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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 J5
管理番号 1368181 
審判番号 不服2020-4773
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-04-08 
確定日 2020-11-12 
意匠に係る物品 自動精算機 
事件の表示 意願2019- 13283「自動精算機」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の概要
本願は、意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする令和1年(2019年)6月17日の意匠登録出願であって、同月27日に新規性喪失の例外証明書提出書を提出したものであり、同年11月20日付けの拒絶理由の通知に対し、同年12月25日に意見書が提出され、令和2年1月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年4月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願の意匠
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「自動精算機」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって、願書の「意匠に係る物品の説明」には、「本物品は、美容院、店舗、及びビル内のフロア等に設置され、利用者(顧客)が対価の精算を行う『自動精算機』であり、略直方体状の本体上面の前方に紙幣投入口及び紙幣出金口を設け、その正面視右方に硬貨投入口を設けたものである。使用に際しては、『各部の名称、及び使用状態を示す参考図』に示したように、通信回線網を利用した各種の情報の入手と表示を行う端末機、表示機と共に使用する。」と記載されているものである。(別紙第1参照)

第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内または外国において公然知られた意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。

「両意匠は、直方体状本体の上面手前側に紙幣用の出入口を設け、その正面視右側に平面視グラウンド状の硬貨投入口を設け、正面中央やや上方に前面に突出する2口の硬貨出金口を設け、本体の両側に帯状縁取り部を設ける点で共通しています。一方で、硬貨出金口の上にある長方形部分の有無や、脚部分の有無という相違はありますが、部分的な相違ですので、意匠全体として対比する場合は、類似するものと認められます。

著者の氏名 株式会社 ハイパーソフト
表題 プレスリリース:軽減税率対応の問題を解決した会員管理型の『自動受付セルフレジ・スムーズセルフ』『券売機・スムーズチケット』の販売開始
掲載箇所 Hypersoft
媒体のタイプ [online]
掲載年月日 平成19年4月1日
検索日 [令和1年11月14日検索]
情報の情報源 インターネット
情報のアドレス URL:https://www.hypersoft.co.jp/news/%E3%83%97%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%83%AA%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B9%EF%BC%9A%E8%BB%BD%E6%B8%9B%E7%A8%8E%E7%8E%87%E5%AF%BE%E5%BF%9C%E3%81%AE%E5%95%8F%E9%A1%8C%E3%82%92%E8%A7%A3%E6%B1%BA%E3%81%97%E3%81%9F/
に掲載された『自動受付セルフレジ・スムーズセルフ』として表された意匠のうち下側の『自動精算機』の意匠」

第4 請求人の主張
審判請求人は、令和2年4月8日に審判請求書を提出し、おおむね以下のとおり主張した。
1 本願意匠が登録されるべき理由
原審の拒絶査定においては、新規性喪失の例外規定の適用を受けるための証明書に記載されていないことのみをもって、引用意匠について新規性の例外規定の適用は受けられない、と判断しており、この判断には合理的な理由がなく到底容認することはできないので、原査定を取り消し、本願の意匠は登録すべきものとする、との審決を求める。

2 引用意匠に新規性喪失の例外規定が適用されるべき理由
引用意匠は、本願出願人が業務提携の覚書に基づいて引用意匠の公開者(株式会社ハイパーソフト)に提供した、出願意匠の実施品である「自動精算機」を使用した「自動受付セルフレジ」の意匠であって、その自動精算機筺体部分の形態は、本願意匠及び「証明する書面」に記載の意匠と実質同一であり、意匠法第4条第2項に規定される「意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因して第3条第1項第1号又は第2号に該当するに至った意匠」に該当する。
本願出願人は、引用意匠の公開者である株式会社ハイパーソフトと、美容室向けセルフペイメントステーションの企画・開発について「業務提携に関する覚書」を交わしている。その内容は、株式会社ハイパーソフトの美容室向けPOSシステムとローレルバンクマシン株式会社の貨幣処理機との連携の検討及び互いの業域における専門性をもって協業することにより、美容室向けセルフペイメントステーションを企画・開発し、事業化することを目的とするものである。
引用意匠は、ウェブサイトの掲載ページにも、「株式会社ハイパーソフトはこのほど、ロ-レルバンクマシン株式会社と連携して、ハイパーソフトが全国3000店の美容サロンで展開しているPOSシステム(略)と連動した自動受付セルフレジ(略)と会員型券売機(略)を販売開始する。」、「〔主なメリット〕・・3.自動精算機に、従来ではできなかった自動受付機能を搭載した。」と記載されているように、本願出願人が業務提携の覚書に基づいて株式会社ハイパーソフトに提供した貨幣処理機(自動精算機)に、株式会社ハイパーソフトが自社開発のソフトウェアを搭載した製品(自動受付セルフレジ)を自社ウェブサイトのニュースリリースで公開したものであることが明らかである。その形態は、本願出願人が本願意匠の実施品を提供したものであるから、自動精算機の筺体部分は、本願意匠及び「証明する書面」に記載の意匠と、硬貨出金口の上にある長方形部分及び脚部の有無を除いて全体の形態が一致する実質同一の意匠である。
以上のとおりであって、引用意匠は本願出願人の自己の行為に基づいて公開されるに至った、本願出願人が意匠登録を受ける権利を有している意匠であって、新規性喪失の例外規定(意匠法第4条第2項)に規定された意匠に該当する。

第5 当審の判断
1 本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の対比
(1)本願意匠
本願意匠は、意匠に係る物品を「自動精算機」とし、その形態は、左右に扁平な略直方体状の本体上面の前端に紙幣投入口、紙幣出金口及び硬貨出金口を設け、正面中央やや上方に、前面に突出する2口の硬貨出金口を設け、本体部の両側には細帯状の縁取りを形成し、底面側の四隅に脚部を設けているものである。(別紙第1参照)

(2)引用意匠
引用意匠は、2019年4月1日(当審注:原審の拒絶理由通知では【掲載年月日】が平成19年4月1日と記載されているが、2019年4月1日の誤りである。)に株式会社ハイパーソフトのウェブサイトにおいて公然知られた「自動精算機」(情報表示機及び端末機を除いた本体)の意匠であり、その形態は、左右に扁平な略直方体状であって、本体上面の前端に紙幣投入口、紙幣出金口及び硬貨投入口を設け、正面中央やや上方に前面に突出する2口の硬貨出金口を設け、本体の両側には細帯状の縁取りを形成しているものであって、その色彩は、紙幣投入口、紙幣出金口、硬貨投入口、硬貨出金口及び細帯状の縁取りは灰色に、それ以外は黒色に着色している。(別紙第2参照)

(3)本願意匠と引用意匠の類否判断
本願意匠の意匠に係る物品は「自動精算機」であり、引用意匠も「自動精算機」であるから、両意匠の意匠に係る物品は同一である。
また、両意匠の形態については、本願意匠は脚部を有するのに対し、引用意匠は脚部を有するか否か及び色彩の有無において相違するものの、その他の構成態様は共通するから、類似するものである。
したがって、両意匠は、意匠に係る物品が同一で、その形態は類似するから、類似するものである。

2 本願に新規性喪失の例外規定の適用を認めるか否かについて
当審は、本願意匠について意匠法第4条第2項の規定の適用を受けるため、本願出願人(審判請求人)が提出した「意匠の新規性喪失の例外規定の適用を受けるための証明書」(以下「証明書」という。)及び意見書に基づいて、引用意匠が、意匠の新規性の喪失の例外の規定の適用の対象となり、本願意匠の新規性の判断資料から除外されるべきであるか否かを、以下のように判断する。

(1)証明書に記載された意匠
本願について提出された、証明書に記載の意匠(以下「証明書記載意匠」という。)は、日本経済新聞社の主催により、2019年3月5日から同年3月8日にかけて東京国際展示場において開催された展示会「リテールテック JAPAN2019」において、ローレルバンクマシン株式会社により公開された自動精算機の意匠(別紙第3)であり、その形態は、左右に扁平な略直方体状であり、本体上面の前端に紙幣投入口、紙幣出金口及び硬貨投入口を設け、正面中央やや上方に、前面に突出する2口の硬貨出金口を設け、本体の両側には細帯状の縁取りを形成しているものであって、その色彩は、全体は黒色であって、細帯状の縁取りを灰色に着色しているものである。

(2)引用意匠と証明書記載意匠との関係
引用意匠と証明書記載意匠とを比較すると、引用意匠と証明書記載意匠はいずれも「自動精算機」であるから、意匠に係る物品は同一のものである。また、その形態については、引用意匠は脚部を有するかは不明であるのに対し、証明書記載意匠は脚部を有するという点は存在するものの、その他の構成態様は共通するため、引用意匠と証明書記載意匠とは実質的に同一のものである。
また、拒絶理由通知に付記された引用意匠の記載(別紙第2の4/6)には、ローレルバンクマシン株式会社と株式会社ハイパーソフトが業務提携を行う旨が記載されている点も考慮すると、引用意匠と証明書記載意匠は、同一の製品であると推認できるものである。

3 本願における新規性の喪失の例外の規定の適用について
審判請求人の主張及びその他の事実を総合して考察すると、前記2のとおり、引用意匠と証明書記載意匠とは、審判請求人の同一製品に係るものと推認でき、かつ証明書に記載された展示の後に、引用意匠が株式会社ハイパーソフトのウェブサイトに掲載されたものである点についても疑義はない。また、引用意匠は、ローレルバンクマシン株式会社と株式会社ハイパーソフトとの業務提携に基づいて株式会社ハイパーソフトのウェブサイトにおいて公開したものであることも明らかである。
そうすると、引用意匠は、証明書に記載された意匠の2次公開に該当すると解釈して差しつかえないものである。

4 小括
したがって、引用意匠は、本願意匠の新規性の判断において、意匠法第4条第2項に規定する新規性喪失の例外規定の適用を受けることができる意匠であるから、引用意匠をもって、本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するとすることはできない。

第6 むすび
以上のとおりであって、本願意匠は、原査定の引用意匠をもって、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから、原審の拒絶の理由によって、本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。

また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲








審決日 2020-10-28 
出願番号 意願2019-13283(D2019-13283) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (J5)
最終処分 成立  
前審関与審査官 ▲高▼橋 杏子 
特許庁審判長 内藤 弘樹
特許庁審判官 濱本 文子
江塚 尚弘
登録日 2020-11-18 
登録番号 意匠登録第1674169号(D1674169) 
代理人 永芳 太郎 
代理人 吉田 親司 
代理人 永芳 太郎 
代理人 吉田 親司 
代理人 吉田 親司 
代理人 永芳 太郎 

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