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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 J7
管理番号 1365006 
審判番号 不服2020-1647
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2020-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-02-06 
確定日 2020-08-26 
意匠に係る物品 マッサージ器 
事件の表示 意願2019- 4511「マッサージ器」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成31年3月5日に出願されたものであって、令和1年8月20日付けの拒絶理由の通知に対し、令和1年10月7日に意見書が提出されたが、令和1年10月31日付けで拒絶の査定がなされ、これに対して、令和2年2月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願意匠

本願の意匠は、意匠に係る物品を「マッサージ器」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を願書の記載及び願書に添付した図面のとおりとしたものである(以下「本願意匠」という。別紙第1参照。)。

第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠

原査定の拒絶の理由は、本願意匠が、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。

拒絶理由通知において引用された意匠は、中華人民共和国意匠公報(公報発行日:2018年12月 7日)に掲載された、公開番号 CN304935985S(意匠に係る物品、マッサージ棒)の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HH30008768号)である(以下「引用意匠」という。別紙第2参照。)。

第4 対比

1 意匠に係る物品の対比
本願意匠の意匠に係る物品は「マッサージ器」であり、引用意匠に係る物品は「マッサージ棒」であるが、いずれも一対のローラーを顔や手足等に押し当ててローラー部を回転させることによってマッサージを行うためのものであるから、本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、一致する。

2 形態の対比
両意匠の形態を対比すると、その形態には、以下のとおりの共通点及び相違点が認められる。
なお、本願意匠の図面の向きに合わせて引用意匠の向きを認定する。
(1)形態の共通点
(共通点1)全体構成
(ア)把持部の先端を略Y字状に分岐させ、その先端に略滴形のローラー部を設けた構成としている点。
(イ)平面視における全幅(ローラー部先端から把持部右端までの横幅)対2つのローラー部の幅(縦幅)を約20:9とする点。

(共通点2)把持部の態様
(共通点2-1)平面視における態様
最もくびれた部分をY字状分岐部寄りに設け、そこから右端側を略細長アーモンド状とし、その最も膨らんだ部分を全体中央より右端寄りとした点。
(共通点2-2)正面視における態様
ローラー部寄りに頂部を有する略「へ」の字状とする点。
(共通点3)ローラー部の態様
(ア)平面視において把持部に対し、約45度外向き対称状に一対設けられている点。
(イ)先端側を膨らませた略雫形のローラー部表面に多数の細かな分割面を有している点。
(ウ)ローラー部の把持部側端部は、把持部よりもやや拡径し、段差状に表れている点。
(エ)軸上先端部には小径の円形溝を有している点。

(2)形態の相違点
(相違点1)把持部の態様
(相違点1-1)平面視における態様
(ア)本願意匠は、模様等を有していないが、引用意匠は、把持部上面に、略逆「く」の字状の小段差部を3つ備えている点。
(イ)本願意匠は、最もくびれた部分の幅(縦幅)を1とすると、最も膨らんだ部分の幅は約1.8倍であるのに対し、引用意匠は同最小幅を1とすると同最大幅は約1.3倍とする点。
(相違点1-2)正面視における態様
最もくびれた部分と最も膨らんだ部分を平面視と対応する箇所として対比した場合、本願意匠は、最もくびれた部分の幅(縦幅)を1とすると、最も膨らんだ部分の幅は約2.0倍であるのに対し、引用意匠は同最小幅を1とすると同最大幅は約1.3倍とする点。
また、本願意匠の下側稜線は、おおきく弧状に膨らんでいるが、引用意匠の同稜線には大きな膨らみは見られない点。

(相違点2)ローラー部の態様
本願意匠のローラー部表面の細かな分割面は、おおむね略菱形で構成されており、それらが連接されることによって把持部側から先端に向かって複数のねじれた稜線が表れる態様となっているが、引用意匠は、おおむね略台形又は略長方形によって構成され、それらが把持部側から先端に向かって一列に構成されているため、直線状の筋がローラーの軸方向及び軸と水平方向に複数表れる態様となっている点。

第5 判断

1 意匠に係る物品の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は、同一である。

2 形態の共通点及び相違点の評価
両意匠は、いずれも一対のローラーを顔や手足等に押し当ててローラー部を回転させることによってマッサージを行うためのものであるから、需用者は、実際に手に持って使用する把持部の態様、そして、顔や手に押し当ててマッサージを行うローラー部分の態様に注視するものということができる。

(1)形態の共通点
(共通点1)(ア)は、この種物品分野においては、既によく知られた態様にすぎない。また、(共通点1)(イ)も、本願出願前より公知となっており、需用者が特に注目するような態様ではない(参考意匠1。別紙第3参照。)
把持部の態様における(共通点2-1)も、本願出願前より公知となっており、両意匠を特徴付けるものということはできない(参考意匠2。別紙第4参照。)また、(共通点2-2)も、この種物品分野においては、既によく知られた態様にすぎない。
ローラー部の態様における(共通点3)(ア)ないし(ウ)も、この種物品分野においては、既によく知られた態様にすぎない。また、(共通点3)(エ)も、本願出願前より公知となっており、両意匠独自のものということはできず、類否判断への影響は限定的なものといわざるを得ない。(参考意匠3。別紙第5参照。)

参考意匠1(別紙第3参照)
大韓民国意匠商標公報(発行日:2016年(平成28年)3月31日)に掲載された、「皮膚マッサージローラー装身具」(登録番号30-0847627)の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HH28414403号)

参考意匠2(別紙第4参照)
大韓民国意匠商標公報(発行日:2019年(平成31年)2月13日)に掲載された、「美容用ローラー」(登録番号30-0992-8110002)の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HH31401319号)

参考意匠3(別紙第5参照)
日本国意匠公報(発行日:2018年(平成30年)5月14日)に掲載された、「美容用ローラー」(登録番号1603972)の意匠

(2)形態の相違点
把持部の態様における(相違点1-1)(ア)は、把持部上面に設けられたものであり、需用者にとって目につきやすいことから、類否判断への影響は一定程度有するものと認められる。また、(相違点1-1)(イ)は、意匠全体に占める割合も大きく、また、需用者が直接手に取る部分でもあることから、(相違点1-2)と合わせ、両意匠が与える印象を大きく異ならせており、類否判断に与える影響は大きい。
ローラー部の態様における(相違点2)は、意匠全体に占める割合は大きなものではないが、直接顔や手に押し当てる部分でもあり、類否判断に一定程度の影響を与える。

3 両意匠の類否判断
両意匠の形態における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察した場合、上記2(2)のとおり、(相違点1-1)(イ)及び(相違点1-2)が両意匠の類否判断に与える影響は大きい。また、(相違点1-1)(ア)及び(相違点2)が、両意匠の類否判断に与える影響は大きなものではないが、一定程度の影響を与えるものであり、これらをあわせると、両意匠は美感に大きな差異があるといえる。
それに対し、上記2(1)で示したとおり、共通点はいずれもこの種物品分野においてよく知られた態様、もしくは既に公知となっている態様であり、いずれも類否判断に与える影響は小さく、相違点の方が共通点を上回っており、意匠全体として観察した際に異なる美感を起こさせるものといえる。

したがって、両意匠は、意匠に係る物品は同一であるが、その形態において、需要者に異なる美感を起こさせるものであるから、類似しない。

第6 むすび

以上のとおり、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲

審決日 2020-07-15 
出願番号 意願2019-4511(D2019-4511) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (J7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 石坂 陽子 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 正田 毅
北代 真一
登録日 2020-09-09 
登録番号 意匠登録第1669044号(D1669044) 
代理人 ▲高▼山 嘉成 

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