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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 C1 |
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管理番号 | 1368191 |
審判番号 | 不服2020-8449 |
総通号数 | 252 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2020-12-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-06-17 |
確定日 | 2020-12-03 |
意匠に係る物品 | 寝具 |
事件の表示 | 意願2019- 8586「寝具」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成31年(2019年)4月18日の意匠登録出願であって,令和2年(2020年)1月27日付けの拒絶理由の通知に対し,同年2月25日に意見書が提出されたが,同年3月19日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,同年6月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本願意匠 本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「寝具」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。 第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠は,本願の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似するものであるから,意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当し,意匠登録を受けることができないとしたものであって,当該拒絶の理由に引用した意匠(以下「引用意匠」といい,本願意匠と併せて「両意匠」という。)は,下記のとおりである(別紙第2参照)。 [引用意匠] この意匠登録出願前,下記ウェブサイトに,製品名「ボディーアッパーピロー」として掲載された「枕」の意匠 ・掲載者の名称 Amazon.com, Inc ・表題 Amazon.co.jp : エムール 【ボディーアッパーピロー】 上半身用まくら 低反発枕 マットレス一体型まくら 肩こり改善 横向き寝 健康枕 〔ダブル/クイーン用〕 : ホーム&キッチン ・媒体のタイプ [online] ・掲載年月日 2018年7月31日※ ・検索日 [2020年1月15日] ・情報の情報源 インターネット ・情報のアドレス URL: https://www.amazon.co.jp/%E3%82%A8%E3%83%A0%E3%83%BC%E3%83%AB-%E3%80%90%E3%83%9C%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%82%A2%E3%83%83%E3%83%91%E3%83%BC%E3%83%94%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%80%91-%E4%B8%8A%E5%8D%8A%E8%BA%AB%E7%94%A8%E3%81%BE%E3%81%8F%E3%82%89-%E3%83%9E%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%AC%E3%82%B9%E4%B8%80%E4%BD%93%E5%9E%8B%E3%81%BE%E3%81%8F%E3%82%89-%E3%82%AF%E3%82%A4%E3%83%BC%E3%83%B3%E7%94%A8%E3%80%95/dp/B07G3237J7 ※Amazon.co.jp での取り扱い開始日: 2018/7/31 第4 当審の判断 1 本願意匠 本願意匠は,上記「第2」の願書の記載及び願書に添付した図面の記載によると,以下のとおりのものと認められる。 (1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は,「寝具」であり,頭から腰まで至る大型の枕のようなものである。 (2)形状 全体は,縦横比(前後長さと幅の比率)を約0.84対1とする略横長長方形の偏平体とし,本体後端の上面に頭部縦ずれ防止突起,次に頸椎サポート突起,本体前端の上面に腰部サポート突起を,それぞれ左右にわたり側面視凸弧状で設け,各突起間を側面視で浅い緩やかな凹弧状面(以下,後方の凹弧状部分を「頭部サポート部」,前方の凹弧状部分を「背中サポート部」という。)としたものである。 前記3つの突起の内,最も高く突出しているものは,頸椎サポート突起であり,頭部縦ずれ防止突起は,頸椎サポート突起よりも少し低く,腰部サポート突起は,頭部縦ずれ防止突起の半分程度の高さとしたものである。 頸椎サポート突起は,本体の後端から約8分の3の所に設けたものであり,頸椎サポート突起の頂部から本体後端及び本体前端までの詳細な長さは,本体の幅を1とすると約0.32と約0.52である。 また,本体前方の左右両角は,平面視凸弧状とし,本体後方の端面(背面)は,側面視で頭部縦ずれ防止突起の弧状と連続した凸弧状としたものである。 2 引用意匠 引用意匠は,上記「第3」のウェブサイトの記載によると,以下のとおりのものと認められる。 (1)意匠に係る物品 引用意匠の意匠に係る物品は,「枕」である。 (2)形状 全体は,縦横比(前後長さと幅の比率)を約0.75対1とする略横長長方形の偏平体とし,本体の中ほどの上面に頸椎サポート突起を設けたものであり,当該突起部を境にして,それより,後方をほぼ水平面(以下「頭部サポート部」という。),前方を下がり傾斜面(以下「背中サポート部」という。)としたものである。 頸椎サポート突起は,本体の後端から約8分の3の所に設けたものであり,頸椎サポート突起の頂部から本体後端及び本体前端までの詳細な長さは,本体の幅を1とすると約0.27と約0.47である。 また,本体前方の左右両角は,平面視凸弧状とし,本体後方の端面は,側面視凸弧状としたものである。 なお,各比率の認定にあたっては,この種物品の特性から頸椎サポート突起の高さはほぼ同じであるといえ,図面上両意匠の当該突起の高さを揃えると,本願意匠における本体の幅と引用意匠における本体の幅はほぼ同じであるから,両意匠共に本体の幅を1として認定した。 3 両意匠の対比 (1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は「寝具」であり,引用意匠の意匠に係る物品は「枕」である。 (2)形状 (2-1)共通点 共通点1:全体を略横長長方形の偏平体としたものである。 共通点2:頸椎サポート突起より後方を頭部サポート部,前方を背中サポート部としたものである。 共通点3:上面の後端から約8分の3の所に頸椎サポート突起を設けたものである。 共通点4:本体前方の左右両角は,平面視凸弧状としたものである。 共通点5:本体後端面は,側面視凸弧状としたものである。 (2-2)相違点 相違点1:全体の縦横比について,本願意匠は,約0.84対1としたものであるのに対して,引用意匠は,約0.75対1としたものである。 相違点2:本願意匠は,本体後端の上面に頭部縦ずれ防止突起を設けたものであるのに対して,引用意匠は,そのような突起を設けていないものである。 相違点3:本願意匠は,本体前端の上面に腰部サポート突起を設けたものであるのに対して,引用意匠は,そのような突起を設けていないものである。 相違点4:頭部サポート部について,本願意匠は,側面視で浅い緩やかな凹弧状面としたものであるのに対して,引用意匠は,ほぼ水平面としたものである。 相違点5:腰部サポート部について,本願意匠は,側面視で浅い緩やかな凹弧状面としたものであるのに対して,引用意匠は,前方へ向かって下がる傾斜面としたものである。 相違点6:頸椎サポート突起の頂部から本体後端及び本体前端までの詳細な長さについて,本願意匠は,約0.32と約0.52としたものであるのに対して,引用意匠は,約0.27と約0.47としたものである。 4 両意匠の類否 (1)意匠に係る物品について 意匠に係る物品については,本願意匠は「寝具」であるのに対して,引用意匠は「枕」であるが,本願意匠は,頭から腰まで至る大型の枕のような寝具であって,引用意匠は,その使用の状態より腰近くまで至る大きな枕であるから,両意匠共に睡眠時に頭と上半身を載せるものと認められ,使用目的及び使用状態が概ね共通しているといえるから,両意匠の意匠に係る物品は類似する。 (2)形状について (2-1)需要者 この種物品の需要者は,購入者や使用者であり,寝心地という観点から本体上面の身体が接する部分の凹凸形状に注目して観察するものといえる。 (2-2)共通点の評価 共通点1は,全体を略横長長方形の偏平体とした点であるが,両意匠を概括したものに過ぎないから,共通点1が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,小さい。 共通点2は,頸椎サポート突起より後方を頭部サポート部,前方を背中サポート部とした点であるが,この種物品分野において両意匠のみの特徴といえるものではないから,共通点2が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,小さい。 共通点3は,本体の後端から約8分の3の所に頸椎サポート突起を設けた点であるが,当該位置は,人間の身体(首の位置)に合わせたものといえるから,共通点3が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,小さい。 共通点4は,本体前方の左右両角を平面視凸弧状とした点であるが,部分的なものであるし,上面の凹凸形状に比べて需要者が注目する部分とはいえないから,共通点4が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,小さい。 共通点5は,本体後端面を側面視凸弧状とした点であるが,本願意匠の弧状部分は,頭部縦ずれ防止突起の弧状と連続したものであるのに対して,引用意匠の弧状部分は,そのような連続したものではないから,詳細な形状に相違があり,共通点として両意匠の類否判断に及ぼす影響は,小さい。 (2-3)相違点の評価 相違点1は,全体の縦横比に係るものであり,本願意匠の方が引用意匠よりも長いものであるが,その長さは大きく異なるものではないから,相違点1が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,小さい。 相違点2は,頭部縦ずれ防止突起の有無の相違であるが,この種物品分野において,頭部縦ずれ防止突起を設けたものは本願の出願前から見受けられるものの,寝心地という観点から需要者が注目する部分における形状に関わる相違であるから,相違点2が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,一定程度認められる。 相違点3は,腰部サポート突起の有無の相違であるが,腰部サポート突起を設けた点は本願意匠の顕著な特徴といえるものであり,寝心地という観点から需要者が注目する部分における形状に関わる相違であるから,相違点3が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,大きい。 相違点4は,頭部サポート部の形状の相違であるが,この種物品分野において,凹弧状面としたものも水平面としたものも本願の出願前から見受けられ,どちらの形状も特徴あるものといえないものの,寝心地という観点から需要者が注目する部分の相違であるから,相違点4が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,一定程度認められる。 相違点5は,腰部サポート部の形状の相違であるが,当該部分を凹弧状面とした点は本願意匠の顕著な特徴といえるものであり,寝心地という観点から需要者が注目する部分の相違であるから,相違点5が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,大きい。 相違点6は,頸椎サポート突起の頂部から本体後端及び本体前端までの詳細な長さの相違であり,その差は大きくはないが,頭部縦ずれ防止突起の有無及び腰部サポート突起の有無の相違と相まって,本願意匠は引用意匠よりも上半身をしっかりサポートする形状である,との印象をもたらすものであるから,相違点6が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,一定程度認められる。 (2-4)形状の類否 以上のとおり,いずれの共通点も両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいものであるのに対して,相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,相違点1は小さいものの,相違点2ないし6は大きい又は一定程度認められるというものであり,相違点は共通点を凌駕しているといえるから,両意匠の形状は類似するものではない。 (3)小括 そうすると,両意匠は,意匠に係る物品が類似するが,形状が類似しないから,本願意匠は,引用意匠に類似するものではない。 5 むすび 以上のとおりであって,本願意匠は,原査定の引用意匠に類似する意匠ではなく,原査定の引用意匠をもって意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するとして,同法同条の規定によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2020-11-18 |
出願番号 | 意願2019-8586(D2019-8586) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(C1)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 玉虫 伸聡 |
特許庁審判長 |
木村 恭子 |
特許庁審判官 |
橘 崇生 正田 毅 |
登録日 | 2020-12-09 |
登録番号 | 意匠登録第1675770号(D1675770) |
代理人 | 布川 俊幸 |