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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H2 |
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管理番号 | 1370072 |
審判番号 | 不服2020-8378 |
総通号数 | 254 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2021-02-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-06-17 |
確定日 | 2021-01-12 |
意匠に係る物品 | パワーコンディショナ |
事件の表示 | 意願2019- 10759「パワーコンディショナ」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 事案の概要 1 手続の経緯 本願は,平成30年(2018年)2月27日の特願2018-033697を分割した,令和1年(2019年)年5月17日の特願2019-093778を原出願として,意匠法第13条第1項の規定によって特許出願から意匠登録出願に変更した,同年5月17日の意匠登録出願であって,同年8月29日付けの拒絶理由の通知に対し,同年10月11日に意見書が提出されたが,令和2年(2020年)3月12日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,同年6月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 2 本願意匠の願書及び添付図面の記載 本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり,その意匠は,意匠に係る物品を「パワーコンディショナ」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり(以下「本願意匠」という。),部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を,「実線で表された部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線である。拡大端面図を含めて登録を受けようとする部分を特定している。」(以下「本願部分」という。)としたものである(別紙第1参照)。 3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠 原査定の拒絶の理由は,本願意匠は,その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似するものであるから,意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることができない意匠)に該当する,というものである。 拒絶理由通知において引用された意匠は,日本国特許庁発行の意匠公報(公報発行日:平成30年(2018年)1月29日)に記載された,意匠登録第1595741号(意匠に係る物品,電力変換器)の意匠であって,その形態を,同公報に記載されたとおりとしたものである(以下「引用意匠」という。)(別紙第2参照)。 以下,本審決では,引用意匠において本願部分と対比,判断する部分,すなわち,本願部分に相当する部分を,「引用部分」という。 第2 当審の判断 1 本願意匠と引用意匠の対比 (1)意匠に係る物品の対比 本願意匠の意匠に係る物品は,太陽光発電システム等に用いられる「パワーコンディショナ」であり,引用意匠の意匠に係る物品は,「電力変換器」であって,いずれも入力された直流電流を直流電流または交流電流に変換し,配電盤や外部の電力系統に出力するための電力を変換調整するパワーコンディショナであるといえるから,本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品の用途及び機能は一致する。 (2)本願部分と引用部分の用途及び機能の対比 本願部分と引用部分(以下「両部分」という。)は,いずれも本体部に正面カバーを当接させて固定するために用いられる部分であり,パワーコンディショナの持ち運びや設置の際に把持部として機能する部分であるから,両部分の用途及び機能は一致する。 (3)両部分の位置,大きさ及び範囲の対比 両部分は,いずれもパワーコンディショナにおける正面カバーの上辺突出部及び筐体本体の上面から上辺突出部分に係る部分の両端部を除く部分であるから,両部分の位置,大きさ及び範囲は一致する。 (4)両部分の形態の対比 両意匠の形態を対比すると,その形態には,主として以下の共通点及び相違点が認められる。 ア 形態の共通点 (共通点1)両部分は,部分全体の形態が,正面カバーにおける断面視略倒J字状の横長板状体の部分(以下「正面カバー部」という。)と,本体部における水平な上面部前方部分から上方に折曲して略鍔状になるように形成した横長板状体の部分(以下「本体折曲部」という。)を,正面カバー部と本体折曲部が当接するようにして配置した点が共通する。 (共通点2)両意匠は,正面カバー部の前方側角部分を断面視R状に折曲し,後方側角部分を断面視直角となるように折曲して形成している点が共通する。 (共通点3)両意匠は,本体折曲部を均一な厚みの板状体としている点が共通する。 イ 形態の相違点 (相違点1)本願部分の正面カバー部全体が均一な厚みの板状体であるのに対し,引用部分の正面カバー部の前方部分から上面部前半部分までを本体折曲部と同じ均一な厚みの板状体とし,上面部後半部分から後方部分までを薄い板状体とし,後方側下端部に潰し曲げ加工を施している点で,両意匠は相違する。 (相違点2)本願部分の本体折曲部の具体的な形態が,水平な上面部前方部分から上方に向かって断面視略R状に折曲して垂直面を設け,その垂直面上端部から後方に向かって断面視略直角に折曲して水平面を設けた断面視略横J字状の板状体であるのに対し,引用意匠の本体折曲部の具体的な形態は,水平な上面部前方部分から上方に向かって断面視略直角に折曲して垂直面を設けた断面視略L字状の板状体である点で,両意匠は相違する。 (相違点3)本願部分の正面カバー部と本体折曲部との配置態様が,正面カバー部の水平な上面部の底面部分と本体折曲部の水平な上面部の上面部分で当接し,正面カバー部の垂直な前面部と本体折曲部の垂直な前面部との間には隙間をあけて配置しているのに対し,引用意匠の正面カバー部と本体折曲部との配置態様は,正面カバー部の垂直な前面部の背面部分と本体折曲部の垂直な前面部の正面部分で当接し,正面カバー部の垂直な前面部と本体折曲部の垂直な前面部との間は密着させて配置している点で,両意匠は相違する。 2 両意匠の類否判断 (1)意匠に係る物品についての判断 両意匠の意匠に係る物品は,両意匠の意匠に係る物品の記載は一致しないものの,その用途及び機能が一致するから,同一であるといえる。 (2)両部分の用途及び機能の類否判断 両部分の用途及び機能は,同一である。 (3)両部分の位置,大きさ及び範囲の評価 両部分の位置,大きさ及び範囲は,物品全体の形態の中における位置,大きさ及び範囲が概ね一致するから,同一である。 (4)両部分の形態の類否判断 本願意匠に係る物品は,太陽光発電システムの構成物品である「パワーコンディショナ」であって,太陽光発電システムを構築する際にその太陽光発電の能力や設置場所の電力系統の仕様などに応じて選択され,購入されるものであることから,この物品の需要者は,一般的な消費者ではなく,主として販売業者や設置業者などの太陽光発電システムに関する専門知識を持った者であるといえる。 また,このパワーコンディショナは,設置後に設置業者が正面カバー部をあけて,設定等の操作を行うことが必要なものであるから,本物品の需要者は,パワーコンディショナの外側に表れている正面カバー部の形態だけでなく,本物品の設置時や設定時に表れる正面カバー部によって隠されている本体折曲部の形態についても注目し,物品の選択,購入の際にも注視するということができる。 したがって,本願意匠と引用意匠の類否判断に際しては,需要者は,外側に表れている正面カバー部の部分の具体的な形態のみならず正面カバーを取り外した際に表れる正面カバー部によって隠されている本体折曲部の部分の具体的な形態についても強い関心を持って観察するとの前提に基づいて,共通点及び相違点における類否判断に及ぼす影響を評価することとする。 ア 共通点の評価 (共通点1)は部分全体の形態に係るものであるが,両部分の形態を概括的に捉えた場合の共通点にすぎないものであるから,この(共通点1)が部分全体の美感に与える影響は小さい。 (共通点2)の正面カバー部の前後の折曲部の形態,及び(共通点3)の本体折曲部が均一な厚みの板状体からなる点は,この種物品分において既に見られるものにすぎず,両部分のみに認められる格別の特徴であるとはいえないから,これらの(共通点2)及び(共通点3)が部分全体の美感に与える影響は小さい。 イ 相違点の評価 (相違点1)は,正面カバー部の板状体の厚みに係る相違であって,本願意匠が,均一な厚みの板状体によって構成され,把持部として使用する際に頑丈なものであるとの印象を与えるのに対し,引用意匠は,正面カバー部の上面部後半部分から後方部分までを薄い板状体としたものであって,把持部として使要する際に華奢なものであるとの印象を与えるから,両意匠は需要者が注視する正面カバー部の特に板状体の厚みにおける美感に大きな相違がある。 (相違点2)の本体折曲部の具体的な形態及び(相違点3)の正面カバー部と本体折曲部との配置態様についての相違は,需要者である設置業者が購入時及び設置時に強い関心を持って観察する正面カバーを取り外した際に表れる正面カバー部によって隠されている本体折曲部の部分に係る相違であって,本願意匠のものが,設置時に,本体部から正面カバー部を取り外して機器の設定を行った後,本体部に正面カバー部をビスで取り付ける際に,正面カバー部を本体折曲部の水平な上面部分に冠着させて簡単に保持させておくことができる形態であって,需要者に対し,正面カバー部を手で保持することなくビス留め作業が容易に行えるといった印象を与えるのに対し,引用意匠のものは,正面カバー部を本体折曲部に当接させて,これを手で保持し続けながらビス留め作業を行わなければならない形態であって,需要者に対し,ビス留め作業の効率が悪いといった印象を与えるものであるから,正面カバー部の垂直な前面部と本体折曲部の垂直な前面部との間の隙間の有無も含め,これら(相違点2)及び(相違点3)が両部分の類否判断に及ぼす影響は大きい。 ウ 形態の類否判断 両部分の形態における各共通点及び相違点についての個別評価に基づき,意匠全体として全ての共通点及び相違点を総合的に観察した場合,両部分は,需要者が注視する正面カバー部や本体折曲部の美感に大きな差異があり,正面カバー部の前後の折曲部の形態や本体折曲部が均一な厚みの板状体からなる点が共通することを考慮しても,この物品に係る需要者が意匠全体として観察した際に異なる美感を起こさせるものといえるから,両部分の形態は類似しないものである。 3 小括 以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が同一であり,両部分の用途及び機能が同一であり,両部分の位置,大きさ及び範囲も同一であるが,両部分の形態が類似しないものであるから,本願意匠と引用意匠は類似するということはできない。 第3 むすび 上記のとおりであって,本願意匠は,引用意匠に類似せず,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2020-12-23 |
出願番号 | 意願2019-10759(D2019-10759) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(H2)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 伊藤 宏幸 |
特許庁審判長 |
木村 恭子 |
特許庁審判官 |
渡邉 久美 江塚 尚弘 |
登録日 | 2021-02-05 |
登録番号 | 意匠登録第1679940号(D1679940) |
代理人 | 村上 尚 |