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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 B6
管理番号 1368174 
審判番号 不服2020-7992
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-06-10 
確定日 2020-11-13 
意匠に係る物品 喫煙カートリッジ用支持部材 
事件の表示 意願2019- 7553「喫煙カートリッジ用支持部材」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成31(2019年)年4月7日に出願された意匠登録出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和1年(2019年)11月29日付け:原審の拒絶理由の通知(起案日)
令和2年(2020年) 1月20日 :意見書の提出
令和2年(2020年) 3月 4日付け:拒絶の査定(起案日)
令和2年(2020年) 6月10日 :拒絶査定不服審判の請求
令和2年(2020年) 7月27日 :手続補正書の提出

第2 本願意匠の願書及び添付図面の記載
本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとするものであり、その意匠は、意匠に係る物品を「喫煙カートリッジ用支持部材」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を願書の記載及び願書に添付した図面のとおりとしたものである(以下「本願意匠」という。)。そして、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を、「二点鎖線で表された部分以外の部分が意匠登録を受けようとする部分である。」(以下「本願部分」という。)としたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠
原査定の拒絶の理由は、本願意匠が、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。

拒絶理由通知において引用された意匠は、以下のとおりである(以下「引用意匠」という。別紙第2参照。)。

「特許庁発行の公開特許公報記載
特開2019-000097
(発明の名称、タバコ植物または非タバコ植物を用いた電子タバコカートリッジおよびその支持部材)の【図7A】【図7B】【図7C】に表された支持部材(120)の本願意匠の意匠登録を受けようとする部分に対応する部分の意匠」

以下、本審決では、引用意匠において本願部分と対比、判断する部分、すなわち、本願部分に相当する部分を、「引用部分」という。

第4 出願人による手続補正
出願人は、審判請求後の令和2年(2020年)7月27日に手続補正書を提出し、願書添付図面について、斜視図及び参考図3ないし参考図7を追加(別紙第1参照)するとともに、願書の「意匠に係る物品の説明」の欄及び「意匠の説明」の欄を以下1及び2に示すとおり変更した。
1 願書の「意匠に係る物品の説明」の変更
(1)出願当初の「意匠に係る物品の説明」の記載
「本物品は、電子タバコもしくはスティック型被加熱芳香発生体組成物に装着して使用する喫煙カートリッジ用の支持部材である。」

(2)手続補正によって変更された「意匠に係る物品の説明」の記載
「本物品は、高温加熱式電子タバコの加熱器具本体内の加熱ブレード等の加熱要素を、ヒートスティックなどと呼ばれている喫煙カートリッジ内の葉タバコ等被加熱芳香発生体組成物を含むエアロゾル生成部材に挿入して加熱することによりエアロゾルを発生させ、そのエアロゾルを吸引するための喫煙カートリッジを構成する支持部材である。本物品は、参考図1、2に示した通り、喫煙カートリッジの、エアロゾル形成部材とフィルターの間の位置、或いは、エアロゾル形成部材と移送部材・フィルターの間の位置に装着され、これらの部材等を支持するとともに、エアロゾルを、フィルターを介して吸引するために、周側面に溝形状を設けてエアロゾルを移送する流路を形成したものである。また、本物品は、電子タバコの加熱器具本体に喫煙カートリッジを挿入する際に、該カートリッジの中途部分の折れや曲がりなどの変形・破損及び加熱器具本体内の加熱ブレードの折れや曲がりなどの変形・破損等を防ぐための緩衝材としての役目を果たすとともに、エアロゾル吸引流量等の調整などの役目を果たすものである。本物品の緩衝材としての役目(機能)を参考図3?7を参照して具体的に説明する。まず、加熱器具本体に喫煙カートリッジを一気に挿入すると、挿入したカートリッジが変形・破損及び加熱ブレードが変形・破損等しかねないため、喫煙カートリッジを漸次挿入させる必要が生じる。これに対し、本物品が装着されている喫煙カートリッジによれば、参考図3に示したように、加熱器具本体内の扁平片状の加熱ブレードや針状形状等の加熱針等の加熱要素に、カートリッジを構成するエアロゾル生成部材を挿入する時に、まずエアロゾル生成部材に圧がかかるようにし、さらに挿入すると、参考図4に示したように、本物品の外周突出湾曲片形状に当接した部分に圧がかかる。さらに挿入すると、参考図5に示したように、エアロゾル生成部材が押されて、該エアロゾル生成部材が変形しつつ、本物品の外周突出湾曲片内側内まで入り込み、該支持部材外周突出湾曲片内側内に入り込んだエアロゾル生成部材に圧がかかる。さらに圧を加えて挿入すると、参考図6に示したように、エアロゾル生成部材は、加熱器具本体内奥部まで到達して、ここでさらにエアロゾル生成部材に圧がかかる。さらに圧を加えて挿入すると、参考図7に示したように、本物品のエアロゾル生成部材側と反対側の先端部の、外周突出湾曲片外周が移送部材或いはフィルター部材と当接し、移送部材或いはフィルター部材が外周突出湾曲片内に減り込むことになる。そして、これらが相俟って、本物品によれば、喫煙カートリッジの中途部分の折れや曲がりなどの変形・破損及び加熱器具本体内の加熱ブレード等の折れや曲がりなどの変形・破損等を防ぐ役目(機能)が実現される。」

2 願書の「意匠の説明」の変更
(1)出願当初の「意匠の説明」の記載
「左側面図は右側面図と同一につき省略し、背面図は正面図と同一につき省略し、底面図は平面図と同一につき省略する。二点鎖線で表した部分以外の部分が、部分意匠として登録を受けようとする部分である。」

(2)手続補正によって変更された「意匠の説明」の記載
「左側面図は右側面図と同一に表れるため省略し、背面図は正面図と同一に表れるため省略し、底面図は平面図と同一に表れるため省略する。二点鎖線で表された部分以外の部分が意匠登録を受けようとする部分である。本願意匠は、エアロゾルを吸引するために正面視上下左右面にそれぞれ溝形状を設けたもので、その溝深さや幅形状によりエアロゾル流量を調整する機能を有するものである。また、本願意匠の平面視上下端部に形成した突出湾曲片形状は、喫煙カートリッジを構成するエアロゾル生成部材に、別物品の加熱器具本体内の加熱ブレード等を挿入して加熱する際に、本物品が装着されてなる喫煙カートリッジの変形・破損及び加熱器具本体の加熱ブレード等の変形・破損等を防ぐための緩衝材としての役目を果たすために形成したものである。」

第5 当審の判断
1 手続補正について
前記第4における手続補正については、以下のとおりと認められる。
(1)願書添付図面(斜視図及び参考図3ないし参考図7)の追加
斜視図は、出願当初の図に基づくものであり、参考図3ないし参考図7は、いずれも本願意匠の使用方法を、参考図を用いて追加したにすぎず、形態に変更はないため、出願当初の要旨を変更するものではない。

(2)願書の「意匠に係る物品の説明」の変更
「意匠に係る物品の説明」の変更点は、本願物品の使用時の説明を加えた点と、追加した参考図3ないし参考図7の各図の説明を加えた点であり、出願当初の意匠に変更を加えるものではないため、要旨を変更するものではない。

(3)願書の「意匠の説明」の変更
「意匠の説明」の変更点は、本願意匠における各部の形態が有する用途及び機能を加えた点であるが、追加された点は、いずれも本願意匠に係る物品が用いられる電子タバコの物品分野における通常の知識を有する者が想定できる範囲のものであり、出願当初の要旨を変更するものではない。

(4)小括
以上のとおり、この手続補正は、出願当初の願書の記載又は願書添付図面の要旨を変更するものではないと認められる。

2 両意匠の対比
(1)本願意匠と引用意匠の意匠に係る物品の対比
本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、いずれも「喫煙カートリッジ用支持部材」に係るものであり、共通する。

(2)本願部分と引用部分の用途及び機能の対比
本願部分と引用部分(以下「両部分」という。)は、いずれも喫煙カートリッジのエアロゾル形成部材とフィルターの間に装着され、これらの部材等を支持するとともに、周側面に溝部を設けてエアロゾルの流路を形成したものであり、共通する。

(3)両部分の位置、大きさ及び範囲の対比
本願部分の位置、大きさ及び範囲は、略円柱状とする支持部材の胴部中央部を除く、エアロゾル形成部材接合側とフィルター接続側の両端部であり、引用部分は、略円柱状とする支持部材の本願部分に相当する部分であるから、両部分の位置、大きさ及び範囲は共通する。

(4)両部分の形態の対比
両部分の形態を対比すると、その形態には、以下のとおりの共通点及び相違点が認められる。
なお、引用意匠における【図7A】に表された図を本願意匠における正面図に相当するものとして、以下対比する。
ア 共通点
(ア)全体構成
(共通点1)略円柱形状とする点。
(共通点2)周側面の四方(正面視における上下左右方向)に正面視略矩形の溝部を形成している点。

(イ)溝部の態様
(共通点3)正面視における上下の溝部を深く(直径の約9/25)、左右の溝部をやや浅い(直径の約6/25)ものとする点。

イ 相違点
(ア)全体構成
(相違点1)本願部分は、正面視において、垂直方向の直径及び水平方向の直径がほぼ等しい略正円形とするのに対し、引用部分は、正面視において、垂直方向の直径よりも水平方向の直径の方がわずかに長い(約1:1.1)楕円状とする点。
(相違点2)本願部分は、直径対全長を約3:5とする略円柱形であるのに対し、引用部分は、同約1:2とする略円柱形とする点。

(イ)溝部の態様
(相違点3)本願部分の溝部の幅は、4方向すべて同じであるのに対し、引用部分の溝部の幅は、左右の溝部が上下の溝部の約半分である点。

(ウ)正面側及び背面側端部の態様
(相違点4)本願部分は、正面側及び背面側の両端部において、直径の約85%にあたる中央部を、平面視における上下方向の長さの約1/12、垂直に窪ませることによって、外周面に4片の突出湾曲片を形成しているのに対し、引用部分の正面側及び背面側の端部は平坦面であり、突出湾曲片が存在しない点。

第6 類否判断
1 両意匠の意匠に係る物品の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は、同一である。

2 両部分の用途及び機能の類否判断
両部分の用途及び機能は、同一である。

3 両部分の位置、大きさ及び範囲の評価
両部分の位置、大きさ及び範囲は同一である。

4 両部分の形態の類否判断
(1)共通点及び相違点の評価
両部分は、いずれも電子タバコの内部に用いられる部材に係るものであるから、需要者は、使用時におけるエアロゾルの流量や、破損等の生じにくさ等に影響を与える形態については特に注視するものということができる。
ア 共通点の評価
全体構成における(共通点1)は、電子タバコの内部部材として円柱形のものはごく普通に見受けられ、両部分の形態の類否判断に及ぼす影響は小さい。
一方、(共通点2)は、エアロゾルの流路に係るものであり、需要者が注目する部分であることから、両部分の形態の類否判断に、一定の影響を及ぼすものと認められる。
(共通点3)は、エアロゾルの流量に関わる点ではあるものの、視覚的に目立つものではなく、注意しないとわからない程度であるから、共通した印象は弱く、両部分の形態の類否判断に及ぼす影響は小さい。

イ 相違点の評価
全体構成における(相違点1)は、引用部分の扁平度合いがそれほど大きなものではないことから、両部分の形態の類否判断に及ぼす影響は小さい。
(相違点2)も、電子タバコ内部の限られた空間において、フィルター等、他のパーツとの兼ね合いで長手方向の長さは種々のものが存在することが想定されるため、この点が両部分の形態の類否判断に及ぼす影響は小さい。
一方、(相違点3)は、エアロゾルの流量に関わる点であり、(共通点3)に比べて視覚的にも目立ち、異なった印象を強めるものであり、両部分の形態に及ぼす影響は大きい。
さらに、(相違点4)は、本願部分が備える4片の突出湾曲片が当該物品を装着した際に、緩衝的な影響を与えることは明らかであり、その高さも突出湾曲片として十分認識できることから、需要者が注視する部分であるといえるところ、引用部分は、それら突出湾曲片を有さないのであり、この点が両部分の形態の類否判断に及ぼす影響は大きい。

(2)総合評価に基づく両部分の形態の類否判断
両部分の形態における共通点及び相違点の評価に基づき、両部分の形態全体を総合的に観察し、判断する。
上記(1)アに示したとおり、(共通点1)及び(共通点3)が両部分の形態の類否判断に及ぼす影響は小さいが、(共通点2)は、エアロゾルの流路に係るものであり、両部分の形態の類否判断に、一定の影響を及ぼす。
それに対し、上記(1)イで示したように、(相違点1)及び(相違点2)が両部分の形態の類否判断に及ぼす影響は小さいが、(相違点3)及び(相違点4)は、需要者が特に注視する部分といえ、両部分の形態の類否判断に及ぼす影響は大きく、両部分の形態全体を総合的に観察した場合、両部分の形態は、相違点が及ぼす影響の方が大きいといわざるを得ない。
よって、両部分の形態は類似しない。

(3)小括
両意匠は、意匠に係る物品は同一で、両部分の用途及び機能、さらには位置、大きさ及び範囲も同一であるが、両部分の形態は類似しない。
したがって、両意匠は類似しない。

第7 むすび
以上のとおり、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲

審決日 2020-10-28 
出願番号 意願2019-7553(D2019-7553) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (B6)
最終処分 成立  
前審関与審査官 桐野 あい 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 北代 真一
正田 毅
登録日 2020-12-01 
登録番号 意匠登録第1675089号(D1675089) 
代理人 岡田 薫 
代理人 近藤 利英子 
代理人 菅野 重慶 
代理人 竹山 圭太 

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