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
(イ)共通点(イ)及び(ウ)については,この種物品分野において,余り見かけることのない形状であり,両意匠の類否判断に与える影響は一定程度認められる。
(ウ)共通点(エ)については,リム及びブリッジが無い眼鏡型拡大鏡の主体であるレンズ本体の縦横比率であるから,両意匠の類否判断に与える影響は一定程度認められる。
(エ)共通点(オ)については,眼鏡型拡大鏡の主体であるレンズ本体の上辺における共通点であり,見えやすい部分の共通点ではあるから,両意匠の類否判断に与える影響は大きい。
(オ)共通点(カ)については,透明体におけるごく僅かな湾曲であるから,両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
(カ)共通点(キ)については,透明体といえども,急激な形状の変化点であって,ハッキリと見えるものであるから,両意匠の類否判断に与える影響は一定程度認められる。
(キ)共通点(ク)ないし(コ)については,主体であるレンズ本体の下辺における共通点であり,レンズの形状のほとんどを占める部分の共通点であって,両意匠の形状的特徴を生じさせる共通点といえるから,両意匠の類否判断に与える影響は大きい。
(ク)共通点(サ)及び(シ)については,端部における僅かながらの共通点といえども,両意匠の形状的特徴を生じさせる共通点といえるから,両意匠の類否判断に与える影響は一定程度認められる。
(ケ)共通点(ス)については,部品と部品(レンズとつる)をつなぐ要であり,レンズ本体の外形状に次ぐ,正面側からのデザイン的要素でもあるから,両意匠の類否判断に与える影響は大きい。
(コ)共通点(セ)については,つるを折りたたんだ場合に気付く点であり,使用状態においては分からない点であるから,両意匠の類否判断に与える影響は僅かである。
(サ)共通点(ソ)及び(タ)については,この種物品においてはよく見られる形状であり,両意匠の類否判断に与える影響は無い。
イ 相違点について
(ア)相違点(ア)については,この相違によって,引用意匠Aのレンズの縦辺の方がやや縦に大きいものと捉えられるが,その相違は僅かであって,共通点(ク)に内包される相違と認められるから,両意匠の類否判断に与える影響は限定的である。
(イ)相違点(イ)については,注視するならば,相違点(ア)と相まって,本件登録意匠は,細くてシャープなイメージを醸し出しているのに対して,引用意匠Aは,ぼってりと厚く丸いイメージを醸し出しているが,その別異感は注視して気付くほどの僅かなものであって,共通点(ケ)に内包される相違と認められるから,両意匠の類否判断に与える影響は限定的である。
(ウ)相違点(ウ)については,本件登録意匠の願書及び図面の記載内容からは,山折りに屈曲しているのか,谷折りに屈曲しているのか不明であるのに対して,引用意匠Aは谷折りであるという相違であるが,本件登録意匠の屈曲が山折りであろうと谷折りであろうと,レンズ裏側の端部における形状であるし,共通点(サ)に内包される相違であるから,両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
(エ)相違点(エ)については,透明なレンズの屈曲線という見えづらい形状の相違であるから,端部縦線があるという共通点(サ)をしのぐほどの相違とは認められず,両意匠の類否判断に与える影響は限定的である。
(オ)相違点(オ)については,小さな智の僅かな相違であるから,両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
(カ)相違点(カ)については,略中央まで左右に広がっているものも,略中央まで略平行であるものも,眼鏡型拡大鏡と関連する眼鏡の分野においてはよく見られる形状であり,両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
(キ)相違点(キ)については,その部分を観察した場合,本件登録意匠は普通の形状であり,引用意匠Aの形状は特殊なものと認められるが,主のレンズに対しては,従の一部品といえるから,全体観察した場合は,レンズの外形状における共通感を凌駕するほどのものとは認められず,両意匠の類否判断に与える影響は限定的である。
ウ 両意匠における形状の類否判断
以上のとおり,眼鏡型拡大鏡の主体と認められ,需要者が主に注目することから,商品の訴求力を高めると考えられる,レンズ本体の正面視形状において,共通点(オ),(ク)ないし(コ)及び(ス)の両意匠の類否判断に与える影響が大きい各共通点が存在し,その他の共通点も加えて,両意匠の類否判断を決するものといえる。
それに対して,相違点は,小さい又は限定的なものばかりであり,これらの相違点を合わせたとしても,両意匠について需要者に別異の印象を起こさせる程のものではないから,両意匠の類否判断を決するものではない。
よって,本件登録意匠の形状と引用意匠Aの形状は,全体観察においては類似していると認められる。

(3)両意匠における類否判断
以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が一致し,両意匠の形状においても,上記のとおり本件登録意匠と引用意匠Aの形状は類似するものであるから,本件登録意匠と引用意匠Aは類似する。

5 被請求人の主張について
なお,被請求人は,請求人の主張に合わせて,意匠法第3条第1項第1号の意匠を「引用意匠」又は「引用意匠1」と称しているが,ここでは「引用意匠A」と統一して記載する。
(1)「答弁書」における主張について
ア 鼻パッドの形状につき,引用意匠Aは,本件登録意匠にはない上方の係止部を有しており,引例意匠Aは,鼻の高い需要者には使用困難なものとなっているところ,需要者は実際の使用を想定して物品を観察するので,使用可能性に影響を与える引用意匠Aと本件登録意匠との相違は,需要者の視覚を通じて起こさせる美観に与える影響が大きなものである,と主張するが,この点については,上記4(2)イ(キ)のとおりである。
イ また,レンズの上下方向の幅の相違につき,眼鏡型拡大鏡を装着した際に,引用意匠Aが「目の周囲の広い範囲を覆った視覚の広いもの」との印象を与えるのに対し,本件登録意匠は,「目の上下の狭い範囲を覆ったスマートなもの」との印象を与え,需要者の視覚を通じて起こさせる美観に与える影響が極めて大きなものである,と主張するが,この点については,両意匠共に,レンズの縦方向の長さは,横方向の長さに対し,およそ35%であり,共通しており,被請求人のいうところは,上記3(2)イの相違点(ア)及び(イ)より生じるものと考えられるところ,上記4(2)イ(ア)及び(イ)のとおりである。
ウ そして,端部縦線の形状につき,「両端部縦線形状」が左右両端部の相違であるにもかかわらず需要者に明示的に観察されて視覚を通じて起こさせる美観に与える影響が大きいのであれば,漠然とした両端部縦線形状の存否のみでなく,両端部縦線形状の具体的形状の類否も問題となり,引用意匠Aと本件登録意匠の両端部縦線形状を比較すると,引用意匠Aの両端部縦線形状は略円形に大きく膨らんでレンズ端部に近づいているのに対し,本件登録意匠の両端部縦線形状は「略直線状」でありレンズ端部にさほど近づいていないから,「両端部縦線形状」の具体的形状が大きく相違するので,引用意匠Aと本件登録意匠とは非類似である,と主張するが,この点については,上記4(2)イ(エ)のとおりである。

(2)「回答書」における主張について
ア レンズの基本的形状について
本件登録意匠は,レンズの縦方向の長さは,横方向の長さに対し,およそ35%であるのに対して,引用意匠Aは,およそ41%である,と主張するが,この点については,上記1(2)エ及び2(2)エのとおり,両意匠共におよそ35%である。
なお,被請求人は,令和2年3月13日の口頭審理において,「引用意匠Aのレンズの縦横比の数値は,請求人提出の甲第6号証を基に定規で測ったので正確ではないのでこだわらないが,左右の端部縦線の間隔に対してレンズの縦幅が,引用意匠Aの方が本件登録意匠より広い。」と陳述している(第1回口頭審理・証拠調べ調書の被請求人4)。
そして,この「左右の端部縦線の間隔に対してレンズの縦幅が,引用意匠Aの方が本件登録意匠より広い」という点は,上記3(2)イの相違点(ア)と同旨であり,これに関しては,上記4(2)イ(ア)のとおりである。
イ レンズの形状の端部縦線について
本件登録意匠の端部縦線は,その上端を通る鉛直線と下端を通る鉛直線との間にのみ存し,左右いずれにも突起しない略直線状であるのに対して,引用意匠Aの端部縦線は,その上端を通る鉛直線と下端を通る鉛直線との間から,略円形に大きく膨らんでレンズの左右端に向けて突起した形状である,と主張するが,この点については,上記4(2)イ(エ)のとおりである。

(3)「口頭審理陳述要領書」における主張について
ア レンズの縦方向の長さと横方向の長さについて
この点は,上記(2)アと同様の主張であり,その内容は,上記3(2)イの相違点(ア)と同旨であり,これに関しては,上記4(2)イ(ア)のとおりである。
イ レンズ形状の端部縦線について
被請求人は,端部縦線について,本件登録意匠と引用意匠Aを対比した図面を示して(別紙第3参照),本件登録意匠については右側の1点鎖線が上端を通る鉛直線で,左側の1点鎖線が下端を通る鉛直線である点,
引用意匠Aについては右側の1点鎖線が下端を通る鉛直線で,左側の1点鎖線が上端を通る鉛直線である点,
端部縦線は,本件登録意匠では2本の1点鎖線の間にのみ存するのに対して,引用意匠Aでは左側の1点鎖線からさらに左寄りに膨らんで突起した形状である点,
合議体の暫定的見解において,本件登録意匠については「端部縦線は,下端が略垂直の状態から始まり,上端が稲穂のように僅かにたわんだ状態で表れている」とし,引用意匠Aについては「端部縦線は,おおむね上下対称形の円弧状であり」と判断された点と同一のことを言ったものである点を主張する。
本件登録意匠と引用意匠Aの端部縦線の形状に差異があることは,上記3(2)イ(エ)に示すとおりである。
そして,この端部縦線に係る形状の相違についての評価は,上記4(2)イ(エ)のとおりである。

第6 結び
以上のとおりであって,本件登録意匠は,無効理由1によって,意匠法第3条第1項第3号の意匠(同法同条同項第1号に掲げる意匠に類似する意匠)に該当し,意匠登録を受けることができないから,無効理由2を検討するまでもなく,登録第1580775号の意匠登録は,意匠法第3条第1項の規定に違反してされたものであり,無効にすべきものである。

審判に関する費用については,意匠法第52条で準用する特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により,被請求人が負担すべきものとする。
よって結論のとおり審決する。
別掲


審決日 2020-05-26 
出願番号 意願2016-21551(D2016-21551) 
審決分類 D 1 113・ - Z (J3)
最終処分 成立  
前審関与審査官 木村 智加鈴木 康平 
特許庁審判長 刈間 宏信
特許庁審判官 正田 毅
橘 崇生
登録日 2017-06-16 
登録番号 意匠登録第1580775号(D1580775) 
代理人 香原 修也 
代理人 金子 宏 

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