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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 G2
管理番号 1370074 
審判番号 不服2020-11121
総通号数 254 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2021-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-08-11 
確定日 2021-01-12 
意匠に係る物品 自動車用ハンドルカバー 
事件の表示 意願2019-15778「自動車用ハンドルカバー」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は,令和1年(2019年)7月12日の意匠登録出願であって,その後の手続の主な経緯は以下のとおりである。

令和 1年 7月12日 :特徴記載書の提出
令和 2年 2月18日付け :拒絶理由の通知
令和 2年 4月 6日 :意見書の提出
令和 2年 4月28日付け :拒絶査定
令和 2年 8月11日 :審判請求書の提出

第2 本願意匠
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面(図面代用の写真)によれば,意匠に係る物品を「自動車用ハンドルカバー」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合を願書の記載及び願書に添付した図面代用の写真に現されたとおりとするものであり「赤色で塗った部分以外の部分が,意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用された意匠(以下「引用意匠」といい,本願意匠と併せて「両意匠」ともいう。)は,下記のとおりである(別紙第2参照)。

引用意匠
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1530821号
(意匠に係る物品,自動車用ステアリングホイールカバー)の意匠
なお,主な類否判断の対象となるのは本願の意匠登録を受けようとする部分に対応する部分。

第4 当審の判断
1 本願意匠
本願意匠は,上記「第2」の願書の記載及び願書に添付した図面の内容によると,以下のとおりである。

(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「自動車用ハンドルカバー」である。

(2)本願部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能
本願意匠に係る物品のうち,意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)は,正面視において左方の約5分の1部分である。
本願部分の用途及び機能は,自動車用ハンドルカバーの左方の約5分の1の部分というものである。

(3)本願部分の形状
ア 本願部分全体は,中心角が約80度の円弧状の,パイプ状であり,内周側に開口部を設けたものである。
イ 開口部は,本願部分の上端から下端までとするものである。
ウ 開口部の正面側の縁は,えぐれるように開いており,縁に沿って縫い目がある。
エ 開口部の背面側の縁は,円弧状になっている。
オ よって,開口部の形状は,正面側と背面側は非対称の,紡錘形である。

2 引用意匠
引用意匠は,上記「第3」の意匠公報の内容によると,以下のとおりである。

(1)意匠に係る物品
引用意匠の意匠に係る物品は「自動車用ステアリングホイールカバー」である。

(2)引用部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能
引用意匠中,本願部分に相当する部分(以下「引用部分」といい,本願部分と併せて「両部分」ともいう。)は,正面視において左方の約5分の1部分である。
引用部分の用途及び機能は,自動車用ステアリングホイールカバーの左方の約5分の1の部分というものである。

(3)引用部分の形状
ア 引用部分全体は,中心角が約80度の円弧状の,パイプ状であり,内周側の一部に開口部を設けたものである。
イ 引用部分のうち,上側約3分の1と下側約3分の1は,縫い付けて閉じてあり,中央の約3分の1が開口部となっている。
ウ 開口部は,縁がめくれ上がったように立ち上がっている。
エ 開口部の背面側の縁には,縫い目がある。
オ 開口部は,正面側と背面側は対称形の,長円形である。

3 両意匠の対比
(1)意匠に係る物品の対比
本願意匠に係る物品は「自動車用ハンドルカバー」であり,引用意匠に係る物品は「自動車用ステアリングホイールカバー」である。

(2)両部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能の対比
本願部分は,自動車用ハンドルカバーの正面視において左方の約5分の1部分であるのに対して,引用部分は,自動車用ステアリングホイールカバーの正面視において左方の約5分の1部分である。
そして,本願部分は,自動車用ハンドルカバーの左方の約5分の1の部分という用途と機能を有するものであるのに対して,引用部分は,自動車用ステアリングホイールカバーの左方の約5分の1の部分という用途と機能を有している。

(3)両部分の形状の対比
両部分の形状を対比すると,以下に示す主な共通点と相違点が認められる。
ア 共通点について
両部分全体は,中心角が約80度の円弧状の,パイプ状であり,内周側に開口部を設けたものである。

イ 相違点について
(ア)開口部の大きさにつき,本願部分は,上端から下端までが,開口部であるのに対して,引用部分は,上側約3分の1と下側約3分の1は,縫い付けて閉じてあり,中央の約3分の1が開口部となっている。
(イ)開口部の形状につき,本願部分は,正面側は,開口部がえぐれるように開いており,縁に沿って縫い目があり,かつ,背面側は,円弧状になっており,その結果,開口部の形状は,正面側と背面側は非対称の,紡錘形であるのに対して,引用部分は,縁がめくれ上がったように立ち上がっており,開口部の背面側には,縫い目があって,正面側と背面側は対称形の,長円形である。

4 判断
(1)意匠に係る物品の類否判断
ハンドルとは,自動車・自転車などの方向操縦用のものである。
ステアリングとは,自動車のハンドルのことである。
そうすると,本願意匠に係る物品である「自動車用ハンドルカバー」は,自動車の方向を操縦するもののカバーであり,引用意匠に係る物品である「自動車用ステアリングホイールカバー」は,自動車のハンドルのカバーであるから,両意匠の意匠に係る物品は共通する。

(2)両部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能の評価
両部分の位置,大きさ及び範囲は,共通する物品の,正面視において左方の約5分の1部分であるから,一致している。
両部分の用途及び機能は,自動車用ハンドルカバー又は自動車用ステアリングホイールカバーの左方の約5分の1の部分というものであるから,一致している。

(3)両部分における形状の評価
ア 共通点について
共通点のうち,中心角が約80度という点については,出願人が任意に選択した部分,及びそれに相当する部分として引用した結果生じた共通点であるから,両部分の形状の類否判断に与える影響は小さい。
共通点のうち,円弧状のパイプ状であり,内周側に開口部を設けた点については,ハブに対して,数本のスポークで支持されている,断面形状が丸い円形のハンドルのリム部分に装着する自動車用ハンドルカバーにおいては,必然的な形状であるから,両部分の形状の類否判断に与える影響は小さい。

イ 相違点について
相違点(ア)は,装着することができるハンドルのスポークの幅を限定するものであるから,需要者が注意を引く箇所の相違といえ,両部分の形状の類否判断に与える影響は大きい。
相違点(イ)は,開口部の具体的な形状の相違であること,及び引用部分は,縫い目が背面側にあるのに対して,本願部分は,目の付きやすい正面側のカバーの縁に沿って縫い目があることから,両部分に別異の印象を与えるものといえ,両部分の形状の類否判断に与える影響は大きい。

(4)小括
そうすると,両部分の形状については,その共通点及び相違点の評価に基づくと,上記のとおり,共通点は,類否判断に及ぼす影響は小さいものであるのに対して,相違点は,類否判断に及ぼす影響は大きいものといえるものであり,両部分の形状は,類似するとは認められないものである。

(5)両意匠における類否判断
以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が共通し,両部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能が一致している。
しかし,両部分の形状については,上記のとおり,両部分の形状は,類似するとは認められないものである。
よって,本願意匠と引用意匠とは類似するとはいえない。

5 結び
以上のとおりであって,本願意匠は,引用意匠に類似するとはいえず,原査定の引用意匠をもって,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできず,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲

審決日 2020-12-23 
出願番号 意願2019-15778(D2019-15778) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (G2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 藤澤 崇彦 
特許庁審判長 刈間 宏信
特許庁審判官 正田 毅
橘 崇生
登録日 2021-02-09 
登録番号 意匠登録第1680162号(D1680162) 
代理人 特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所 

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