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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H1 |
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管理番号 | 1371755 |
審判番号 | 不服2020-9929 |
総通号数 | 256 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2021-04-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-07-15 |
確定日 | 2021-02-26 |
意匠に係る物品 | 車両灯具用ソケット |
事件の表示 | 意願2019- 4902「車両灯具用ソケット」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 事案の概要 1 手続の経緯 本願は,出願当初,本意匠の出願番号を意願2019-004901とする,平成31年(2019年)3月8日の関連意匠の意匠登録出願であって,その後の主な手続の経緯は以下のとおりである。 令和1年 8月29日 :手続補正書(斜視図3を補正)の提出 令和2年 1月10日付け:拒絶理由通知の送付 同年 2月18日 :意見書の提出 同年 2月18日 :手続補正書(意匠に係る物品を補正及び本意匠の表示を削除)の提出 同年 4月27日付け:拒絶査定 同年 7月15日 :審判請求書の提出 2 本願意匠の願書及び添付図面の記載 本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり,その意匠は,意匠に係る物品を「車両灯具用ソケット」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり(以下「本願意匠」という。),部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を,「実線で表された部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。斜視図1,斜視図2,斜視図3,A-A断面図およびB-B断面図を含めて部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を特定している。」(以下「本願部分」という。)としたものである(別紙第1参照)。 3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠 原査定の拒絶の理由は,本願意匠が,その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似するものであるから,意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する,というものである。 拒絶理由通知において引用された意匠は,特許庁発行の公開特許公報(公開日:平成30年(2018年)4月19日)に記載された,特開2018-63902の第14ページ所載【図4】,第15ページ所載【図6】に表された「光源ユニット」のうち,本願の部分意匠として意匠登録を受けようとする部分に相当する部分の意匠(以下「引用意匠」という。)であって,その形態を,同公報に記載されたとおりとしたものである(別紙第2参照)。 以下,本審決では,引用意匠において本願部分と対比,判断する部分,すなわち,本願部分に相当する部分を,「引用部分」という。 第2 当審の判断 1 本願意匠と引用意匠の対比 (1)意匠に係る物品の対比 本願意匠の意匠に係る物品は,「車両灯具用ソケット」であり,引用意匠の意匠に係る物品は,「光源ユニット」のうち,本願の部分意匠として意匠登録を受けようとする部分に相当する部分である「車両灯具用ソケット」の意匠であるといえるから,本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,その用途及び機能が一致する。 (2)本願部分と引用部分の用途及び機能の対比 本願部分と引用部分(以下「両部分」という。)は,いずれも車両灯具用ソケットの放熱フィンとして用いられる部分であり,車両灯具用ソケットに配設された発光モジュールが発する熱を放熱する機能を有する部分であるから,両部分の用途及び機能は一致する。 (3)両部分の位置,大きさ及び範囲の対比 両部分は,いずれもソケットハウジングのベース面部の底面側に立設した大型の左右放熱フィンの間の,コネクター連結部と相対する位置に,大型の放熱フィンに比べて薄くて小さいが,ほぼ同じ高さの放熱フィンを,複数枚間隔をあけて並設したものであるから,両部分の物品全体の形態の中における位置,大きさ及び範囲は一致する。 (4)両部分の形態の対比 両部分の形態を対比する(以下,対比のため,本願意匠の図面における正面,平面等の向きを,引用意匠にもあてはめることとする。)と,その形態には,主として以下の共通点及び相違点が認められる。 ア 形態の共通点 (共通点1)両意匠は,部分全体の形態が,薄い略矩形板状体である放熱フィンを,底面視において放熱フィンのベース面部中心側の部分が一直線上の位置にくるように,複数枚,間隔をあけて並設した点が共通する。 (共通点2)両意匠は,放熱フィンの具体的な形態が,正面視を,下方に向かって漸次幅の窄まった略細長等脚台形状とし,底面視を,放熱フィンのベース面部の縁側の部分を,ベース面部の縁部の形態に合わせて斜めに切り欠いた略縦長直角台形状とし,全体を,角部を僅かに面取りした薄い略矩形板状体とした点が共通する。 イ 形態の相違点 (相違点1)本願意匠の放熱フィンの数及び配置態様が,底面視において,対称的な形態の2つの放熱フィンを対向させて並設しているのに対し,引用意匠の放熱フィンの数及び配置態様は,底面視において,外側に対称な形態の2つの縦方向に短い放熱フィンを対向させて並設し,この短い放熱フィンの間に,対称な形態の2つの縦方向に長い放熱フィンを,それぞれの放熱フィンが等間隔になるように並設している点で,両意匠は相違する。 (相違点2)本願意匠の各放熱フィンの最大部分の大きさが,底面視において,縦方向の長さがソケットハウジングのベース面部の直径の約1/3とし,横方向の長さが同直径の約1/12としているのに対し,引用意匠の各放熱フィンの最大部分の大きさは,外側のものが,縦方向の長さがベース面部の直径の約1/3.1とし,横方向の長さが同直径の約1/11とし,内側のものが,縦方向の長さがベース面部の直径の約1/2.9とし,横方向の長さが同直径の約1/11としている点で,両意匠は相違する。 2 両意匠の類否判断 (1)意匠に係る物品の類否判断 両意匠の意匠に係る物品は,いずれも「車両灯具用ソケット」であって,その用途及び機能が一致するから同一である。 (2)両部分の用途及び機能の類否判断 両部分の用途及び機能は,同一である。 (3)両部分の位置,大きさ及び範囲の評価 両部分の位置,大きさ及び範囲は,物品全体の形態の中における位置,大きさ及び範囲が一致するから,同一である。 (4)両部分の形態の類否判断 両意匠の意匠に係る物品は,「車両灯具用ソケット」であり,車両用灯具のランプボディのユニット取付部に着脱可能に装着されるものであり,そのような装着作業は,車両用灯具の組立工場において行われるものである。そうすると本願意匠に係る物品は,そのような組立作業を行う製造業者等によって購入され,組立工場において作業者によって取り扱われるものであるから,本願意匠に係る物品の需要者は,一般の消費者ではなく車両用の灯具を製造する製造業者であるといえる。 また,本願意匠に係る物品の需要者である車両灯具の組立作業を行う製造業者は,車両灯具におけるユニット取付部に適した車両灯具用ソケットを,多種類に亘る車両灯具用ソケットの中から正しく選択する必要から,車両灯具用ソケットの放熱フィンの数やその配置態様についても注視して観察しているものであり,本願部分に係る車両灯具用ソケットの放熱フィンの数やその配置態様は需要者の注意を強く惹く部分であるということができる。 ア 共通点の評価 (共通点1)は部分全体の形態に係るものであるが,両部分の形態を概括的に捉えた場合の共通点にすぎないものであるから,この(共通点1)が部分全体の美感に与える影響は小さい。 (共通点2)は各放熱フィンの具体的な形態に係るものであるが,該部位の形態は,この種物品の形態において本願意匠出願前から既にみられるものであり,その共通点は,両意匠のみに認められる格別の特徴であるとはいえないから,これらの(共通点2)が部分全体の美感に与える影響は小さい。 イ 相違点の評価 (相違点1)は,需要者の注意を強く惹く部分である放熱フィンの数及び配置態様の相違であって,本願部分が,2つの放熱フィンを,間隔をあけて配したシンプルな態様のものであるとの印象を与えるのに対し,引用部分は,4つの放熱フィンを密に配した略櫛の歯状の態様のものであるとの印象を与えるから,両部分は,放熱フィンの数及び配置態様から生じる美感に大きな相違がある。 (相違点2)は,各放熱フィンの最大部分の大きさについての相違であるが,それらは意匠全体の共通性に埋没する程度の僅かなものであって,需要者に別異の美感を起こさせるまでのものではないから,この(相違点2)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。 ウ 両部分の形態の類否判断 両部分の形態における各共通点及び相違点についての個別評価に基づき,部分意匠全体として全ての共通点及び相違点を総合的に観察した場合,両部分は,需要者の注意を強く惹く部分である放熱フィンの数及び配置態様が大きく異なるものであるから,両部分全体の形態や各放熱フィンの具体的な形態が共通することを考慮しても,部分意匠全体として観察した際に異なる美感を起こさせるものといえるから,両部分の形態は類似しないものである。 3 小括 以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が同一であり,両部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲についても同一であるが,両部分の形態において類似しないものであるから,本願意匠と引用意匠が類似するということはできない。 第3 むすび 上記のとおりであって,本願意匠は,引用意匠に類似せず,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2021-02-10 |
出願番号 | 意願2019-4902(D2019-4902) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(H1)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 清水 玲香 |
特許庁審判長 |
木村 恭子 |
特許庁審判官 |
渡邉 久美 江塚 尚弘 |
登録日 | 2021-03-25 |
登録番号 | 意匠登録第1683248号(D1683248) |
代理人 | 特許業務法人プロウィン特許商標事務所 |