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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 H7
管理番号 1373822 
審判番号 不服2020-17089
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-12-11 
確定日 2021-05-06 
意匠に係る物品 携帯情報端末 
事件の表示 意願2019- 20960「携帯情報端末」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、令和1年(2019年)9月19日の意匠登録出願であって、その主な手続の経緯は以下のとおりである。
令和2年(2020年) 3月12日付け 拒絶理由の通知
令和2年(2020年) 5月11日 意見書の提出
令和2年(2020年) 9月 7日付け 拒絶査定
令和2年(2020年)12月11日 拒絶査定不服審判の請求

第2 本願意匠
本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり、本願意匠の意匠に係る物品は、本願の願書の記載によれば「携帯情報端末」であり、本願意匠の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」ともいう。)は願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりである(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由
原査定における拒絶の理由は、本願意匠が、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」ともいう。)が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって、具体的には、以下のとおりである。
「本願意匠は、ストレッチ装置に用いる運動プログラムの進行状況をユーザーに伝える機能を有する携帯情報端末の画像であり、人体をイラスト化した図形を画面の中央上寄りに設けて、その周囲に、5分割された円周を円環状に設けた画像を、部分意匠として意匠登録を受けようとするものです。
本願出願前より、人体をイラスト化した図形を用いることは公然知られており(画像1)、そのイラスト化された人体の具体的な形状について、力を抜くように手を下ろし、また、足も同様に力を抜くように下ろし、腕と脚を僅かに広げる、としたものは公然知られており(画像2)、また、人体をイラスト化した図形の周りに円環状の図形を設けることも公然知られており(画像3)、円周を等分割して円環状に設けることも公然知られています(画像4)。
そうすると、本願意匠は、上で述べたように、いずれも公然知られた画像要素を、円環状に並べた円周の等分割についてその数を5つに変更した上で、単純に組み合わせたにすぎず、当業者であれば容易に創作できたものと認められます。

画像1:
電気通信回線の種類 インターネット
掲載確認日(公知日) 2016年 1月26日
受入日 特許庁意匠課受入2016年 4月 5日
掲載者 digitalMedLab GmbH
表題 +WoundDesk - Wound Care
- Google Play の Androi
d アプリ
掲載ページのアドレス https://play.google.com/store/apps/details?id=
com.digitalmedlab.wounddesk.android
に掲載された「スマートフォン用ソフトウェアの情報提供機能」の画像
(特許庁意匠課公知資料番号第HJ27126150号)

画像2:
電気通信回線の種類 インターネット
掲載確認日(公知日) 2016年11月15日
受入日 特許庁意匠課受入2016年11月28日
掲載者 Baptiste Moreau
表題 Human Fit Dijonを App St
ore で
掲載ページのアドレス https://itunes.apple.com/jp/app/human-fit-dijo
n/id1147082799?mt=8
に掲載された「スマートフォン用ソフトウェアの情報提供機能」の画像
(特許庁意匠課公知資料番号第HJ28129398号)

画像3:
電気通信回線の種類 インターネット
掲載確認日(公知日) 2016年 1月13日
受入日 特許庁意匠課受入2016年 6月27日
掲載者 kt (Korea Telecom)
表題 タイトルなし
掲載ページのアドレス http://shop.olleh.com/accessory/accsProductVie
w.do?prodNo=AA00035994&repProdNo=&dispNo=STOR0
40102&dispNm=%EC%9B%A8%EC%96%B4%EB%9F%AC%EB%B8
%94&upDispNm=%EC%9B%A8%EC%96%B4%EB%9F%AC%EB%B8
%94%26amp%3B%EA%
に掲載された「携帯用情報端末」の画像
(特許庁意匠課公知資料番号第HJ27054534号)

画像4:
大韓民国意匠商標公報 2016年 6月 9日
ディスプレイパネル用画像(登録番号30-0858086)
(特許庁意匠課公知資料番号第HH28424681号)」

第4 当審の判断
以下において、本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性、すなわち、本願意匠が当業者であれば容易に創作することができたか否かについて検討し、判断する。

1 本願意匠の認定
当審では、本願意匠について、以下のとおり認定する(別紙第1参照)。
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品(以下「本願物品」という。)は、「携帯情報端末」であり、願書の「意匠に係る物品の説明」には、以下のとおり記載されている。
「本物品は、ストレッチ装置に用いる運動プログラムの進行状況をユーザーに伝える機能を有する携帯情報端末である。正面図および変化後を示す正面図1?4に表された画像は、ストレッチの進行状況を示すものであり、運動プログラムが進むに従って、シーケンスバーの表示数が変化する。」
また、願書の「意匠の説明」には、以下のとおり記載されている。
「実線で表した部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分の境界を示す線である。」
これらの願書の記載によれば、本願物品である携帯情報端末に設けられた表示部に、ストレッチ装置に用いる運動プログラムの進行状況をユーザーに伝えるための画像が表示される。
(2)本願物品の表示部に表された画像
本願物品の表示部(物理的画面)にはスタートアイコン(破線)が示されており、同アイコンは運動プログラムの進行に係る機能を有すると推認されるから、当該表示部には、その機能を発揮できる状態にするための操作の用に供される画像(平成18年改正意匠法第2条第2項で規定された操作画像)が表されている(以下、表示部に表示される画像を「本願画像」という。)。
本願意匠において部分意匠として意匠登録を受けようとする部分は、本願画像における破線で表された部分以外の部分であって、一点鎖線で区画された部分(以下「本願画像部分」という。)である。
(3)本願画像部分の用途及び機能
前記(1)で摘記した願書の記載によれば、本願画像部分は、ストレッチ装置に用いる運動プログラムの進行状況をユーザーに伝える機能を有し、ユーザーがその状況を把握する用途を有している。
(4)本願画像部分の位置、大きさ及び範囲
本願画像部分の位置、大きさ及び範囲は、略板状の本願意匠の正面の周囲に余地部を残して配された縦長長方形の本願画像のうち、破線で表された部分を除いた領域である。
(5)本願画像部分の形態
ア 全体の形態
本願画像部分は、外周が縦長長方形状(縦横比が約1.8:1)であり、その内側に、本願画像部分の中央から上部にかけて人体イラストが配されている。
イ 「正面図」の形態
(ア)人体イラストの形状
人体イラストは、両腕が肩部から外側に開いて略ハ字状に表されており、手の甲が側面を向いて人差し指と親指が蟹爪状になるように表されている。脚部はややがに股状であって少し開いていて、足部は外方に屈曲して左右の足が略ハ字状に表されている。
(イ)人体イラスト周囲の形状
人体イラストの右上に外方に凸の弧状線分が表されており、その弧状線分の長さは約1/5円である。
ウ 「変化後を示す正面図1」の形態
(ア)人体イラストの形状
前記イ(ア)と同じである。
(イ)人体イラスト周囲の形状
人体イラストの右側に、前記イ(イ)の弧状線分と同形同大の外方に弧状線分が2つ表されており、2つ合わせた弧状線分の長さは約2/5円となり、弧状線分同士にはごく僅かな隙間が形成されている。
エ 「変化後を示す正面図2」の形態
(ア)人体イラストの形状
前記イ(ア)と同じである。
(イ)人体イラスト周囲の形状
人体イラストの右側から下側に、前記イ(イ)の弧状線分と同形同大の外方に弧状線分が3つ表されており、3つ合わせた弧状線分の長さは約3/5円となり、弧状線分同士にはごく僅かな隙間が形成されている。
オ 「変化後を示す正面図3」の形態
(ア)人体イラストの形状
前記イ(ア)と同じである。
(イ)人体イラスト周囲の形状
人体イラストの右側から左側に、前記イ(イ)の弧状線分と同形同大の外方に弧状線分が4つ表されており、4つ合わせた弧状線分の長さは約4/5円となり、弧状線分同士にはごく僅かな隙間が形成されている。
カ 「変化後を示す正面図4」の形態
(ア)人体イラストの形状
前記イ(ア)と同じである。
(イ)人体イラスト周囲の形状
人体イラストを囲んで一周するように、前記イ(イ)の弧状線分と同形同大の外方に弧状線分が5つ表されており、弧状線分同士にはごく僅かな隙間が形成されている。

2 画像1ないし画像4の認定
原査定における拒絶の理由で引用された画像1ないし画像4について、以下のとおり認定する。なお、画像1ないし画像4の出典や公知日などについては、前記第3に記載されたとおりである。
(1)画像1(別紙第2参照)
ア 画像1の用途及び機能
画像1は、スマートフォン用ソフトウェアの情報提供機能に係る画像であり、画像内に「Wound Location」の文字表示があることから、人体の傷の位置を表示する用途及び機能があると認められる。画像内の右下に遷移ボタンがあり、次の画像に移行する用途及び機能があると推認される。
イ 画像1の形態
(ア)全体の形態
画像1は、外周が縦長長方形状(縦横比が約1.8:1)であり、その内側に、上端寄りに2段の横長帯状部が配され、下端寄りには、中央に略横長トラック形状部が配されて、その右方に円形の遷移ボタンが配されている。中央には人体イラスト(正面)と同(背面)が左右に並んで表されており、それらは同形同大であって、縦幅が画像全体の縦幅の約1/1.9を占めている。
(イ)人体イラストの形状
人体は全体的に肉太であって、首部が短く、肩部がいかり肩状であり、両腕は肘部から先が外側に開いて略ハ字状に表されており、手の平(又は手の甲)が正面(又は背面)を向いて全ての指が開き状に表されている。脚部は略O脚状であって、足部は、左右の足が接して、足の裏が地面に付いているように表されている。また、右側の人体(背面)の向かって左肩部に、傷の位置を示す大小2重の円形面が透過的に表されている。

(2)画像2(別紙第3参照)
ア 画像2の用途及び機能
画像2は、スマートフォン用ソフトウェアの情報提供機能に係る画像であり、画像内に「Fitness」の文字表示があることから、筋力トレーニングの対象位置を表示する用途及び機能があると認められる。画像内の下段に「Exercices」のボタンがあり、別の画像に移行する用途及び機能があると推認される。
イ 画像2の形態
(ア)全体の形態
画像2は、外周が縦長長方形状(縦横比が約3:2)であり、その内側に、上端寄りに2段の横長帯状部が配され、下端寄りには、5つのボタンを等間隔に配する横長帯状部が配されている。中央には人体イラスト(正面)と同(背面)が左右に並んで表されており、それらは同形同大であって、縦幅が画像全体の縦幅の約1/1.6を占めている。
(イ)人体イラストの形状
人体は腰高脚長であって、首部が短く、肩部がなで肩状であり、両腕は肘部から先が外側に開いて略ハ字状に表されており、手の甲が側面を向いて人差し指と親指が逆V字状になるように表されている。脚部は肩幅以上に開いていて、足部はつま先立ちしたように表されている。また、人体内には各所の筋肉が模式的に表されており、特定の筋肉(複数)の位置を示すために、その筋肉の上に円形面が表されている。

(3)画像3(別紙第4参照)
ア 画像3の用途及び機能
画像3は、「携帯用情報端末」に係る画像であり、腕時計型の情報端末としてユーザーとの間で各種情報の入出力(機器とユーザーとのインタラクション)が行われると推認され、画像3はその入出力を行う用途及び機能があると認められる。
イ 画像3の形態
人体イラストが表されている黒い腕時計型の情報端末に表示された画像の形態を画像3の形態として認定する。
(ア)全体の形態
画像3は、外周が縦長長方形状(縦横比が約3.2:1)であり、その内側に、上半部に2段の文字表示部(時刻表示であると推認される)が配され、下半部には、人体イラストとそれを囲む略円環状部が、下半部のほぼ一杯に配されている。
(イ)人体イラストの形状
人体は細身であって右方向に歩行している状態で表されており、右脚が前に、左脚が後ろに表されている。左手がくの字状に折れ曲がってやや右側に出ている。
(ウ)略円環状部の形状
略円環状部は、細い円環と太い円弧から成り、太い円弧は細い円弧の内側に形成されて、約1時から約3時までの範囲に表されている。太い円弧がどのように伸張するかは不明である。

(4)画像4(別紙第5参照)
ア 画像4の用途及び機能
画像4は、「ディスプレイパネル用画像」であり、画像内に発光する「Action」の文字表示があることから、何らかの行為行動が開始されることを表示する用途及び機能があると推認される。
イ 画像4の形態
(ア)全体の形態
画像4は、外周が円形であり、外周に沿って略ドーナツ状円環部が形成され、その内側に、8つの円弧が円を描くように等間隔に配されて(円弧同士の間には隙間がある)、それらが描く円の中心に文字表示部が表されている。
(イ)8つの円弧の形態
8つの円弧は同形同大であって、右上の円弧がやや明調子に発光して表されており、他の7つの円弧はやや暗調子に(発光しない状態で)表されている。これら8つの円弧の発光のパターンは不明であり、例えば発光する円弧が1つのみでその位置が連続変化(発光する円弧が動くような変化)するのか、本願画像部分のように発光する円弧が順次増えていくのかは不明である。
(ウ)略ドーナツ状円環部の形態
略ドーナツ状円環部は、内側がやや明調子に発光しており、外側にいくにつれてしだいに暗調子に(発光しない状態で)表されている。

3 本願意匠の創作非容易性について
本願意匠が意匠法第3条第2項の規定に該当するか否か、すなわち、当業者であれば容易に本願意匠の創作をすることができたか否かについて検討する。
まず、本願画像部分の用途及び機能が、ストレッチ装置に用いる運動プログラムの進行状況をユーザーに伝える機能を有し、ユーザーがその状況を把握する用途を有している点については、ストレッチ装置に用いる運動プログラム(アプリケーション)が本願の出願前に広く知られているから、本願画像部分の用途及び機能について特段の創作性を認めることはできない。
また、本願画像部分の形態として人体イラストが配されている点については、画像を利用する物品分野において画像内に人体イラストを配すること自体は画像1ないし画像3に見られるように本願の出願前に広く知られているといえる。
しかしながら、人体イラストを配して、その形状を、両腕を略ハ字状に表して手の甲を側面向きにし、脚部をややがに股状にして少し開いて左右の足を略ハ字状とした本願画像部分の形態は独特なものであるというべきであり、この形態が画像1ないし画像3の形態から導き出されるということはできない。
そして、画像3の太い円弧がどのように伸張するかが不明であり、画像4の8つの円弧の発光のパターンが不明であるところ、人体イラストを囲む凸の弧状線分が右側から順次増えていく本願画像部分の形態は、画像3及び画像4の形態において表されていない。そうすると、そのような本願意匠の形態は、画像3及び画像4の形態に基づいて当業者が容易に創作したということはできない。
したがって、本願意匠は、原査定における拒絶の理由で引用された意匠に基づいて、当業者が容易に創作をすることができたということはできない。

第5 むすび
以上のとおりであって、本願意匠は、意匠法第3条第2項が規定する、意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作をすることができたとはいえないものであるから、原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2021-04-14 
出願番号 意願2019-20960(D2019-20960) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (H7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小林 佑二 
特許庁審判長 北代 真一
特許庁審判官 小林 裕和
井上 和之
登録日 2021-06-07 
登録番号 意匠登録第1688315号(D1688315) 
代理人 松井 宏記 
代理人 宗助 智左子 
代理人 鈴木 行大 

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